一ノ瀬はじめの憂鬱   作:黒兎可

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卑屈太陽

 

 

 

 

 ボクの言葉が伝わる、伝わらない以前の問題として、直接行動を起こしたほうが早い場合もある。

 たとえば今のうつつちゃん。ボクらの情報がネットに回ってるのをみて、先輩同様あんまり良い感じはしていないらしい。それをささっととって、電源を落とす。

 

 ボクの行動に戸惑ってるうつつちゃん。所詮は知らないヒトだし、知ってるヒトもボクを直接見て判断すればいいのだ。何もおかしなことはない。こういった軽い気持ちが原因で追い詰められる人間もいないわけではないけど、それはつまり社会の敗北だ。

 社会が個人のかわいさを殺すようなことを起こすと言うのは、それだけでもう失敗でしかないのだ。

 

 だから、ボクらは別に堂々としていればいいのだ。堂々と。

 

「っ!」

「そんなことよりぃ、今日は楽しかったッスね! うつつちゃん!」

 

 また一緒にかくれんぼしようね、と。それだけ言って、ボクらは別れる。

 家に戻れば、部屋は締め切りっぱなし。少しアルコールくさいのはパイパイっすかね。いくら宇宙人ていったって、あんまり呑みすぎは身体に良くないんじゃないかと思うのだけれど……。

 

「先輩はまだしばらく帰ってこないとして、んー ……」

 

 そういえば。LOADくんについてだけど、少し仮説めいたものが浮かんでいた。

 先輩やパイパイ曰く、NOTEを持つ者同士はアムネジアエフェクトが効かない。

 

 J.Jは悪いガッチャマンさんとLOADくんとをからめて説明はしていないけれど、どうにもこのタイミングで両者の預言が混在するっていう今の状況に、何か、作為的なものを感じる。感じるけど、まだ情報不足かな……?

 とりあえず今日は考えるのを止めようかなーと。そんな風に思いながら部屋の内装にとりかかる。鼻歌。そして勢い、テンションが上がっていくごとに声がついて、ついつい変な歌詞を口ずさみはじめる。

 

 DIYのYはボク自身だったよ。どぅいっとゆあせるふ。

 

 と、あれ? うつつちゃんだ。どうしたんだろう。

 鍵についてはNOTEでどうにかなるのでそこは別に問題じゃないんだけど、さっき分かれたばかりでこの様子は珍しい気がする。

 

「はさみ、かして」

 

 なになに、うつつちゃんも同好の士になるッスか!? いいっすよいいっすよ~?

 

 Dさんのお使いで来たといううつつちゃんと、少しだけハサミを選ぶ。なんとなく包容力のあるおねえさん(オネエさん)だけど、体躯が大きいのと手がきれいだけど指すごく長いのを考慮して、大きめのハサミをいくつかチョイス。あとはうつつちゃんのセンスなら、Dさんも満足だろう。

 

 と、思っていたら。去り際、すごーく恥ずかしそうに、折り紙をボクに見せてくるうつつちゃん。

 こ、れ、は……! ついに、ついにうつつちゃんとの間の壁も突破しつつある感じッスか!? 先輩は異性っていう最大の壁があるからまだまだ先としても、これは、ボクとしては大きな進歩と言えるのではないだろうか。

 

 とりあえず引き入れて折り紙を一緒に折るのだけど、でも、なんとなーく。Dさんのやさしげな微笑が脳裏を過ぎったのは、きっときのせいじゃないかな。

 

「うつつちゃん、カエル、好きッスか?」

「そうでも、ない」

「でも、中々素人が折ろうって感じのチョイスじゃないッスよねぇ。かわいいけど」

「いちばん、最初のページにあったから」

「ほうほうほう。ふふーむ……、はいできたー! 親子!」

 

 カエルの上に小さいカエル。と。

 

「おたまじゃくしじゃないの?」

 

 うつつちゃんからこういうツッコミをもらったのが、もう、なによりうつつちゃんが心を開きつつあるってことすぎて、ボクとしてもテンション上がりっぱなしだった。これはうはうはだ。楽しくって楽しくって仕方がない。

 と、そんなことを思ってると。

 

 ふとテーブルのNOTEが開く。そして先輩の書きかけの文字が、乱雑に、急いでることがわかるようなノリで現れる。

 

「……うつつちゃん、いっしょに行くッスか?」

「…………」

 

 頷いてくれたので、一緒にエレベーターに。

 どういう理屈かはともかくとして、実はここからもCAGEには行けたりするのだ。

 

 そしてどうやら途中から通話モードに切り替えたらしい。文字が書かれるかんじでなく、ぼわぼわと、浮かんで消えるような。J.Jが預言するときのような描かれ方をするようになった。

 数秒とたたずにパイパイと言い争ってるのが聞こえてくる。

 

 LOADくん、丈さんが戦った悪い宇宙人さんと戦ってるらしい。しかもかなり劣勢。ぴかぴかちゃんたちもやられたとか。

 

「あの異星人って、悪いガッチャマンっすよね」

 

 変身した、と。恐れる声を出すパイパイだけど、まずは目で見る必要があると思ってせかしてはみる。

 ただよっぽどのことなのか、パイパイ、ボクの言葉も聞こえてないみたいだ。J.Jさま、J.Jさまって。よっぽど不安なのだろう。ボクもわかる。

 

 だけどそれに対する先輩の絶叫も、先輩が「かわいくなったから」こそ、自分のありたいような本性(ほんせい)を表現できるようになったからのものだ。

 

 あ、丈さんが変身したようだ。先輩、隙をみてLOADくん逃がすつもりみたいッス。

 

 それで大丈夫じゃないとパイパイが言うほどに、相手は、それだけ危ないということか。

 パイパイはとにかくJ.Jに言葉をもらいたい様子だけれど……。

  

 ――――白い翼を持つ鳥は決して迷い込んだのではない。心して次なる言を待て――――

 

 ふと、以前の預言が脳裏をよぎる。

 まさか、ボクにそこまで求めていたりするッスか? J.J。ボク、単なる女子高生ッスよ?

 まぁひとりだけGナンバーも百番台だし、ひょっとしたらボク、見出された役割が違ったりするのだろうか。

 

「だったら、諦めるッスか?」

 

 まぁお節介だとは思うけど、一応、それでも言っては見よう。パイパイは、ボクの言葉に押し黙る。

 確かに、決断するのが怖いというのはわかる。でも、もう決めないといけないのだ。決めなければ、丈さんは倒されてしまうだけかもしれない。でも、決めれば何か、ボクらにできる事があるかもしれない。

 覚悟とかなんて決めなくてもいいから、それでもまずは動きだそうと。まぁ、そんなことをおこがましいまでも口にしてみると。

 

 耳をNOTEにすます。

 

 丈さんの火が弱まり、先輩の絶叫が、痛いほどに聞こえる。

 

「……うつつちゃん、」

「ダメよ」

 

 と。これには珍しく、Dさんから待ったがかかった。思わず、ぶぅ、とかわいくない表情を浮かべてる自覚はある。このままだと丈さんも先輩もやられちゃうかもしれない。もはやそれは明白だというのはボク個人の考えだけど、そこは先輩たちの頑張りにちょっと期待しておくべく。

 うつつちゃんも変わろうとしている。嫌うだけだった自分の分裂の証しを、その能力を。それでも誰かを助けることができたから、できるのなら、それは貴いことなのだと。だから助けたいと。

 考えるより先に身体が動いているッス。

 

「うつつ……。ステキになったわね……。

 ――――――わかったわ。私が行く」

 

 それに、ついにパイパイが動いた。

 パイパイの声音は静かに怒っていた。それが何に対しての怒りなのか、まだボクは情報不足だ。

 

 ただ、やっぱりというべきか。DさんのNOTEの能力は、ボクらが想像できる桁の力ではないのかもしれない。

 

 

 そして、そんな鬱屈とした思考をぶっとばす、パイパイのバード・ゴー!

 なにあれ、めっちゃスゴいッス! スーツって言うかメカっすよメカ! あるいはロボ!

 

 変形して円筒の車輪みたいになったと思ったら、横方向のアーマーが外れて、例の謎空間にボクとうつつちゃんをご招待してくるし。あ、中は小さいままなんスね。

 

 

 しっかし、めっちゃ、はや!

 めっちゃ落下してるのに、ボクのら体感が浮いているせいもあってかめっちゃダメージ入らないッス!

 

 というか運転めっちゃ荒いッスねぇ。ビールとかつまみの趣味をみたときから思ってたッスけど、パイパイって結構、ヤンチャしてた過去があるオッサンとかみたいなものなのだろうか。

 

 

「うつうつする……!」

「めっちゃ速いッスねぇ、うつつちゃん!」

 

「舌、噛むなよ! このまま一気に追いついて、ヤツを、倒す……っ、倒す? 倒……」

 

 パイパイ?

 なんかぶつぶつと、言いながら段々尻込みしてきてる感じッスか?

 

 そして、まさかの。到着直後、ボクらを放り出して「すまんーーーー!」といって逃走。

 

 ええぇ……。

 まあ、いいや。そういうのも「かわいい」のだ。ボクらからしてどうこうということではなく、怖い、というのも本性の一つに違いはないんだから。かわいくなければ嘘だ。思考、切り替えよう。

 

 

 と思って見ると、血まみれの丈さんと――――って、何をしてくれとるんですかあのもじゃもじゃハイヒイイイイイイイイイイルッ!!!!!!!!!!!

 

「寝顔カワユスゥ……」

 

 それには同感だが、ちょっと、何をしようとしてくれとるんスかアンタ! 何ひっくり返して、先輩持ち上げて顔近づけとるからに――――――!

 眼前の光景に、ボクもまあ色々混乱しているんだろう。

 

 

「この、ヘンタぁイ!」

 

 

 全力回転回し蹴り。って、あれ?

 足が空を切り、妙な長身を蹴り飛ばす感触はなかった。

 

「能力ッスかねぇ」

 

 まぁガッチャマンには違いないのだから、なんかしらのそういうパワーとかももっていておかしくはないんだろうけど。

 ちなみに最近気付いたボクの能力。NOTEを使って具現化した例の文房具系のアイテムを使って、色々なものを自由な形にコーディネイトすることが出来たりする。ちょっと使いどころが広すぎて、逆にどうしたものかっていうのが現在の心境でもあったりした。

 

「がんばって…………、がんばって…………!」

 

 うつつちゃんが、ボロボロの丈さんに手を当てている。あれは、確か花を元気にしたほうの手ッスねぇ。

 ふわっとした説明だと、生命エネルギーとか、そういう感じのものをやり取りするような能力なのかな、うつつちゃん。それがどうして分身に繋がるかまではわかんないけど。

 

「――ガンバッテwwww、ガンバッテwwww!」

 

 と、なんか微妙に似てないモノマネみたいな声が聞こえる。

 

 

 

 思えば、これが。こんなのでいいのかっていうようなくらの、ボクと、カッツェさんとの(はつ)対面でもあった。

 

 

 

 声は、目の前から聞こえる。背の高さは、ボクと同じくらい。

 なのに、なにも、ない。

 

「ぬおぁ?」

 

 いないっすかねぇ、とか思いながら前進。アムネジアエフェクトだったら接触すればそこに居るって言うのがわかるから、と。そもそものアムネジアエフェクトの基本設定(NOTEを持ってると通用しない)というのをかなぐり捨てて、見えない相手の実在について考える。

 考えながら、手を伸ばしたりして、前進。

 

「あのー、こんにちわッス! ボク、はじめッス! ガッチャマンっす!」

 

 とりあえず初対面なのだ。挨拶は大事。

 名前を教えてもらってもいいかと問うと、まるで山びこみたいに、すぐさま返答があった。

 

「カッツェっす! ベルク・カッツェっす!」

 

 なんかこう、ちゃらちゃらしたアルバイトのコンビニ店員みたいな声っすね。という感想は偏見だろうか。いけないいけない。これは「かわいくない」。

 

「なんで出てきてくれないッスか?」 

「え。見えないんスか? ここに居るッスけどぉ!」

 

 ここにいるのに、見えない。ん、んん?

 意図してカッツェさんは、ボクの前から姿を消しているわけでもないということだろうか。いきなりちょっとした難問にぶちあたった気分だ。

 

 だったらこれについては聞いてもわからないだろう。バグか何かということで、いったん、重要度を下げる。

 

「あの、いっこ聞きたいことあるんスけどぉ」

「なんスか?」

「真っ赤に燃え上がる、って何ッスか?」

 

 それと、あ、二個あった。要するに、カッツエさんのクエッションについて聞いたのだ。

 

「どう思うんスか? 逆にぃ」

 

 もしかして、と前置きはするけど。ボクら人間のせいで何かが起こるということかと。Gメンバーの誰しも、そこまでそこまで考えてるかは分からないけど。少なくともこの宇宙人さん相手にそれを正面から聞いたのは、たぶんボクが最初だ。

 そして、それに対する回答は。

 

「ってか、もう起こってるッスー!」

 

 それについては、うすうす感づいていた。

 

 この、ベルクカッツェがいうところ「ボクらのせい」というのが。彼が何かをした結果ということでなく、本当は、もっと別な意味を秘めているとしたら――――。そこまでの輪郭は出てこないけれど。でも、少なくとも「ボクら」に責任を集約させている以上は、相手がノータッチであるかもしれないと。そこまで考えをめぐらせてもおかしくないかもしれない。

 

「君、いいねぇ。ちゃんとミーの言葉、考えてくれたんスねー!」

「ずっと気になってたんスよ。だって、もしそれが本当だったら、かなりヤバいじゃないッスか」

 

 それこそ宇宙人関係なしに、人類が終わってしまう。

 

「お、そうそう。やるねキミぃ。ガッチャマンのくせに。

 そうなんスよ! ヤバいんスよ、地球!」

 

 何がヤバいのか。ガッチャマンのくせに、という一言に集約されているのは、たぶん、本来、他のガッチャマンだったら気付けないだろう何かが原因ということか。

 そして、やっぱり、よりにもよって地球規模ときたか。

 

「――――クイズ! ”星が一番、きれいに輝くときは?”」

 

 朝、五時ごろ! と。ボクの本心を返答してみると、相手はまた、真逆の答えを返してきた。

 

「ぶぶー! 答えは、”滅びるとき”」

 

 嗚呼、ダメだと。ボクはこのとき、少し――――いや、とてつもなく恐怖した。

 

 わかりあえない。

 わかりあえないと、一瞬でも思わされてしまったことと。思ってしまった自分に恐怖した。

 表情にこそ決して出すつもりはないけれど。どうしたらいいんだろうと。ふと、そんなことを思ってしまった。

 

 相手は逆に、ボクのことが気にいったらしい。それが果たして何を理由にしたところか……。まぁ、なぞなぞにつきあって、きちんと考えたからってことなんだろうけど。

 

 そっか。何が怖いのかがわかった。

 

 この相手は、たぶん、ボクに近いのだ。

 

「――――”どんな人間も大好きな、めっちゃくちゃ甘くておいしいものってなーんだ!”」

 

 おそらくそのなぞなぞが、ボクの本題に対する一つの答えなのだろう。

 考えといてね、といって、カッツェさんは帰るモーションに入った(ような気がする)。

 

「あ、最後に一つ!」

 

 一応、聞けば山びこのように返答があるところとか。まぁ、これは半分おちょくってるっていうのもあるんだろうけど。

 

「カッツエさん、今、楽しいッスか?」

「超・メシウマ!」

 

 気分は楽しい。なのに。

 

「お腹、いっぱいッスか?」

「んん~、まだまだッスねぇ」

 

 楽しくしてても、悲しくなる。

 

 誰かの承認が。共有が欲しい。

 相手もまた、ボクと同じで、その根底的な理解が、どこからもないってことなんだろう。

 

 なのに、どうしてこう、全くボクと違う結論に、たどり着いているのか。

 

 それが怖い。――――ボクと同じなのに。同じなのにまるでボクら、一人ぼっちみたいで、淋しい。

 

 

 

 珍しく弱音を吐いたボクに、手をにぎり、うつつちゃんは笑った。

 ……そうッスよね。一人ぼっちだけれど、淋しくはないッスかね。

 

 そんなことを思いながら、やっぱり先輩の寝顔かわいいなぁとか、ぱっちり目を開けるまでじっと見ていた。

 

 

 

   ※

 

 

 

「お前……、こんな時間にそれって、太るぞ?」

「大丈夫ッスよ! ボクは大体、おっぱいに行く体質みたいッスから」

「お……、っ!!?」

 

 げほげほと咽る先輩。うつつっちゃんのお陰で回復し、とりあえず家に帰るくらいの体力は回復していたけど。とりあえず休みとなった連休最終日(不幸なコトに例の事故で計画そのものが丸潰れになっちゃった)、そこはしっかり体力を回復してもらいたい。

 まぁ、そんな先輩を「部屋を汚すのも悪いから」って理由で自分の部屋まで歩かせたボクのいう台詞ではないのかもしれないけど。

 

 パイパイはまだ戻ってきてない。合わせる顔がないのだろう。ただ先輩も、流石に今日一日くらいは時間をあけないと、気持ちに整理がつかないかもしれない。

 

 先輩が昨夜のことを話す。LOADくんから聞いた話をまとめると。つまり、あのびかびかちゃん――――CROWDSは、カッツェさんが作りだしたNOTEから得られる力であるらしい。

 ということは、LOADくんもまたNOTEを持っていたということで、一応の説明はついてしまった。おまけに……んー、とすると、さしずめLOADくんの能力は、心とか、電子とかに関わる力ってことッスかね。

 ぽい、といえば、ぽい。

 

 ガッチャマンではないにしろ、ガッチャマンのなりそこないのような力を振るう。振るいながら、その在り方が本人の望んだ方向性からはずれていってしまっている。

 

 壊れてる、と確かに表現できなくもないのかなぁ。ただ、力の出身が別であれなんであれ、所詮は道具、ツールの一つでしかないとボクは思う。

 

「あいつ……、LOAD、というか、累ってやつは、怪しいやつじゃないと思う」

「ん! そう感じたんスね、実際話してみて!」

 

 やっぱり先輩は、自分で見て聞いてってスタンスだったみたいッスね! ずーっと、正義の味方らしく「こういうものだ!」っていう真っ直ぐなレールばっかりに乗っかっていたのが、ちゃんと「かわいく」周りに目を向け始めてるみたいで、うん!

 

 なんとなく、ボクの成果な気もして誇らしいのは、果たしてボクの傲慢かなにかだろうか。

 

「っていうかお前、なんでそんな甘いものばっかり」

 

 結局、コンビニで帰り際に買ってきた。

 とりあえずカッツェさんの謎謎について考えるっていうのと、あとは、この胸の孤独感を紛らわせるため。なんだかんだ言いながらボクとて人間なので、甘いものを食べると、安心感のようなものは感じないわけではないのだ。

 

 と? お、ちょうどみたいッスね。

 立ち上がり部屋を出て、リビングのブラインドを開ける。

 

 暗い部屋に差し込む光に目を細めて。

 

 

「きれいッスねぇ」

「……ああ」

「うん。やっぱ、キレイっすよねぇ」

 

 天気は、快晴。

 世界が明るくなりはじめるこの時間が、ボクは大好きだ。なにかわからないまでも、すんごいことがはじまりそうな予感がして。

 きっとこれから、もっともっと自由な何かが始まるんじゃないかっていう、未知の期待があって――――。

 

 

 

 

 

 でもふと。

 こんなに楽しいのに、悲しくなるのは何故なんだろう。

 

 

 

 

 




きっとそれは、何かを知って、何かを無くしてしまったから――――――。
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