『貴方のせいよ…』
脳裏に焼き付いた不気味な笑顔は私に安静を与えてはくれなかった。
「クソッ…クソッ…」
無意味に壁を殴り付ける。自傷行為にも似た何かの儀式を行い、悪い夢を覚まそうとする。やはり、私はここに居てはいけないようだ。ここには彼女に関するものが多すぎた。
「やはり、私の居場所は戦場なのだな…」
そう言ってエンタープライズは母港を去った。
「何?エンタープライズがいないだと!?」
突然の事態に皆慌てふためく。先日のヨークタウンに続き主力の彼女まで居なくなるとなると戦闘継続は困難を極める。
「指揮官、なんでエンタープライズはいなくなったんだ?」
それよりもクリーブランドの言うとおり、問題は"何故"いなくなったかだ。
「ホーネット、何か知らないか?」
「べっつにぃ~?」
ホーネットは何も知らない身振りをしている。あの姉妹はとても仲が悪く、特にヨークタウンとホーネットはかなりの劣等感を感じていたようだ。やはり手を打つべきだったか…
「ただ、指揮官宛にこれはあったよ?」
ホーネットはそう言って一通の手紙を差し出す。
そこには彼女なりの謝罪と言い訳が書いてあった。
『指揮官へ。突然いなくなってすまない。本当は相談したかったんだが、失望されるのが怖かったんだ…弱い私を許してくれ。私にはここにいる資格がないみたいだ。だから私は戦場で生きる。皆の幸せを願っている。さよなら』
最後の方の文字は少し滲んでいて涙の跡があった。
悔しかった。指揮官として。
「指揮官?私も止めはしたんだけど…エンタープライズが言うことを聞かなかったの!」
ホーネットは白々しく猫のようにこちらの同情を誘っているのだろうか。もしくは本心はそう思っているのかもしれない。
「そうか…エンタープライズは戦闘海域にいるようだ。応援にいくぞ。」
「ふふ…指揮官もちょろいわね。というか、まだ死んでなかったのねあのブス!いいわ、姉さんと同じ運命を辿らせてあげる…!」
ホーネットは歪んだ笑顔を鏡に写してした。そしてその姿をクリーブランドは見ていた。
「終わりだッ!」
眼前の敵が火を上げながら沈み、辺りは静寂に包まれる。虚しさがこみ上げ無意識に嫌な思い出が思い出される。
『お前が邪魔なんだよ!視界に入るだけで吐き気がする!二度と姿を見せるな!』
『手伝おうとしただけで…』
『ああ!?姉だからって調子にのってんのか!?そんなに戦果が欲しいかこの泥棒猫がぁ!流石、グレイゴースト様は違いますねぇ!』
こういう時は本当に自分が嫌になる。
歯を食いしばり、怒りにも似た感情を押さえ込む。
「なんで…上手くいかなかったんだろうなぁ」
弾薬が切れたことを悟り、寝床にしている小島に帰還する。
砂浜に寝そべり青い空を仰ぐ。
「指揮官…いや、だめだ…私はもう、決めたんだ。」
意を固めもう一度戦場に赴こうとした時、強い衝撃が横腹を襲った。
「ここにいたのかぁ!まだ生きてるなんてゴギブリ並の生命力ね」
「ホーネット…」
蹴りをいれたホーネットは何度も私の腹めがけて踏みつけた。
「お前の!せいで!こんな!とこまで!きたんだぞ!あぁ!?」
「グフッ…あぁぁ、す、すまない」
「謝って済む話じゃねぇんだよぉ!!」
意識が朦朧とし、怒りに歪んだ妹の顔を見ながらエンタープライズは神に祈った。
どうか…救いを、妹に救いを下さい。どうか…
「おい、何をしている?」
気付けばホーネットの後ろには艦隊の仲間に指揮官がいた。
「し、指揮官じゃないか!丁度エンタープライズを見つけたんだ!」
「ホーネット、もう演技はやめようよ。本当は違うんだろ?」
クリーブランドが冷たい目で告げる。
「は、はは。何言ってるのよ!こいつが、帰りたくないってただこねるからッ」
「ホーネット、お前は退役だ。」
指揮官はまっすぐに見つめてそう、言い放った。
「なんでよ!私は主力なのよ!そんなにあいつが大事なの!?いつもそうだわ…あいつばっかり!私だって頑張ってるのに!ふざけないでよ!」
ホーネットは半狂乱で吠えたてる。
誰かが私を抱き起こそうとした時、意識は途絶えた。
目が覚めると見慣れた天井があった。
周りを見ると一人には広すぎる部屋があり、誰も使っていないベッドが2つあることが悲しい事実を示していた。
心が締め付けられるような感覚が走った。これでよかったのだろうかと何回も自問自答した。
ふと窓の外をみると少しだけ火の手が見えた。
戦場が私を呼んでいる。
なんか途中からホーネットメインになってないか?と思う兄貴もいるかもだけど許してクレメンス。
感想とか書いてくれると嬉しい奈須!