ボクはボクの言葉が伝わってるかってことについて少し疑問符があるけど、きっとそれはボクだけに限らないはずだ。誰だって自分のコミュニケーションに不安や悩みを覚えているんじゃないかと思う。
だから、なんかこの日のMESSぃの動きがおかしいってことに気付いてから、なんじんでいるにも関わらず、少し違和感があった。
そして――――ボクらはこのとき、初めてカッツェさんについて知った。
ジョーさんからの情報では、あくまでも容姿、能力まで。そして。
もう、誰も助からない。
みんな真っ赤に燃え上がる。
ぜんぶボクたちのせいだ。
謎の言葉を残した宇宙人。NOTEをもっていたあたり、ガッチャマンの関係者なのかもしれないけれど、Dさんとパイさんは、詳細を教えてはくれなかった。
――――再び狂った鳥が姿を現し、鉄の塊で罪なき者達を蹴散らす――――。
J.Jの預言も、なんかいつもより直接的っていうか、物騒な言葉が踊っている。
だけど、これに対してパイさんは何もするなと言った。何か隠してるっていうのは嫌でもわかるけれど、うーん……。なんのなぞなぞだろう。
なんで誰も助からないのだろう。
なんで燃え上がるんだろう。
そして、なんでそれがボクらの責任ってことなんだろう。
その宇宙人さんがボクらに対して友好的ではないのは、もう話を聞く限り確定でいと思ったけど、でもなんで、そんなことを言ったのだろう。
ニュアンスだけをそのまま置き換えて言えば、ボクら自身のせいでボクらが滅ぶっていうことになる。それは、どこまでを指した言葉なんだろう。
ジョーさんの言いぶりからして、規模はボクらガッチャマンに集約したものではない。かといって県とか、日本単位に集約したレベルの話だとしたら、それも、Dさんとパイさんがあそこまで警戒する理由にはならないと思う。
「おい新人」
「はじめッス!」
先輩とのこのやりとりも、段々慣れてきた感じがある。
何を考えてるかって言われたら、もちろんこれからどうするかに決まってる。そのガッチャマンのような悪い宇宙人さんが言うには、すべてボクらのせいだというのだ。
下手をすればそれは、ボクらガッチャマンだけでどうにかできる話ですらない規模のことなのかもしれない。それは、すごく危険で、恐ろしいことじゃないだろうか。それこそこのまま放っておいたら取り返しがつかなくなる程に。
しかも何より恐ろしいのは、それに、その悪いガッチャマンが「直接」関係していない可能性もあるってことで……、あー、考えがまとまらない。
ジョーさんはきっちり俺が倒すとか言ってるけど、危機意識を持つべきところはそこじゃないんだと声高に言いたい。
あー、伝わらない伝わらない……、せめて先輩ともうちょっと通じ合えたら展開がかわるんじゃないだろうか。これはボクの怠慢といってもいいのかもしれない。
ええい、思考転換、思考転換! とりあえずモノレールが遠いので、そこまで歩きながら考えよう。
なんで通り魔がボクらのせいなのか。ボクらが直接関係していないにもかかわらずそういうってことは、拡大する規模は日本人? 人類? 男性? 女性? 大人? 子供? あー、引っかかる。パイパイとDさんも明らかにおかしかったし、二人は知った上でボクらに隠すほどのことがあったとみるべきじゃないだろうか。
それほどの相手が、お前らのせいだ、と名指ししてきたのだから、そこにはきっと、言葉通りないし、言葉以上の意味がある。
「でも、あんなシリアスなDさん始めてッスよねー。って、お?」
と。スマホの地図を見ながら、ふと、あることに気付いた。
新設して、移設された市役所。自衛隊に、向かいには消防署とか、色々。そういえば立川、ここのあたり立川断層とか言われてるあたりの近くにこういう機関が密集していた。
「これって、立川何が起こっても平気じゃないッスか!?」
だって、これほど近くに、何かおこったときに対処することが出来る人達が集まっているんだ。みんなで協力して、知恵を出しあって、行動すれば、大抵のコトはなんとかなっちゃうんじゃないだろうか。
うつつちゃんに同意を求めてみる。
「…………」
「ん、うつつちゃんって普段から大人しいんスか?」
返答がなかった、というだけではないけど。うつつちゃんは、あんまり自分を表面化しようとしない。「接触したくない」という意思はそれこそかわいいくらいにボクにさえぶつけてくるのに、それ以外のことはめっきり、ほとんど見た覚えがない。帰り道、今日はとくにそれが感じられたので聞いて見ると。
「そういう、身体だから」
どういうことだろう。
なんのことだろうと思ったら、本人いわく、分身だとのこと。つまり、うつつちゃん、実はニンジャ? というのはおいておいて。たぶん先輩みたいに、NOTEの能力なんだろう。
でも分身か……。ボクも分身とかしたら、どうなるだろうか。こう、ボクは果たして何人くらい増えたら、ボクの言葉を他人にわかりやすく伝えることが出来るだろうか。
それは無理と言いながら、うつつちゃんは花を枯らして、また蘇らせていた。どうやら、これもNOTEの力みたいだ。
ボクはその力をすごいと思うけど、うつつちゃん本人は変だって思ってるみたい。
「そっか。嫌なんスね」
「そう。嫌」
誰にも触れない。傷つけてしまう。自分はそういう生き物だといって。楽しくてもすぐ泣きたくなったり、消えてしまいたくなったりってつぶやく。とすると、うつつちゃんが分身できたりするのは、このあたりの感情の分裂具合ってところだろうか。
つまり、誰かを傷つけたくないのに、傷つけたくなる自分がいるのが嫌だってことだ。
「怖いでしょ、私」
正直に言えば、そんなことはない。というか、むしろ、可愛い。「自分の本来あるべきところ」、「成すべきなにか」をさらけだしてくれたのだ。これが可愛くないわけがない。少なくとも、ボクにとってそれは文房具を愛でる理由となんらかわりない。もちろん人間である以上接し方もウェイトの置き方もかわってくるけど、ボクの基準でいう可愛いことに違いはないのだ。
だから、それは、うつつちゃんの見方であって、ボクの見方ではない。
だから、そう思えるのなら、うつつちゃんはそのうつつちゃんのままで大丈夫。
ボクだってきっと、お母さんがボクを見たときのそれと、先輩がボクを見た時のそれとは、大きく異なるはずだ。もちろんうつつちゃんから見たボクも。だけど、それがボクはいいのだ。だから、ボクは何があっても楽しいのだ。そうじゃなければ、嘘だろう。
「…………うそつき」
だから、嘘じゃないってば。
でもいつか、もしボクのこれが嘘だというのなら。……嘘だというのなら。本当に、本当に嘘だと言うのなら。
せめてそれは、本当のうつつちゃんから聞きたい。うつつちゃん気持ちが割れてしまっていたのだとしても、きっと、「出会った」のなら、それはきっと楽しいことのはずだから。
そうじゃなければ、きっとそれは嘘だ。
グランディオのオリオンパピルスでバイト中も、なんとなくそのことは頭の片隅にある。
ボクらはまだ、そのガッチャマンさんが言うところの「ボクらのせい」と、出会っていない。本当の意味で。
でも、ボクらのせいで世界が真っ赤に染まると言うのなら、そうなった時にボクらはボクらの力でどうにかしなきゃいけない。
友達がいうところの「ロープウェーの事故、救助でGALAXが大活躍」とかいうニュースのあたりでも(今朝先輩がNHKかけてたのでわかった)、つまりそういうことなのだ。
でも、だからってGALAXだけじゃ淋しい。確かにGALAXは、必要なヒトを必要なところに配置するって流れを作るコトはできるけど、それってヒト同士がGALAXを介してしか繋がれてないともいえる。それだけじゃ、なんか淋しいじゃないか。ボクが思うところの、言葉が伝わらないことさえないかもしれないけど、その代わり言葉を伝えるコトさえできないのだから。
「――――あ、そっか……! そうなんだよなー!」
助けたい、と思ったら、誰だって助けるために身体が動く。というか、動けるっていう要素だけは、きっと誰の中にもあるはずだ。GALAXが導入されただけで、多くのヒトが啓発されて動けるのだ。切っ掛けさえあれば、誰だってそうなる。ヒーローになれる。
だったら、ボクらはそれに、より自覚的であるべきなのだ。
今は正体が分からない、観察できない何かがそこに迫っているからこそ――――ボクらは、それが迫っているっているなりに、行動をしないと。
※ 立川グランディオ オリオンパピルス店 は2017年現在既に閉店しています