夜ごとに恋人の部屋に忍び込んでいたが、ある日謎の電話かかってきて…

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第1話

私の父親がかつて不思議な話をしてくれた

父親が大学四年生の時のことである

つまり昭和の話だ

以下ややこしいので便宜的に『父親』という三人称を避けて『私』という一人称にして話す

私は夏休みには近所の二歳年下の恋人の部屋に夜間忍び込んでいたと言う

もちろん恋人の手ほどきでだが(要するに体のいい『夜這い』である)

しかしある時に不思議と言おうか怖い体験をしたのだ

いつも11時ジャストに電話をして恋人が電話を取ったのを確認して11時15分に階段の踊り場で合図の口笛を吹く

それを聞いた彼女が手招きして忍び込んでいた(意外と危ない父親である)

ある日恋人の方から電話がかかって来て早めに来ても大丈夫だというのだ

そして私はいつも通りにお勝手口を開けた

そこに階段がありすぐに恋人の部屋にいけるのだ

その夜もいつもの様に階段を上がり踊り場で口笛を吹くと恋人がふすまを開けて手招きして階段を上がって部屋に入った

いつもより一時間早い夜這いである

で二人がおしゃべりに興じていると11時が近づいてきた

私がいつも電話をかける時刻だ

『今夜も11時に電話がかかって来たりして』

と恋人をからかうと――本当に電話がかかって来た!!

私はダッシュで押し入れに飛び込んで戸を閉めた

何かあった時の為にいつも押し入れは開けっ放しにしてあるのだ(こういうことだけは用意周到な男なのだ)

しかも電話は二回鳴って切れた

私が電話をかけるいつものパターンと同じだ

私が押し入れから出てきて彼女も布団から這い出た

『いったい誰なの?』

と私が聞くと

『わかるわけないでしょう』

と彼女が答える

『もしかして俺だったりして!?』

と私が気味の悪いというかセンスのないジョークを言うと

『変なこと言わないでよ!!』

と彼女が怒って言った

そして11時15分になった

私が踊り場で合図の口笛を吹く時刻だ

またしても

『踊り場から口笛が聞こえたりして』

と私が彼女をからかうと同時に彼女が

『しっ!!』

と言った

私は再びダッシュで押し入れに飛び込んで素早く戸を閉めた

階段を上がる足音が聞こえてきたのである

足音は階段の踊り場で止まった

まさにいつもの私と同じパターンだ

しかしそのまま静寂が続く

一秒一秒と心臓が強烈に締め付けられる様な緊張感が続く

なぜ足音は踊り場で止まったきりなのだろうか?

そもそも誰の足音なのだろうか?

緊張感に耐えかねた私は彼女に合図の口笛を吹こうとしたが…

口笛を吹く直前にグッと押しとどまった

もし自分が口笛を吹いたら――踊り場にいる誰かが――階段を上がって来るのではないかと

と、思うと同時に足音は踊り場から下に降りて行った

遠ざかる足音を聞きながら私は心の底から安堵した

数分後に冷や汗まみれの私がやっとで押し入れから出て来ると彼女も布団から顔を出して不思議そうな表情をした

『変ねぇ お父さんが来たのかしら!?』

と彼女は言った

『二階には滅多にこないんだけど…』

そして冷や汗まみれの私を見て驚きタオルとシャツを出してくれた

『凄い汗ね 何かあったの?』

と聞く彼女に私は先程の口笛の件を話した

今度は彼女が青ざめた

と、同時に階段を上がって来る足音が再び聞こえ始めた

 


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