オベリスクは必要ない!   作:蓮太郎

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 奴が来るぞ…………!


デュエリストと怒り

 神とは、信仰の対象として尊崇・畏怖  されるものである。信仰だと一神教や多神教に分かれ、そこからさらに分かれるので割愛する。

 

 ここにいるロキは悪神と呼ばれてるだけあり畏怖される存在だろう。だが、それだけだ。

 

 畏怖される程度に働き娯楽を楽しむという点では間違いなく神である。無作為に大きな被害を与えるようなことはしない。

 

 基本的に自身の戦いに相手から頭を突っ込まない限り巻き込むことは無い。

 

 相手が周りを見ることさえしなければ。

 

「多少の消耗があることが残念だが中々楽しめるな!」

 

「白龍皇!俺の邪魔をするな!」

 

「オォォォンッ!」

 

「うおっとぉ!あぶねーあぶねー、あれ食らったら即死なのは勘弁してほしいぜぃ」

 

「美猴、もう少し小回りを利かせろ。大振りすぎて俺にあたりかねない」

 

 一誠達を見逃そうとしたロキに白龍皇、闘戦勝仏の末裔である美猴、騎士王の子孫であるアーサーが襲いかかってきた。

 

 相手の面子が厄介ではあったがロキはすぐに対処する事に成功する。

 

 しかし、一誠とゼノヴィアは違った。常に戦いに身を置いていない上に疲弊していることもあり戦いの余波に巻き込まれてしまった。

 

 主に白龍皇が放つ魔力弾をロキが逸らしたため彼らの近くに着弾、意識を刈り取られてしまう。

 

 死んではいないものの、ぐったりして動かない彼らをロキは何とかしてやりたかったがヴァーリ達の対処で手一杯だった。

 

 ロキほどならそれくらい造作も無いことだろう、と言いたいだろうが余計に巻き込む可能性があるため手を出せない。

 

 恐らく彼らとの戦いもクソジジイことオーディンが何か言って誑かして巻き込んだのだろう。

 

 それを含めて1発は殴らないといけない。

 

 フェンリルも鬱陶しそうに猿や白龍皇を叩き落そうとしているが中々素早く当たらない。しかし向こうもろくにダメージを与えられないので余計に面倒になっていた。

 

 これ以上戦えば負けることは無いがあの二人は死ぬだろう。

 

 『決闘者(デュエリスト)』が現れなかったら、の話だが

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 よく分からない結界がある所まで来たコナミ君(仮)。かれこれ一時間ほど走り続けてようやくたどり着いた。

 

 これくらいの距離を一瞬で転移させる魔法ってヤバイと認識した。そもそも不本意とはいえ世界を跨いで転移したことあるコナミ君(仮)が言うことでは無いが。

 

 コナミ君(仮)だけで結界を突破することはできない。ここからデュエルスタートする。

 

 5枚ドロー、一番欲しいのは魔法罠を手札に戻し、永続効果を剥ぎ取らせる効果を持つ『時械神ザフィオン』だが残念ながら手札に来なかった。

 

 とりあえず『覇王眷龍ダークヴルム』をPゾーンに置いてデッキから『覇王門 無限』をもう片方のPゾーンにセット。

 

 半透明になっているものの覇王眷龍はコナミ君(仮)に擦り寄る。ちゃんと撫でてあげるあたり友好な関係を築いているようだ。

 

 覇王眷龍が擬人化しないことだけを祈っておくとだけ記す。

 

 何も出さずターンエンド、ここから3分待たなければならないのが腹立たしい。相手がそこにいるならすぐターンが回ってくる可能性があるが、ここはしっかり待たなければならない。

 

「……………………」

 

 3分が経った。ドローする。

 

「……………………」

 

 そしてそのままターンエンド。今必要なのは『オベリスクの巨神兵』ではない。

 

 さらっと究極時械神を除くOCG化された時械神のうちサディオン以外が手札に来ているというある意味事故を起こしているが、この状況だとPゾーンが破壊されない限りいい手札と言える。なお、三枚を出したら巨大ロボが出てくる。

 

 とにかくザフィオンが来るまで待つのみ。そうして4回目のドローフェイズになった。サーチ手段が乏しいので仕方ない。

 

「『時械神ザフィオン』を召喚」

 

 時械神ザフィオン・効果モンスター

 星10/水属性/天使族/攻 0/守 0

 このカードはデッキから特殊召喚できない。

 (1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

 (2):このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 (3):このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動する。相手フィールドの魔法・罠カードを全てデッキに戻す。

 (4):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

 (5):自分スタンバイフェイズに発動する。このカードを持ち主のデッキに戻す。

 

 このカードにかかれば魔法なんてなんのその、攻撃を無効にされなかったらOKだ。

 

「『時械神ザフィオン』で攻撃」

 

 手に水の渦を発生させ結界に向けて放つといとも簡単に結界が消えていった。

 

「……………………」

 

 そのままターンエンドして走り出す。

 

 嫌な予感が収まらない、あの二人に何かなければいいのだが、と思いつつようやく中心部に到達した。

 

 その様子を見て、煮え滾るような何かが体の底から溢れ出てくる。

 

 いつの間に得たのかは知らないが確実にエースである『シューティング・スター・ドラゴン』と『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』が主人を守っていて、例の敵らしき人物と会談の時に戦った白龍皇とそのお供が戦っていて…………

 

 龍に守られている二人はボロボロだった。

 

決闘者(デュエリスト)!ふふ、やはり来たか」

 

「あいつが決闘者(デュエリスト)…………待て、なぜ人間が、あんな奴が!?」

 

「おおっ?おおおっ!?ヴァーリ!なんかヤバイ、ズラかろうぜぃっ!」

 

 コナミ君(仮)からひしひしと伝わる神の気配にロキと美猴は恐れるが、ヴァーリは鎧の下で笑っていた。戦闘狂はやはり狂っている。

 

 だが、それでもだ、アレを見てまともに戦おうなどと思わなくなったと後に語る。

 

「…………俺のターン、ドロー」

 

 いつもより低いトーン、そして半透明の覇王眷龍と覇王門が輝き始める。

 

「裁きだ、怒りを思い知れ!大地を砕け鉄槌よ!ペンデュラム召喚!」

 

「前のようにエクシーズ召喚とやらか?」

 

 時械神とあの時の超弩級砲塔列車を知るヴァーリはまだ手を出さない。時械神は攻撃と効果を受け付けないことを知っているからだ。

 

「現われよ、『時械神ラツィオン』、『時械神サディオン』、『時械神カミオン』、『時械神ザフィオン』、『時械神メタイオン』!」

 

 まさかの時械神が5体も並んだ事に驚きを隠せない一同。なお意識を取り戻した一誠とゼノヴィアはこれらのカードを知っていた。

 

 伏せカードが無い為ほぼ無限ループは行われないが立ちはだかるだけでも絶望的といえる。

 

 だが、何故一気に出したのか一誠達は理解できなかった。

 

「なぁ、時械神って最終的に全部デッキに戻るんじゃ…………」

 

「彼が無駄な事をするはずがない、だが、一体何を考えている?」

 

 エクシーズでも戻されるためほぼ無意味とも言える事を知る二人は分からなかった。

 

「機械の神だと!?何故人間がそのようなものを持っている!何故、いや、何を呼び出そうとしている!?」

 

 ロキですら混乱し、フェンリルは怯えている。だが、これは時械神を見て怯えている訳ではない。

 

「なんだ、何をしようというのだ…………っ!?まさか神を降臨させようというのか!世界に存在しない、人間だけの新たな神を!?」

 

「新たな神、だと?」

 

 しっくりきていない白龍皇だがロキは理解してしまった。コナミ君(仮)が手に持っているある一枚のカードを。

 

「そして、三体の時械神を生贄に捧げる !」

 

 機械仕掛けの神が三体、舞うように光の粒子になっていく。何かを降臨させるように。

 

 

 

〜推奨BGM・神の怒りRe-arranged :type one〜

 

 

 

 空気が揺れる、大地が割れる、時械神が光となり消える。

 

「何が、起こるんだ…………?」

 

 大地の割れ目を吹き飛ばすように、火山が噴火するように巨人が現れた。

 

 ロキの知っている巨人ではない。青く悪魔のような、そしてロキを遥かに上回る神性を放つ巨人など聞いた事もない。

 

「な、ぁ…………」

 

 絶句、まさにこれが当てはまるだろう。この場にいるこの神を召喚した者以外言葉が出なかった、いや、息をすることすら困難になっていた。

 

 それほどまでに圧倒的な存在であることが分かる。本能から震えが止まらなくなる。

 

 勝てない、いくら戦闘狂だろうが神滅具を持っていようが圧倒的力に恐怖を覚えざるを得なかった。

 

「…………効果発動、残った時械神を生贄に捧げ攻撃力を上昇させる」

 

 オベリスクの両隣にいた2体の時械神が光の粒子となりオベリスクの腕にまとう。

 

 それと同時に攻撃力の上昇が始まる。

 

「何を、何をしようとするのだ貴様あああああっ!!」

 

 魔法を放つもまるで効かない、神を殺す我が子は怯えて動けない、戦闘勝仏の子孫、そしてある者の子孫であるヴァーリですら動けない。

 

 それでも、たかがその程度(・・・・・・・)で止まるはずもない。

 

 オベリスクの攻撃力4000→→→→→∞

 

「バトルフェイズ。オベリスクよ、敵を粉砕しろ!」

 

 攻撃宣言と同時に神が力の宿った腕で殴ろうとするために後ろに引く。

 

 即座に逃げようとしても体が動かない。受けたら即死ということを理解しているのに、動けない。

 

「ゴット・ハンド・クラッシャー!」

 

 それはまさに神の怒り、裁きの鉄拳そのもの。

 

 振り下ろされた拳を中心に大きな爆発が起きた。地震が発生したのかと思わせるほど、大地と空気が揺れた。

 

「……………………」

 

 間違いなく手応えはあった。だが、仕留めたという感触はない。

 

 恐らく攻撃はロキだけ辛うじて外れた、しかし爆風などのダメージでフェンリルが盾になろうが満身創痍になっているのは確実だ。

 

「がっ…………ごぶっ…………」

 

「ォ……グォ……」

 

 胴体を大きく抉られたフェンリルと瀕死のロキが煙から露わになった。

 

 白龍皇達は消滅したか逃げたのかは不明だが姿は見えなくなっていた。

 

「あの神の……神滅具では……ない……あれは……なんなの、だ……」

 

 うわ言のように呟くロキはもう持たないだろうと放置、一誠達の元に駆け寄る。

 

「……………………」

 

「…………俺は、大丈夫だ」

 

「……………………」

 

「そう、だな、ああ…………ごめん」

 

 何に謝ったのかコナミ君(仮)は分からなかった。やるべき事をしたまでと思っていたから、相手も何かを守ろうとしていたという事は怒っていた彼に届かなかったから。

 

 この日、世界に『オベリスクの巨神兵』という神が降臨した事を全ての神は感じ取った。そして後にロキが倒されたという情報も入り決闘者(デュエリスト)と言う男は本当の意味で人外の世界に知れ渡るようになった。

 

 『機械の神と破壊神を従わせる神代を終わらせた男に並ぶ最悪な人間』、と。

 

 




特殊ルール12・オベリスクの巨神兵について
 オベリスクの巨神兵・効果モンスター
 星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000
 このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。
 (1):このカードの召喚は無効化されない。
 (2):このカードの召喚成功時、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
 (3):このカードは相手の効果を受けない。
 (4):自分フィールドのモンスター2体をリリースして発動できる。攻撃力を上昇させる。
(5):このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送る。


 ほぼアニメ版と同じ効果ですがいかがでしょうか?不備があれば直します。



 ロキとフェンリルを倒したコナミ君(仮)はオーディンと接触する。ロキを回収し治療する彼らに不満を見せるが彼らの真意を聞き早とちりをしたと後悔するが後の祭り、もはや彼は勇者という立場に非ず。

 次回、『デュエリストと危険性』

 その力は世界を揺るがす、デュエルスタンバイ。

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