知らない方は初めまして。(本当に過労死したいわけではない)過労死志願です。
このたびめでたくブラック……おっと、ちょっと労働条件が合わなかった企業から退職し無職になったので、我がカルデアのアイドル?……嫁?……頼れる相棒の小説を書くことにしました。
え? エタっている連載は? というか就活しろって?
ちょっと休ませてください!?(白目
せ、生活が安定したらエタっているのも書きますからぁ!!(泣
そ、それではどうぞ。
とある地方の教会において、二人の神父と一人の魔術師が邂逅を果たしていた。
「聖杯戦争?」
「そう、七人の
神父の一人――言峰綺礼は自分の父親と見知らぬ男が話し出した血生臭い儀式の話に、わずかに驚いたような声を発した。
もっとも、驚いたように聞こえる声を発しただけで、本人の表情は至って変わらず、何もかもをあきらめたかのような無表情が貫かれていたが。
「なぜそのような話を私に? 主の杯を魔術師風情が取り合うなど不届きなと、代行者としてその儀式を潰して来いということですか?」
「いいや。そういうわけではない。それに此度の聖杯戦争の景品である聖杯は、我等第八秘蹟会がすでに主の杯ではないと確認している」
「ではいったいなぜ?」
「それは、君の腕に宿る聖痕が理由なのだよ綺礼」
突然の呼びかけに、胡乱げな色を乗せて視線を向けたのは、赤いスーツを着た顎鬚を生やす紳士だった。
彼の名前は遠坂時臣。綺礼の父親である言峰璃正と懇意にしている、魔術教会所属の
「聖痕? この赤い刺青のようなもののことですか?」
「それは令呪と言って、聖杯戦争の参加資格を示すと同時に、召喚したサーヴァントを律する三つの命令権だ。それがある限り君は三度だけサーヴァントに命令を順守させることができ、サーヴァントの反乱を抑制できる」
「つまり綺礼。お前は選ばれたのだ。此度の聖杯戦争に参戦するマスターの一人として」
自身の周囲を回るように歩く二人の言葉を、綺麗は頭の中で整理し飲み込む。そして、
「なるほど。異端の儀式など通常ならばこの令呪を棄てさっさと棄権をするべきだといわれるのでしょうが、時臣氏がこられたということはそういうことでもないのでしょう?」
「話が早くて助かるよ」
「確かに此度の聖杯戦争の景品である聖杯は主の杯ではない。だがしかし、それに匹敵する願いをかなえる力を持つ――万能の願望機であるということは事実なのだ。我等聖堂教会としては、妙な輩に聖杯を盗られ願いをかなえられては困る」
「そこで教会は、根源の渦への到達という魔術師としては至極当然にして――現実世界においては全くの無害である願いを持つ私を手助けすることを決定した」
「お前にはこのままマスターとして聖杯戦争に参加してもらい、時臣君の援護をしてもらいたい」
「……かしこまりました、わが父よ」
異端の象徴である魔術師と手を組む。いくら世界のパワーバランスがあるとはいえ、それは教会としてはあまりほめられた行為ではないはずであった。
だが、綺麗はその指令に特に不満を覚えた様子もなく粛々とその命令を受け入れ、
「ですが、私は魔術など治めたことはなくマスターとして戦えるかどうかわかりませんが?」
「それに関しては心配しなくていい。君にはこれから聖杯戦争開催まである三年間を、私の弟子として過ごしてもらう。魔術のイロハはそこで叩き込もう」
「かしこまりました」
時臣の言葉をきき、最後の疑問が氷解したのか、綺麗はそのまま踵を返し教会を後にした。
そのあっさりとした言動に、時臣がやや面を食らう中、璃正は綺礼を憐れむように事情を説明する。
「あれは最近連れ合いを亡くしたばかりでしてな。もとより長生きできる娘ではありませんでしたが、それでもやはりショックを受けているのでしょう」
「なるほど。ならば今回の仕事は気を紛らわすという意味でも渡りに船だと。とはいえ命がけですよ?」
「なに。あれとて歴戦の代行者です。言ってしまうと気を悪くするかもしれないが、魔術師との殺し合い程度に後れを取る息子ではありませんよ」
璃正の言葉を頼もしく思いながら、時臣はこれからの計画を煮詰めはじめる。
「聖杯戦争に勝つための本命サーヴァントはこちらで用意するとして……綺麗には諜報などを行ってもらいましょう。聖堂教会の代行者ならそういったこともお手の物でしょう」
「それは確かに。ならば綺麗に与えるサーヴァントはアサシンでよろしいのかな?」
「いや……」
諜報をしてもらうならそれがベストなのだろうがと……璃正の言葉に時臣は眉をしかめた。
「彼にはキャスターのサーヴァントを呼んでもらおうと思います」
「キャスター? 確かに諜報ができなくもない英霊だろうが……なぜ?」
「アサシンのクラスは第二次聖杯戦争においてある魔術師の血統が占有しているのですよ」
忌々しい。そんな気持ちを隠そうともせず時臣はその名を告げる。
「一族の悲願……《皇帝の殺害》。標的となった当の本人はすでにいないというのに、無念のままに死んだ先祖のために操を立て、その悲願をかなえるためだけに魔術を研鑽する異常者どもにね……」
…†…†…………†…†…
そして約三年後。日本の冬木市にて。
「ったく、面倒な殺し方しやがって。お前が妙な殺しをしたから、俺にお鉢が回ってきただろうが。折角の休暇を潰しやがって、どうしてくれる?」
「あいだだだだ!? いだっ!? いだいって!? 何すんだよもうっ!? せっかくこれからいいところだったのに!?」
とある民家に忍び込み、そこに住む家族を殺そうとしていたシリアルキラー――雨生龍之介が、その民家に事前に潜み彼を待ち構えていた一人の男にとっ捕まえられていた。
そんな彼らの騒ぎを囮として残ってもらっていた家族たちが眺める中、
「はいはい、ちょっと黙ってろ。《スタン》」
「あびっ!?」
見なれない黄色い稲妻が描かれたカードを張り付け、男は龍之介の意識を刈り取る。
同時に、こちらを見ていた家族たちに、
「いやぁ、ご協力ありがとうございます。これで冬木も平和になるでしょう。あ、これ私の名刺です。今回の一件で何か問題が発生した場合はこちらにご連絡を」
「は、はぁ……」
「ご、ご苦労様です」
「警官さんかっこよかったよ!」
「ありがとうな、ぼく」
名刺大のカードをそれぞれ渡していく。だが、そこに書かれていたのは名前や所属部署などではなく、
「あれ? これ名刺……」
毒々しい紫色の煙を吐き出す奇妙な香炉の絵だった。
父親が不審に思い話しかけようとしたときにはもう遅い。
男の魔術に懸り昏倒した三人は、そのまま男が二階へと運びそれぞれの寝床に放り込む。
そして、同じ寝床に放り込まれた二人の夫婦を眺めた男は「そういや俺が嫁さんと一緒に寝たのっていつだっけ?」と、真剣に考えるとちょっと切なくなる事実を思い出し涙する中、男の携帯に連絡が入った。
「はいもしもし荊崎だが?」
『始末は済んだか?』
「記憶処理までバッチリだよ警部殿。とっ捕まえたのは魔術師じゃなかったが、魔術師の家系ではあったようだな。魔術回路ときちんとした術式が記載された本もってやがった。痕跡があったいくつかの異能による捜査かく乱は、まぐれで発動した魔術がやっちまったんだろう。事故みたいなもんだな。自信喪失する必要はないぜ?」
『そんな偶々に俺達は弄ばれたのか……。とはいえよくやった。そいつはすでに十数人近くをばらしている。おまけに法的に立証できない状態でだ。荊崎、後のことは心得ているな?』
「わぁってるよ。幸いなことにこいつの家系は魔術師としては途切れているんだ。魔術教会ともつながってないみたいだし、適当にばらしたあと、死体は
『頼んだぞ。魔術師連中というのは、現行法で裁けないから困る……』
今回のクライアントであった警視庁捜査一課の警部との通信を切り、男――
すると、
「あぁ?」
その右腕に浮かんでいる聖痕に気付いた。
赤く輝くその傷を見て、燕翔はしばらく固まった後。
「く、くはははは。くははははははは! アイツベルンめ。ザマァ見晒せ! あの時の呪いのせいで今の今まで令呪が俺達一族に浮かぶことはなかったが、こういうイレギュラーは想定していなかっただろう!」
忌々しくも、第二次聖杯戦争のおり、アサシンの召喚優先権を奪い取ったはいいものの、代わりに令呪が浮かびにくくなる呪いを受けてしまった祖先の恨みを晴らしたことに酔いしれた。
そして、
「さぁて、今回もダメかと思ったが、こいつは運がいい。小僧、悪いが腕だけはもらっていくぞ。なぁに安心しろ。お前がやったことよりかははるかにましな施術だ。ちょっと腕の魔術回路をぶち抜くだけ。終わればとっておいたこの手も体と同じ海に捨ててやるさ」
そういうと、男はためらうことなく魔術で生み出した剣を用い、龍之介の腕を斬り落とした。
こうして、最後の聖杯戦争参加者がそろった。
聖杯は、殺される定めである殺人者から令呪が奪われるのを黙って見ていた。
正しく戦争が始まるのであれば、自身の嗜好などたいした問題にはならぬと……わずかな不満の意を押し殺しつつ。
…†…†…………†…†…
場所に選ばれたのは、燕翔が世界各所にもつ酒蔵の一つ――その地下だった。
多くの魔術師がそうであるように、曲がりなりにも魔術を収めている燕翔は魔術を修練するための資金源として、世界規模の酒販売所のオーナーをしていた。
普段は趣味と鍛錬を兼ねた《探偵》(無論魔術師がらみの事件ばかりを扱う裏の側面が強い暗部系の探偵だが)として鳴らしているが、主な資金源はこちらの方だ。
当然自らの会社である酒蔵などは自由に出入りでき、人祓いすら自由自在。もとより聖杯戦争の大本命である冬木の会社は、こんなこともあろうかと各地に輸送される酒を一時保管する場所としており、勤務している社員も少ない。
あとは召喚する一週間前からこの酒蔵から商品をすべて放出し、社員たちに有給をだし、聖杯戦争中は帰ってこないように暗示をかければいいだけだった。
こうして準備は整った。
無人となり燕翔と物言わぬさまざまな酒樽のみが残る地下に、燕翔の血を混ぜた墨で描く、魔法陣が作り出される。
同時に蔵の時計が午後二時を指し、
「素に銀と鉄」
朗々とした詠唱が響き渡った。
「礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」
魔法陣に魔力が流れ込み、電気ランプの明かりのみだった酒蔵を明るく照らし出す。
「
輝く色は純白。目を突き刺すような鮮烈さを感じるその色に、喜悦の笑みを浮かべながら燕翔は一族の悲願がかなう時が来たことを確信した。
「 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
「―――――
唸りを上げ周囲を満たす魔力が、ガタガタと酒樽を揺らし始めた。それでも酒樽がつぶれないのは、これから呼ぶ英霊が気を使っているからか?
「――――――告げる」
「――――告げる!!」
本来英霊召喚に必要とされる聖遺物などは、魔法陣にはおいていない。しかし構うことはない。この血、この存在こそが、あの英霊を呼び立てる最大の聖遺物。むしろ、余計な遺物でも持ってこようものなら、別の英霊が引っ掛かる可能性さえある。ならばここに聖遺物を用意しないのは正解だ。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
赤く輝く悲願成就の証たる令呪が宿った右手を尽きだし、燕翔は高らかに告げる!
「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者」
つづいて、先祖が残したハッキング用の詠唱――本来は呼べないはずの東洋英霊の座にアクセスし、呼び出したい英霊に聖杯の用途を説明する。
「はるか東にて名を刻みし者よ。古の無念を持つ者よ――我が願いは、汝の悲願と共にある。万能の杯の力を借り、今ここに――皇帝を討つ刃を持ち侍るべし」
そして、
「汝三大の言霊を纏う七天。抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
詠唱の終了と共に、周囲にあふれていた魔力が爆裂する!
燕翔と酒樽には傷をつけないその爆裂は、コンクリート製の酒蔵に激震を走らせた後、わずかな土ぼこりを地下へと落しながら、
「サーヴァント――アサシン」
燕翔の悲願の来訪を告げた。
「名を荊軻という。さて、君が私のマスターでいいのかな?」
白い衣を魔力の風で翻し、顔を覆っていた仮面をとる、凛々しい顔立ちをした美人と言って差し支えない女性を前に、燕翔は速やかにひざをついた。
「お待ちしておりました、我が先祖」
「……やはりか」
「はい……」
「なんというか、まぁ……しぶといものだな。君
「おしかりを受けるとは思ってはいましたが、まぁ性分ですんで。それに答えていただけたということは、そういうことでしょう?」
「当然だ」
そういうと女性――アサシン・荊軻は懐に隠していた巻物をほどきその中から匕首を取り出した。
「失敗した身ではあるが、今再びと求められたのであれば仕方あるまい。ましてやそれが私のためを思って動いてくれた、私の子孫たちの悲願であるというならばなおのこと。義侠の者として、放っておくことはできないだろう」
「では?」
「あぁ。今度こそは討って見せるさ。この戦争に現れるであろう……あの始皇帝に勝るとも劣らない暴君を」
アサシン――荊軻顕現。これにより冬木第四次聖杯戦争の幕が上がった。
注意:聖杯戦争は英霊が集うだけで確実に皇帝、およびそれに類する暴君が現れるわけではありません。これでいなかったら空振り……。あぁいえ。一応第四次は暴君二人いるから間違っちゃいませんけどね?
というわけで某アサシンの正体は荊軻さんでした! え? 知ってた? やっぱり?
なんというか荊軻さんって最古参のグラ鯖なのに、キャラクターグッズとか少ないんですもん……。キーホルダーもないし……。
というわけで自分の好きなキャラクターが不遇なので、自分で彼女が活躍する話を書きました。俺と同じ彼女が好きなお方! ぜひとも楽しんでいってくださいねっ!
ところで「荊軻? 誰それ?」とか言ったやつ? いないとは思うけどいたらあとで校舎裏な!?