ポカーンとするなのはさん。
その後ろにいる女性も、ポカーンとしている。
私自身ですら、何を言っているのかわかっていなかった。
唯一、マギさんだけが笑いを堪えようとしていた。
なのは「え~、えっと...今私、ペンも何も持ってないから、サインできないんだ...ごめんね」
リア「いいい、いえ、めめめ、滅相もございません!...っていや、私何をいってるのだか...!」
やはり笑いを堪えようとしているマギさん...あ、いや、もう堪えてない、空気を読まず大爆笑している。
?「あの~、マギ執務官...これは一体...」
なのはさんの後ろにいる女性が、母にそう尋ねる。
マギ「あはは、八神はやて一佐、あなた方の心配ごとは完全に杞憂だったということですよ」
八神と呼ばれた女性は、さらに質問する。
はやて「いやいやマギ執務官、それでは答えになってません!」
マギ「最初から起訴などするつもりなどなかったということだよ、見ての通り、この子は高町一尉のファンだしね、そんな子が憧れの人を起訴なんてできるかい?いやはや、あなたたちの本気で沈んでいる顔も、ポカーンとした顔もなかなか見れたものじゃないし、なんだかイタズラが成功した気分だ」
はやて(呆れた...さっきまでの自分が馬鹿みたいに思える...)
なのは(私の...ファン?)
リア(わ、私ったら、もっと言うべき言葉っていうものが...)
マギ(あらあら、どうやら三者三様のことを思ってるみたいね...やはり、なのはさんに任せるべきかしらね...)
マギ「まあまあ、八神一佐もそんな呆れた顔をしないで下さい、高町一尉も、いつまでもほうけてないで...リアも、これからお世話になる人に、いつまでもそんな顔を見せないの」
リア「へ?」
突然そんなことを言われて驚く。
なのはさんや八神さんも驚いている。
マギ「八神一佐は、うちの子を使いたがっていた一番の人物、高町一尉は教えがいのある人を育てたがっていたし」
はやて「た...たしかにそうですが?」
なのは「でも、本人の意思は...」
マギ「リア、あなたは以前、なのはさんと一緒の空を飛びたいって言っていたわよね」
そんなこと...もう8年も前のことをマギさんは覚えていてくれた!?
マギ「その意思が変わっていなかったら、行ってきなさい、今のあなたには、翼があるのだから」
一昨日のマギさんとは違う、まるで私に何か隠してると思うような母ではなかった。
ならば...私は、迷う必要などない。
リア「...よろしくお願いします」
その時の八神さんのガッツポーズと、なのはさんの眼差しは、忘れられないものであった。
バルド「本当にこれでよかったのだな?」
マギ「ええ、全てから遠ざけて暮らさせるよりも、むしろあの人達なら...【目覚め】てしまった以上、むしろその方が...戦い方と戦うべき相手について知っておく方が安全だわ」
執務官専用のその部屋には、私と夫のバルドの二人しかいない。
バルド「しかし、ワルプルギスがまだ気づいていないとはいえ、奴らの狙いは自然とリアへと変わって行く、そうなれば、管理局はリア自身に封印を...」
マギ「そんなことを、あの人達が許すと思う?
バルド「...そうだな、確かにそうだ、...では次の問題だ」
提示された名簿、これまでのワルプルギスの被害者リストである。
バルド「これを、リアに見せるべきかどうか...」
管理局襲撃翌日の日付、ごく一部の者にのみ渡された極秘リスト。
マギ「流石に、今のあの子には荷が重過ぎる」
顔写真付きのリストに写る、あどけなさが若干残る少女、家にも幾度か訪れたこともあるその少女...。
ミユ・ファランドール
彼女の名が、しっかりとそこにあった。
マギ「おそらく彼女も...」
バルド「ああ、おそらくやつらの手の内にあるのだろう。彼女だけでなく、このリストに載る全ての者が...」
マギ「でもこれではっきりしたわ。一年前の事件、そして今回の事件...やつらの目的は変わらない」
バルド「...呪われた運命だな、私達も、リアも。いや、そう仕向けたのも私達か」
マギ「過去の誤ちを償う...そう考えること自体が、既に間違いだった。私達は、ただ厄介事を彼女らに押し付けただけだわ」
バルド「例えそうだとしても、私達のやることに変更は無い。...コレを、彼女達に渡しておいてくれ」
バルドはそう言いながら、私のデバイスに向けて、あるデータを渡す。
マギ「本当にいいのね?」
バルド「ああ、せめてもの懺悔だ」