「ん?ここは?」
「ッ!一夏!目が覚めたか!」
「あれ?お姉ちゃん?何で?」
旅館の近くに着くと、調度一夏が目を覚ました。福音に連れていかれ、天十郎の変身するダークメフィストツヴァイと戦ったのだ。しかもその戦いで生命エネルギーのほとんどを消費。溝呂木が自らの生命エネルギーを入れなかったらとうに消滅している状態だった。
それなのに目が覚めたら、目の前には千冬がおり、旅館の近くに着いていた。戸惑うのは当然なのかもしれない。そして、一夏が目が覚めた後に、溝呂木を抱えた白式が到着した。
『お待たせしました』
「イヤそんなに待っていない。むしろ早かったぐらいだ」
千冬が白式にそう言うと、溝呂木が白式の腕から降りてダークエボルバーを取り出した。それを見ると、一夏もポケットからエボルトラスターを取り出し、溝呂木の元へと歩いていった。
「……………」
2人が何をするのかを悟ると、全員大人しく後ろに下がった。それを確認すると、2人は自分の持っている変身に使う道具を振り上げて、お互いを叩き斬る様に降り下ろした。
カーンと言う金属同士のぶつかる様な甲高い音が響き渡り、ぶつけ合った衝撃で、ダークエボルバーは両サイドに引き伸ばされ、エボルトラスターは鞘が飛んでいった。それにより、溝呂木はダークメフィストに、一夏はネクサスへと姿を変えていった。一夏は最初からジュネッスの状態だ。ただ、お互いにエナジーコアは点滅している状態だった。
「ハァ!」
「シャア!!」
溝呂木がメフィストクローから光弾を放つが、一夏はアームドネクサスでその攻撃を受け止め、闇のエネルギーを光のエネルギーへと変換し、溝呂木に撃ち返した。
「ッ!?」
その攻撃を防ぐまでの余裕がなく、もろに受けてしまった。着弾すると大きな爆発が起り、溝呂木を飲み込んだ。だが、その一撃で勝負が決まるはずは無い。膝を着いてはいたが、溝呂木はそこにいたのだ。
「負けない……断じて負けはしない!」
立ち上がると、今度は上空へと飛んだ。一夏もそれを追いかけて空を飛ぶ。空中で繰り出された2人の攻撃は、空気を震えさせ、鈍い音がかなりの範囲に響き渡った。
「ハァァア!!」
「フッ!ハァ!!」
溝呂木を掴んでダメージを負わせようとしたが、力ずくで振りほどかれ、逆に蹴りを入れられて落ちていった。そんな一夏に、溝呂木は拡散する光弾を放って追撃を仕掛けた。それが目に入ると、一夏はすぐに自分の後ろを確認した。攻撃を避けることは簡単だが、自分の後ろには千冬達がいる。避ければ確実にそっちに直撃だ。
「デュァアア!!」
無理矢理体勢を変えて、皆の前に降り立つと、シールドを展開して全員を攻撃から守った。
「シュワァア!!」
攻撃が止まると、後ろにいる全員の無事を確認し、再び空へと飛び上がった。下にいる皆に被害を出さないために、全力で拳を叩き込み、その場から引き離した。
「グッ!……ハァ!」
空中で勢いを殺し体勢を安定させると、闇のエネルギーを溜めてダークレイ・シュトロームを撃とうとした。一夏はそれを見ると、自分も光のエネルギーを溜めて、最強技であるオーバーレイ・シュトロームを放つ準備をした。
「ハァァア……トァア!」
「ホォォォ……デュア!!」
2つの光線がぶつかり合うと、+と-のエネルギー同士の激突。だが、威力は同等の物。互いに決めるために、徐々にお互いの距離を詰め始める。だが、近付くに連れて反発するエネルギーの量はどんどん大きくなっていき、相反するエネルギーの相互崩壊により凄まじい爆発が巻き起こり、その爆発に2人は吹き飛ばされてしまった。
「あぁ……ハァハァ……」
「うっう……」
エナジーコアの点滅は更に早いスピードになり、お互い瀕死と言える状態になっていた。だが、それでも2人は立ち上がった。自分と言う存在を確立させるために。そして、2人は自分の中に残ってる全てのエネルギーを右手の拳に集中させ、走り出した。
「ハァァァァ……ハァアア!!!」
「デリャアア!!!」
お互いに最後となる攻撃。全力で自分の全てを懸けた拳。その2つがぶつかり合うと、一瞬空間が歪むと、闇と光が2人を包み込んだ。次に2人の姿を確認できたのは、闇と光の靄が消えてからだ。だが、それは巨人の姿ではない。変身の解除された人間の姿でだった。
「ッ!?一夏!溝呂木!おい!!目を覚ませ!!」
倒れている2人に駆け寄り、揺さぶるが全く反応がない。まさかと思い、香華が2人の首に指を当てて脈を確認するが、予想していた通り動いていなかった。2人は死んでいたのだ。
「室江先生……2人は……?」
恐る恐るデュノアが香華に2人の事を聞くが、香華は顔を上げて大人しく首を横に振るだけだった。それで分かったのか、箒と鈴が膝から崩れ落ちて涙を流し、他の3人は後悔するように俯いていた。
「クッ……一夏……一夏、済まなかった……助けることが出来なくて……お前達2人を救えなくて……」
千冬も大粒の涙を流している。唯一の肉親。光と闇の2つに分離した特殊な状況だったが、血の繋がった家族であることに変わりはない。それに千冬は全ての事情を知っていた。にも関わらず救えなかったのだ。その悔しさが波の様に襲ってきたのだろう。だが、
「ん?……ッ!?離れろ!!」
突然香華の放ったこの一言。それに反応するように、全員一夏と溝呂木に目を向けた。香華は動けない千冬を引っ張ってその場から離れ、一夏と溝呂木に目を向けた。
次の瞬間、溝呂木の体からは闇の球体、一夏の体からは光の球体が現れた。その2つは空中で1つに交わると、徐々に大きくなっていき、2人はその球体の中へと入っていった。
「これは……一体……」
「何が起こってるの……?」
全員その光景を見ているしかなかった。巨大な球体が出来たかと思うと、その中に2人が吸い込まれてしまった。呆然とするしかない。次に2人が球体から出てきた時、その姿は一夏の姿でも溝呂木の姿でもなかった。全く別の人間の姿だったのだ。
「……俺は、一体……」
「一夏……なのか?」
「千冬姉、皆……そう言う事か」
「本当に……一夏なんだよな?そうなんだよな!?」
「そうさ。長い間、大分迷惑をかけたな」
「あぁ……本当だ!2年前に急に光と闇に別れて、戻る確証もなく、雲を掴むよう可能性の中で、どれ程お前が帰ってくるのを待ちわびたと思ってるんだ!」
「苦労かけたな。悪かった……イヤ、違うか。言い直そう。ありがとうな。千冬姉」
球体から出てきた1人の少年。それは光でも闇でもない、2つの心を持った織斑一夏と言う普通の少年。久し振りに見る本当の姿と聞き慣れたら喋り方。千冬はそれを体感すると、堪らなく嬉しくなり、思いっきり一夏に抱きついた。
「一夏……なの?」
「あ、やっぱりこの姿じゃあ分かりにくいか。でも、正真正銘、俺はお前らの知る織斑一夏さ」
箒と鈴は久し振りに聞く喋り方に戸惑い、オルコットとデュノア、ラウラは初めて見る一夏に戸惑っている。だが、それはじきに無くなるだろう。これで、織斑一夏と言う少年に起きた数奇な運命は幕を閉じた。光と闇。人間にとってはどれも大切な要素。片方を失い、自分自身と戦い続ける日々が今終わったのだ。これで本来の生活に戻れる。千冬はそう確信した。一夏もだ。他の連中もまだ戸惑う部分はあるが、じきに慣れる。そうなればいつもの日常に戻る。そう。少なくともこの時はそう思っていた。
『臨時ニュースをお伝えします。世界初の男性IS操縦者の織斑一夏氏が今日未明、自身の専用機である白式を所持し、IS学園から逃亡しました。繰り返しお伝えします。世界初の男性IS操縦者、織斑一夏氏が今日未明に専用機を所持して、IS学園から逃亡しました。これを受け、政府は国外逃亡の可能性があるとして、織斑一夏氏を国際指名手配しました』
そう。あの時は普通の生活が戻ると思っていた。だが、その4ヶ月後、一夏は突如として、この慣れ親しんだ友人と家族の前から姿を消すことになるのだ。
次回からはオリジナルストーリーに入ります。そして、うp主が初めて見て、ウルトラマンを知る切っ掛けとなったあの映画の宇宙人が登場します。一夏が姿を消すきっかけとなったのは一体?
次回もお楽しみに!感想と評価、活動報告もよろしくお願いします!!