東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

11 / 16
あらすじ

たこ焼きかっちゃん堂は一刀の勝手な判断で定休日に。それなのに暇を持て余す一刀の前に早苗が現れ、守矢神社で行われるイベントへの参加を提案した。しかし、それは同時に和にとっては地獄のショータイムの始まりでもあった。










和「あらすじからして嫌な予感しかしないんですが……(汗)」

一刀「そうか?
何だか素敵な出会いの予感がありそうだとは思わんか?」

和「微塵も思いません。
P.S.の部分はともかく『\(^o^)/オワタ』って顔文字がある時点でもうフラグ立ってるじゃないですか」

一刀「イヤイヤソンナコトナイソンナコトナイ」

和「何でカタコト!?明らかに怪しいだろうが!!」



11. トラウマ+デジャブ=\(^o^)/オワタ P.S.感動の再会は思わぬ時にやって来る【北郷和のトラウマ回その1】

 ◇

 

侍の国……僕等の国がそう呼ばれていたのは今は昔の話(あれ、コレ何処かで聞いた事ある様な……)

 

かつて侍達が仰ぎ夢を馳せた江戸の空には今は異郷の船が飛び交い(江戸ってどういう事ですか?)、かつて侍達が肩で風を切り歩いた街には今は異人がふんぞり返り歩く(確かにこの世界にも変な奴(一刀)は居ますが)

 

それが僕等の街ーー

 

和「ってちょっと待てェーーーーーーッ!!」

 

一刀「……何だよ、もうちっとで終わる所だったのによぉ」

 

和「何だよじゃねぇよ!!コレ明らかに銀魂のあらすじだろうが!!」

 

一刀「……じゃあ、こうするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷……僕等の国がそう呼ばれていたのは今は昔の話ーー

 

和「勝手に幻想郷を滅ぼさないでくれますか!?しかも頭の3文字しか変わってないし!!」

 

一刀「大丈夫大丈夫、また創り直せば良い話だし」

 

和「どういう言い訳!?だとしたら今私達が居るこの世界は何!?

 

というか、冒頭からパクりで入るのは禁止ですよ!」

 

一刀「じゃあド頭の入りはどうすりゃええねん。あのもやし作者はいつもソレで躓いてるんだぞ。

 

こうなったら東北伝お得意の丸パクり大作戦でどうにかするしか方法は無ぇだろ」

 

和「だからその発想が既に駄目なんですよ!

 

どうしていつも他所のネタ任せなんですか!?」

 

一刀「ネタの節約」

 

和「理由がせこい!!」

 

一刀「ネタで思い出したが俺達って魔法科じゃ兄妹じゃん。だからソレにちなんだネタやれば良いんじゃねぇか?」

 

和「それが既にパクりになるんですけど!?

 

……因みに一刀様は魔法科高校の劣等生がどんなアニメかご存じなんですか?」

 

一刀「全然知らん」キッパリ

 

和「駄目じゃねぇか!」

 

一刀「つーかオメェさっきからパクりパクりってうるせぇんだよ!そこはパロディって言えよ!」

 

和「イヤさっき『丸パクり大作戦』って言ってたのは何処のどいつだよ」

 

一刀「…てか冒頭からこんな主従コントやってて良いんか?こっからどうやってサブタイと辻褄合わせる気だよ」

 

和「誰のせいでこうなったと思ってるんだぁーーーーーーッ!!(怒)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【トラウマ+デジャブ=\(^o^)/オワタ P.S.感動の再会は思わぬ時にやって来る】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

たこ焼きかっちゃん堂は不定休であり、いつもは大体一刀の気紛れで休みになる事が多い。

 

この日も同様に一刀が「大事な話がある」と突然言い出した為にかっちゃん堂は急遽定休日となった。

 

一刀のその真剣な眼差しから余程大事な案件なのだろうと和は思い話を聞いてみれば……冒頭のアレである。こんな話を聞く位なら店を開けとけば良かったと和は後悔する。

 

東北伝の今後についてはいずれネタ回で話し合うとして(コレも十分ネタ回じゃねぇか)、今は無駄に空いた時間をどう埋めるかを決めるのが先決である。

 

別に今から店を開けても良いのだが、既に一刀のやる気メーターはマイナス側にカンストしているので和一人ではどうしようも無い。

 

一刀「あ~あ……こんな時に早苗が何かおもしれーもん持って来てくんねぇかなー」

 

こんな時だからこそ仕事するべきではないのかと和は思う。

 

それに早苗は信仰集めが忙しくて今日は来れないと言っていた。普段の印象のせいで誤解されがちだが、東風谷早苗は守矢神社の巫女としての仕事はしっかりとやっている。そこだけは我が主も見習って欲しい。

 

だからいくら念じた所でそう都合よく来る筈がーー

 

早苗「呼ばれて飛び出てこーんにーちはー♪」

 

……来る筈があった。早苗さん、何故そんな時だけ空気を読むんですか……

 

和「……信仰集めの方はどうしたんですか?」

 

早苗「途中でほったらかして抜けて来ました」

 

和「ナニ考えてんだオメェーーーッ!!(怒)」

 

……訂正しよう。このアホ巫女は巫女としての仕事を全然やっていない。全ては和の思い違いだったのだ。

 

良くも悪くも思い切りの良い早苗の行動に今頃守矢の神様達もあたふたしているに違いない。

 

そんな事など気にも留めていないフリーダム天然風祝少女は今日も元気一杯な笑顔を一刀達に振り撒く。和にとっては全く笑えない話だが。

 

早苗「私は一刀君の為なら例え火の中水の中。信仰集めなんかもうどうでも良いんです!」

 

和「アンタ巫女だろ!?そこは信仰集めを優先しろよ!!」

 

……巫女としてあるまじき発言。

 

早苗「そんな事言って本当は和さんも一刀君の愛を独占したいんじゃないんですかぁ?

 

分かります、スゴーーーく分かります!」

 

和「そそそそんな事無いですって!貴女と一緒にしないで下さい!」ワタワタ

 

いくら正論を語ったところで早苗からの予想を遥かに上回るカウンター攻撃に終始翻弄されっぱなしの和。

 

一口に愛と言えど和と早苗とでは性質が随分異なる。

確かに和も一刀に対しての愛情は深いが、それはあくまで親愛や家族愛といった類いであり、早苗の様な勘違いで一方通行な愛ではないと断言する。

 

それが解っていない早苗はやはりどこか抜けている。

天然は正論が通じない且つ自身が天然である事を自覚していないので何かと面倒である。

 

ある意味で和の天敵だと言っておこう。

 

一刀「おい早苗よ、何か面白い催し物はあるか。申してみよ」

 

早苗「ハイ、将軍様!」

 

さて、和に天敵と認定された足軽早苗は一刀将軍の前で跪き暇を持て余す将軍に一計を案じた。

 

早苗「本日夕刻の時より、守矢神社で肝試しが行われまする。是非そちらに参加されてはいかがでしょうか?」

 

一刀「ほう……場所は守矢神社のどこかね?」

 

早苗「ハイ、場所は神社裏の森でありまする」

 

一刀「分かった。下がってよいぞ」

 

早苗「ははぁー」

 

和「……」

 

いつもならここで「いつまでバカ殿コントやってるんだ!!」と和のツッコミが入る筈だが、どういう訳だか和がやけに大人しい。

 

一見すると静観を決め込んでいる様に見えるが、よく見ると和の表情がやや引きつっている。

 

一刀「……という訳だか、和どうする?」

 

和「……へっ!?あっイヤ、その……」

 

一刀「(……あっ、そういう事か)」

 

急にしどろもどろになる和を見て一刀は一つ思い当たる節があった。

 

少し前に人里で肝試し大会が行われた事があるのだが、その時本物の幽霊が出て大騒ぎになった事がある。

 

とりわけ和のビビりっぷりは尋常じゃなく、一刀と蕾夢、そして和の三人が退治する事になったが、和は全く戦力にならなかった。

 

それどころか幽霊に散々ちょっかいを掛けられた挙句の果てに涙ながらに失神するといった醜態を周囲に晒し、そのあまりの怖がり方に一刀も弄る事が出来なかった。

 

要するに和は自身が妖怪である事を棚に上げて幽霊やお化け、それに類する物全般は大の苦手としているのだ。

 

条件さえ合えばあの某唐傘お化けでも腰を抜かす程……と言えば理解して貰えるだろうか。

 

そんなトラウマ級の弱点を抱える怖がりな和は誰が見てもそれと分かる程動揺していた。

 

和「ど…どうしても参加しないと駄目なんですか?」

震え声

 

一刀「イヤ駄目って訳じゃねぇがーー」

 

早苗「もしかして和さん、怖いんですか?」キョトン

 

和「……」イラッ

 

早苗にしてみれば挑発したつもりは全く無い。早苗は和が幽霊やそれに類する物全般が全く駄目な極度のビビりである事を知っておらず、天然であるが故に自身の発言が挑発行為に当たるのかどうかさえも分からないのだ。

 

ただ残念な事に今の和に挑発であるか無いかを判断する余裕は無かった。少しムッとした表情で和は答える。

 

和「……分かりました。そこまで言うなら参加します」

 

一刀「オイオイ和、そんなムキにならなくてもーー」

 

いつも早苗や他の第三者に便乗して和をからかう筈の一刀にしては珍しく和を擁護する。一刀曰く、和のこの弱点はもはや笑えない程深刻なのだ。

 

しかし、一刀の進言も意味を成さず和は早苗の無意識な煽りに乗せられ参加する事になってしまった。

 

この事を和は後に物凄く後悔する事になる。

 

一刀「……無知って怖ぇーわ(汗)」

 

全くもってその通りである……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

威勢よく参加すると言ったは良いが、いざその時が近付いてくると和の表情はみるみる険しくなる。

 

現に和は今、一刀の腕にしがみついて恐怖からかまるで産まれたての小鹿の如く身体をぷるぷると小刻みに震わせている。

 

一刀にしてみれば和の胸に肘が当たるというラッキースケベな展開なのだか、和の状態がコレなので冗談の一つも言えやしない。

 

一刀「……あのさぁ和、いい加減その手を離せよ。歩き難いじゃねぇか」

 

和「出来ません」

 

一刀「……肘が胸に当たってるが」

 

和「構いません」

 

一刀「じゃあ揉んでも良いか?」

 

和「いけません」

 

猫太「なぁー……(当たってる事は良いのかよ……)」

 

よくあるアニメやゲームで同様のイベントがあると大抵はラッキースケベからの物理的フルボッコというオチがお約束なのだか、今の和にはそれすらも些細な問題に思える。

 

少しでも恐怖を紛らわす事が出来るなら例え胸に肘が当たろうが知ったこっちゃない。ただし揉まれる事は話が別。

 

今回久々の登場となる猫太も呆れる程の怖がりっぷりを見せる今の和に楽園の頭脳と称される面影はどこにも無い。

 

一刀「大丈夫だって、何も出やしねぇよ」

 

猫太「なぁー(そうだぞ。そこまで怖がる事無いぜ)」

 

和「ぜぇーーったいにあり得ません!!きっと悪い霊は私達を呪う気満々でやって来るに違いありません!!そのうち私達は取り憑かれて良い様に弄ばれるに決まってます!!」

 

一刀・猫太「(そこまで言うか……)」

 

早口で捲し立てる様に和は喋る。つい先日寺子屋の生徒達に神授業を行った彼女と同一人物だとは……和には失礼だがとても思えない。まだ神社に到着する前からこんな状態では先が思いやられる。

 

とは言え、和にとっては神社に向かう道中の森ですら怖くてたまらないのだ。人間だろうが妖怪だろうが克服出来ない弱点の一つぐらいは誰でもある。

 

和「神様どうかこの私を守って下さいお願いします神様どうかこの私を守って下さいお願いします神様どうかーー」ガクブル

 

一刀「(その神様が肝試しを企画したんだがなぁ……)」

 

本来万物を守護する立場にある筈の神様が肝試しを行い人間を恐怖のドン底に突き落とそうとするのだから世も末である。

 

まぁ和は人間ではないのだが……

 

和「う"ーーーーーー……」ビクビク

 

一刀「……」

 

ついには恐怖のあまり歯を食い縛りながら唸り声を上げ始めた和を見て、神社に到着したら肝試しの前に一呼吸入れて貰おうと一刀は考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

??「お~ど~ろ~けぇ~~」

 

和「わっキャーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

守矢神社は幻想郷の中で一番標高の高い妖怪の山の山頂に位置し(コレって前にも説明したっけ?)、常人が登ろうものなら登頂はおろか下手をすれば遭難する危険もある。

 

しかしそれは昔の話。早苗達が幻想入りしてから妖怪の山は整備され神社を参拝に訪れる者に天狗達がガイド役を買って出てくれるお陰もあって、遭難者の数は一昔前に比べて大きく減少した。

 

一刀達御一行には残念ながらガイドは居なかったが以前も訪れた事があるので特に迷う事無く神社に到着してさぁ一息付こうとした矢先に喰らった思わぬ不意討ちに和は絶叫し、尻餅を着いた。

 

和はへっぴり腰になりながらやっとこさ立ち上がると一刀の背後に回り込み、一刀の腰をがっちりホールドして動かなくなった。

 

一刀「……オイ和、そこまで驚く事も無ぇだろ。見知った顔じゃねぇか」

 

和「だってぇ……」ビクビク

 

自身の背後でうーうー唸る従者の姿に一刀は情けないと思いつつも同時に微笑ましく感じる。

 

普段は北郷一刀の従者という立場から常に落ち着き払った女性を演じている和だが、甘い物を食べた時には喜びの感情を、怖い時には怖いという感情を全面に押し出す辺りは里に住む人間達と何ら変化は無い。

 

また色恋沙汰に疎い初心な所もありそれに関する話題を振られれば途端に顔を真っ赤にさせて独りでにワタワタしたりと、まるで小動物みたく表情がコロコロと変わる部分もあり見ていて飽きない。

 

外の世界で所謂『ギャップ萌え』と呼ばれるソレは現在幻想郷でも猛威を振るっている最中である。

 

……さて感傷に浸るのも程々にして、和にテロ行為を仕掛けた犯人の某唐傘お化けこと多々良小傘(たたらこがさ)を咎める事にしよう。

 

一刀「あのな小傘、和にその攻撃はダメだって」

 

小傘「ごめんなさーい。でも和さんが居るとわちきのお腹が満たされるからついつい」ニコニコ

 

和「う"ーーーーーー……」

 

一応謝罪の言葉は述べたがニコニコ笑顔の小傘に反省の色があるとは言い難い。

どうにかしたい、その笑顔。

 

そう言えば小傘はずっと前から里の子供にも驚かれずにお腹も満たされないと言っていた様な……

 

ともあれ小傘は久々にお腹が満たされて至極ご満悦の様子。そのお陰で和のSAN値がごっそり減ったのは言うまでもないが。

 

和の悲鳴を聞きつけ、早苗を筆頭に守矢の神様二柱がぞろぞろと集まり、境内はあっという間に賑やかになった。

 

??「全く、それでは妖怪も形無しじゃないか」

 

和「……申し訳ありません。でも怖いものは怖いんです……」

 

??「何言ってるの。神奈子だって鼠見ただけで尻尾巻いて逃げてたじゃないか」

 

神奈子「余計な事は言わなくて良い!!」

 

一刀「尚、渾名は巨乳カナパイ」

 

神奈子「勝手に変な渾名を付けるな!!」

 

一刀は幻想郷の住人達に変な渾名をやたらと付けたがる。

 

それが守矢の重鎮の一角でかつて軍神と称えられた八坂神奈子(やさかかなこ)であろうと、幻想郷の長である八雲紫(ちなみに渾名はゆかりん)であろうと関係が無い。

 

そして見た目幼女だが噂に名高い土着神という祟り神である洩矢諏訪子(もりやすわこ)には……

 

一刀「久し振りだな、巨乳カナパイとツルペタすわちん」

 

諏訪子「久し振りだけどその渾名で呼ぶな!!」

 

ツルペタすわちんこと諏訪子は両手をパタパタと振りながら抗議するが一刀には全く通用しない。こういう子供っぽい仕草をする所が一刀に不名誉な渾名を付けられる要因である事に諏訪子本人は気が付いているのだろうか?

 

??「……そこに居るのは、もしかしておじさん?」

 

一刀「……!!」

 

少し遅れて境内にやって来た女性の声に、ついさっきまでバカ騒ぎしていた一刀の動きがピタリと止まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

昔々もそのまた昔……およそ遡る事数千年前、まだ一刀が和と主従の契りを結ぶ前に一刀は当時諏訪子が一人で治めていた諏訪の国を訪れた際、とある捨て子を拾った。

 

その捨て子だった少女は諏訪子の元ですくすくと育てられ、人懐っこいお転婆少女に成長し、一刀をおじさんと呼びとても懐いていた。

その度に一刀は目から謎の汗を流していたが。

 

その最中に一刀は後に従者となる和と出逢う事になるのだが、それはまた次の機会に話す事にする。

 

そんな他愛も無い生活がずっと続くと思っていたが残念な事に少女が大人になる頃には一刀達は諏訪の国を旅立ち、少女が成人した姿を見届ける事は出来なかった。和が妖怪である為に素性がバレる事を危惧したからだ。

 

やがて少女は一人の男性と恋に落ち結婚し子供を授かるが、流行り病に侵され僅か二十八年という早過ぎる生涯を終える。

 

しかし彼女の死を悼んだ諏訪の国の多くの住人が彼女の復活を願い、念じ続けた事により、彼女は死後神格化を果たす事になった。以降、守矢の三柱の一角として神奈子や諏訪子と共に平凡な毎日を送っている。

 

ちなみに彼女は成人を迎えた時に諏訪子から姓を与えられたのだが、その姓とは……『東風谷』。

 

……そう、何を隠そう彼女こそ東風谷家初代当主で早苗の先祖になる元人間の神様。その名前を一刀が言う。

 

一刀「その声……まさか汐里(しおり)か!?」

 

汐里「はい。

 

久し振りですね、おじさん」

 

久々に汐里の口からおじさんという単語を耳にした一刀はこれまた久々に目から汗を流そうとするが、男の意地でどうにか堪える。

 

東風谷汐里にとって一刀達と過ごした日々は何物にも変え難い大切な思い出であり、捨て子で野垂れ死ぬ筈だった自分を救ってくれた命の恩人でもある。

 

そんな気持ちを伝えたかったが、別れがあまりにも唐突過ぎた為に挨拶も感謝の言葉を伝える事も出来なかった。その事が汐里の中では心残りであったのだ。

 

お互い人間である為(この時の汐里はそう思っていた)もう会う事は無いと思ってはいた。それでも、叶わぬ事と解っていても出来る事ならもう一度会いたいと願っていた人物。

 

ところが汐里は死後神格化してから程無くして諏訪子から一刀は人間を辞めたと一刀の正体について教えられ、何の因果か一刀達が住む幻想郷に移住して一刀と再会を果たす。

これを()()と呼ばずに何と呼べば良いのか。

 

話は逸れるが早苗の能力『奇跡を操る程度の能力』は元々は汐里の能力である。

 

だが能力者は自身の能力を第三者に引き継がせる事は出来ない。それに東風谷の代を継ぐ毎に東風谷家の血統は薄れていき、特別な力を持って産まれてくる者は減っていった。

 

つまり何が言いたいのかというと、早苗は東風谷家の血統を色濃く受け継いだ状態で産まれたという事になり、所謂先祖返り……もっと言えば早苗は汐里の遺伝子を引き継いで産まれた奇跡の子という扱いになる。

 

そんな奇跡の子が今ではアホの子に育ってしまった事が非常に嘆かわしいが。

 

どうやら一刀も同じ事を思ったようで、早苗の頭を突っつきながら……

 

一刀「なぁ汐里よ、お前と同じ血が通ってるなら何でこんなポンコツ(早苗)が産まれてくるんだ?」

 

早苗「ポンコツってどういう意味ですか!?」

 

一刀「(イヤどういう意味も何も……)」

 

事実としか言い様が無い。寧ろポンコツ以下の言葉で形容出来るなら是非そうしたい。

 

汐里は昔と何一つ変わらない一刀の姿に苦笑しつつ口を開く。

 

汐里「……恐らく早苗は私の能力だけでは無く、私の『記憶』も引き継いでいるんだと思います。

 

子供だった私がおじさんに良く懐いていたあの時の記憶を早苗は持っているのではないでしょうか」

 

その口振りは一刀の知るお転婆娘だった頃の汐里ではない。お淑やかな口調になった汐里を見て成長したなぁと一刀は思う。

 

汐里の話では早苗は幼い頃から幻想入りするまでの間にある男と楽しげに遊ぶ夢を頻繁に見た事があると汐里に言っていたと言う。

 

汐里がその男の特徴を早苗に尋ねたところ、早苗は「目が死んだ男」と夢の中の男が一刀である事を汐里が知るのに充分過ぎる特徴を述べた。

 

それがどこでトチ狂ったのか、早苗はいつしか「あの人が私の将来の旦那さんになるんですね!!」と思考がトンチンカンな方向に行ってしまい今に至る。何故そんな事になってしまったかは汐里にも分からないと言う。

 

汐里「……で、おじさんの後ろでしがみついている方って和さんですよね?」

 

和「……ハイ、お久しぶりです」

 

少しは落ち着きを取り戻したとは言え汐里との再会を喜ぶ余裕はまだ無い。

 

和が何故そんな情けない姿をしているかは敢えて言うまい。汐里は和がお化けや幽霊が駄目だという事を知っている。

 

だからこそ和が肝試しに参加する事に汐里は疑問を覚える。

 

汐里「あの……おじさん、どうして和さんはここに居るんですか?」

 

一刀「早苗の天然ボケ」

 

汐里「あぁ……」

 

同じ屋根の下で暮らしていれば嫌でも分かる早苗の性分。いつも本人の意図しない所で人を巻き込む早苗の性格に汐里はこれまで何度も振り回されてきた。

 

早苗と汐里の関係は一刀と和の関係のソレと良く似ている部分がある。ボケに突っ込むか突っ込まないかの違いはあれど。

 

肝試しは一刀達だけでなく里の人間達もこぞって参加しており、守矢神社がどれだけ多くの信仰を集めているかが窺える。

 

博麗神社も少しは信仰を集めた方が良いのではないかと一刀は珍しくまともな事を思う。

 

和が一刀の袖をクイクイと引っ張っている事に気付いたのはそんな事を考えている時であった。

 

一刀「……どした?」

 

和「あの……もう帰っても宜しいですか?」ビクビク

 

猫太「なぁー(まだ始まってすらいないぞ)」

 

一刀「……別に良いが、その代わり俺と猫太は参加するからお前1人で帰る事になるぞ。

 

それが嫌なら神社に1人残るか?」

 

和「えっ……」

 

和に突き付けられた究極の三択。一人で山を降りて帰るか守矢神社に一人で留守番をするか、そして諦めて肝試しに参加するか。

 

一つ目は和の精神状態が正常であったら帰る事は出来たであろうが、超絶ビビり状態になっている今の和には到底無理な話である。

 

よって一つ目の選択肢は即却下。

 

二つ目は帰らずとも肝試しに参加せずに済むので一見魅力的な提案ではあるが、問題は『一人で残る』という点にある。

 

もし万が一神社内で幽霊と遭遇すれば助けを呼べる者が居ない為、和一人で対処しなくてはいけなくなる。唐傘お化け程度で簡単に腰を抜かす和にソレが出来るとは考え難い。

 

という事で二つ目の選択肢も却下。

 

よって和が取るべき選択は必然的に一つに絞られ……

 

和「ワカリマシタヨロコンデサンカサセテイタダキマス」

遠い目

 

猫太「なぁー(オイ目が死んでるぞ)」

 

和の目からハイライトが消えた。汐里は戦犯の早苗を半目で睨むも、当の本人は何故汐里に睨まれているのか解らずキョトンとした顔をする。

 

しかし、直後に早苗は元気な表情に戻り和の手を握ると……

 

早苗「和さん!一緒に肝試しを盛り上げましょうね!!」

 

固い握手を交わした。一方的に交わされた側の和の心境は如何なものか。

 

一刀と汐里は二人揃って盛大な溜め息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

早苗「本日は守矢神社に集まり頂いてありがとうございます!

 

ちなみに会費は390円です♪」

 

和「オイチョット待て」

 

一刀「成る程マ○ドのサンキューセットか」

 

和「お前も少しは疑問に思え!」

 

こちとら望んで参加した訳でもないのに会費と称してお金を徴収するとは正気を疑う。

 

しかも何故390円という微妙な価格に設定したのか。語呂合わせだとしてもサンキューな気分になる筈が無いのに……

 

早苗「何かを得る為には何かを犠牲にする。ギブアンドテイクの常識ですよ」

 

和「こっちは得るもん何も無いんですけど!?しかも全然ギブアンドテイクになってねぇし!

 

『サンキューセット、貰えば信仰も集まりハッピーセット♪』ってやかましいわ!!

 

そんでもって私達は出血大サービスで極上の恐怖を味わうんですねってやかましいわ!!」ビシッ!!

 

一刀「アカン、和が壊れた!」

 

汐里「……和さん、よっぽど怖いんですね」

 

恐怖という感情は時として人を狂わせる。

和は普段滅多にやらないノリツッコミをこれでもかと言わんばかりに連発させる。参加するとは言ったが今一つ踏ん切りが付かない。

 

結局会費は一刀が和と猫太の分を支払う事になった。

 

その後早苗はくじ引きで役割を分担すると説明があったが、怖がりな和は脅かす側も脅かされる側も嫌である。

 

強いて言うなら脅かす側の方が精神的には比較的楽であり、もっと言えば森の入口付近で一刀か猫太のどちらかが付いてくれれば和には有り難い。

 

しかし、くじ引きの結果一刀と猫太は脅かされる側になり、和は脅かす側になった。脅かす側が良いとは言ったが和が望んでいた結果とは違う。

 

役割が決まった際、和は捨てられた仔犬の様な状態になってしまっていた。

 

ルートは決まっており、神社の裏の森へと入り暫く進み、折り返し地点にそびえ立つ大樹に貼られてある短冊の様な細長い紙を取って境内に戻ってくるというもの。

 

和はその手前で脅かす事になったが、これまた望んでいた結果とは違う。その為か和の士気が全く上がらない。

 

和「……」ブルブル

 

辺りにはいくつか人間の気配がする。それが和の僅かな救いである。

 

肝試しに参加している面々で怖い素振りを見せていた者は和以外に居ない。寧ろ皆嬉々とした表情をしていた。

 

何故そんなに楽しめるのか、和には不思議に思えてしょうがない。

 

汐里に聞いた話ではやはり早苗が肝試しを企画したらしく、何でも守矢神社の信仰を手っ取り早く集める為に開催したと汐里は話していた。

 

早苗も曲がりなりに一人の巫女、一応信仰集めはそれなりにやっているようだ。一刀絡みの事が無ければという限定的な話ではあるが(信仰集めは基本人里でやる事が多いので大抵は一刀が絡む)。

 

更に発案者の早苗の話では肝試しは外の世界に居た時から信仰集めの一環としてやっていたが、幻想郷では初めてらしい。願わくば一生幻想郷で開催して欲しくはなかったというのは和の本音。

 

和「大体何が悲しくて肝試しなんてやらなきゃいけないんですか……」ウー☆

 

こういった類いのお約束として、肝試しや怪談話をした時に必ずその場で心霊現象が起こる。しかも厄介な事に幽霊が人間に取り憑いて、その者に少なからず悪影響を与えるといった話が一つや二つという次元ではない。

 

それが解っていながら何故懲りもせず同じ過ちを繰り返すのか。和にとっては怪談話でさえも御免被りたいのに肝試して……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和「馬鹿なの?ほん・とぉーーーに馬鹿なの!?」

 

和は心中で参加者全員を罵倒する。それ程までに和の精神は違う意味で疲弊しているのだ。

 

しかしそれ以上に早苗が天然である事を忘れ、見え見えの安い挑発に乗ってしまった自身の煽り耐性の無さに正直ショックを受ける。今度我が主に師事を仰ごうかと和は割と本気で思う。

 

ちなみに参加者全員とは言ったが、主の一刀は一応止めには入ったので除外とする。その中に我が主を含めるのはいくら何でも理不尽過ぎると考える辺りは実に和らしい。

 

和の心中は早く肝試しを終わらせて帰路に着きたいという思いで一杯である。

だからだろうか、和に近付く者の気配に気付けなかったのは。

 

「ねぇ、隣良い?」

 

和「うきゃあ!?」ビクン!!

 

突然声を掛けられ素っ頓狂な声を上げ反射的に背筋がピーンと伸びた。腰が抜けそうになりながらも恐る恐る視線を隣に向けると、そこには満面の笑顔を見せる顔立ちの整った一人の少女が居た。

 

恐らく肝試しに参加した里の少女だろう。面識は無いが和はそうだろうと当たりを付ける。

 

和「……貴女も肝試しに参加しているんですか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

突然の登場にびっくりはしたが、隣に人が居てくれるだけでも和には有り難い。少しは和の気分も回復する。

 

「全くここの巫女は何を考えてるのかしら。今時肝試しで信仰を集めようとする神社なんて聞いた事無いわよ」

 

確かにその通りだ。信仰集めの一環として肝試しを行うにしても他に取るべき手段は幾らでもあった筈だ。一応汐里は別の案を提示したようだが多数決で負けた為、肝試しに決まった。

 

早苗もそうだがまさか神奈子と諏訪子も一枚噛んでいたとは……おのれあのチビデカ二柱め。

 

ちなみに早苗から幽霊の仮装をするようにと言われたが和はキッパリと断った。これ以上早苗の思い通りになって堪るものかという和のささやかな抵抗である。

 

暗くてよくは分からないが、見た所隣の少女も仮装はしていない様子。

…何だ、強制ではなかったのか。

 

顔も名も知らぬが隣に少女が居るという安心感からか、和の口から愚痴が零れる。

 

和「大体遊び半分でやったらバチが当たるって知ってる筈なのに何故人間達は性懲りも無くこんな事をするんでしょうか……」

 

「まぁ人は好奇心旺盛な者が多いから欲には勝てない生き物なの。

 

それと大体の人間は『自分なら大丈夫』って他人事に思ってるから同じ轍を踏むのよ。

 

後一つ理由を挙げるとしたら、女子が男の腕にしがみ付いて可愛げのある女子を演じて恋愛に発展させたいという野望もあるわ」

 

和「…馬鹿だ。本当に馬鹿だ」

 

そんな(よこしま)な理由で肝試しに参加する奴は一人残らずバチが当たると良い。幸いこの場には祟り神の諏訪子が居る事だし手間は省ける。

その程度の事で土着神の力を借りるのはどうかとは思うが。

 

和「(それ以前に諏訪子様が乗り気だった事を忘れてた(汗))」

 

ならば諏訪子も一思いにバチが当たってしまえ。

 

和は心の中で諏訪子に辛辣な言葉を浴びせる。今なら神でも祟る事が出来そうだ。

 

隣の少女は負のオーラ全開の和に若干顔が引き攣る。

 

この肝試しが終わったら守矢の連中(汐里は除外)にキツイお灸を据えてやらなければならないようだ。さてさてどんな手法で殺ろうか。

 

オーソドックスに藁人形を木に打ち込む方が良いか、それとも別の方法が良いか。紅魔館に行けば呪いに関する書物は図書館に置いてあるだろうか、今度立ち寄って調べてみよう。

 

和の思考が段々おかしな方向に向かいかけていた時、隣に居た少女が不意に口を開いた。

 

「だから私はそういった輩の鼻っ柱をへし折る為に肝試しに参加しているの。

 

()()()()()()……ね」

 

和「……は?」

 

和は現実へと引き戻されると同時に強烈な違和感を覚えた。

……今この少女は何と言った?

 

確かにあの時早苗は守矢神社の肝試しは恒例行事だと言っていた。

 

しかし恒例と言えどそれは外の世界での話。ここ幻想郷では()()()()()()()()()になる。

 

だがこの少女はここでずっとと言った。この発言が何を意味しているのか、和の頭脳を持ってすれば理解出来る筈だ。

 

思い返せば不自然な出来事の連続であった。まず紅魔館に僅かに漂っていたフランの狂気を察知出来た和が、例え思考の渦に溺れていたとしても自分の真横に来るまで人の気配を察知出来ない事があるだろうか?

 

それにまだ寺子屋で授業を受けていても不思議ではない見た目の少女でありながら、やけに落ち着き払った精神と大人びた口調。

 

そして極め付きは里の人間と解釈した割には面識が無いという矛盾した少女の存在。

 

和とその主の一刀は人里の人間達とは交流が深く、もはや里の住人達全員と顔見知りだと言っても大袈裟ではない。それなのに面識が無いという事が果たしてあり得るのだろうか?

 

だがそれだけではない。和は神社に来る前から恐怖で頭が普段より回らなかった為に、もう一つ大きな事情を見落としていた。

 

それは守矢神社が建つこの妖怪の山の事。

 

今では参拝目的で訪れる者の多いこの山だが、かつては冥界や無縁塚等と並んで幻想郷の危険区域の一つとして数えられていた歴史を持つ。

 

標高は驚く程の高さではないが、登頂までの道のりがあまりに険しくどこぞの樹海みたく方位磁針が当てにならない事が要因となり遭難者が続出した。

 

そして運良く遭難を免れた者もそのほとんどが縄張り意識の強い天狗の餌食となり、妖怪の山での死者の数は優に千を超す。当然そこには幽霊が居ると考えるのが妥当だろう。

 

だからこそ早苗達が幻想入りした時に同じ悲劇を繰り返さぬ様、天狗や河童の全面協力の下に妖怪の山は整備されたのだ。しかし霊を祓うまでには至らなかった。

 

これこそが古の伝統と最新の技術が共存する妖怪の山の裏の顔である。和が普段通りの状態であればまず見落とす筈が無かった妖怪の山の裏事情。

 

逆に言えば和の頭に住み着いた恐怖という名のベールがソレを失念させたのかも知れない。

 

額から嫌な汗が頬を伝う。恐らく和の事だ、少女の正体について既に察しは付いているだろう。

……認めたくはないとは思うが。

 

そんな和に少女はダメ押しの一言を突き付けた。

 

「……言い忘れてたけど私はこの森で死んでから200年近く経つ地縛霊よ。

 

今夜は宜しくね♪」

 

そう言って地縛霊の少女は可愛らしく首を傾けた。

発言は全く可愛くないが……

 

しかも首を傾けた直後に頭がポロッと外れて地面に落ちた。その状態のまま和にニコリと笑い掛ける。

 

この全く嬉しくない恐怖のサプライズに和が耐えられる訳も無く……

 

和「イ、イ、イ……

イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

森全体に和の絶叫が木霊する。そして和はその場から脱兎の如き勢いで逃げ出した。

 

「……少しからかい過ぎたかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀がソレに気付いたのは謎の絶叫が聞こえて少しの時間が経った後であった。

 

一刀「……あ?何だありゃ?」

 

森の入口からこちらに猛スピードで向かってくる白い影。一応警戒しとくかと一刀は摩周湖に手を掛ける。

 

しかし、その時には既に白い影が目の前にまで来ており……

 

ドゴォーーーーーーン!!

 

一刀「べふぁっ!!」

 

白い影の突貫攻撃をもろに喰らった一刀は地べたに叩き付けられる。文句の一つでも言ってやろうかと上体を起こすと……

 

和「(((ToT)))」ガクブル

 

一刀「…って和ぃ!?」

 

一刀に突貫かましたのは従者の和であった。一刀も守矢の面々も何がどうなっているのか理解が追い付かず目が点になる。

 

その和はそんな周囲の状況などお構い無しに地べたにへたり込んで身体をガタガタと震わせている。

 

和「……川西能勢口、絹延橋、滝山鶯の森鼓滝多田ヒラノイチノトリイウネノヤマシタササベコウフウダイトキワダイミョウケングチーー」ガクブル

 

一刀「雷電、今すぐスマホの電源を切るんだぁーーーーーーッ!!」

 

諏訪子「何でアンタまで発狂してんのさ!!」

 

早苗「大佐ァーーーーーーッ!!」

 

諏訪子「早苗も乗っからなくて良いから!!」

 

和というツッコミ女王が機能しない今、代役を務めるのは諏訪子である。神奈子は和のあまりのビビりっぷりに呆れ返り、汐里は和に同情の眼差しを向け、猫太は我関せずといった態度で明後日の方向を向いていた。

 

参加者全員の準備が整い、これから始めようって時に和が悲鳴を上げながら戻ってきたので汐里以外の守矢の面々は訳が解らず首を傾げる。

 

和「嫌です嫌ですもう嫌です!私はもう帰ります!それが出来なければこの場で切腹します!ですから一刀様介錯をーー」

 

一刀「分かった分かったって!少しは落ち着け!!」

 

和「……一刀様」ガシッ

 

一刀「ぬおっ!?」

 

放っておくと本気で切腹しかねないので一刀は慌てて和を止める。ここまで一刀が慌てふためくのも中々珍しい。

 

和は一刀にしがみつくとボロボロと大粒の涙を流し始めた。

 

和「ぐすっ……ひぐっ(泣)」

 

守矢の面々「(本気で泣いてる!?)」

 

一刀「……和、もしや何か居たのか?」

 

和「う"ーーーーーーーーーー(泣)」ブルブル

 

一刀「あぁ……ダメだこりゃ」

 

和が泣きじゃくるという事はよっぽどの事態があった事は容易に想像出来るが、いかんせん和がこんな状態である。

 

恐らく彼女が落ち着くのはまだ当分先になりそうだ。一刀は自身の暇潰しに無理矢理付き合わせた和に申し訳なく思う(無理矢理付き合わせたのは早苗の方だが)。

 

本当は幻想郷の肝試しがどんな物か体験してみたかったが、和を放置して自分や猫太だけ参加する訳にもいかなくなった。

普段から和には散々迷惑を掛けているが、人がされて本当に嫌な事を行う程外道になったつもりは無い。

 

一刀「悪い、俺達はこれで帰るわ」

 

神奈子「オイオイ、肝試しはこれからーー」

 

汐里「おじさん、お疲れ様でした」

 

神奈子「……汐里?」

 

神奈子の言葉を汐里は遮る。勿論事情を知ってるだけに無理強いはしたくないという気配りから出た言葉であった。

 

一刀は汐里に礼を告げるといまだ泣きべそをかく和を背負い、少し渋った猫太を連れて神社の石段を降りていった。

 

早苗「あ~あ……折角一刀君が来るから張り切ってたのに……」

 

汐里「……早苗、後で大事な話があります。肝試しが終わったら私の部屋に来て下さいね」

 

早苗「何ですかその笑顔は!?後ろに般若が見えるのは私の気のせいですか!?」

 

肝試し終了後、早苗は汐里にこっぴどく叱られ丑三つ時を過ぎても解放されなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが、その後和はしばらくの間、早苗との接触を避けていたと言う。

 

 




汐里「はじめまして、私は東風谷家初代当主の東風谷汐里です。

……というかおじさん、何故私を後書きに出したんですか?」

一刀「いや…和が帰ってから部屋に引き籠もったっきり出て来ねぇからその代役。

後は読者への紹介も一応……な」

汐里「和さん災難でしたね……。

おじさん、ウチの早苗が和さんに迷惑を掛けて申し訳ありませんでした。あの後直ぐに早苗を折檻しましたので少しは大人しくなるとは思います」

一刀「……ちなみにどういう折檻をしたんだ?」

汐里「それは秘密です♪」ニコッ

一刀「お、おう……(その笑顔が逆に怖ぇ…(汗))」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。