ボク、という自分は、どうにも言葉で表現することが苦手だ。
だからっていうわけじゃないけど、ボクは無機物が好きだ。特に、文房具。文房具ほど用途に対して洗練化されたアイテムもない。おまけに独自にデコレートすることで、小物に小物以上の付加価値をつけることができる。そこには、ボクという表現も重なってくるわけで、人格こそないけど、「彼ら」はだから、可愛いと表現したい。
考えをまとめることは、こんなにも簡単で。デコレートするのはもっと簡単で。
だけど、ボクがそれを口にしても、周りのヒトにはあんまり理解されてない。でも、それはそれでいいと思ってる。もしかしたらボクのそういうものの見方が嫌いだってヒトもいるかもしれないし、そういう趣味みたいなものを考えるのが苦手なヒトだっているかもしれない。忙しすぎて趣味を持てないヒトだっているかもしれないし、そんなことより勉強しろってヒトだって、もちろんいると思う。
多種、多様。
万色、万化。
様々な価値観が認められる世界なのだ。こんな「キレイな」コラージュを、美しいと感じなければ嘘だと思う。
だから、ボクは人間も好きだ。
コラージュとは、停止した時間を切り取って作り上げたもの。ようするに、無機物みたいなものだから。
「ガッチャマンか……」
都市伝説とか、宇宙人とか、正義の味方とか。うん、それもコラージュだ。かわいいのだ。
ただ、それでもおなかが空くのは――――胸の内が満たされないのは仕方ない。
ボクのこれを満たすためには、誰かの承認が、誰かとの共有が必要になってくる。それくらい自分が一番わかってるし、そしてそれが、何より難しいってこともわかってる。
だからまぁ、J.J.の登場に一番びっくりしたのは、たぶん他の誰よりもボクなんだと思ってる。
彼の挙動は明らかに人間らしからぬ動きで、その正体がよくわからなかったのも興味を惹かれたのだけれど。啓示するようなその言葉は、確かにボクの内に響いた。
「誰しも、その心の奥に秘めた力がある。目覚めよ。今はまだ見えぬその翼に。
選ばれし雛は、この星を守る翼となる。
その翼の名は――――――ガッチャマン」
ガッチャマン、実在したのかっていうことについては深く考えない。ともあれ、どうやらボクは彼に何かしら見出されたらしい。
今はまだ見えぬ翼……。何を言われたわけではないけれど、それでも、その言葉はボクに、ボク自身の将来の自由さを約束してくれる言葉に感じた。
手に入れたそれは、NOTEは、無機物でありながらボクらの心だということだそうだ。
このNOTE、ボクは様々な理由で大好きになった。
はじめて手にふれた瞬間にわかったのだ。ここには、様々なヒトの心の声が流れてきていると。
何をしてなくても、このNOTEという形は、おそらく他のガッチャマンさん達の心と繋がっている――――。それは、なんて「かわいい」ことなんだろう。
すごく、すごく期待させてくれる。
この満たされない胸の奥を、埋めてくれるのではないかって。
実際、期待は裏切られなかった。
初めて見た宇宙人さんも、姿形が自由すぎてカワイかったし、なにより先輩――――ああ、これはガッチャマンとしても先輩だけど、ボクの学校の先輩って意味でもあって。とにかく、彼もカッコよかった。鳥っぽいし、ニンジャっぽいし、何よりその能力! 先輩の特技を生かしたというか、発展させたっていうか――――くしくも人間模様のコラージュをさらに発展させたようなものでいて、それが、それはそれは、ボクには眩しかった。
先輩個人も、とりあえずボクの握手にツッコミを入れなかったくらいにはいいヒトいいヒト、なんだかもう、この時点で気分ウハウハ。珍しく、本当に珍しくボクも浮かれていた。
基地まで学校から歩いていける距離って斬新!
っていうか、昭和記念公園!
しかも基地地下だし、いったいどっからこんなに予算降りたのだろう! 宇宙人が勝手に建造してるに一票。
「ガッチャマンの任務は遊びじゃないんだ」
浮かれるボクにそう注意するあたり、やっぱり先輩はいいヒトだと思う。
ただ、緊張感は持とうと思う。ボク個人の趣味とは別にして、少なからずガッチャマンは正義の味方? らしいし。そうであるのならば、ボクも最大限その任務を果たす必要があるはずだ。
ただ、やっぱりテンションが上がった。基地、全然基地っぽくないし! めちゃくちゃ広いし! 色すっごいアヴァンギャルドでボク好みだし!
メンバーも個性的だ(ボクが言えた義理じゃないけど)。
うつつちゃん! ずっと水着姿って自由だし、デザインかわいい! 本人も超かわいいし! 内向的っぽいのに水着で目立つような格好をしてるのは、なんだろう、社会性を放棄したいのかな? 手も触らせてくれなかったし。
O.Dさん! 先輩よりも大人な感じで、こっちもいいヒト。性別と人格がいわゆる反転してるタイプのおねえさん(オネエさん?)だけど、変身できないってなんでだろう。周囲を巻き込んで爆発でもするんだろうか。
ジョーさん! ニヒル気取ってる感じが、男の子が好きそうなイメージだ。微笑みがやわらかで良いヒトっぽいけど、ポーズのせいか握手はしてくれなかった。
リーダ、っていうかパイパイ! パイマンが本名らしいけど、肩肘はってる感じと見た目が合ってないし、あんまり偉そうに振舞うのが性に合ってなさそうな気がするから、ボクはパイパイって呼ぼう。そっちの方が可愛いし。でもなんでパンダ嫌いなんだろう。かわいいのに。
簡単な決まりごとは、まぁ、よくある感じのものだった。一般人に気付かれないようにするとか、そんな感じの。NOTEが持つ「アムネジアエフェクト」の能力とかは、なんだろう。心に左右するから忘却効果なのかな。
要するに、宇宙の警察みたいなものって感じのことがガッチャマンのお仕事らしい。秘密裏に宇宙人さんとか、未確認物体(モノリスとかUFOとか?)を駆除してるらし。中々に物騒だけどヒトが攫われてる以上はそれも致し方なしなのかな。
当面は、MESSというらしい物体が相手らしい。
物体……、まぁ面倒だし、宇宙人さんでいいや。
――――不穏な風が迫っているが、それはまだ我々を揺らす程ではない。今はまだ名もなき混乱に対処すべし。しかし、混乱と脅威は必ずしも同じではない。その判断は自らで行うべし。
白い翼を持つ鳥は決して迷い込んだのではない。心して次なる言を待て――――
J.Jの予言らしい。……預言が正しいのかな?
だって、こう、言ってることが明らかに何かを指し示してる気がする。
白い翼っていうのは、たぶんボクだ(NOTEの色が白いし)。
名もなき混乱っていうのはMESSでいいとして。不穏な風っていうのはわかんないけど、混乱と脅威は必ずしも同じものではない、か……。
ともあれ先輩に続いて、立川駅北口ロータリー下。時間的に伊勢丹もパネルの電源落としてるし、ヒトめっちゃ少ない。
先輩いわく、とまっていたバスの一つがMESSだったらしい。何にでも擬態する、とはいっても……なんだろう。何か違和感を感じるボクがいる。
先輩たちはMESSちゃんに対して敵対意識を持っている。実際にヒトが攫われてることも考えれば、決してボクら人類にとって善なる存在でもないのだろうけど。
だけど、それにしては回りくどいっていうか、全然攻撃の意識を向けられてる気がしないように感じるっていうか。
しっかし変身すると先輩カッコイイなぁ……。
じゃ、いっちょやるッスか。
「バード……、ゴぉ?」
こんな感じ?
と思ったら、周囲に光が迸って、そして、なんだかこう、色々と頭に流れ込んできた感じだった。
ボクのNOTE、発揮される力はボクの独創性とか、先進性らしい。万物をデザインするかもしれないNOTEとか。ちょっと抽象的すぎてわかんなかったけど、バトルスタイルは中々、ニンジャと文房具を足して2で割った感じで、ポップで、なにより可愛い!
「――――ガッチャマン、参上!」
ともあれ、ボクはやっぱり浮かれていたのだろう。
この時点でカッツェさんのの存在に気付いていたのなら、少なくとももっと冷静になっていたのだろうから。