結局、私の心を声に出せず、その日の面会時間は終わった。
レイのデータに、母はいくつもの教導ビデオを入れてくれたらしく、退屈することはなかった。
私のこの魔力については言及せず、また後日検査があるとだけ伝えられた。
私が使っていた情報端末は、どこかで落としてしまったらしく、ミユちゃんには連絡が取れない。
その上ここは、どうやら普通の病院とは違うらしい。
完全な個室、窓から見える門には管理局の職員らしき警備、入る車両は管理局の車両やその他公用車、そして検査のために来た先生が開ける扉の先に見える武装局員。
部外者完全面会謝絶のその病室で、私はあの時のビデオを見る。
私となのはさんが戦った、あの時のビデオを。
あの時の感覚を思い出す。
緊張感、温度、湿度、痛み、興奮。
その他全ての感覚を、頭の中で再現する。
そして、その中の私と、理想の姿を照らし合わせる。
そうすると、あの時の私と理想の姿は、全く違っているのに気がつく。
そして、空への思いを募らせる。
また飛びたい、素直にそう感じた。
次の日は、バルドさんが病室へとやってきた。
身体の具合はどうだとか、さみしくないかと尋ねてきた。
私が大丈夫だと伝えると、バルドさんは安堵したような顔をする。
やはり、この私の魔力に関することについては言及してこない。
リア「ねえ、ワルプルギスって何?」
唐突に、そう尋ねる。
バルドさんは、急に顔を伏せ、それについてはまだ言えないと、私に言った。
結局、その日の面会時間も終わってしまった。
その日の夜、私はレイと話をしようと思った。
レイになら、何でも話せると思ったからだ。
リア「ねえレイ」
レイ『どうしましたか、マスター』
リア「私、レイと出会った時、管理局に入ろうと思ったんだ」
レイ『なら、その思いをご両親伝えればいいではないですか」
リア「うん、そうなんだけどね...母も父も、まるで私に、管理局に入ってほしくないって思ってるみたいなんだ」
レイ『何故です?少なくとも私にはそうは感じられませんでしたが』
リア「二人とも、私が魔導師になりたいって知ってるはずなんだ、そして私が魔力を手に入れて、何故か落ち込んでる...変だと思わない?」
レイ『確かにそうかもしれませんが...』
リア「ブラックフェンリルについても、何も教えてくれなかったし...絶対、何か隠してる」
レイ『では、マスターは一体、どうするおつもりで?』
リア「...それがわからない、この気持ちや考えを誰かにぶつけるべきなのか、それとも私の中で抑えるべきなのか」
レイ『ご両親に直接言ってしまうのは?』
リア「それはダメ、そんな事を言ったら...」
レイ『本当に嫌われているのだと思われてしまう...そうですね』
リア「...うん」
レイ『お優しいですね...ではいっそのこと、私達を撃墜した高町なのはとか言う人物に聞いてもらうのはどうでしょう』
リア「そんなに都合良く会えないよ」
レイ『さて、それはどうでしょう...』
次の日、マギさんが病室に訪れた。
仕事は?と尋ねると、休暇をもらったのだと答える。
それでも午前中は、ガジェットの襲撃の後始末をしていたのだという。
それ以降、会話らしい会話は成立せず、ただ、静かな時が過ぎていった。
その静けさを壊したのは、とある人物の来訪であった。
?「失礼します」
その声は、私がしっているあの人の声だった。
その人が入ってくると、マギさんとその人がお互いに敬礼し、すぐにそれをとく。
そして、頭を下げた。
なのは「申し訳ございません、今回は、私めの不甲斐なさが招いてしまった...」
なのはさんが、私に向かって謝って来た。
突然のことに驚きながら、私は言葉を発しようとする。
リア「え?あ、あの、そんな...顔を上げて下さい」
なかなか次の言葉が決まらない。
目の前にいる人物は、私の憧れの人物だ。
応援してますとか、お仕事頑張って下さいとか、色々言うべきことはあるはずなのに...。
そして、私が顔を上げたなのはさんに言ったのは、あまりにも自分勝手で、お約束なものだった。
リア「え、えっと...サイン下さい!」