オベリスクは必要ない!   作:蓮太郎

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デュエリストは街を歩く

 完全に学校をサボる日々が続き、たまに呼び出しを受けるものの成績だけは優秀なため黙認されているコナミ君(仮)。

 

 この日も珍しく家に帰ったため昼起きという不養生をしてしまったために学校には行かず街を歩いていた。

 

 こんな日は珍しく無い。いつもの赤い帽子を被ってカードショップを転々と移動しているだけである。欲しいカードが高くて手が出せないのはいつものこと。

 

 当然ながら、そのカードゲームのデッキも持ち歩いており何かイベントがあれば参加する、日中はほとんどそう過ごしていた。

 

 気づけばもう夕方、食事をとろうと彼は居座っていたカードショップから出て行く。なお、あるカードゲームの対戦を挑まれて6戦5勝1敗だったりする。

 

「はい、これ宜しくお願いします」

 

 なんか一枚の紙を渡された。ティッシュ配りみたいな感覚でとったように見えるが実際はほぼ無理矢理渡されたようなものだった。

 

 コナミ君(仮)はそもそも(多分女性だと思うが)配ってる人にすら入れていない。

 

 その紙を見てみると魔法陣のようなのが書かれていて、『あなたの願いを叶えます』と上に書かれてあった。

 

 帰る前に捨てよう、彼は心に決めた。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 日が暮れて辺りは薄暗くなってきている時に某ハンバーガーチェーン店での食事を終え、再び街に出歩いた。魔法陣の書かれた紙はその店で捨てた。

 

「……………………」

 

 昼間の賑わいとは違い、早めの会社帰りのサラリーマンや少し遅くまで外にいる学生の姿がある。

 

 中にはデートしている者も…………

 

 当然ながら彼は誰かのデートなんかに興味が無い。この時間帯からもしもに備えて公園に向かう。狙われていたとしたら今の時間帯は公園が1番人気が少ないからだ。

 

 公園に着いたものの、何か違和感を覚える。まさか中でよろしくないことが…………?

 

 嫌な予感がして早足に中に入って行く。この程度の違和感で押し出されるコナミ君(仮)ではない。

 

 ズカズカと進んで見つけた、否、見つけてしまった。

 

 血の海に沈む少年と少女の姿をしているが背中から黒い羽が生えてる人外を。

 

 ーーサーチアンドデストロイーーそれが頭に浮かんだ。

 

「あら、人避けしておいた筈なのに…………不幸な人ね、見たからには殺さないと」

 

「……………………」

 

「あら、怖くて声も出ない?まあそうね、それじゃあ死んで」

 

 一般人に向けての死刑宣告をし、光の槍をコナミ君(仮)に向けて放った。だが、その死刑宣告は覆る。

 

 紙一重だがコナミ君(仮)は光の槍を避けた。そもそも彼にとって光の槍は何百回も見たことがあり、軌道も甘かったということもあって紙一重で避けた。

 

 第一、デュエル中ならモンスターが守ってくれるのだが緊急時だと自力で避けるしか無いので回避する力だけは一級品になっていたのは余談である。

 

「なっ!まぐれで避けるんじゃないわよ!」

 

 叫ぶ人外に対してコナミ君(仮)はチラリと血の海に沈んでいる少年を見る。

 

 レッドポーションなどの回復カードがあればいいのだが、生憎デッキには入っていない。

 

 唯一回復(正確には回復ではないが)できるのは『時械神サディオン』のみだが、コナミ君(仮)のライフが神からのオマケその2みたいに8000と馬鹿みたいな耐久力になっている上に他人の回復はできないので出番が全くない。

 

 少年はもう助からないと決めつけ、デュエルディスクを出し改めて人外の方を向く。

 

「何よその板…………まさか神器使い!?」

 

「…………おい、デュエルしろよ」

 

 驚愕する人外をよそにコナミ君(仮)は言いデッキからカードを5枚ドローしようとした時だった。

 

「この魔法陣と魔力、まさかグレモリー!もう、最悪よ!」

 

「……………………!」

 

 少年のポケットが光り何かの魔法陣が地面に映し出された。コナミ君(仮)はその魔法陣に見覚えがあり、人外は魔法陣と魔力に覚えがあった。

 

 誰かが出てきそうと分かった瞬間に人外は空を羽ばたいて逃げ出した。逃げられたらデュエル開始することは出来ないし、何よりコナミ君(仮)は飛べない。

 

 多分、堕天使の人外は逃げたが彼は警戒を解かない。魔法陣というだけで何かしら悪い予感がするのだ。

 

「もうこんな状況になってるのね、あら、貴方どこかで…………」

 

 少年を一瞥した後にコナミ君(仮)を見る赤髪の女性はコナミ君(仮)に見覚えがあるらしいが、本人は全く覚えがない。

 

 それもそのはず、魔法陣が書かれたビラ配りの人がこの女性だったことはコナミ君(仮)は知らないのだから。

 

「貴方何者?ここにいるってことはこちら側の人間でいいのかしら?」

 

「……………………」

 

「黙りね…………赤い帽子に赤い服…………まさか、貴方が決闘者(デュエリスト)?」

 

 どうやら彼の噂はかなり浸透しているらしい。見ず知らずに帽子と服だけでバレるとは困ったものだ、とコナミ君(仮)は思った。

 

 デュエルディスクを構えたままだが、彼女に戦う気がないのは分かった。

 

 それに、ここで立ち去ったら遺体処理をしてくれるんじゃないかと邪な考えをしていた。だってコナミ君(仮)は人間だから簡単に遺体処理は出来ない。

 

 なぜ遺体と言い切れるか?デュエルディスクには相手のライフポイントを測る機能があり、少年のライフが0になっているからだ。

 

「……………………」

 

「あ、貴方、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 待つもんか、と彼は思いつつ振り返って立ち去った。よくよく考えたら悪魔って地域を管理している立場にあると聞く。

 

 なんで簡単にはぐれ悪魔とか堕天使とか縄張りに入ってきてるの?そう言いたくなったが空気が悪くなりそうなので黙っておく。

 

 この後は何も考えずに家に帰り眠ることにしたコナミ君(仮)。翌日は久々に学校に行こうと決めたのであった。




特殊ルール4・フィールドについて、この作品ではマスタールール4を適応しています。元々時械神デッキはそこまでEXゾーンからモンスターを出さないので主人公は気にしていません。

特殊ルール5・降参(サレンダー)について、普通の決闘ならライフが0になるか降参するかで勝敗が決まり、降参した場合は例外がない限り少ない傷で生き残る。ただし、デュエル中に逃走することは謎の結界が張られているため不可能(本人すら原理は知らない)。今回の場合はデュエルが始まる前に人外(レイナーレ)が逃げたためシステムが成立しなかった。


不備があれば逐一修正します。

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