あの日、世界は震撼した。
日本に特撮のような怪獣が現れ我が物顔で横断し、近代兵器の類はほぼ効かずに蹂躙されていくばかりだった。
幸いにも、その怪獣は京都にて停滞し大破壊を行った後に消滅した。
この消滅には原因が不明だが、恐らく自滅だろうという意見もあれば日本のどこかに身を隠したに違いないという意見もある。
真偽は不明だが、この怪獣災害はしっかりと映像に映され連日テレビでニュースになっている。
この災害に関して日本は最大限の復興費用を全国にかけ、また世界中からの資金や物資の援助と共に生物に関するあらゆる分野のプロフェッショナルを招致して災害の全貌を暴こうとやっきになっている。
この災害での死者は確認されているだけでも数万人、行方不明者数十万となっており地球にはこのような怪物が実はいるのではと囁かれている。
この人類の不安は決して取り除かれることはない。
未知なる怪物が現れないかと永遠におびえ続けなければならない歴史を負ってしまったのだから。
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「ってのがカバーストーリーだ。流石にテレビやSNSで流出してしまったもんはこっちでも全部は対処はしきれん。この一件、マジで被害がでかすぎる。悪魔や俺達堕天使だけじゃすまないし、何よりも日本神話の陣地の京都に大きすぎる被害が出た。奴さん、キレてたぜ…………」
アザゼルの報告を
堕天使総督であるこの男が言うのならほぼ間違いないだろう、最後の所に本気の恐怖が入っていたのにはぜったいに触れてはいけないところなので気にしないでおく。
「で、あいつを野放しにしたリアス・グレモリーは実家に強制送還されてその眷属達も王の管理能力に疑問を持たれて解散状態だ。ま、変な所には引き取られてないだろう」
その情報に一人は眉をひそめて、二人は侮蔑の感情を、さらに一人は微妙な顔をし、最後の一人はどうでもよさげだった。
右からコナミ君(仮)、元教会組のゼノヴィアとイリナ、一誠、フリードの順番である。
敵対していたとはいえ、それまでは普通に同じ学校の生徒ではあったのでこのような結果となった。
リアスに関しては色々と残念過ぎたとはいえ抱え込んだ爆弾の威力を誰も正確に把握できていなかったため少しの同情はあった。
「援助金に関してはグレモリー家のほぼ全財産を投げ打っているのが真相だ。復興だけでなく各所に詫び代もいる、はっきり言って破滅も近いな」
「悪魔が破滅とか笑えるわ。ま、人外はいつかは滅びる運命にあるのよ」
「それ、俺も入って言ってないか?まあ、いつかはそうなるだろうよ、最近堕天使になるやつのほとんどいないし、滅びる時は滅びるもんだ」
「……………………(少し意外という視線を向けている)」
「俺たちゃ堕天使はまっとうな悪だぜ?いつ滅んでもいい覚悟は、少なくとも俺は持っている。人間を見てたらそう思うのさ、いつかは
ここで一息つくようにアザゼルは緑茶を飲み、ジトっとした目でこちらを見る。
主に、視線を向けているのは『私は夜中に盛り過ぎました』と『私は夜中にうるさくしました』と書かれた板をぶら下げた一誠とゼノヴィアだ。
「さっきからずっと気になってたんだが、こいつら何やったんだ」
「……………………」
「あ、あはは、
「その件については本当に申し訳ない。だが後悔はしていない」
「お、おい…………そう言ってさっき思いっきり拳骨食らったんだからちょっと」
「…………いつ死ぬか分からないっていう本能としては忠実だとは思うが時と場合が悪かったな。というかここの施設の壁はかなり分厚いはずなんだが?」
それでも聞こえた者は聞こえていたのだ、隣の部屋のコナミ君(仮)がキレるくらいに。
フリードも隣の部屋だったのだがかなり遅れて到着して疲れにより爆睡していたので気づかず。
「まー、旦那らと一緒にいたら面白い事しか起きない。でもっ!なんで!俺様は良い感じのイベントに間に合わないっ!」
「いたらいたで絶対に厄介な事になるでしょう貴方は!恥を知りなさいここの異端者!」
「そういやフリード、お前は俺達が、というかいつの間にか首になった後どこにいたんだ」
「あれ、俺っち元雇い主にすら忘れられてた…………?」
変なところでショックを受けている馬鹿を他所に話し合いという名の報告会は続く。
「話を続けるぞ。はっきり言って今の俺にとって復興よりも重要な案件だ。
「……………………」
「無論、俺の所にも引き込みたいぞ?でも一つの組織にいるとなったら色々と問題が生じる。表立ってはいないが水面下じゃあお前たちの取り合いをしている。当たり前だがお前たちがどこかに誘われて所属する達じゃないだろ?」
「まあ、私達は訳アリの集団だからな。今更なにを信じろという話だ」
「神もいないし平等に配られる奇跡は偽物、そう教えられたら……………父さんも信じられなくなっちゃうわ」
「親父さんの事か。まあ、俺がどうこう言うべき問題じゃないか。そこで、だ。お前たち人間でチーム組まねえか?」
「チーム?それってどういうことだ。確かにバイクには乗るけど一台しかないし」
「そう言うチームじゃねえよ。なんつーか、人間代表の組織に一つってことだ。例えば魔法使いの連中だ。メフィストの所の『
後者にコナミ君(仮)がぴくっと反応したのを見たアザゼルは「ああ、やっぱそういう奴らにも絡まれてるんだな」と思った。
絡まれてるどころか求婚までされて、なおかつ求婚された本人が知らないうちに組織内で完全に夫ポジションになっていることはこの場にいる全員は知らない。
「そんなもの作る必要はあるのかしら?余計に狙われそうな気がするのだけれど、元からそういう運命だったのかしら?」
「くっだらねえモンに縛られちゃあ世話がないざんすね」
「なによ!運命はあるわよ!いつか私と一誠君と結ばれるんだから!」
「ほほう、それは聞き捨てならないな。正妻の私を差し置いて結ばれるとは。その運命は妄想だったな」
「なによ…………久々にキレたわ。向こうに行きなさい、2人ともデュエルで決着をつけてやるわ!」
「望むところだ!いい加減昔からお前の妄想にうんざりしていたんだ、その鬱憤を晴らしてやる!」
「…………なあ、あれ放置していいのか?」
「……………………」
コナミ君(仮)はなれ合いだと思っておけと言わんばかりの無言で一誠は苦笑い。
言い出しっぺとはいえ何故か変則的デュエルに巻き込まれたフリードを見送ってアザゼルは思った。
こいつらやっぱり人間味があって面白い、と。
「すぐに決めろとは言わんさ。それまでは俺とオーディンのジジイで何とかする。お前たちは最も目を着けられている『禍の団』と悪魔と天使に集中しとけ」
そう言って立ち上がり、アザゼルは何も気にするなと出ていった。
その姿は生徒を守る教師のような、というかあんななりでも教師であった。
「…………そういやさ、アザゼルって
「……………………」
「あんな教師がいたら学校は楽しいだろうな」
そう呟いて何かを思い出すように目を閉じ、大きなため息をついた。
残った傷跡は簡単に治らない、特に一誠には家族という問題がある。
本当に、本当に大きな負の遺産を残していった馬鹿を恨むばかりである。
「あひゃひゃひゃ!行けえガンドラァ!デストロイ・ギガレイズゥ!からのダイレクトアタックじゃい!」
「ぐああああ!フィールド魔法が!私の『sin』が!」
「ゼノヴィアがやられたけどまだ私がいるわ!絶対に仇をとるんだからね!」
「か、勝手に殺すな!まだ私のライフはなくなっていないぞ!」
「……………………」
「(あ、これ後で三人とも拳骨貰うやつだ)」
言わぬが仏、触らぬ神に祟りなし、余計なことを言ってコナミ君(仮)の拳骨という巻き添えを受けたくない一誠は黙った。
こんなうるさい些細な休みも、
些細なことで巻き込まれるな、これが怒った彼に付き合うために必要な教訓であった。
リアスの名にダイレクトアタック!グレモリー家にダイレクトアタック!魔王の名声にダイレクトアタック!ズァークにやられた悪魔の戦力にダイレクトアタック!日本神話からの効果ダメージ!各勢力からの非難の効果ダメージ!まだやめない!精神力は0でもライフはまだあるわ!君の、息の根が、止まるまで、殴るのを、やめない!
一つの戦いが終わり世界は新たな局面を迎えた。その一方で一誠は自分の問題に向き合う。一樹の仕業により失ったものを新たな仲間と共に取り返す、ゼロが再び一となる物語は幕を開ける。
次回、『一誠の再起』
彼等の物語はここから始まる、デュエルスタンバイ。