一ノ瀬はじめの憂鬱   作:黒兎可

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未来派視野交感

 

 

 

 

 

 ボクの言葉が正しく伝わるかはわからないけど、それでもより抽象化した概念であるならば、共感できるはずだ。あれからMESSぃちゃんとコミュニケーションをとってる? 感じからすると、MESSぃちゃんたちは形が変わるってことに興味があるみたいだった。Dさんも、大体同じようなイメージみたいなことを言ったし、ボクだけの感触じゃないんだと思う。

 取り込まれたヒトたちも返って来たあたりからすると、MESSぃ(メッシー)ちゃんたちは、少なくともボクらと敵意、害意をもって接触するつもりはないと思うので、とりあえずこれはこれでいいんじゃないかな。

 

 というわけで、色々と悩み続けてるパイパイあらためパイさん。ボクが何をしたのか聞いてくるけど、それは、まぁ、単純な話として。MESSぃちゃんたちが、どんな存在なのか、それを見極めただけというのが正直なところだった。

 処分しろと怒るパイさんだけど、消えて衝撃を回避、して勢い余って転がるパイさんの動きを真似るMESSぃちゃんは、超、かわいいっス!

 

 そして、そんなMESSぃちゃんについて考えてるみんなだけど、なんか、ジョーさんは少し気が立ってるようだった。こういうのは忌憚なく意見を言いあえるのがいいと思うのだけれど、あっちはそういうポーズなのか、素なのか……。

 って、あれ? うつつちゃん、なんかこっち見てる。

 ひょっとして興味あるのかな? 折り紙。

 ということで突撃慣行してみると、ぱぱっと逃げていっちゃった。

 こっちもこっちであんまり積極的な子じゃない気がするけど、これは、単に照れてるだけなのかな? もうちょっと見極めが必要な気がする。

 

 

 ってなわけで、登校、うぃず、MESSぃちゃん! アムネジア・エフェクトをまねたのか、基本、MESSぃちゃんたちの姿は、一般人には見えていないので、一緒に登校してもいいだろうと思った。むろん、何か問題があればボクらが対処しなきゃいけないと思うけれど、それよりもMESSぃちゃんに、もっと人間っていうのを知ってもらいたい。

 とにかく、異文化どころか、知性レベルが違う相手同士のコミュニケーションなんて、ワクワクしないわけがない! なので、そっちに意識を割いてるから、先輩への説明テキトーになるのはゴメンって感じで一つ。

 

 GALAX、GALAX。ニュースの収集とクラスメイトたちとやりとりしながら歩いていると、なんか、急いでる感じに車が走っていった。こんな細い道をあんな速度で走るくらいッスから、しかも多摩ナンバーってことはたぶん近隣住民だろうし、なんか大変なことでもあったのだろうか。奥さん産気づいたとかだと、ちょっと、急がないといけないからなー。

  

「なんでそんなこと一々考えるんだよ……」

 

 だって、そう考えたら仕方ないって思えるじゃないだろうか。ちょっとは怒る気持ちが落ち着くんじゃないかと思う。そっちの方が、楽しいんじゃないだろうか。

 

「まぁ、そりゃ……」

 

 あれ、今、ボクの言葉、ちゃんと先輩に伝わったッスか?

 

 まぁ先輩とボクの方で校舎が別れるので、そのことを確認するのはまた今度ってことでいいか。

 

 でもちょっとだけテンションは上がったので、今日はメモ帳くん、君を可愛くしてあげるッス。丁度、授業が方丈記を取り扱ってるみたいだから、テーマは川! 青で塗るのは面白くないから、黄色とマゼンタでペインティング!

 

 せっかくだからお弁当ちゃん、君もペインティングっす! ケチャップ、ケチャップ、タバスコ、まよまよ!

 うん、かわいかった、かわいかった。ごちそうさまごちそうさま。この後運動するのでちょっとだけ残してごちそうさますると、丁度、GALAXに通信が入った。

 

「牛乳?」

 

 あれ、今日届いた牛乳、飲むと拙いみたい。なんだか、常温放置で、殺菌処理はしたけどよくないみたいって……。これは、これは! ボクらが動けるんだから、ボクらが動くべきじゃないだろうか? 以前までのボクでも動くことは出来たけど、でも、今のボクはガッチャマン。先輩だっているし、出来る事は多い……!

 

「あ、ちょっと、はじめどこ行くの!?」

「助っ人、呼んでくるッス! ガ~ッチャ!」

「が、がっちゃ……?」

 

 クラスメイトたちに相談した後、そんな感じで先輩を呼びに走れ、はじめ! まぁ走るのはボクだけど。

 

「大変ッスよ先輩! 協力、協力!」

 

 きょとんとしてる先輩は、やっぱりこう、友達がいないようだった。

 ……ボク、GALAXで友達登録してあげよう。切に、そんなことも考えながら、簡単に事情説明先行。

 

 作戦方針は、とりあえず供給方法自体を切ってしまうのが手早い手速いということで、売店のおばちゃんには話を通して準備してもらう。校内放送の準備は動いてくれてるみたいだから、あとはみんなで自販機のコンセントを抜いちゃうべし!

 先生に断る時間が惜しい。この場合、緊急性が重要度を凌駕してるから、順番が逆転してるのだ。

 

 って、あ、うつつちゃん! みんなに伝えて、と言って、まだまだ走るッスよ~、ボクら!

 

 ボクらの登場、とりわけ先輩の登場にぎょっとした生徒が何人かいたみたいだけど、これは何なんだろう。先輩、留年してるっていうのもあるだろうけど、女の子からは結構きらきらした感じの目を向けられてるし、やっぱり裏ではモテてたりするんだろうか。

 それはともかく、悪戯防止でボックスの中に入れられてる電源関係、ぷらす、校内放送は校内放送で手間取ってるみたい。相談なんてしてたら間に合わないってー。どう考えても手続きを踏んだ結果、先生達が責任を問われるケースなのに、これは。

 

 よわった。じゃあ……。

 

「今から囮を送るッス」

「囮って!?」

「もちろん先輩ッスよ!」

 

 そりゃもう、ニンジャかサムライかわかんないけどってくらい暴れちゃってください!

 職員室の連中の目をとにかく引きつけるコト。その隙にボクはカサカサっと、這いよって奪う。

 これはゲームじゃないのだ。人命までかかってるかはわからないけど、少なくとも生徒の安全くらいはかかってるのだから。

 

 今、ボクらには間違いなく理由がある。暴走と言われても、成功しなければ多くの生徒が被害にあうという状況がある。ならば正々堂々と立ち向かった結果、失敗してしまったら誰も助けられない。

 ボクらはヒーローなのだから。

 

「みんな、守るッス……!」

 

 そして意を決した先輩だったけど、あー、なるほど。暴走してる先輩は先輩で可愛い感じだった。こう、絶対慣れてないのが丸分かりというか。こういうところに母性をくすぐられる女子が一定数は居そうだなーとか、覚めた目で見つつ、ボクは鍵の捜索へ。

 いや、でも、にゃって何ッスか先輩。ニャって……。その掛け声、やっぱり天然というか、なれてないッスねー

……。

 

 そして私は、かさかさ地面を這い回るのだった。カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ――――。

 と、おっと。先生たちにも協力者はっけーん! 自販機の鍵、ぷらす放送室の鍵げっと!

 

「ぎゅううううう、にゅうううううううううう、のむなぁああああああああああああああああ !!!!!!!」

 

 よし、放送終了!

 用件だけしか伝えてないけど、たぶん大丈夫。あとは他の子に任せて、ボクは自販機の方へ。鍵を投げると慣れた風に受け取って、これまた手馴れた感じで電源ボックスを開ける同級生たち。終わったらこっちに回して、と伝言して、走る走る――――。

 

 中庭前の方が終着点っぽいから、そこまでいって待機。

 解除速度も段々早くなってるみたいッスね。んー、この類のスキルを生徒が自主的に覚えて、しかも上昇させるのが良いことなのか悪いコトなのかっていうのは置いて置いて……。

 

 と、そんなこんなしてると、丁度先輩が走ってきた。

 

 GALAX用に写真の準備。自販機の電源関係を、ばっさりお願いしますと頼むと、すんごい形相のまま、モップでばっさりやっちゃってくれた!

 

 

 

 ミッションはコンプリート。……先輩の反省文はともかくとして。

 さっきGALAXでニュースを確認した感じだと、とりあえず被害は二桁に収まったらしい。一応、先輩の事情についてもボクら他の参加者たちで多少フォローしておいたので、これで少しは落ち着いて欲しい感じだった。

 

「いやー、よかったッスよ先輩! 先生に怒られてる姿、ちょっとお茶目で」

 

 叫び声がにゃ~だったし。というのは半分は冗談として。慰めているつもりか、と言われはしたけど、まぁ先輩は正面からそういう受け取り方は出来ないだろうから、ボクもこれには外した感じで回答しておく。

 つんけんしてる先輩も可愛い感じで、んー、なるほどなるほど。近寄り難いけど、裏でモテてる理由がなんとなくわかってきてる感じだった。ちょっと視野狭窄で意固地だけど、真面目だし、良いヒトだし。

 

「けど、アレだな。ネットとかって凄いのかもな。確かに影響デカいよ」

 

 そして、この先輩の反応……。うん、ちょっとだけだけど、余裕出てきた感じがする。だから、あえてボクの別視点も折り混ぜておこう。

 ネットというか、ネットワークを介したコミュニケーションは、遠方との素早い情報共有に向いているとはえる。いえるけど、それだけだ。電池が切れれば使えないし、電波が届かなければ、ただの計算機。結局のところ、ボクらがそれをどう使うか、というところが問題なのだ。

 道具だけを過信して振り回されてると、それはそれでまずいのだ。

 

「……そうか…………」

 

 別に混ぜ返したつもりはなかったけれど、先輩はまーた複雑そうな顔になってた。

 

 スマホのGALAXから顔を上げて、ボクはそれを、少し興味深く見つめて、微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

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