時はズァークと九重がデュエルを始める数時間前、破壊が始まった中心地は瓦礫の山と化していた。
しかし、その山の一部が少し動き中から赤帽子の男が現れた。そう、みんなのコナミ君(仮)である。
「………………………………」
彼は街の現状を見て絶句した。自分が生きていたことが不思議なくらいの破壊の跡、周りには生きている人がいるかどうかと聞かれたら絶望的だと彼は答えるだろう。
しかし、ここでボーっとしておくのは完全に時間の無駄ということ。今すぐに追いかけなければならない。
だが忘れてはいけないのは仲間の存在、ここに一人の仲間とその幼馴染がいたはずなのだ。
「……………………」
タフになっている彼らが死ぬはずがない。コナミ君(仮)はそう思い近くにある瓦礫を引っぺがし始めた。
だが、よく考えてほしい。瓦礫という物はふつう重くて易々と持ち上げそこら辺にゴミと同じように投げ捨てていくのは明らかにおかしい。
そもそも死人が出る大破壊の中で無傷という時点で異常性があるのだが、そのことについて彼はこう答えるだろう。
―――――デュエリストとしてデュエルマッスルを備えているのは当然だ。
デュエルマッスルってなんだよ(当然の疑問)
コナミ君(仮)が瓦礫をどかしていくと金属に包まれた何かが見えてきた。
一誠でないことは明白だが友人であることは確か、ならば救出しなければならない。
金属の塊らしきものを素手で掴み投げ飛ばした。コナミ君(仮)の筋力に関してもう突っ込んではいけない。
外に投げ飛ばされたや否や、金属の包みが取れていき中から一人の少女が現れた。
「びっくりしたわ!一人であんな衝撃波を起こせるなんて!いったいこれで何人の人が犠牲に…………って一誠君はどこ!?」
「……………………」
先ほどまで包まれていたとはいえ埋まっていたはずだがこの元気、本当にただものではないとコナミ君(仮)は感じた。
しかし、彼女は発見できても肝心の一誠が発見できていない。ついでにもう一人いた気がするが、そっちの方は放置していても構わないだろう。
コナミ君(仮)は再び瓦礫を素手で瓦礫をどかし始めるがふつうの人はポイポイとどかすことはできない。それを見たイリナは若干引いているが気にしてはいけない。
いくら自力でどかそうともあたり一面瓦礫だと見つかるはずもない。
途方に暮れるコナミ君(仮)達だったが突如悪寒が彼らを襲った。
二人が悪寒を感じその場を飛びのいた瞬間、閃光が彼らの横を切り裂いた。その閃光は聖なる破壊の力を秘めておりいくら二人でもノーダメージは免れない。
閃光は瓦礫を引き裂き気づけば深い溝が完成していた。
「……………………」
「この光、あのエクスカリバーに近いけどどこか違う。まさか彼女が!?」
イリナは誰がこの閃光を放ったのか気づいたらしい。そして、コナミ君(仮)もある方向を向いて知人がいることを確かめる。
その知人とはだれか明白。
「久しぶりにデュランダルを放ったな。いかん、体がなまっている」
そう、我らがSin使いのゼノヴィアだ。どう見ても手にしている剣を振り下ろしたポーズとなっているため彼女がやったのは間違いない。
デュエリストの悲しい性というべきか、デュランダルと聞いてアーティファクトテーマの奴を思い浮かんだコナミ君(仮)。
ゼノヴィアは闇雲にデュランダルを放ったのかと思われたが、裂け目から誰かが瓦礫を押しのけ現れた人物がいた。
「ぺっぺっ、砂が口に入った…………」
「イッセー!無事だったか!」
「あ、ああ。なんとかおぶぅ!?」
擦り傷だらけとはいえ元気そうな一誠にゼノヴィアが非常に勢いよく抱きしめた。
デュエル後であり大破壊に巻き込まれた彼にとって怪力のゼノヴィアの抱擁はかなりの痛手になるのではないかとコナミ君(仮)は思ったが、2人にとって危機があった彼氏を迎えに来た彼女という構図のため何も言わないでおいた。
「私がいない間にゼノヴィアが一誠君の恋人みたいになってるんだけど…………夢よね、これ、夢よね?」
「……………………」
ところがどっこい、現実です。彼女が理想としていた未来は既に変わった。既にデキてる二人に付け入るスキはない。
膝から崩れ落ちる彼の幼馴染に対しコナミ君(仮)はポンと肩に手を置き慰めておいた。
「嘘だ!かなり昔のことだけど一緒に遊んだり家に招いてもらって友情をはぐくんでた私の方が有利だったのにぽっと出のゼノヴィアに寝取られてるだなんてふぎゃ!?」
「誰が寝取りをしただ!ちゃんとお付き合いしてヤッたんだぞ!」
「ぐ、ぐぬぬ、ゼノヴィアの癖にいっちょ前に恋なんてしちゃってぇ!悔しくなんかないんだからね!」
かつての同僚から拳骨を食らうも強がっている彼女の目からボロボロと涙を流しているのがまた哀れに見える。
今にも逃げてしまいたいのだろうが、それでは無責任という物。解決しなければならない問題を正義感の強い彼女が放置するはずがない。
「ぐすん、それよりあの男を追わないといけないわ。あいつが進むだけでこの有様よ」
「ああ、そうだな。今からバイクとっていかないと追いつけなさそうだ」
「そう言うと思ってバイクで来た。あのフォルムのは運転が物凄くしにくいぞ。それに、多くて二人しか乗れないぞ」
「……………………」
すぐさまズァークを追おうとする彼らをコナミ君(仮)は眺めていた。そして、何故彼が同じ転生者でありながら覇王龍ズァークになってしまったか、考えた。
そもそもコナミ君(仮)は力を求めておらず、趣味であったカードゲームの力が使えたらいいなというくらいでいた。なぜなら日常生活では全く役に立たず
そのよほどが沢山起こっているので何とも言えないが、それはあえて置いておく。
それに対して彼、兵藤一樹はどうなのだろうか?何やら先を見据えつつ力を求めていた。
たとえ実の兄を蹴落としてでも、悪魔になってでも得たい物があったのだろう。コナミ君(仮)にはそれが理解できなかった。
共通点を上げるとしたら同じ神に転生されたということ。思えば奴の余計なおせっかいで『オベリスクの巨神兵』を手にすることとなり大きな戦いに巻き込まれることになったのだ。
そのくせして自分が転生させた者が悪さをし始めるとその後始末を自分に押し付けてきた自分からは特に何もしていない神だ。
さらに、本来ないと思われる三幻神をばらまいた元凶でもあると予測される。
コナミ君(仮)は納得した。全てあの神が悪いのだ。二人の始まりが同じであろうと、転生させる奴の質が悪いと容易く道から外れてしまう。
彼と自分はほぼ同じスタートラインにいたのにどうしてここまで違ってしまったのだろうか。
「ちょっと!ぼーっとしてないであいつを追うわよ!」
「……………………」
「え?二人はどうしたって?二人とも変なバイクに乗っていって私たちは置いていかれたのよ!」
「……………………」
それよりもこの少女が哀れに思えてきてどうにかしないといけない。事が終わったら一誠に進言しよう、コナミ君(仮)はそう誓った。
「…………んがーっ!プロレス技食らった上に生き埋めとか俺って超絶に不幸すぎる!ベランダにシスターが降ってきそうだぜこんちょくしょう!」
「あ、生きてたんだ。死んでた方が身のためと思ってたのに」
「……………………」
「え、何この辛辣ぶり。割と本気で泣いていい?」
どこまでも理不尽な目に合う男は理不尽に合うしかなかった。これも全て物語を狂わせた神が悪い。
罪龍「心配した、最終決戦といこう!」
星龍「ああ!」
運命「ギリィ…………(歯ぎしりの音)」
運命は必ずしも正位置に来るとは限らないのだよ…………
ズァークと九重の戦いはついに佳境を迎えた。戦い切った彼女に救いの手が差し伸べられる。因縁の戦い、果たさざるを得ない兄弟の戦い、そして全てを取り戻す戦いが今ここに始まる。
次回、『デュエリストと覇王龍』
絆と覇道が激突する、デュエルスタンバイ。