現代傭兵の異世界休養録   作:フリズム

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二話目ーニ

こつこつ、と、木製の床を踏み鳴らす音が聞こえた。

 

「ん? 達哉殿、その方とお知り合いで?」

「んや、顔を見たことがある程度だ」

「そうですか、では、何かわかりまして?」

「ああ、それだが。」

 

 

―――厳密にはまだ盗賊は壊滅してないらしい。

そう聞いた支部長は、慌てて勇者御一行を追っていった。

 

 

 

~~~

「ふむ、冒険者の連中が、盗賊に街を襲われた夜、道なりに追っていったら、多くの人数で襲われたと報告されたので、壊滅したと踏んだのですが...」

 

顎を擦りながら話す支部長に、勇者が言った。

 

「でも、支部は壊滅させられ、本部も大打撃を受けたと思うのですが? 少なからず、直ぐにも復讐に来れると思わないのですが」

 

この場には、達哉に会ったことが有るらしい勇者御一行の一人と、勇者、それとギルド支部長、達哉がいた。

 

「もし、そこまで大規模な組織だったとすると、人員を整えて、復讐に走ることも容易いかも知れないがな」

「でも、もし。 でしょう? 復讐されるとは限らないじゃないですか」

「そのもしは、どちらが絶望的だ?常に最悪を想定して動かないと、それこそ殺されるだけだぞ」

 

溜め息をついてそう勇者に返すと、鼻で笑われる。

 

「僕には聖剣とスキルがあります。奇襲されても問答無用で追い返せます。 だから、あなた達の一般人と同じに捉えて頂かないで貰いたい。」

 

うわぁ嫌な奴、と顔をイラつきで吊り上げつつ、取り敢えずは平常心を保つ。

 

「でも、僕たちの仕事を取った張本人でしたっけ」

「まあ、遅かったお前らが悪いわな」

 

勇者が明らかに怒ったのが目に見えた。

 

「じゃあ、ギルド支部長。 たまに地下室借りるかも知れないが、良いか?」

「ああ、大丈夫だ。 話は受付に通して置こう、私はまだ、勇者殿と話があるので、また後で」

 

そう言うと席から立ち上がる。すると、何やら勇者に御一行一人が話しかけ始めた。

 

「ん、良いよ。好きにして大丈夫、他に戦闘できる職を持っている子が居るから」

「ありがとう、柳瀬くん」

 

柳瀬というのは勇者の名字なのだろうか。

 

「あの、私にもお供させてください。」

「良いのか? 勇者とはぐれて」

「大丈夫です。国王から、暫くは伝達があるまでフォトルヌスに居ろと命じられましたし、私一人抜けても戦力は落ちませんから!」

 

自信満々に言う。

 

「はあ、まあ良いか、じゃあ、一人借りてくぞー」

「達哉殿、また、ゆっくりと話をしよう!」

 

そう言ってくれる支部長に手を振りながら、扉を開け、部屋を後にした。

 

 

 

 

~~~

「で、何で勇者パーティーの、しかもかなり可愛い子を引き込んで来たのですか」

シルヴィとシャノンにギルドの酒場で合流すると、シルヴィに頬を膨らませてプンスカされる。

 

「んなこと言われても。 まあ、護衛の為にクソ勇者がつけたんじゃねーか?」

「達哉に護衛は要らない。そもそも私がいるし、護衛されるほど達哉は弱くない」

「だけど、万が一の場合が...」

 

まあまあと収めつつ、そろそろ午後も良い時間になったので、軽く軽食を取り、フォトルヌスに来て巡る予定だった、店を回ることにした。

 

 

 

~~~

「達哉さん、どうですか、これ?」

いつも西洋風の、村娘風なファッションに、カーディガンを羽織っただけだったシルヴィが、立ちながらスカートをつまみ、ブラウスを着ているのを見ると、何処か落ち着いた雰囲気と、何も言えない新鮮味があった。

 

「ホントに買って良いんですか?」

「まあ、新しい服を買っておくっていう計画だったしな、シルヴィがそろそろ冷え込む時期だって言ってたしな。 服は買いそろえておいた方が楽だろ。」

 

シルヴィは、自分で少しの距離を歩くことはできるのだが、長い間歩く等が出来ない足の障害を持っている。

 

「し、シルヴィさんは立って大丈夫なのですか?」

「まあ、あんまり無理はさせたくないが、本人が立ちたがってるから、まあ、大丈夫だろ」

 

ん、と、頭に引っ掛かる物を感じ、首を捻ると、急に思い出した。

 

「ああ、そうだ。 お前の名前って何だっけ?」

「あっ。名乗っていませんでしたね... 私は古庄知秋と言います。 お好きなように呼んで下さい!」

「じゃあ、古庄で良いか」

 

すると、外套を後ろから引っ張られた。

 

「達哉、これでも良い?」

 

普段の簡素な服ではなく、ゴスロリ調の、白黒のフリルがついたドレスを着ているシャノンがいた。

 

「ん?、割りとそういうのも似合うな」

「ありがと」

 

その場に一回転をし、ドレスの裾を膨らませると、嬉しそうに笑ったシャノンの顔があった。

 

 

 

 

服を買い、インベントリに服を入れる。

 

「あの、宿、どうしましょう」

「そうだな... って、どうした、シャノン」

 

袖を申し訳なさそうに引っ張るシャノンに振り返る

 

「ごめん。毎回歩いてたけど、私、転移魔法使えたっけ」

 

その後、俯くシャノンを宥めながら、転移魔法で取りあえず家に帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様です。ふりずむです。
うぇ~。 遅くなりました。
うーん。土日に話数稼げるかな...

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