「消え失せろ。織斑一夏!!」
巨人の姿に変身した2人。溝呂木と一夏だ。元は2人とも同じ存在。だが、今はお互いに攻撃をぶつけ合うだけだった。辺りに打撃の音や光線の発射音、爆発音。血の様に飛び散る光。突入した専用機持ちと白式の居る空間は、その音に支配されていた。専用機持ち達は何もできず、ただただ見てることしか出来ない。
「私たちには……何も出来ないのか……同じ存在でありながら、お互いに憎しみや怒りをぶつけ合う友を、助けることすら出来ないのか?!」
箒は無力な自分を嘆いた。幼馴染みで親友である一夏を助けることが出来ない。そんな無力な自分が悔しくて仕方無かった。それは他の専用機持ち達も同じだ。ISと言う力を持っていながら、目の前の状況をただ見てるしかできない。何も出来ないことに不甲斐なさを感じている。
『無理もありません。彼らの戦いには、既に我々が介入する事は出来ませんからね。しかし……』
「ん?白式、どうかしたの?」
確かに戦いへの介入は不可能だ。この人知を越えた戦い。呆然と見ていることしか出来ないのは分かる。だが、白式はある違和感に気付いた?その事を考えていると、デュノアがそれに気付き何事かと聞いてきた。
『本来なら、互いの存在を消すために戦っている人同士の間には、怒りや憎しみがあり、それをぶつけ合っている筈です。ですが、2人からはそう言った感情は感じられません。怒りや憎しみではなく、酷い悲しみや絶望が2人から感じられます』
「分かるのか?一夏は兎も角、溝呂木まで」
『はい。マスターの感情は、マスターが私をまとっている時に常時感じ取ることが出来ます。これは他のISも同様です。そして溝呂木の感情は、本来彼はマスターと同じ存在ですので、その影響でしょう』
白式の説明を聞いて、一夏達の感情が分かる理由が明らかになった。この理由には納得する。だが納得出来ないのが、2人に悲しみや絶望が感じられると言うことだ。お互いの存在をかけているのにだ。
「何と無く……分かる気がする」
白式の言う一夏と溝呂木の感情に、ラウラは理解できると言った。彼女にはその気持ちが分かるようだ。
「どう言うこと?」
「2人は対極の位置にいる。一夏にとっては、溝呂木は自分に絶対必要な物の一部。溝呂木にとって、一夏は、自分のなりたくてもなれない自分の姿。それを殺すと言うことは、自分の最も望むものを否定することだ。なりたくてもなれない。その気持ちは私にも分かる」
VTシステムに飲み込まれたときの事だろう。VT発動のトリガー。それは唯一無二の最強の力を求めたこと。だが、その根底には、自分が織斑千冬と言う存在になりたかったと言うものがある。なれる筈の無い自分以外の存在になろうとし、不可能であることを理解すると絶望する。その気持ちをラウラは知っているのだろう。
「ハァア!」
「グワァ!!」
2人の戦いが激しくなるが、ついに一夏の攻撃を溝呂木がまともに受け、膝を付いてしまった。
「これで、これで終わりだ!溝呂木!!ッグワァ!?」
腕をL字に交差させて、オーバーレイ・シュトロームを放ち、この戦いを終わらせようとした。だが、その時に全く別の方向から光線が飛んできて、一夏を吹っ飛ばした。
「誰だ!!」
「ダメじゃないか一夏。1人で戦いに出ては。1人の力で戦おうとするから、こんな抜け殻風情に押されてしまうんだぞ?私が手を貸してやる」
「黙れ!!お前ごときに手を出されるほど、落ちぶれちゃい無い!!」
「まぁそう言うな。そこで休んでろ」
現れたのはダークメフィストツヴァイ。ここに来るときに溝呂木が吹っ飛ばした織斑天十郎だ。ツヴァイはここに来ると、メフィストクローから光弾を放ち、一夏を吹っ飛ばしたのだ。
ツヴァイはゆっくりと歩きながら、溝呂木と一夏の間に入り、一夏と戦う体勢をとった。
『これは不味い……皆さん、下がってください!早く!』
白式が焦るように伝えると、全員急いで後ろまで下がった。
「ウッ……ハァハァ、ッグ!?」
「ハァアアア!!」
「グワァァアアア!!」
ツヴァイは一夏の首を掴むと、地面に全力で叩き付けた。その一撃で、この建物全体が揺れた。それは壁に亀裂を入れるほどの衝撃だったのだ。
一夏は立ち上がると、急いで距離をとるが、ツヴァイはメフィストクローを展開し、追撃をかけた。とんでもないスピードで繰り出される突き。なんとか避けているが、ダメージが大きいため、ついにその攻撃を受けてしまった。
「グワァア!」
「せっかくだ。お前の光の力も貰っておこう」
そう言うと、エナジーコアに手を当て、光のエネルギーを吸いだした。
「ウァァァァア!!」
『止めろォォォォ!!!』
「うるさいハエだ」
『ガァア!』
光を吸われ、苦しむ一夏を見ると、白式が雪片を展開してツヴァイに攻撃をした。だが、ツヴァイにとっては白式の行動など、ハエが飛んでいるのと大差ない。手で弾いてしまった。だが、それは白式にとっては大きなダメージだ。壁に叩き付けられ、めり込んだ。
「白式、良いことを教えてやろう。コイツの命はなぁ、そろそろ燃え尽きる。精神を分離され、体は幼児退行。そんな状態で、コイツが寿命を全うできると思うか?」
『ッ!?』
「近い将来。明日かもしれない。コイツは死ぬんだ。少しでも生かすのが、お前の役目じゃないのかぁ?」
会話している最中に、相当の光を吸われたようだ。エナジーコアが鳴り響き、全身の力が抜けたようにグッタリとしている。
「さぁ一夏。今こそ同化の時だ!」
「…………」
「何をしている!?早く同化するんだ!!」
一夏を溝呂木の近くに投げると、天十郎が早く同化するように言うが、溝呂木は黙っている。
「どうした!?お前は本当の自分になることが目的じゃないのか!?」
「じきに死ぬ。か……」
「そうだ。ソイツが死ねば、お前は戻る体を失うんだぞ!そうなってしまえば、ソイツが死ぬのと同時にお前も消滅することになる!分かっている筈だろ!!」
「ならこうすれば良いだけの話だ」
右手に闇の力を集中させると、一夏を掴んで立たせ、エナジーコアの中に闇を入れた。
「ウワァア!アアァ……」
闇を入れられ、悶え苦しみ、一夏は変身を解除された。これだけを見れば、溝呂木が一夏にとどめを刺した様に見えるが、一夏の変身が解除された直後、溝呂木は自身のエナジーコアを鳴らして膝を付いていたのだ。
「ハァハァ……こうすれば、本体が消えることは無い」
「ナッ!?お前……まさか!!自分の力を入れたと言うのか!?バカな!だったら何故!お前は巨人の姿を維持できるんだ!!?」
天十郎の焦り方から、溝呂木が行ったことは完全に想定外の事。しかもそれだけではない。何故維持出来ていると言う言葉から、可能性はあるが絶対にやらないと高を括っていた行動の様だ。
「おいお前ら!本体を連れてさっさと逃げろ。30分だ。30分もすれば、ソイツは本当の自分になっている筈だ」
「溝呂木……一体何を―」
したの。と鈴は言いたかったのだろうが、これ以上ここに居られても邪魔なので、メフィストの力で外に転送したようだ。
「一夏……貴様……!自分が何をしたのか分かってるのか!?お前は、あの抜け殻に自分自身を入れたんだぞ!30分で抜け殻が元の姿に戻ると言うことは、お前は自分の中にある闇の力の大半を注いだことになる!自分の消滅が早まるだけだぞ!!」
「上等だ。それまでにお前を消して、その後に本体を消す。これなら何の問題もない。そもそも、俺1人の問題に、第3者が関わるのが気に食わない」
「ック……まぁ良い。お前がその行動を取ると言うなら、私もお前を完全に消去しよう!」
溝呂木の行った行為。それは自殺にも等しい。自分と言う存在の大半を本体である一夏に戻したのだ。こうでもしないと、一夏はすぐに消滅してしまう。それに気付いたのだろう。一夏との一騎討ちの勝負を望んでいる溝呂木のすることは1つ。自分と言う存在を本体の中に流し込み、少しでも延命させる事。しかしそれには大きなリスクがある。自分の寿命が急激に無くなることと、メフィストの姿を維持できないことだ。加減を間違えば一瞬にして消滅する。天十郎が驚いていた理由がこれだ。
そして、天十郎はそんな溝呂木の行動を見て、もうどうでも良くなったようだ。溝呂木だけは生かしておくつもりだったようだが、完全にその気は無くなったようだ。殺して闇の力を吸い取る事しか考えていない。
次回もお楽しみに!感想と評価、『教えて!憲八先生!!』の活動報告と、無気力な救世主の座談会参加の活動報告もよろしくお願いします!!
座談会に参加はしないが、質問はあると言う方、それも座談会用の活動報告にて受け付けております。質問だけあると言う方は、どうぞ書き込んで下さい。座談会にてお答えします。
まぁ人数が多い事は無いだろうけど、多くなってしまった場合は……漏れなく全員参加です!!