一ノ瀬はじめの憂鬱   作:黒兎可

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協同共振体

 

 

 

 

 

 いくらボクの言葉といえど、質問レベルまで抽象化されると流石に伝わるらしい。

 悪いガッチャマンの仕業、と思われる事件というか、ニュースがテレビで流れてる。休日早々これが来るのが、際先が良いのか悪いのか。

 

 スイカに塩を振り、被りつきながら色々考えてみる。

 

 これで一つ判った気がする。悪いガッチャマンさんが化けてるのか唆してるのかはわからないけれど、おおむね「ボクらのせいで」っていう謎かけは、ここに繋がっているのだろう。

 パイパイは関わるなっていったけど、考えるなとは言われてないよね! と詭弁を振りかざして考えて見れば。まぁシングルマザーのお母さんが突如車で暴走っていうのは、流れとしては不自然のようで、不自然でないと言いつくろえなくもないところな気がする。たぶん、この気がするって言うのが問題なのだ。

 とすると、悪いガッチャマンさんが何を武器とするか、というのは――――。

 

「はい、質問!」

 

 律儀にパイパイの言ったことを守ってチャンネル変える先輩が健気ッスけど、ボクはそんな空気を読むつもりはなかった。

 

 問。もし悪いガッチャマンがもっともっとひどいことを始めたらどうするのか。

 先輩はボクらが一丸となって対処するって言ったけど、パイパイ逃げ腰ッスねぇ。っていうか、逃げ腰というよりは、怖いのかな? やっぱりパイパイたち、悪いガッチャマンさんと面識あるんじゃないだろうか。

 

 続けて問。ガッチャマンが皆一緒に戦ったことがあるかどうか。

 これにはないって先輩が即答。まぁ宇宙の警察官みたいなものだし、総動員されるような事態ってもう既に地球が終わってるレベルなのかもしれない。けれど、これにも疑問が残る。

 

 さらに続けて問。何故、ボクらは人に隠れて仕事をしているのかどうか。

 ネットワークの話と同じだ。立川、あんなに近い所に色々な人達が連携できるような立地が存在しているのだ。淋しいっていうだけじゃなくて、みんなで連携して対処しなきゃいけないようなことって、当然出てくるんじゃないだろうか。

 今、ボクが見ている範囲のガッチャマンの影響力って、せいぜいが立川、それも公権力のほんの一部に干渉しているかいないか程度のレベルな気がする。そんな状況自体が、そもそも危険なんじゃないだろうか。

 

「まぁ、確かにそうかもしれないけど……」

「そーゆーわけにはいかん」

「どうしてッスか?」

 

 これの返答が、そういう決まりだからだっていうのはちょっとまた違う気がする。先輩もなんか、変身ヒーロー思考というか、もっと表立って戦いたいというか、まぁ一番の理由はアムネジアエフェクトによる授業サボりに明確な理由を説明したいってことなんだろうけど、それでも表立って戦いたいという感じらしい。

 

 それに対してのパイパイの回答としては、まぁ、宇宙人らしい考え方というか、なんというか。監査? というか、ともかく上から目線みたいに、人類にそんなスーパーパワーを好き勝手できるようにしてはいけないっていってる。んー、それもまぁかわいいって言えばかわいいんだけど。

 

「だったら、悪いガッチャマンはなんで好き勝手やってるッスか?」

 

 そう。だからこそ、相手がその流儀にあわせないのなら。そうも言ってられない事態に直面してしまったら、ボクらはどうするべきなのだろうか。

 

 それこそ世界が真っ赤に燃え上がったら――――字面どおり、ロクでもない状態に陥ってしまったら。

 

 そこのところ、みんな一度真剣に考えた事があるだろうか。わからない。

 まだしも目に見える形であるGALAXの方が、多くのヒトには安心できる材料となってしまうのも仕方がないかもしれない。色とりどりが見えるっていうのはかわいいっちゃかわいいんだけど、依存するのもなんか違うんだよなー ……。

 

 あ、流石にちょっと先輩怒らせちゃったみたいだ。そういえば先輩、この間MESSぃちゃんに刀向けた瞬間、それをまねられてすごくぎょっとしてたっけ。すぐさま周りをぶんぶん見回していたので、それは見なかった事にしてあげてるけど。

 

 っていうか、あー! 先輩、GALAXやってるじゃないッスか! スマホ買ってるし、アバターまんま先輩だし! 調査だとか言ってるけど、要するに興味津々って訳ッスね! うんうん!

 ちょっとは先輩らしく、かわいくなってきた感じだけど、ただまだまだボクらの間には壁があるみたいだ。

 ぶぅ。

 

 

 ――――大きな箱が闇に消えた時、壊れた子供がついに我々の前に姿を現す。白い鳥がそれを見る――――

 

 

 預言、またまた名指しでボクっすか? J.J。

 それにしても、壊れた子供とな……。んー、狂った鳥、悪いガッチャマンさんではないにしても、遂にというからには、今までもなんらかの因縁がボクらの裏にあったということだろうか。壊れた子供、くん? ちゃん?

 

 ともあれ、とするならば。ボクはボクに出来ることをするだけだ。

 とりあえず明日のコラージュオフ会、まずは危機意識までいかないまでも、意識をもってもらうことからはじめよう。まぁボクが言うまでもなく色々やってるかもしれないッスけど。立川断層問題とか。立川断層問題とか。そういえば153道路、断層直下疑惑とかあったような……?

 

「お前、なんか張り切ってるか?」

「そりゃ張り切るッスよ先輩。あと、はじめッス」

 

 さぁって、とりあえず明日の前に今日のノートちゃんをデコレートデコレート!

 

 ……と、いけない。気が付くと夜を回ってる。

 そしてこっそり部屋から出ると、先輩の部屋で、何か、ものを書く音が聞こえてきた。

 

「日記か何かッスかね」

 

 画はたぶん苦手だろうと、これについてはボクの偏見が入った判断だった。

 

 

 

   ※

 

 

 

「パイパイも来るッスか?」

 

 いかん! というパイパイ。んー、大人気だと思うんだけどなー。パンダみたいだい。まぁ嫌だっていうなら、無理にさそうべくもないのだ。そういうのはかわいくないから。

 そして! 事前にちょっと根回ししていたせいか、なんと! 今回普段クールな感じであんまり誘いに乗ってくれなさそうな丈さんと、うつつちゃんが参戦んんっ!

 

「とりあえず駅集合ッスよ、先輩! うつつちゃん!」

「なんでお前、そんな元気なんだよ……」

「うつうつします」

 

 いち・うつうついただきました!

 やっぱり可愛いうつつちゃんと、ちゃっかり折り紙を持って来てくれてる気の回る先輩だった。

 

 丈さんはギリギリで来れるそうなので、とりあえず暇な間、先輩に画を描かせて見る。……うん。やっぱり、知ってた。知ってたからなおのこと、あれは何をしていたのか気になる……! でも深夜に同年代くらいの男性の部屋に上がりこむのは年頃女子としていかがなものかっていうくらいの倫理観はボクも持ってるし、一応個人のプライベートなのでそこは一旦放置しておこう。

 気まずいことになりかねないシーンとかに遭遇する可能性もあるしね。うん。

 

 バラッチとか、わらわら集まってくるあたりでうつつちゃんにも紹介。一応、うつうつしながらも頭下げてるうつつちゃんかわいい! 健気!

 そして送ればせながらやってきた丈さんが、もう完全に別人だった。……うん、これ、ガッチャマン抜きにして変身ってレベルな気がする。それくらいビジュアルの印象が変わっていた。

 

 やっぱりそういう趣味なのかな。ヒーローもの大好きさんなのかな。

 それはそれでかわいいッスけど。っていか、先輩のそういう趣向ってひょっとして丈さん由来なんじゃ……?

 

 ともあれみんな乗り込んで、バスは福島に向けて移動中。震災直下は流石に原発が怖いから違うッスけど、今回のコミュニティの呼びかけをGALAX経由でやっているので、あちらも結構集まってくれてるらしい。現地につくまでにいくつかコラージュをつくっておいて、向こうで一日泊まって、翌朝帰り。三連休だからこそ出来るところだったり。

 そういえば、友達の親の実家も福島だったらしく、そういうことやってるって言ったらたいそう驚かれた。まぁ、その友達の実家は郡山寄りの方で親戚一同無事だったらしい(従姉妹さんの職場はやられちゃったらしく、しばらく移動になってるらしいけど)。

 

 ともあれ、現地の人達も多少はこういう触れ合いが出来る程度には、余裕を取り戻しつつあると思ってる。

 

 人間、衣食足りて礼節を知るとかなんとか。居住区も大事といえば大事だけど、まずは多少安定した生活基盤こそが重要ッスからね。

 

 そんな中、後ろの席に集まってるバラっちとかノブさんとか。とくにノブさんに注目して話かけてみるッスけど(市長だし)、おろろ、と。どうも、意外と緊急の連絡網みたいなのって、上の方で率先して作ったりしてるわけじゃないらしい。

 

「マジっすか? だって、警察と自衛隊とお向かいでしょ? 消防署と市役所もご近所さんなのに、立川に何かあったらどうするッスか?」

 

 それこそゴ○ラとか攻めてきたり、とまでは言わないけど。

 ちょっと冗談めかしているので空間は和やかな感じだけど、でも実際、首都直下型地震とか震災の影響もあってニュースで騒がれてるし、立川とかモロ現地になりかねない可能性あるのに、この調子は、ちょっと危ないんじゃないだろうか。そういうことになんとなく、皆気付いてきた感じのようだ。

 

 いや、まあ、日々の仕事に忙しいとそういう社会的な視野と言うか、狭まってきちゃうところもあるとは思うんだけど。でもだからこそ、大人になるってことは、そういうことにも目を向けていかなきゃいけないんだとボク、思うんスよ。

 若者の選挙離れとか活字離れとか言われてる以上に、皆、そういうのに目を向ける余裕がないんじゃないだろうか。まぁ、そもそもこういうコミュニティで癒しを求めに来てるオッサンたち相手に言う言葉じゃないのかもしれないけれど。

 

「ははは、手厳しいねぇはじめちゃん」

「そりゃボクまだ子供ッスから、ノブさん! 子供のうちに言えること言っておかないと。お腹すいたー! とか、悲しいー! とか、楽しいー! とか」

「まぁ僕らもオッサンだけど。でも、はじめちゃん、なんとなくだけど大人になってもそういう感じで、色々言ってくる気がするね」

「そうそう」

 

 ひたすら納得するバラっちとノブさん。

 んー、そうなんだろうか。実際問題、ボクはボクを伝えるために色々と頑張ってはみてるけど、それでもボクの考えや想いが、正しく相手と相互効果(インタラクティブ)としてやりとり出来ているかは疑問しかない。

 

 なんとなくだけど――――何かの歯車が一つ違えば、ボクだってこうして、自分を表現することを諦めて、精神的に引きこもっていてもおかしくはないんじゃないかと思ってる。

 

 だから、歯車があっているうちに、ボクは言えるだけのことを全部言い切ろうと思う。

 

 ノブさんとバラっちが番号交換を始めたり、丈さんの同僚さんたちがケンカっぽくしたりしてる中。なんとなーくびびびっと、女子力レーダー(?)が反応してちらりと見れば。さりげなくうつつちゃん、この間ボクがわたした折り紙、折ってるじゃないッスか! しかもカエルさん……、中々渋いというか、難易度高いところから攻めてきたッスねぇ。ひょっとして本、買ったり借りたりしたんだろうか。

 

 そしてボクが見てるってことに気付いたうつつちゃん、超かわいいッス! ハグして頬ずりしてもお釣りがくるくらい可愛いッス!

 

 そして、トンネル突入のサウンド。GALAXだと設定してると、電波が圏外になりうる場所にさしかかるとアラームが鳴るのだ。

 

 さーって、マイクを使ってどんな催しをしようかなーとか。

 そんなことを考え始めたあたりで、それは起こった。

  

 崩落、崩落事故! トンネルめっちゃヒビ入ってるッス。

 

 

「大丈夫ッスか――――っ!」

 

 

 気付けばもう猛然と走り出していた。

 車から投げ出されてるおじいちゃん発見! えっとこういう場合ってどうしたらいいんだっけ……、珍しく慌ててる思考に、自分でもびっくりしてる。とりあえず歩けるか、意識があるかを確認。足、ダメっすね。とりあえずヒトを呼んで――――。

 

 今回参加してた何人かも、看護師さんとかもいたのか総裁Xにメンションされたらしく動いてるッスけど、どうにもこうにも人手が足りないッス!

 暗いし、車見えないし、状況全然わっかんないッス!

 

 

「――――危ない!」

 

 

 

 そんな叫びを聞いた時点でもう遅い。電気消える、天井再度崩落。

 

 しかし見上げれば、巨大な電子情報の塊みたいな。

 液晶画面にブラウン管の素子を投影したみたいな、そんな独特な球体が眼前にあった。

 

 それはずんぐりとした体躯であり、全体として青いナニカであり。強いて言えば、ヒト型に分類することが出来る、巨大な怪物だった。

 

「なんすかアレ、なんスかアレ!」

 

 既にアムネジアエフェクトがかかってるとか先輩たちが話してるけど、なになに、これ、新手の宇宙人さんッスか!?

 

 そして、その中心に立つあれって……、ロード? LORD=GALAXッスか!? なんか風の噂で聞いたことがあるような容姿してるし。ってことはGALAXのお母さんじゃないッスか!

 って、あれ? お母さんとはいったけど、女の子にしてはなんというか、肩幅が案外がっちりしているような……?

 

 そして叫んだのは、プレイ、ザ……ゲイム? ゲイル? 風? 風ッスか? 風を願うか風で遊ぶか。言われた瞬間、宇宙人さん的な何かが、強風が吹いた雲みたいに散るあたり、確かに風ッスけど。

 

 いや――――スゲーっす! 何何、百人単位で現れたあの宇宙人さんたち、めっちゃヒト助けしてるじゃないッスか!

 

「新人」

「はじめッス!」

「ガッチャマンの力は使うなよ」

 

 ぶぅ。

 負けじとボクもはりきろうと思ってるところにこれというのが、なんというか、出足をくじかれた以上に先輩とボクの距離感が近づいてるようで、それはそれで良しとする。

 

 と、バラッちの絶叫。

 爆風、そしてそれに跳ね飛ばされた瓦礫。

 

 

 ボクも頭に一発、瓦礫を受けて転ばされたッス。脳震盪を起こさなかったのが幸運なのかなんなのか。お母さんに病院にいけと言われる前に、とりあえず検査くらいはした方がいいッスね。

 そんなことを考えられるのは、余裕が出来てるからじゃなくて焦りすぎて一周回ってしまってるだけだ。

 

 

「いたいッ……、っ、っ、」

 

 

 だけど、だけど。

 ええい、がっちゃ! 気合入れるッスよー。

 

「おい、新人……! 何考えてるっ!」

 

 なんせ、ボクはヒーローなんだから。

 ヒーローが泣いてちゃいけない。だって助ける側の顔が曇ってたら、みんな不安になっちゃうじゃないか。

 

「先輩――――気が付いたら身体が動いてるときって、ないッスか?」

 

 自然と、体は立ち上がる。 

 足は滅茶苦茶ふらついてるし、頭痛いし、涙も流れてるし。……視界の邪魔だからそっちはすぐ拭うけど。

 

「何言ってんだ、お前――――」

 

 口の中は鉄くさい。鼻の上もそんな感じで、ぬめぬめとした液体が流れてるけど。

 

「今ッスよ、今!」

 

 助けたい、と思ったら、誰だって助けるために身体が動く。

 誰の中にだって、そういう要素はあるはずだ。それが――――――。

 

 

 

 

「――――それが、ヒーローッスよ!」

 

 

 

 

 アムネジアエフェクト――。先輩の静止の声は、たぶんガッチャマンの正体がうんぬん以上に、ボクのことを心配してくれてるからだと思うけれど。

 だけど、もう、ボクはボクの足を止められない。それは、福島にコラージュを送ろうって決意したときみたいに。MESSぃちゃんたちと、正面から向き合おうと思った時のように。

 

 叫ぶ。光が身体を包んだら、もうボクはガッチャマンだ。

 

 心がどこへ向かうにしても、もう、どうにも止まらない。

 そして。

 

 

「――――ん? っ、まさか……!」

 

 

 

 ボクたちと累くんは、出会ったのだ。

 

 

 

 

 

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