神を降臨させロキを殴り倒し、一誠とゼノヴィアを肩で支えて退散しようとした時だった。
「……………………」
「おい…………何だこれは、何がおきた!?」
一言で言うなら天使、堕天使、悪魔の軍勢が遅くやってきた。
一体どこにいたのか、と言うより急いで転移してきたのだろう。
相手が相手なだけにここまで人数を動員したのだろう。腐っても相手は神と神殺しの狼、確実に倒すならこれくらい必要だろう。
そう思っていたコナミ君(仮)だがそれは思い違いである。
彼らが動いたのはロキでは無い。縄張り内でロキを倒した『神』を鎮圧しようとしたため送られてきたのだ。
そもそも日本は日本神話の縄張りなのだが…………この後のことは考えていないのだろう。
「お主が
「……………………」
「なぁに、お主と対話したいだけじゃ」
「いけませんオーディン様!その男はロキをたった一人で倒したのですよ!」
「少し黙っとれ。儂等だってこのままやりとうない。穏便に済ませるにはこうするしかないのだよ」
「ジジイ!だからと言ってこいつは危険すぎる!あの時は分からなかったか、今は分かる、こいつは野放しにしちゃいけねえ奴だ」
「どいつもこいつも分かっとらんとはな」
呆れるようにオーディンはため息を吐く。コナミ君(仮)も大体何をしたいか理解した。
「小僧、ロキと狼の治療を任せる。くれぐれも死なすんじゃないぞ」
「おいっ!チッ、わーっだよクソジジイ!」
「……………………」
「もちろんだとも、儂等がその二人を話聞くついでに治療してやろう。それ、ついてきなさい」
怪しみながらコナミ君(仮)は二人を担いでオーディンについて行った。
軍隊同士が何故かギスギスした空気を漂わせていたのはまるっきり無視した。
〜●〜●〜●〜●〜
「まあ、儂からは以上じゃ」
「……………………」
このオーディンは従者に一誠とゼノヴィアの治療を丸投げしてコナミ君(仮)と二人っきりの対談に持ち込んだ。
そして北欧神話の事情、そして今回の襲撃者であるロキとのすれ違い、そして天使と悪魔とは手を組まず堕天使とだけ組んで技術情報の交換という互いの利益のために組むつもりということを聞かされた。
コナミ君(仮)は今とても後悔している。あの時は怒りに身を任せていたが、よく考えたら白龍皇は戦闘狂であり強いのに襲いかかるのは当然で、何らかの事情があったのかもしれない。
天を見上げて後悔したいが、目を離すと何されるか分からないのでずっと前を向く。
もちろんコナミ君(仮)から目を離さないオーディンがいる。油断してたら一瞬で狩られるかもしれない。
「では聞かせてもらおうかの。お主がロキを倒した『神』について」
「……………………」
やはりというか、当然というべきか。結界を剥がしたことにより全てが漏れ出ていたということは予感していた。
時械神もそうだが、あのカードがあったからこそある人は時空を移動できたと言われている。だが、攻撃力が無いためオベリスクの方を優先したのだろう。
遠回しな破滅より直接的な破滅が最も恐ろしいと。
「……………………」
「神のカードとな。しかも偶然見つけたと」
「……………………」
「惚けてるのは分かっとる。儂も長いこと生きているので忘れっぽくなっとるがかつて存在していたら誰でも知っとる筈だ」
「……………………」
「じゃが、真偽をここで知ることはできんだろう」
最後の切り札とも言える神の召喚を簡単に口にするわけがない、とオーディンは初めから知るつもりはなかった。
それは黙秘したコナミ君(仮)が一番分かる。何も言ってないのにすぐ話を切り上げるところ、相手の都合、下手したら自分の都合まで悪くなる可能性があることを聞くことは後でどう響くか分からないからだ。
話し合った結果、オーディンはコナミ君(仮)と手を組みはしないが余程のことがない限り干渉もしないという事になった。それでも茶飲友達くらいの感覚でいて欲しいとかなんとか。
どこぞの不貞しまくる神より人に迷惑をかけていない神であるので別に茶を飲むくらいならいいとコナミ君(仮)は思った。
「お主らについては儂から口添えしてやろう。なに、対価はいらん」
「……………………」
「止めさせてすまんかった。もう治療も終わった頃じゃろ」
さっさと行けと言わんばかりに目を閉じるオーディンに、コナミ君(仮)は一誠達が治療している部屋へ行く。
立って歩けるまで回復した二人と共に自宅へと帰った。
二人が見ていないところでコナミ君(仮)は手に力を込める。
気のせいか、と思うが体の調子がおかしかったので試してみたのだ。
もちろん、オーラとか漏れたり…………
「……………………」
他人に悟られるように漏れたりしない。まだ
神のカードは世界に影響を及ぼした。なら使った本人には?
それは本人のみぞ知る。
そこから数日後、彼等は無理矢理眷属にしようと上級悪魔や天使達がひっきりなしに来るため、その対処に追われた。
正式な抗議として全員抹殺した。流石に上層部は何も言わず、さらに他勢力に非難されたとか。
〜●〜●〜●〜●〜
ある組織のとある二人の会話から抜粋
「なかなか上手く事が進まないな」
「仕方ないさ、あの
「しかし、奴らの大雑把な襲撃のせいで迂闊に手を出せなくなった。まったく、余計な働きを」
「そういえば、組織が匿ったある男が逃げ出したらしい。場所は日本とだけしか把握していない」
「匿った男といえばシグルド機関の失敗作だったか。まったく、管理まで杜撰とは恐れ入ったよ。ああ、そうだ。オーフィスに用があるんだが、彼女を見なかったか?」
「少し前になにも言わず出かけていったよ」
「…………入れ違いか。まあいい、京都の件について新しい案を持ち込みたいんだがゲオルク、どうだ?」
「ふむ、これは…………」
彼等の計画は進む。
人間を見下している奴ほど早く死ぬ法則。トップがいい人なのではなく甘すぎて部下を無駄に信用しすぎているだけとも言える。
毎日のように襲撃に遭うコナミ君(仮)達はそろそろ本気で滅ぼそうかと行動を移し始めようとしていた。そんなコナミ君(仮)は前に戦ったある男を見つける。その男の行動は前と変わらず、戦いは大きく変わっていた。
次回、『デュエリストと命削る男』
全ては家族のために、デュエルスタンバイ。