東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

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あらすじ

人里でたこ焼き屋を営む北郷一刀は幻想一無責任な男として有名である。言う事為す事全てテキトーで、あの地獄の閻魔ですら彼を前にするとお手上げ状態になる程。しかし、そんな一刀にはもう一つ別の顔があった。























とある会場にて……

文「文々゚新聞の記者兼幻想局テレビのキャスターを勤めております射命丸文(しゃめいまる あや)です。

これより東北伝の主人公を担当する事になった北郷一刀さんが謝罪会見を開くという事で我々記者達は会場に集まっています。

もう少しお待ち下さい」



……

………

…………。

文「…ちょっと到着が遅れているみたいですね」



……

………

……カシャカシャ、カシャカシャ←カメラのフラッシュ音

文「…あっ!来ました!!」




















一刀「えー…本日は、お忙しい中お集まり頂きましてありがとうございます。

この度、作者であるDoctor Kがやらかした失態につきまして、関係者を代表して主役の私、北郷一刀が謝罪と釈明会見を行いたいと思います。

まずは、えーっと……




















もし東打ち切っちゃってすみませんでしたぁ!!」

カシャカシャ、カシャカシャ

※カメラのフラッシュの光に注意してご覧下さい。




















和「質問宜しいでしょうか?」

一刀「…あっはい、どうぞ」

和「あの、まずはこの様な事態に至った経緯についてのせーー

一刀「ふぁーーーーーーーーーーッ!!(泣)」

オーーーイ!!泣くの早ぇよ!まだ何も聞いてねぇよ!!」

一刀「わ……私はぁ!!こんなポンコツもやし作者が書く小説をいつも楽しみに待ってくれていたファンの皆様には本当に感謝の気持ちでいっぱいでぇーーーーーーーーす!!

でもまたぁ、作者のサボり癖が発動してぇ!!

そうかと思ったら、突然もし東じゃ無くなってるし!!

○○(ピー)に至っては、PS4がやめられず!!

でもね、皆さんに何が解るんですかぁ!

○○(ピー)の何が解るって言うんですかぁーーーッ!!」

和「何言ってるのかよく分からないんですけど!?」

一刀「ですからぁ!!私がこの場で皆さんに伝えたい事はぁ、こんな感じだよぉーーーーーーッ!!
























……今謝ったんで、東北伝始まりまーす」

アッケラカン

和「ふざけるなぁ!!(怒)」ガスッ

一刀「ぶわふぁ!!」ピチューン



1.万事屋って言うと聞こえは良いけど要はパシられるのが主な仕事

 

【幻想郷】

 

かつては人間を喰らいし異形の存在として人間から恐れられてきた妖怪だが、時代の流れや科学の発展によりいつしかその存在は否定させる様になった。

 

そんな忘れ去られた妖怪達が集う最後の楽園……

 

それがここ、幻想郷である。

 

幻想郷には妖怪は勿論、神様や幽霊、更には吸血鬼と多様な種族の人あらざる者達が和気藹々と過ごしている。そしてそこには驚く事に人間も居る。

 

ではその人間達は一体どこに住んでいるのか?妖怪達が犇めくこの世界に人間が居たらまず間違いなく妖怪の餌食になる筈。

 

しかし心配は無用。この幻想郷には人間達の身の安全が確約された人里なる場所が存在する。

 

人里は古き良き日本の街並みを再現した様な造りとなっており、その中には八百屋や書店、更には寺子屋など施設は豊富であり人間が普通に生活する分には割と困らない。

 

そんな人里の中心に位置する場所にやたらデカイ看板をぶら下げた店がデーンと構えてある場所があった。

 

中を覗いてみると店の中では店主らしき青年が竹串を片手になにやら忙しそうに鉄板の上で焼かれている物体をコロコロと回していた。

 

その店の名前は、たこ焼き かっちゃん堂。

 

そう、青年が焼いている物体の正体は日本人なら誰もが知る食べ物……たこ焼きであった。

 

青年は鼻歌交じりに鉄板で焼かれているたこ焼きをクルリとひっくり返している。相当手慣れているようだ。

 

客「店主、たこ焼きを二箱」

 

??「あいよ。毎度あり!!」

 

注文を受けた青年は威勢の良い声で応え、たこ焼きがよく焼けているか確認して焼けたやつを串を突き刺して竹で作られた箱に詰める。

 

ところがその最中青年は何を思ったのか、串に刺しているたこ焼きを一つ手に取ったかと思うとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パクッ、モグモグ……

 

??「おぉ~、今日も中々の出来じゃねぇか。流石俺」

 

至極ご満悦な表情で客に提供する筈のたこ焼きを食し、自らが作ったたこ焼きを自画自賛する青年。注文した客は青年の商売人らしからぬ行動に唖然としていた。

 

と、青年の背後から手が伸びてきてーー

 

ガンッ!!

 

??「何やってるんですか!?御客様に失礼ですよ!!」

 

??「ぶべらぁ!!」

 

怒号と共に颯爽と現れた少女により青年の顔面は鉄板に叩きつけられた。

 

??「何回同じ事を言えば気が済むんですか!!もうつまみ食いは止めて下さい!!」

 

少女の言葉から察するにどうやらこの青年はつまみ食いの常習犯であるらしい。つくづく商売人が取る行動とは思えない。

 

それにしては少女の行動がやや(?)突飛している気がしてならないが……

 

??「分かったから!!あぁー!!顔が焼ける!顔が焼けちゃうぅ~!!」ドタバタ

 

??「いっそその腐った脳みそも焼かれてしまえ!!」グリグリ

 

??「ア"ァ"ーーーーーーーーッ!!」

 

まるで容赦の欠片も無い少女の攻撃に青年は断末魔の叫びを上げる。

 

その様子を客は呆然とした表情で見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

【万事屋って言うと聞こえは良いけど要はパシられるのが主な仕事】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だいぶ紹介が遅れてしまったが青年の名は北郷一刀(ほんごう かずと)。人里でたこ焼きを売るたこ焼きかっちゃん堂の店主である。

 

服装はどう見ても学生服の様なデザインをしたこの辺では珍しい格好をしており、各々のパーツが整っているからか顔立ちは良い(ただし死んだ魚の様な目をしているが)。

 

しかしその自慢の自称ハンサムフェイスもたこ焼き専用の鉄板で焼かれたが為におかしな火傷の仕方を負い大変哀れな姿になっているが……

 

そしてそんな一刀には目も繰れず机の上で本日の売り上げを手帳に記しているのは先程一刀の顔面を鉄板に押し付けた少女。

 

しかしこの少女、顔は欧州の女性並に白く、更に頭髪も白、更に更に着物も白(多少模様と刺繍はあるが)と着物の帯と黒い瞳を除けば全て白で統一した妙な格好をしている。おおよそ普通の人間とは思えない。

 

少女の名前は和(なごみ)。

 

何を隠そう彼女の正体は白鳩の妖怪、いわゆる妖鳥である。

 

両者の関係は一見すると仕事仲間の様にも見えるが実は違う。ネタバレ上等で言わせて貰うが、実際のところ和は一刀に絶対の忠誠を誓った……もっと分かりやすく言えば一刀の従者を務める妖鳥なのだ。

 

もっとも、先程彼女が主である一刀にした事は従者の行動とはあまりにかけ離れているが……

 

それにしても妖怪である筈の彼女が何故人里に住んでいるのか?

 

実はこの人里は目には見えない結界で囲まれており、妖怪の心が僅かでも邪悪に満ちていたら里に入れない仕組みになっている。

 

つまり邪悪な心が無ければ妖怪でも里に入る事が出来、和はそれに該当していると言える。

 

それに和は妖怪であるにも関わらず(主である一刀を除けば)誰に対しても物腰が柔らかく口調も丁寧な為、里の人間達との信頼関係は非常に良くとても友好的な関係を築いている。

 

これこそ和が妖怪でありながら人里で暮らしていける理由である。

 

それ以前に人里の自警団のリーダーを任されている女性が半獣である時点で友好もへったくれも無いと思うが……

 

一刀「あぁー……コレぜってー痕残るぞ」

 

和「私に怒らないで下さいよ。自業自得じゃないですか」

 

鏡で己の顔の惨状と対面しながら「オーマイガー!!」と叫ぶ情けない主に和は見向きもせず閉店の準備を開始する。

 

和「そんなに早く治したいなら()()を使えば良いじゃないですか?」

 

一刀「その手があったか!!ありがとー和!!」

 

和「イヤ普通に気付きましょうよ……」

 

途端に上機嫌になった現金な主にツッコミを入れつつ和は後片付けの為外へ出た。しかし先程和の口から出た()()とは何か?

 

能力の説明をする前にまず幻想郷のルールについて説明する事にしよう。

 

幻想郷では稀にそこに移り住んで来た者が幻想郷に何らかの悪影響を与える事件を引き起こす事がある。これらを総称して()()と呼ぶ。

 

この異変の解決法はスペルカードルール(又の名を弾幕ごっこ)と言われる決闘法を用い、異変を解決するのは()()()()()という人間の仕事である。

 

スペルガードルールは弾幕と呼ばれるエネルギー弾を撃てる者しか使う事が出来ずそのエネルギー源も人間なら霊力、妖怪なら妖力といった様に種族によって様々。

 

そしてそういった者の全てが()()と言われる特別に秀でた力を有している。それらは主に○○する程度の能力と表され、スペルガードルールに則った決闘法で勝負する時にはこの能力を駆使して戦う者が殆ど。

 

すなわち、能力とスペルガードルールは切っても切り離せない関係にあり、勝敗の行方を左右する重要な切り札になると言っても過言ではないのだ。

 

さて、外に出た和はゴミを決められた場所に捨て、店の周囲を箒で軽くはわき、それらを全て終わらせると『たこ焼き』と書かれた暖簾と『かっちゃん堂』と書かれた立て看板を持って店内へ戻ろうとした。

 

……が、その時一人の女性が和に声を掛けた。

 

??「すまない、ちょっと良いか?」

 

和「……どうか致しましたか?」

 

和はその女性を知っていたのか突然の呼び掛けにも動じる事なく極めて冷静に対応した。かなり切羽詰まった女性の様子から察するにどうも何か良くない出来事が起きたらしい。

 

??「一刀は居るか?」

 

和「はい、中に居ますよ」

 

??「そうか……非常に急な話で悪いがお前達に()()があるんだ」

 

和「わかりました。そういう事でしたら中に入って下さい」

 

??「本当にすまないな」

 

営業時間はとっくに過ぎており、ましてや女性は客ではない。にも関わらず和は何一つ躊躇する事なく女性を店内へと招き入れた。

 

女性の言う()()とは一体何なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上白沢慧音(かみしらさわけいね)。

 

人里に住んでいる者であるならば彼女の名を知らぬ者はいない。

 

何故なら彼女こそが先程述べた人里で自警団のリーダーを任されている半人半獣の女性なのだ。

 

その慧音は現在頭を悩ませていた。慧音は自警団のリーダーを務めているだけではなく人里にある寺子屋の教師も務めているのだ。

 

しかし、その慧音の教え子に当たる少女の一人が授業を終えた帰りに行方を眩ませたのだ。

 

少女の両親と共に人里中を駆け回って少女を探したが見つからず、困り果てた慧音は最後の手段として一刀達を頼る事にしたのだ。

 

和に二階の居間へと案内された慧音はソファーに腰掛け、出されたお茶を啜り一刀が来るのを待つ。

 

慧音「一刀はまだか?」

 

和「一刀様は今お取り込み中でして……その内来ると思いますよ」

 

一刀「よぉ!!待たせたな」ババーン

 

和がそう言って間もなく襖をダァーン!!と豪快に開けた一刀が現れた。そしてその一刀の格好を見た慧音が一言……

 

慧音「……何だその格好は?」

 

さて、一刀の現在の格好はというと服装は変わっていないのだが、問題は一刀が現在被っている白いマスク。どこからどう見ても犬○家の一族に登場するある人物にしか見えない。

 

一刀「母さん……俺だよ。助清だよ」

 

慧音「誰が母さんだ!!後助清って誰だ!?」

 

一刀の発言の意味自体はよく解らなかったが、なんとなく馬鹿にされた気がした慧音は大声で怒鳴る。当然ながら、この元ネタを慧音が知る筈が無い。

元ネタ言うな

 

……というより今はそれどころではないので、ボケるのは勘弁して欲しい。

 

一刀「イヤ何、仕事中に顔をに火傷を負っちまってな、治るまでの間コイツを着ける事にしたんだよ。

 

まぁ能力使って治したがな」

 

慧音「ならさっさとマスクを取れ!!」

 

一刀「ハイハイわかりましたよ。取れば良いんでしょ取れば!!」

 

和「…そこ怒る所じゃないですよね?」

 

慧音の言葉にぶさくさ言いながら一刀はマスクを取る。火傷の痕は綺麗さっぱり無くなっていた。

 

一刀「…して、依頼とは何だ?」

 

だいぶ話が脱線していたが漸く本題へと入る。なお、このしょうもない掛け合いだけで約三十分も時間を無駄にしている。

 

一刀には是非ともTPOというものを覚えて欲しい。

 

慧音「あぁ、実は……」

 

慧音は一刀達に全てを語った。教え子の少女が行方不明になった事。そして人里中を探し回ったが見つからなかった事も。

 

慧音「…という事なんだ。」

 

一刀「ふーん…」

 

和「……」

 

一刀と和は二人して慧音の言葉から少女の行方を推測する。人里中の至るところを探しても見つからなかったという事は恐らく……

 

一刀「一つ確かな事は、その子供は里の外に出たという事だな。これはもうほぼ確だ」

 

和「私も一刀様と同意見です」

 

慧音「やはりそうか……」

 

二人の言葉に慧音は肩を落として唇を噛み締める。

 

人里の外がいかに危険か、寺子屋の教師として慧音はこれまで何度も教え子達に説いてきた。

 

それ故に今回の事件は慧音にとってショックの大きいものとなった。出来る事なら慧音自身が何とかしたかったが自警団のリーダーという立場上、迂闊に人里の外には出られない。

 

慧音「頼む、私の教え子を救ってくれ!!」

 

だから慧音は一刀達に依頼した。しかし何故慧音はただのたこ焼き屋の主人に過ぎない一刀達に頼ったのか?

 

一刀「了解した。まぁ任せな」

 

実は一刀達が営むたこ焼きかっちゃん堂はあくまで副業。それとは別に一刀達二人が本業にしている職業がある。

 

それは、どんな依頼でも頼まれたら報酬を対価に何でも引き受ける(ただし異変解決は博麗の巫女の仕事である為除外)何でも屋……いわゆる【万事屋 一ちゃん(よろずや わんちゃん)】の主人という別の顔を持つ。

 

しかし一刀曰く、報酬の額は依頼によってまちまちで万事屋の仕事だけでは生計を立てるのは難しいらしく依頼もそんな頻繁に来る訳ではないので、依頼が無い時の代わりの収入源としてたこ焼き屋を営む様になったとか。

 

慧音「……すまない、恩に着る」

 

一刀「あぁ、構わんさ。

 

和、出立の準備だ」

 

和「はい」

 

依頼を受けた一刀は壁に立て掛けてあった黒塗りの木刀を手に取って腰に差した。和も一刀とは色違いの木刀を手に取る。

 

この二つの木刀には普通の刀と同じ様に銘が付けられている。

 

一刀が持つ黒塗りの木刀は摩周湖(ましゅうこ)。

 

和の持つ白塗りの木刀は白龍(はくりゅう)。

 

二人は依頼を遂行する際には必ずと言って良い程木刀を携える。それはまさしく二人のマストアイテムと言っても良い。

 

さてさて、準備も整い後は子供の捜索に向かうだけなのだが……こういう緊迫した場面でも中々締まらないのが北郷一刀という男なのでありーー

 

一刀「…で、報酬はどうする?」

 

慧音「あぁ、それなりの額は約束するさ」

 

一刀「イヤそうじゃなくて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現金で払うか、身体で払うか?」

 

慧音「現金に決まってるだろ!!」

 

折角自分の代わりに教え子を探してくれる一刀に感謝していたのにこの男は……と慧音は一刀を白い目で睨む。

 

そんな慧音の視線など気にも留めず一刀はあっけらかんとした表情でーー

 

一刀「それと悪りぃけど、タバコ後一箱吸わせてくれや」(-.-)y-~

 

慧音「せめて1本にしろ!

 

っていうか早く行け!どんだけ時間を無駄にする気だ!!」

 

一刀「へーい」

 

どこまでもいい加減で色々ぶち壊した一刀にもはや感謝の気持ちすら消え失せる慧音。

 

その脇で和は大きな溜め息を付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

里を出た二人は特に切羽詰まった様子もなく…というよりタバコ咥えた一刀がボケて和が突っ込むといった様に人里を出る前と何ら変わらない様子で子供の捜索をしていた。

 

一刀「やっぱり物語にはボケ属性の付いたキャラは最低一人は必要だと思うんだよ。和だってそう思うだろ?」

 

和「知らねぇよそんな事!!」

 

一刀「主人公がボケならその相方に当たるキャラはツッコミに秀でた方が良いなぁという事でもやし作者は和というキャラを創り出した訳。

 

つまりお前はこの俺にツッコむ為だけに存在するっつー訳だ(笑)」

 

和「私の存在価値ってソレだけか!?

 

…というか本編中に制作秘話なんか語らなくていいですって!!」

 

一刀「イヤ、読者の皆には一応知らせておこうとーー」

 

和「そんなもの要りませーん!!」

 

子供一人が危機に晒されているかも知れないという時にこの男は全くもって緊張感が無さ過ぎる。誰がこの期に及んで東北伝の裏話をしろと言った。

一刀「イヤ書いてんのオメェだろ!」

 

北郷一刀は基本的にいい加減な性格の持ち主で、仕事だろうが依頼だろうが真面目に取り組む姿勢をまず見せない。これを一言で纏めると()()()()()()()()()()()という男なのだ。

 

和は一刀のこの性格を治してくれる人を求めているが残念ながら幻想郷にはそれを叶えてくれる人妖達はいない。

 

何故なら一刀のちゃらんぽらんな性格は筋金入りであり、その無神経っぷりは地獄の閻魔ですらお手上げになる程なのだ。

 

……とその時、一刀の野性的な感覚が何かを捉えた。

 

一刀「おぉ、この周りから人の気配を感じるな。

 

…な~ご~みちゃん」

 

和「はい」

 

一刀が目配せをすると和は一つ頷き、鳩の形に姿を変えて飛び立って行った。

 

二人は主と従者という関係になってからもうかれこれ数千年以上経つ。それ程長い歳月を一つ屋根の下で共に過ごしていれば自然とコミュニケーション能力は備わってくる。

 

故に一刀が口頭でわざわざ伝えなくても和には伝わるし、一刀が何も言わなくても和は一刀の意思を汲み取って行動する事が出来る。阿吽の呼吸とはまさしくこの事である。

 

和を先に行かせたのには当然理由がある。

 

先にも述べた通り和は妖鳥である。つまりいつでも鳩の姿に変身する事ができ、人間の一刀よりも行動範囲が広がるうえに夜目が利く為人探しにはもってこいなのだ。

 

和を先に行かせた事により、この場には一刀一人だけとなった。一刀は先程までと打って変わって表情を真剣なものに一変させると子供を無事救い出す為の策を練り始めた。

 

一刀「(霊力が確認された場所から三つの妖力を感じるな。

 

……これは急いだ方が良いかな)」

 

力の無い人間が人里の外に出ると妖怪に襲われる危険性が付きまとう。そんな最悪な事態を防ぐ為にも一刀は歩く足を速める。

 

和には自分が到着するまで時間稼ぎをして貰って妖怪達の注意を反らしておいて欲しいところ。

 

一刀「えっ、話し合い?

 

……何を甘ったれた事言ってるのかな君達は。

 

確かに和の紹介のくだりで知能のある妖怪は()()()()()人間を襲わないって言ったけど、まぁ何事にも例外は付き物という訳で……

 

まぁ要するに何が言いたいかというと、知能を悪用して悪巧みをする妖怪も少なからず居るって事。

 

そんな奴等に話し合いで解決させるなんて無理な話だ。それ以前にガブッと喰われてバッドエンドまっしぐらよ」

 

誰に向かって発言しているのかよく分からないが言ってる事自体は間違ってはいない。

 

本来妖怪とは恐怖という人間の思想から生まれた精神体に限りなく近い存在である為、人間から一目置かれる立場にならなければ妖怪はその存在を保つ事は出来ない。

 

故に人間を喰らうという行為は己の存在を保つ手っ取り早い手段として当たり前の様に行われ、和みたく人間を全く襲った事の無い妖怪など皆無に等しい。

 

しかしこの幻想郷では人間と妖怪の比率が逆転している為、無闇矢鱈に人間を喰らうとなればいずれ人間は滅び恐れてくれる者が誰も居なくなり、挙句妖怪までも滅びる恐れがある。

 

こうした事態を防ぐ為に設けられたのがスペルカードルールであり、同時に聡明な妖怪は人間から一目置かれる立場になる別の手段として知恵を求めた。

 

その代表格とも言える存在が和である。

 

本来妖鳥というのは『鳥頭』と揶揄される程知能が乏しく『三歩歩けば忘れる』と言われる程記憶力にも問題がある種族。その為、同胞である筈の妖怪達から迫害されてきた悲しい歴史を持つ。

 

しかし和は自身の『頭を使う程度の能力』の助けもあって上記の定説を覆し、妖鳥達に希望をもたらした。

 

以来、和は『博学の妖鳥』として人妖問わず一目置かれている。

 

さてその和はというと、もう既に少女の元へと到着しており木刀を片手に三人の妖怪と対峙している最中であった。

 

和の背後には小さな少女がガクガクと震えたまま座り込んでいた。恐らくこの少女が慧音の教え子と思われる。

 

和「どうやら間一髪で間に合ったみたいですね」

 

和が言葉を発すると三人の妖怪はいずれも殺気を強めた。別に誰に向けて言った訳ではないのだが過剰な反応を示す妖怪達に和は肩を竦める。

 

「貴様、妖怪のくせに何故人間を守る」

 

和「……そうですね、強いて言うなら人間が好きだから……でしょうか」

 

他にも理由は色々あるのだが根本的な理由を辿れば人間が好きだという一点に尽きる。そうでなければ和は北郷一刀という人間の従者など好き好んでやってはいない。

 

和は自身が妖怪であると自覚した時から人間の側で生きたいという気持ちに溢れていた。それも自分の気持ちを理解してくれる人間を求めて全国を旅していた程に。

 

その時期に出会ったのが北郷一刀である。人間も妖怪も平等に接する彼の姿勢に胸を打たれた和は一刀と共に旅をし、後に彼の従者として生きる道を選んだ。そのせいで和は後に色々な面で苦労する事になるのだが……

 

二人の出会いの詳細は後々語るとして、和は一刀が来るまでどう時間を稼ぐか考えていた。

 

ガタイの大きな妖怪三人が相手では処理しきれない上に子供が居るとなれば下手に攻撃に打って出るよりも舌戦に持ち込んだ方が賢明と言える。

 

あくまで優先順位の一番上は子供を守る事。慧音から子供を救って欲しいと頼まれたからにはそれに最高の形で応えるのが万事屋の仕事なのだ。

 

和「一応お聞きしますが、何故人間を襲うのですか」

 

「そんなもん生きる為に決まってるだろ」

 

いかにも妖怪らしい真っ直ぐな理由である。それでも人間を愛する和にしては到底許される話ではない。

 

言葉を話せるという事は少なくとも知能は発達している筈なのだ。なのに何故それを有効活用しないのか、和には全く理解出来ないでいた。

 

だがそれを言葉にはしない。下手に妖怪を刺激したら何を仕出かすか分かったものではない。自身はおろか最悪子供の命も危機に晒される恐れがある。

 

和「だとしても妖怪三人に対して子供一人というのは少々大人気ないとは思わないですか?」

 

「関係ねぇ!!俺達だって生活が掛かってるんだ!!子供一人どうなろうが知ったこっちゃねぇ!!」

 

なんて自己中心的な妖怪なんだと思うかも知れないが、元来妖怪という種族は排他的な思考を持つ者が多く自分の事しか考えてない輩が殆ど。むしろ和みたいに気配りな妖怪の方が稀なのだ。

 

少女の小さな手が和の着物をぎゅっと掴んだ。きっと恐怖心と闘っているのだろう。

 

何とかしてあげたいという思いが強くなるが和一人では妖怪三人を相手にするのはキツい。和はこれからどうしようかと思考を巡らせる。

 

……とその時、三人の妖怪の背後に見慣れたシルエットが近付いてくるのが見えた。その時和は事態が無事収束に向かう事を確信し、内心ほくそ笑んだ。

 

和「…もう一つ、言いたい事があるんですけど宜しいですか?」

 

「いい加減にしろ!!いつまで時間稼ぎをするつもりだ!!」

 

流石に気付かれたかと和は思う。

 

だが今更気付いたところでもう遅い。何故なら妖怪達が周りから意識を外した時点で既に自分達の術中に嵌まっていたのだから…

 

和「申し訳ありません。ただこれだけは申し上げるべきだと思いまして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……私にばかり意識を向けていて宜しいのですか?」

 

「あ?そりゃ一体どういうこ…」

 

その言葉が最後まで紡がれる事は無かった。

 

風を切る音がしたかと思えば叫び声を上げる事もなく無言で倒れゆく妖怪が一体。バタリと倒れたその妖怪からはさっきまであった筈の頭部が無くなっており、その代わりに血飛沫がこれでもかと噴き出していて己の身に起こった惨状を主張していた。

 

「何だ!!何が起こった!?」

 

「う、後ろだ!!」

 

突然の出来事に残りの二人の妖怪は慌てて後ろを振り替える。そこに立っていたのはやはり…

 

一刀「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。正義の味方、北郷一刀の参上でーす」

 

和「(別に呼んでは無いんですけど…)」

 

急いでいたにも関わらず息切れした様子もなくいつも通り飄々とした態度で一刀は現れた。相変わらず緊張感が無いと和は思う。言うだけ無駄なので言わないが。

 

和「待ちくたびれましたよ。随分時間が掛かりましたね」

 

一刀「ヒーローは遅れてやって来る。世の常識だろ?」

 

和「イヤ時と場合を考えて下さい……」

 

一刀が到着するまでに和がどれだけ時間を稼ぐのに必死だったかこの男は分かっているのだろうか。和は呑気過ぎる主に頭痛に似た感覚を覚える。

 

そんな和の心情を知ってか知らずかカラカラと豪快に笑うアホな一刀。

 

一刀「まぁ結果的に間に合ったから良しとしようじゃないか。

 

……その娘が慧音の教え子で間違いないな?」

 

和「はい。」

 

万が一人違いだった時の事を考えて周囲の気配を探ってみたがこの少女以外の霊力は感じられなかった。もっとも、仮に人違いだったとしてもどの道この少女は助けるつもりでいたが。

 

「貴様ぁ!よくも俺達の仲間を!!」

 

一刀「おやまぁ、そういう所だけは仲間意識が強いんだね。

 

まぁ俺としちゃどーでも良い事だけどよ」

 

「…てめぇ!!」

 

出来るだけ妖怪を刺激しない様に考慮していた和とは違って一刀は神経を逆撫でする様な言い回しで妖怪達を煽る。

 

「ブッ殺してやる!!」

 

案の定妖怪の一人が一刀の発言に激昂して標的を一刀に変更。目くじら立てて襲い掛かってきた。

 

しかし一刀は表情一つ変えずに見る人が見れば不快感を覚える程の澄まし顔で……

 

一刀「浅い」ザシュ

 

「があっ!!」

 

黒塗りの木刀を一閃。申し訳程度の叫び声を上げた妖怪の身体は胴体から真っ二つに切り落とされ間もなく絶命した。おおよそ普通の人間が成せる業とは思えない。

 

更に一刀は畳み掛ける様に残り一人になった妖怪に切り掛かる。妖怪はその刃を防ごうとするが……

 

一刀「遅い」ザシュ

 

「ぐわぁ!!」

 

一刀の刃が妖怪の喉元を切り裂いた。倒れて動かなくなった妖怪を見届けてから一刀はタバコに火を着けた。ちなみに和はその間子供の目を塞いでいた。

 

外の世界ではランドセルを背負っていそうな子供に殺戮の現場を誤って見せでもしたら、この少女は今夜悪夢に魘されて下手をすれば一生モノのトラウマを植え付けられるに違いない。

 

一刀「…今度コイツ等が生まれ変わる時は良い奴に生まれてくると良いな」

 

風が吹けば掻き消されてしまいそうな程の小さな声で一刀は呟いた。きっと柄にも無く真面目に語る様子を見せたくなかったんだろう。

 

和「…そうですね」

 

しかし和の耳にはしっかりと届いていた。和は一刀の心情を考慮して隣に居る少女にも聞こえない程の声量でそれに応えた。

 

一刀「帰るぞ、和」

 

和「はい」

 

依頼は無事に完了した。一刀達は少女を引き連れ慧音や少女の両親が待つ人里へと歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慧音「里の外は危険だとあれ程言っただろ!この馬鹿!!」

 

ガキンッ!!

 

人里に戻って来たと思ったら直後に一目散に一刀達の元に駆け付けてきた慧音の頭突きが少女に炸裂。子供相手でも全くもって容赦が無い。

 

ガハハと笑う一刀の横で和の顔は引き攣っていた。いつ見ても慧音の頭突きは破壊力が抜群である。

 

慧音「一刀達の助けがもう少し遅れていたら危うくお前は死ぬところだったんだぞ!!お前は命の尊さというものをだなーー」

 

一刀「ハイハイそこまで」

 

これ以上黙って聞いていると終わりの兆しが見えそうになかったので一刀は慧音と少女の間に割って入った。説教の途中で横槍を入れられた慧音はジッと一刀を睨み付ける。

 

慧音「お前なぁ……事の重大さが分かっているのか?お前達が助けに入ってくれなかったら今頃ーー」

 

一刀「気持ちは分かるけどよぉ、その娘に説教するのは親の仕事だろ。違うか?」

 

和「確かにその通りですね。私達はまず何より子供の無事を喜ぶべきだと思います」

 

慧音「むっ……」

 

一刀に正論で諭された慧音は押し黙る。更に和も一刀の意見に賛同した為、慧音は首を縦に振るしかなかった。

 

一刀「そんな事より依頼の報酬として慧音の体をーー」

 

ガキンッ!!

 

一刀「あみばぁ!!」

 

調子こいて余計な一言を口走った一刀は慧音の頭突きを喰らう羽目になった。その威力は凄まじく、頭突きを喰らった一刀は数メートル先まで吹き飛ばされた。

 

慧音は仰向けで倒れた一刀の胸倉を掴みガクガクと揺らしながら怒鳴る。

 

慧音「お前という奴はどうしていつも品の無い事ばかり言うんだ!!折角子供を助けてくれたお前に感謝していたところだったのに!!」

 

一刀「どうしてって言われても……これが俺のデフォだから」

 

慧音「そんなものとっとと直せ!!」

 

一刀「無理ッス」キッパリ

 

慧音「お前なぁ!!」

 

このまま口喧嘩に発展するかと思われたが、そんな二人の間に割って入った和が一言。

 

和「慧音さん、残念ですが一刀様のコレはどんな名医を持ってしても治らないので諦めた方が宜しいかと……」

 

一刀「ちょっと待て!!俺は病人か!?」

 

和「立派な病気だと思います。それも重症の」

 

一刀「……だとしたら治療に専念する必要があるなぁ。

 

という事で俺は明日仕事をーー」

 

和「休ませませんよ」キッパリ

 

一刀「えぇーーーーーーーーッ!!」

 

和「それからついでに言っておきますけど一刀様に報酬は渡しませんからね」

 

一刀「ウソ~ン、なして?」

 

和「そんなの一刀様に全額渡したらあっという間に無くなるからに決まってるじゃないですか」

 

一刀「じゃあせめて報酬を折半にしよう。それなら大丈夫だろ?」

 

和「……ちなみに使い道は何ですか?」

 

一刀「そりゃもちろん知り合いと飲みにーー

 

オーケー和少し落ち着こうか!別にパァーっと使うつもりは無いからその振り上げた木刀を降ろしてくれると助かるなぁ!!」

 

和「……で、本音は?」

 

一刀「やっぱ知り合いと朝まで派手に飲み明かしてーー

 

……あっ」

 

和「そんな事だろうと思いましたよ!一刀様の馬鹿!!」バキッ

 

一刀「ぴぎゃーーーーーーーーッ!!」ピチューン

 

和渾身の一撃を喰らった一刀は叫び声を上げ、アホ面晒しながら倒れた。和は慧音から報酬を受け取ると、倒れた一刀の首根っこをガシッっと掴みズルズルと引き摺りながらその場を後にする。

 

結局その後家に帰り着いても一刀の願いを聞き入れてくれる事は無かったんだとか……

 

 




和「…あの、一言宜しいですか?」

一刀「…何か問題でも?」

和「問題大アリでしょ!!一話目の前書きからなんてネタぶっ込んできてるんですかぁ!!これじゃあ早速批判殺到ですよ!!」

一刀「…別に良いんじゃね?」

和「無責任過ぎます!!」ガスッ

一刀「べあふぁ!!」ピチューン

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