オベリスクは必要ない!   作:蓮太郎

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新年初パックを購入しました。4パック中二枚スーレア、一枚ウルトラレアが出ました。幸先がいいです。


デュエリストと英雄

 突如ドゴン、という何かが落ちた音が京都に潜伏していた英雄派のアジトに響いた。

 

 現在修学旅行で来ている悪魔達どころかアザゼルにすら知られていないはずの場所だ。それなのに明らかに今いる主力以外の大きな力を持つ者が侵入して来た。

 

 リーダーの曹操と幹部であるゲオルク、ジーク、ジャンク、ヘラクレスは勿論、禁手(バランスブレイカー)に至った者が即座に現地に集合した。

 

 その時間は30秒も満たない。たが、土煙が舞っている間に打撃音が聞こえる。それに加えて部下の悲鳴も。

 

 もちろん敵襲だった。まさか悪魔に見せびらかして始末する前にこんなに早く侵入されるとは思いもしなかった。

 

 しかし、殴る蹴るでここまで強いのはいたのだろうか?

 

「下がれ、今お前たちを消耗させるのは惜しい!」

 

 合戦というほどでもないが今ここで彼らを使えば後々大きく響くだろう。だから、幹部で一気に叩き潰す。人外相手に卑怯も糞もない。

 

 それが人外(・・)であるならば。

 

「……………………」

 

決闘者(デュエリスト)…………!」

 

「おー、あのヒョロそうなのがか?ゲオルクの結界を突破できそうに見えねえぞ」

 

「んー…………顔が見えないし微妙なのところね。帽子外してくれないかしら?」

 

 曹操とゲオルクを一時的に恐怖に貶めたコナミ君(仮)がデュエルディスクを出して立っていた。

 

 しかし、彼が見ているのは曹操達ではない。監禁している八坂姫の方角だった。

 

 なぜ分かるか?カードの導きである、といえばゴリ押しできるだろう、多分。

 

「……………………」

 

「そうだったな、京都の姫と仲が良いと聞いた。姫を助けにやってきたんだな?」

 

「……………………」

 

「まるでおとぎ話の王子様だな。まあ、前みたいにはさせないけどね」

 

「神器を封じるなら僕だな。あの爺さんのような力を持つなら魔剣が一番いいだろう」

 

 前に出たのはジーク、禍の団の中で最強の魔剣使いと呼ばれるほどの実力者であり、フリードが生まれたシグルド機関の成功例である。

 

 そんな事はどうでもいいが、コナミ君(仮)はただ歩いて近づく。いや、彼はデュエルディスクを仕舞った。

 

「…………どういうつもりだ?まさか、素手で勝てると思ってるのか?」

 

「……………………」

 

 立ち止まった。そして…………

 

「…………(かかってこいと手招きをしている)」

 

「っ!随分と舐められたものだな!」

 

 二本の魔剣を空間から取り出し一気にコナミ君(仮)に斬りかかる。その速さも技術も圧倒的に上位だと思われる。

 

 凶刃がコナミ君(仮)に襲いかかり血が舞う…………事はなかった。

 

「なっ!?」

 

「……………………」

 

 彼は二本の魔剣を右二本、左二本の指で掴み取ったのだ。ジークが動かそうとしてもビクともしない。

 

 筋力的には可能かも知れない。しかし、明らかに普通とは違う点があった。

 

「青い、オーラ?ぐっ!」

 

 突然の衝撃に襲われ吹き飛んだジーク。コナミ君(仮)はその時に魔剣を離していたらしくジークの手にきっちりと魔剣は握られていた。

 

 ここで突如、大柄の男が動き出す。

 

「へへへ、ヒョロいと思ってたがそっち方面らしいな!だったら俺の拳に耐えられるかぁ!?」

 

「ヘラクレス!曹操もなぜ止めない!」

 

「落ち着け、あいつが例の神器に時械神を出していない。つまり、今は封じるつもりもないという事だ。思うようにさせてやれ」

 

 オーラを纏っているとはいえ所詮は素手、ヘラクレスの神器による爆発に体は耐えられるものかと高を括ったのだ。

 

 それが間違いだった。拳がぶつかると思った瞬間、コナミ君(仮)は紙一重で避けた上で腹パンを食らわせる。

 

 いつもの腹パンではない。かなり加減はしているが、巨体のヘラクレスを吹き飛ばした上に意識を刈り取るには十分な威力だった。

 

 流石にこれは予想していなかったのか、部下の神器使い達にすぐさま撤退の指示、そして一度拳を食らったジークとヘラクレスは治療のため撤退した。

 

 残ったのはレオナルド、ジャンヌ、ゲオルク、そして曹操のみとなった。

 

 コナミ君(仮)はこの撤退の早さに焦りを感じていた。こうも早ければ八坂姫も一緒に連れ去られかねない。

 

 だが一々デュエル宣言をしてカードを引いていたらそれこそ手遅れになる。故に渋々神の力を使う事にしたのだ。まさか身に纏えるとは思ってなかったが。

 

「仕方ない、ここは作戦を放棄した方が良さそうだ。彼なら地獄の底まで追ってきそうだ」

 

「……………………」

 

「だが、今ここで仕留められるなら話は別だけどな」

 

 曹操が槍を構える。ジャンヌは創り出した聖剣を構える。レオナルドはありったけのモンスターを呼び出す。ゲオルクは結界を張り巡らせる。

 

 だが、コナミ君(仮)は前に進み続ける。仲間と仲良くなった子が泣いているのだ、助けなければどうする?

 

「……………………」

 

 コナミ君(仮)は彼らに問う、英雄とは何たるや。

 

「何故そんな事を聞く?まあ俺たちはそれぞれの理由だが、人間のできる事をしたいんだ」

 

「……………………」

 

「確かに、人間は弱っちいさ。それでも人間を遥かに超える存在に挑み、どんな手段、どんな物を使ってでも勝ちを奪い取る者こそ讃えられる英雄だ」

 

「まあ私はちやほやされたいからやってる訳だし?イケメン捕まえてハーレムできて貢いでくれたらオッケーだけどね」

 

 ちょっと余計なことが入ったが、間違ってはいない。理屈としては困難を乗り越えた者が英雄になる。神話で13の試練を超えたヘラクレスのような、誰かに讃えられる偉業を行なった者(・・・・・・・・・・・・・・・)こそ英雄なのだ。

 

「………………………………そうか」

 

 小さく、本当に聞こえるかどうか分からないほどの声の大きさ。

 

 神滅具使い3人に禁手化を扱える神器使い、普通に見れば圧倒的不利な状況だ。

 

 しかし彼は立ち向かう。

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

 

 英雄に成るのに、資格なんていらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーことで、お前らの引率をやる事になった」

 

「な、なんかいきなりだなぁ…………」

 

 会談があった翌日、一樹、木場、アーシアの悪魔組に加えて松田に元浜、そして桐生の班に突然アザゼルが引率をする事になった。

 

 事情を聞かされていた悪魔組は神妙な顔をしているので桐生達に少し疑われているが、気にしない事にした。

 

 それからはと言うものの、彼らはアザゼルが事前に調べていた名所を巡って楽しむことは出来た。なお、本当のところはリアスが行きたかったところを回らせて報告してくれと頼まれたためやっているだけである。

 

「禍の団の襲撃がないな…………妙におかしくないか?」

 

「それは僕も思っているよ。昨日も初日だったとはいえ何かしらのアクションがあるはずだよ。この前のこともあるからね」

 

 この前の事とは曹操が勝ち目がなくても一樹らに神器使いを戦わせて死の淵で禁手化させると言う荒技をさせた事である。

 

 原作知識があった一樹が可能性を指摘していたが止められるものではない。

 

 と、三つ目の名所でアザゼルの動きが突然止まった。

 

「先生?もしかしてスッゲー美人が見えました?」

 

「あ、あっち見ろよ。着物美人に膝枕されてる奴がいる!羨ましい…………」

 

 と言いつつ松田が絵になると思い写真を撮ろうとした。しかし、それはアザゼルの手によって止められた。

 

「…………いくらなんでもあんなところを許可なしで撮っていいもんじゃないぞ?」

 

「そうよそうよ、もしかしたらカップルかもしれないじゃない?それをいつの間に語られてたなんて不愉快になるわよ」

 

「あー、そうだな。悪い悪い」

 

 流石に写真を撮ることは控えた。向こうも旅行かもしれないので水をさすのは余計だろう。

 

「そろそろ行きましょう先生…………先生?」

 

 しかし、視線は美人と膝枕されている人物に釘付けだ。それは悪魔組もそうだった。

 

「八坂姫…………何故ここに、まさか自力で脱出を?」

 

 アザゼルはそう呟いた。しかし、悪魔組は違った。

 

 

 何故、決闘者(デュエリスト)の服が若干ボロボロで膝枕されている?




 こう思った人もいるでしょう。おい、デュエル描写しろよ、と。



 八坂姫が救出されたとの報により妖怪の街は大騒ぎ。救出したコナミ君(仮)は祭り上げられ肉まんを掴む。九重嬢も大喜びだが肉まんだけは譲らない。妖怪界に束の間の平和が訪れた。

 次回、『デュエリストと肉まん」

 コナミ君と言ったら、ね?デュエルスタンバイ。

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