「美味い…………味のない粥だが美味い…………」
「……………………」
「なんかデジャヴを感じる…………」
君が言ったことそのまんまだよ、と言いたそうな顔をしているコナミ君(仮)。
一誠はコナミ君(仮)の方を向かないので気づいていない。
なお、彼女の名前はゼノヴィアと言う。粥を食べる前に名乗るあたり律儀である。
「…………すまない、倒れたところを助けてくれた上に飯までご馳走になるとは」
「いや、謝ることないって。俺も似たような状況になったことあるから」
「なんだと…………君も道端で倒れたことがあるのか?」
なんか同情というより共感がある空気の中、コナミ君(仮)は一人で風呂に入ることにした。
20分ほど入って上がってきたらカオスな場面になっていた。
「クックックッ…………ドローフェイス時に『Sin World』の効果発動!デッキから『Sin』モンスターを3枚選び、その中からランダムに一枚選べ!」
「むむむ…………うっし、これだ!」
「貴様が選んだカードは『Sin レインボー・ドラゴン』!残り二枚はデッキに戻しシャッフル、スタンバイからメインフェイズ!デッキから『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』を除外して現れよ『Sin レインボー・ドラゴン』!」
「また上級モンスターかよ!?しかも今度は攻撃力4000だと!?」
「バトルフェイズに移行!ゆけ、『Sin レインボー・ドラゴン』!『ジャンク・ウォリアー』に攻撃!」
「甘いな、リバースカードオープン!『くず鉄のかかし』!その攻撃を無効にするぜ!」
「『屑鉄のかかし』だと!何度も伏せられるとは厄介だな…………カードを1枚伏せてターンエンド!」
「攻撃力4000をどう倒すか…………俺のターン、ドロー!」
机の上でデュエルしていた。もうデッキコンセプトも一発で分かった。
どうしてデッキを持ってるかは聞かない、どうせカードを拾っていったらデッキができたと言うのはわかりきっている。何故なら前例があるからだ。
ゼノヴィアはラスボスみたいな悪い笑みを浮かべ、一誠はそれに挑む戦士の顔をしている。
流石にモンスターは実体化していない。だが敢えて言おう、この状況まるで意味がわからんぞ。
ふとゼノヴィアのフィールドを見てみると、フィールド魔法とモンスターはさっき言ったから知っていたが墓地に『Sin レッドアイズ・ドラゴン』、除外してあるカードに『真紅眼の黒竜』があった。
ゼノヴィアは超レアカードを大量に所持していることは明らかだった。それらを拾ってくるなら時械神カードを拾ってきてほしいものだとコナミ君(仮)は思った。
二人はデュエルに夢中で戻ってきたコナミ君(仮)には気づいてないが、コナミ君(仮)は偶然はこうも重なるのかと思っていた。
時械神を使用している自分、デッキは違うがアンチノミーと名乗る一誠、そして『Sin』モンスターを操るゼノヴィアと着実に未来組が揃ってきている。
コカビエル出撃の時に一度見た彼女は真面目で信仰心はあったが、宗教的な『
そもそも教会に仕えていたのなら何故こんなところで行き倒れていたのだろうか?
だが、楽しくデュエルしてる二人の邪魔をしてはいけない。白熱している二人の戦いを静かに眺めるのだった。
〜●〜●〜●〜●〜
「手札から速攻魔法『シューティング・ソニック』を発動!ダメージステップ時に『スターダスト・ドラゴン』で攻撃した『Sin サイバーエンド・ドラゴン』をダメージステップ開始時にデッキに戻す!」
「なにっ!『Sin』モンスターはフィールドに一枚しか存在できないのを逆手に!」
「止めだ、ゆけ!『ドリル・ウォリアー』でダイレクトアタック!」
「くっ、私の負けだ…………」
「初めてのデュエルでここまで出来るとはやるじゃねえか!」
「いや、ここまでやれたのはカードが強かったからだ。戦術も君には劣るよ」
「いやいや、俺だって練習したからあそこまでやれたんだ。練習して調整すればもっと強くなれるからそう低く見ることないぜ!」
結果は一誠の勝ちで終わった。二人ともそこにモンスターがいるかのように白熱していい勝負だった。
コナミ君(仮)から言わして貰えば「お前『スターダスト・ドラゴン』をいつ手に入れたんだ」くらいしかなかった。
ゼノヴィアのデッキも悪くなく、『トレード・イン』や『アドバンス・ドロー』などのドローソースは欠けておらず常に高打点モンスターを立てて一誠を苦しめた。
二人ともいい顔をしていた。何処ぞの貶めるデッキしか頭になかった奴とは違う。
そろそろ本題に入ろうとコナミ君(仮)は話をする。もちろん何故ゼノヴィアが教会から追放されたかだ。
…………話は酷かった。聖書の神とやらの死を知ってしまったが故に電話で問い詰めると破門、もちろん行くあてもなく、ましてや悪魔に頼ることなどできなかった。
今までギリギリ手持ちで凌いだものの資金が尽きて家の前で倒れていた、という事だ。
一誠はブチ切れた。
「なんで簡単に捨てられるんだよ!信じてた神が死んでたってのは色々ヤバいんだろうけど、それを隠してたやつに聞くだけで追放とかふざけてやがる!」
「仕方ないことなんだ…………神の不在を知れば他勢力に攻め込まれる可能性があった、私がデュランダル使いと分かっていても切り捨ててリスクを減らしたかったんだろうな」
「何だよその理由…………!」
「……………………」
激情と静かな苛立ちを募らせる二人に対してゼノヴィアは諦めに近い反応だった。
「今思えば悪魔になったアーシア・アルジェントの件も疑うべきだった。聖女と呼ばれた彼女は優しさ故に悪魔を癒し過ちを犯したが、償える範囲内だった。彼女には悪いことをした…………」
「……………………」
「た、多分その人も気にしてないって!だから落ち込むなよ」
その元聖女に心当たりはあった。転生者を轢いてライフを0にしたが、それを蘇生していたのが彼女だ。
…………彼女がいる限りあいつらを倒せないのではと思い始めてきたコナミ君(仮)であった。
結局、デュエリストになった彼女を放置するのはいけないので居候という形で滞在することになった。パスポート?期限?そんなもの知ったことではない。
このまま駒王街に住みながら害獣退治の日々が続く…………筈だった。
「……………………」
「え、それマジで言ってるのか?あんたが夏休みに入るとはいえ俺たちまで?」
「……………………」
「旅行か…………チケットや宿はどうするんだ?一誠はともかく、日本に戸籍のない私は外国人で下手したら怪しまれるぞ?」
「……………………(既に二人分の戸籍は作っておいたのさ、という顔をしている)」
「仕事が早い!?お前本当に何者なんだ…………」
「……………………」
「ありがとう、というか男二人に女一人って大丈夫なのか?」
「私は気にしないぞ?たまに男と間違われる」
「そういう問題じゃ…………本人が気にしてないならいいか」
「……………………」
デュエリスト達、夏休みに旅行に行く。
『Sin』とは、宗教や道徳上の罪、罪悪を意味する英単語で、法律上の罪を意味する「クライム(crime)」とはその性質を異にする。遊戯王wikiより抜粋
地味に当たってる上に本人の象徴(?)である聖騎士ではなく『Sin』が当たるとは…………
コナミ君(仮)の予想外の提案により彼らは旅行に行く。殺伐とした生活の癒しを得るため京都を満喫する。裏で妖怪が跋扈する土地だが悪戯程度で逆に楽しんでいく。だが、彼らに悪事を企む予想外の人物と再会する。
次回、『デュエリストと旅行』
和はいいものだ byゼノヴィア デュエルスタンバイ。