オーフィスがたまにうちに来るようになり、ストーカーもよく出現するようになったこの頃、一誠の表情が優れない日々が続いた。
「……………………」
「あ、いや、ちょっと考え方をしてた」
その理由は一樹が行方不明ということだ。まさか、あの日の京都で行方不明になるとは思いもしなかった。
そこで不安になるのが彼の家族だ。深い事情もあるのだが、今まで迷惑をかけてきた親をこれ以上心配させたくない。それが一誠の思いだった。
「奪った挙句に行方不明って、あいつ本当にふざけてるよな。一体なんだと思ってるんだ」
「……………………」
「ああ、悪い。こんな愚痴聞かせちゃって」
「……………………」
「それに比べて、とても上機嫌だな。やっぱりあのカードか?」
「……………………(とても頷いている)」
ここ最近、彼はとても機嫌が良かった。ストーカーにつけ狙われているものの、それすら許容できるほどに機嫌が良くなりすぎていた。
その原因は一誠とゼノヴィアが拾ってきたカードテーマである『真竜』、時械神とシナジーが合いもう1つのデッキとして転生前に使っていたのだ。
そして、念願である新たな時械神を手に入れたのだ!というより全者揃ったのだ!
時械神を使う彼にとって最大の喜びである。しかも『虚無械アイン』、『無限械アイン・ソフ』、『無限光アイン・ソフ・オウル』まで手に入れたのだ。
もう他の物と混ぜてまで組むんじゃない、純時械神を作れと神が囁いているとしか思えない。弱体化しようがなんだろうが、コナミ君(仮)は時械神を使い続ける。
「……………………」
「え?買い物についてきてほしい?ああ、今日は卵の安売りだっけ」
「……………………」
「分かった、今準備する」
この世界の
そこで恩人に対して協力的にならなければいけない。一誠だけでなくゼノヴィアもいるが、怠惰的になっておりここ最近は昼寝をしてしばらく起きなかったりする。
夜寝ずに何していたかなんて聞いてはいけない。
男2人で買い物の出かけたのはいいものの、目当てのお一人様一個の卵を買い損ねて意気消沈、それ以外の買い物を済ませて帰る途中だった。
「みぃぃつけたぁぁぁ!」
上の方を見ると電柱に白髪でくたびれた神父服を着た男がようやく見つけたかのように、恨んでる声を出しながら叫ぶ。
「お、おい、あれは一体?」
「……………………」
「忘れたとは言わせんぜ!京都に行くと言ってたから俺様も行ったのになんか入れ違いになった挙句、クソ妖怪共に知り合いと言ったら疑われて追い回されるわ帰りの金なくなるわどれだけ時間かかったと思ってんだクラァァァァアア!!」
「えーと、勝手についていったのが悪いんじゃないか?」
「シャラップ!くらえ恨みのボディプレス!」
一誠のささやかなフォロー(?)虚しく電柱から飛んでコナミ君(仮)にボディプレスをぶちかまそうとする白髪の誰かさん。
だが、忘れてはいけないことが一つある。人類は忘れてはいけない、人間ならがらデュエルマッスルという謎の筋力を持つ人間がいることを。
一誠に持っていた荷物を渡し、体をブリッジさせるように何度も勢い良く反らせながら、その腹筋で降ってきた神父ことフリードを弾ませるように跳ね上げる。 それでは足りず、空中に打ち上げるように
「ホゲーーーーーッ!?」
「あれはまさか!まさかこんなところでやるのか!」
「………………………………!」
跳ね上げた空中で相手の首と片足、両腕を固定しエビ反りになるようにクラッチ!それはまるで英語の『K』を表している!
その後、続けざまに相手と背中合わせの姿勢で手足を固定し、相手の頭と体を地面に叩きつけるように落下したーーーーーッ!
「あべしっ!?」
「これが、これが完璧マッ○ルス○ーク!」
正確には擬きだが仕留めるには十分である。デュエル中に肉弾戦を仕掛けられた時にコナミ君(仮)はプロレス技(という名の超人技)をたまーに使う。
幸いなことに、フリードを仕留めた時に誰も見ていなかった。
「ひ、ひでえ…………ガクッ」
「……………………」
「一応関係者っぽいし連れて帰ったらどうだ?ってそんな嫌な顔をするほどか」
「……………………」
本当に仕方なしと思いつつコナミ君(仮)は意識を失ったフリードを背負う。そしてそのまま仕方なく、本当に仕方なく帰ろうとした時だった。
「ようやく見つけたー!」
「……………………」
毎日が厄日みたいなものだがさらに悪くなる日が多々ある。この世に生まれさせた神を恨むばかりだ。
今度は正面から現れた少女のことだが、コナミ君(仮)にも一誠にも覚えがない、否、一誠がほんの少し思い出した気がする。
「一誠くん…………やっと、やっと会えた!」
「えっ、ええっ!?」
走ってきたかと思ったらいきなり一誠に抱きつく。その時に買い物袋を落としそうになったが、なんとか落とさずに済んだ。
「ま、待った!本当に誰だよ!?」
「イリナよ!紫藤イリナよ!」
「あのイリナ!?でもイリナは男のはずだ!」
「…………まさか、ずっと男と思ってたの?」
「……………………」
少女が一誠の一言でかなり落ち込んだ様子。それも無理はない、今まで信じていた幼馴染が少しやんちゃしていたとはいえ本気で男と思われていたのだから。
そんな些細なことよりもあることに気づいた。
「…………覚えてて、くれてたのか?」
「ううん、思い出したの。最近のことだけど一誠くんのこと思い出したの!」
「マジか…………全員から忘れられたと思ってた」
「その様子だとやっぱりそうなのね」
自分が一誠を覚えていなかったのと同じく、誰も一誠の事を忘れ去られた事を確信して悲しそうな顔をしている。
信じていた親友を忘れ、そして周りも彼のことを忘れられてしまった彼の心を考えると辛いのだろう。だが、一誠は助力もあって乗り越えてきた。
「えっと、確か
「……………………」
「でもね」
一誠から離れてコナミ君(仮)に向き合う。その目は感謝しているけど仕方ないのよ、という感じの覚悟を決めた目だ。
「私はあなたを倒すわ」
「は!?なんで、この人は」
「ごめんね、いくら一誠くんでもこれは避けられないの。それに、貴方を見極めさせて
「……………………」
コナミ君(仮)はどこかに隠していたデュエルディスクを構え、イリナは腕輪が変化してデュエルディスクになる。彼も彼女も覚悟は決めた。
方や親友の恩人、方や仲間の唯一記憶が残っていた親友。いったいイリナが何を思ってコナミ君(仮)に
「「
答えは
コナミ君(仮)LP8000
イリナLP2000
一誠「…………あれ?」
圧倒的ライフ差の理由は次回に続く(多分気づく人いるかも)
コナミ君(仮)とイリナが
次回、『デュエリストと覇』
我は全てを覆し統べ覇王也、デュエルスタンバイ。