DTVで、fate/zeroが放送されているのを見て、ふとなにかを忘れていることを思いだし……今に至る!!
あ、ついでに言うと就職決まりました!
その祝いを込めて……荊軻さんの新着投下します。
まあ、荊軻さんあんまでないんですが……
切嗣は眼前の敵の一挙手一投足に注視する。
敵はロードエルメロイ。時計塔を支配するロードの一人にして、卓越した魔術の使い手にして、流体制御を得意とする難敵だ。
だがしかし、敵が魔術師然としているほど、切嗣には勝利する手段があった。
起源弾ーーそう呼ばれるそれは、切嗣の肋骨を素材に作られた弾丸型の魔術礼装であり、この弾丸が魔術に触れたとき、相手の魔術回路を切断し、ランダムに繋ぎ直すという力を持っている。
だからこそ、切嗣は無数の弾丸をばらまきながら機会を伺っていたのだ。
敵が最大魔力を用いた防御魔術を展開するのを。
だが……。
「どうした、ケイネス。自慢の魔術が泣いているぞ。先程から弾丸がお前の礼装を貫いているだろう!」
「はっ。豆鉄砲ごときに、私の全霊を用いる必要などない。防げなくとも軌道をそらしさえすれば、こうもあっさりと力を失うおもちゃ風情には、私の魔術は過ぎたものだろう」
魔術師のプライドを刺激する切嗣の挑発を受けてなお、ケイネスは額に青筋を浮かべつつも冷静な言動を保ち、使い捨ての礼装を切った。
発動するのは流体制御。床に落とされ砕け散った試験管の中から飛び出した濁流が、切嗣めがけ襲いかかる!
当然のごとく、魔力を流せば勝手に発動するインスタント形式の使い捨て魔術は、コンピューターのように事前に入力されていた指示を、淡々とこなすだけの意思なき攻撃。直接制御された魔術よりも遥かに御しやすく、全うな魔術師なら防ぐことも回避することも容易なのだが……。
「くっ!」
全うな魔術を学んでこなかった切嗣にとってはこの上ない驚異となった。
近代兵装を操る切嗣にとっては意思がなくとも圧倒的物量で迫り来る濁流は充分な驚異となり得たからだ。
近代兵器のほとんどは、弾丸で防げない攻撃に関しては無力な存在へとなり下がる。
「
とっさに発動した衛宮家固有の魔術――《固有時制御》を発動。通常の二倍の速度で動きながら、切嗣は濁流が埋め尽くす廊下から逃れ、分岐した通路へと飛び込んだ!
幸いなことにそこまで忠実に水の流れを模倣する魔術ではなかったらしい。
切嗣に回避された濁流は、切嗣が飛び込んだ通路に浸水することなく、轟音をたてて過ぎ去る。
それに安堵する暇もなく、
「やはり、予想通りかドブネズミめ。荊崎の言うとおり、使い捨ての護符魔術では、貴様の切り札は正常に働かないと見える」
「っ!」
砕けちり、月光を直に廊下へ差し込ませる窓を背にして、切嗣が入り込んだのは通路の入り口へと、ケイネスは姿を表した。
――荊崎……。なるほど、あの先祖崇拝狂いの、狂人の入れ知恵か!
自分と同じく名が知られている魔術使いの傭兵を思いだし、切嗣は内心歯噛みをした。
ただの貴族気取りの魔術師相手ならともかく、傭兵として多くの戦場を渡ってきた荊崎が相手では、いつもの挑発からの起源弾と言う手が、効きにくい。おまけにあの一族は先祖の血を色濃く継いでしまっているのか、作戦立案能力が異常に高い。今回の襲撃も周到なまでの下準備と、作戦の反復記憶により緻密に計算されたものと考えられた。ケイネスが挑発程度でボロをだす確率は低いと言えた。
ましてや起源弾の存在まで看破されてしまっていては、ケイネスは決して常に魔術回路を長期接続する魔術を使わないだろう。
――手詰まりか?
切嗣の脳裏に一瞬そんな言葉が浮かび、消える。
――いや、だとしても、諦めるわけにはいかない。
そう判断した切嗣は賭けに出た。
素早く所持していたキャリコM950を投げ捨てつつ、固有時制御を発動。信じられない速度でコンテンダー・カスタムを構え、一発の弾丸を装填した!
起源弾ではない。その起源弾を打ち込むための布石として使っていた、30-06スプリングフィールド弾だ。
物理的にほぼ防御不能なこの大型弾丸は、魔術敵かごを持たないありとあらゆる防御を貫通しうる。
使い捨ての護符型礼装ごときで、防げるものではない。
その弾丸がためらいなく放たれ、即応しケイネスが放った試験管を粉砕。中から飛び出した氷の壁を撃ち抜き、ケイネスの右肩に大穴を開けた!
「ぐっ! な、なんだと! この私の魔術を……キッサマァッ!!」
激痛に呻き声を漏らしつつも、怒りのあまりその痛みを忘れたのか、額に青筋を浮かべ懐にてをのばすケイネス。
それを見て加速された視界の中、起源弾を素早く装填する切嗣は祈った。
――さあ、こい。怒りのままに、お前のすべてをさらして見せろ、ケイネス・エルメロイ!
そうして、ケイネスが懐から取り出した試験管を投げ捨て、その中から水銀が飛び出そうとしたときだった。
「よけろ、ケイネス!」
窓の月光を何かが遮り、動じに暗くなった廊下の影から荊崎が飛び出す。
そのまま荊崎はケイネスをともない廊下の影へと消え、それと同時に、
「失礼。邪魔をする」
「なっ!」
凛とした女の声が響き渡った。
――この声はアサシン!?
と、切嗣が気づいたときにはもう遅い。
声の主は砕けた窓から城の中へと侵入し、白い服をたなびかせながら、切嗣の頭上を飛び越え着地。そのまま全力疾走で廊下の奥へと消えていった。
そして、その後を追ってきたのが、
「っ! 何だこれは!?」
逃がすものかと、アサシンを追ってきた巨大な鳥の頭部!
恐らくキャスターの宝具と思われるその鳥には、あちこちに傷が刻まれており、憤怒の形相で自分を傷だらけにした白いアサシンを探し回り、
「クソッ!」
あとに残された切嗣を怒りの捌け口として定めた!
城を震わせる絶叫をあげ、巨大なくちばしを開き切嗣を啄もうとする怪鳥。
反撃しないわけにもいかず、切嗣は手元にあったコンテンダーを構え、そこに装填されていた弾丸を放った!
切嗣の手元にある礼装で、サーヴァントが召喚した幻獣を仕留められるものはそれしかなかったから……苦渋の決断を下すほかなかった。
こうして初めて、魔術師を殺すため以外の目的で
切嗣の起源弾が放たれる!
結果は――!!
…†…†…………†…†…
「危ない危ない。死んでしまいます」
ロック鳥から届けられた視界にて、得たいの知れない恐怖を感じたキャスターの素早い判断による、ロック鳥の送還という形で示された。
…†…†…………†…†…
自分の切り札が空を切る。
初めての無駄弾の使用に、切嗣の奥歯が軋んだ。そして、
「見たいものは見たか……」
「っ! 荊崎!!」
「起源弾。テメーの肋骨を使った魔術礼装ね……。それによって起源を押し付け、魔術回路を切断・結合。魔術師としてのすべてを奪うか。魔術師連中は大概イカれているが、お前もそこそこ危ないやつだな」
何らかの術式か、城中から響き渡るその声に、切嗣は油断なく銃を構え、そして……
「という訳で、ケイネスの我が儘もここまでだ。さっさと方をつけさせてもらう」
「っ! 外か!」
ガラスの破片を踏む音が聞こえ、切嗣はそちらに飛び出す。
見ると、そこには砕けた窓から、ケイネスを抱えたアサシンと共に飛び出し、城から脱出する荊崎の姿があった。
そして、
「爆破していいのは、爆破される覚悟のあるやつだけだ!」
にやけ面で荊崎がそんな捨てゼリフを残した瞬間だった。
城中に仕掛けられた爆破礼装が炸裂し、アインツベルンの城が、轟音と共に崩壊を開始する!
その震動に体勢を崩されながら、切嗣は死んでいた瞳に確かな憤怒の色を宿らせ、
「……セイバーッ!」
この崩壊から身を守る術はないと、令呪を使い、おのが使い魔を呼び立てた。
…†…†…………†…†…
「なんだと……」
音をたてて崩れるアインつベルの城に、二人の女を下した綺礼は氷結する。
まさか、衛宮切嗣が自分と戦う前に敗退したのではと。
だか、その最悪の予想は自身のサーヴァントの伝令によって否定された。
『安心してください、マスター。あなたの仇敵は無事です。あの崩落から逃れるため、令呪を一つ欠いたようですが』
「……そうか」
だか、それにより敵がどうやら切嗣に一杯食わせたことは察せられた。
キャスターの報告では、あの征服王も城に向かっているときく。
あまりに事態が混沌としすぎているため、これ以上の深入りは命の危機を招くだろうと、綺礼は判断を下した。
――いまさら、命を惜しむなど殊勝な考えは持っていない。だがしかし、衛宮切嗣以外にも、その結末が気になるキャスターや、殺してみたい師の件もある。ここで投げ捨てる判断を下せるほど、自分の命に頓着していないわけでもない。
そんな思考を巡らせたあと、綺礼は意識を失ったアイリスフィールに刺さった黒鍵を抜き、その場をあとにした。
「帰るぞ、キャスター」
『ああ、ようやくなのですね。よかった……セイバーたちに放ったラミアたちも全滅してしまいましたので、このままでは死んでしまうところでした』
「大仰な奴め」
震えるキャスターにあきれながら、ひとまず綺礼はその場から撤退した。
…†…†…………†…†…
その直後、結界を引き裂きながら現れた戦車が、
「おお! 派手にやっとるわい! うむうむ! 元気があってよろしい。余とはを競う英傑とはこうでなくてはな!」
「元気があってって、そういう話じゃないだろう!」
轟音と粉塵を巻き上げ、盛大に崩壊していく城を眺め、大笑いする征服王。
巨大建築の崩壊と言うとんでも事態に直面してなお、豪快な態度を崩さない征服王に戦慄しつつマスター――ウェイバー・ベルベットは、戦車につまれた樽へと視線を向け一言。
「な、なあライダー。ひょっとしなくても、今は酒盛りどころじゃないんじゃ……」
「そこはそれ、余の交渉手腕が試されるところよ!」
「諦めるって選択肢はないのかよ……って!? ライダー、ストップストップ!!」
戦車の進路上に倒れる二人の女性に気づき、ウェイバーは叫んだ!
「誰か倒れてる!」
「こいつは、セイバーのマスターの」
それを見て戦車を止めた征服王はいいことを思い付いたと言わんばかりにニヤリと笑った。
「坊主、どうやら我々にも運が向いてきたぞ?」
「え?」
こうして、綺礼に倒されたアイリスフィールたちは征服王に拾われ、崩れ去ったアインツベルンの城へと向かう。
そこには、負傷したケイネスをかばうランサーとアサシンと荊崎。
そして、切嗣をかばうセイバーのにらみ合いがされていることを予感しながら、それでも彼らの疾走は止まらない。
それこそが遥か万里の彼方を目指した、征服王のあり方なのだから。
…†…†…………†…†…
こうして、アインツベルン城攻防戦は幕を閉じた。結果は両陣営の痛み分けであったが、その実情には大きな差があったと言える。
互いの被害は、
セイバー陣営:城の完全崩壊 令呪の一画を消費。アイリスフィールと舞弥の負傷と起源弾消費。
ランサー&アサシン陣営:ケイネスの右肩負傷。
結果として、アサシン・ランサー連合は最小の被害でセイバー陣営に痛手を与えたと言える。
その結果が今後どのような波乱を巻き起こすのか、それはまだ、誰にも解らない。