東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

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あらすじ

朝早く、万事屋に稗田家からの依頼が入った。依頼の内容は幻想郷縁起の改編作業の手伝いというもの。その作業の昼食兼休憩がてらに甘味堂に立ち寄る。そこで一刀の口から衝撃の発言が飛び出す。




















和「……何ですかこの巫山戯たサブタイは?」

一刀「だから~、マジのガチでこの話のサブタイが全くーー」

和「そのまんまじゃねぇか!!

せめてどういう意図を持ってこのサブタイにしたのか教えて下さい」

一刀「一応弁明させてもらうと、マジのガチでこの話のサブタイがーー」

和「だからそのまんまじゃねぇかよ!!(怒)」

一刀「一応何通りか候補はあったらしいが、マジのガチでこの話のーー」

和「もう良い!!(怒)」

一刀「まぁ思い付いた候補がどれもピンと来なかったからこのサブタイにしたんだよ」

和「最初っからそう言って下さいよ……」


13. マジのガチでこの話のサブタイが全く思い付かなかった。スマン……

 ◇

 

和「一刀様、朝早くから申し訳ありませんが依頼が来てます」

 

一刀「んあ、誰から?」

 

北郷一刀の従者、北郷和の朝は主程ではないがまぁまぁ早い。

 

そこで以前紹介出来なかった和の一日をざっくりとだが紹介する事にしよう。

 

北郷和は主の一刀が下の階で仕込みをしている時の音を目覚まし代わりに起床する。

 

和自身は仕込みには参加しない。たこ焼きかっちゃん堂を始める時に二人で話し合って開店の準備は一刀を、そして閉店後の片付けは和の担当に決まった。

 

当初和は難色を示したが、一刀が命令権を行使した事により従わざるを得なかった。

 

話が逸れてしまったが和の朝は主に比べては遅い方である。

 

寝間着から着物に着替えて歯を磨き顔を洗い、一階に降りる頃には一刀は仕込みを終わらせているので和の仕事は主と共に店の営業する事である。

 

時折一刀が摘まみ食いをしないか見張り、摘まみ食いを発見した場合は即折檻を行う(折檻の内容は一、二話参照)。

 

基本は二人で店を営むが、半分程の割合で早苗が手伝いに来る。

 

早苗曰く信仰集めのついでだと言ってはいるが、和の推測では恐らく信仰集めそのものはすっぽかしている様に思える。

 

その度に守矢の三柱が慌てふためく様子が和の脳裏に映し出される。今度八意製薬の胃薬と頭痛薬を送る事にしよう。

 

そんな調子で夕刻まで仕事を続けた後、片付けをして自由時間を得るのだが主はあの北郷一刀、無風で平穏無事に従者の一日が終わる筈が無い。

 

一刀は週に六日という恐ろしいペースで飲みに行く。それも嗜む程度なら良いが、一刀の場合は毎回どんちゃん騒ぎを繰り返し、帰り着く頃には日付けが変わってる事が殆ど(前話の様に早めに帰ってくる事は極めて稀)。

 

そして翌日重度の二日酔いで主が使い物にならず、和が涙目で店内を駆けずり回る羽目になるのが日常茶飯事なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【マジのガチでこの話のサブタイが全く思い付かなかった。スマン……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

さてざっくりと言いながら随分長ったらしくなってしまったが、これが北郷和の一日である。

 

しかし朝、一刀が起床して仕込みの為に一階に降りると、そこには珍しく一刀より早起きしていて、あの肝試しの件から立ち直った和の姿があった。

 

どうも朝一に依頼があったようだ。

 

和「つい先程女中の方がお越しになってお屋敷に来て欲しいと」

 

一刀「お屋敷?って事は……」

 

和「はい、依頼は()()()からです」

 

一刀「うわっ、面倒くせぇ」

 

和「そんな顔してはいけません」

 

稗田家と聞いた瞬間、一刀は露骨に顔を顰めた。

 

誤解の無い様に言っておくが、一刀は稗田家の家主を嫌っている訳ではない。というより一刀は対人妖関係に好きや嫌いという感情はあまり持ち込まない。

 

一刀が嫌がっているのは依頼の内容である。

 

というのも稗田家の依頼は今回が初めてではなく年に二、三回は必ず依頼が来るのだが、その内容は主に身体を動かさない仕事の為、じっとしている事が苦手な一刀にとっては苦行なのだ。

 

それでも異変解決以外の依頼は何でも引き受ける万事屋のモットーを反故にする事は出来ず、和の説得もあって一刀は渋々引き受ける事に。

 

その気になればすっぽかす事も可能だがそれをやったら最後、般若と化した和の鬼の折檻が待っているだけである。

 

一刀「ハーイハイ、分かりましたよーだ(俺は行かないから和よろしく♪)

 

和「オイ、心の声漏れてるぞ(怒)」

 

その後あの手この手でサボタージュを試みるも和には通じず、最終的に「行かなければ報酬は無し」と言われた為に一刀はようやく重い腰を上げた。

 

和「では猫太さん、留守番お願いしますね」

 

猫太「にゃっ!(了解した!)」ビシッ

 

一刀「あぁ……気が重い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

稗田家の当主は代々(とは言うものの実の所は三、四世代に一人ぐらいの割合)転生を繰り返してきた一族で、その者達の事を『御阿礼の子』と呼ぶ。

 

その十代目御阿礼の子に当たる者が今回の依頼者、稗田阿求(ひえだのあきゅう)である。

 

阿求のみならず御阿礼の子は、その時代に自分が生きた証として妖怪や神様に関する情報を記した日記帳みたいな物を書き記している。

 

今回の依頼はその日記帳もとい、『幻想郷縁起』の改編作業のお手伝いというもの。

 

阿求が名付けたこの幻想郷縁起は日記帳と例えたが中身の詳細は一部の者しか目を通す事が出来ず、屋敷全体が紫のスキマを介しても侵入出来ない程の分厚い結界に囲まれている。

 

その改編作業の手伝いが出来るのは万事屋の特権とも言えよう。

 

しかしこの改編作業、ただ単に幻想入りした妖怪達を書き足す作業だと思ったら大間違い。

 

というのも幻想郷縁起の人妖の紹介は五十音順に並べられているので、幻想入りした人妖達をその順番通りに並べなくてはならない。

 

すなわち幻想郷縁起の改編作業は一冊丸ごと行わなければならずこれを阿求一人で全て終わらせるとなると、どれだけ少なく見積もっても二ヶ月弱は軽く掛かる。

 

それが万事屋の手を借りる事で二ヶ月弱掛かる作業を数日に短縮させる事が出来るのだ。それでも多大な時間を要する事には変わりないが。

 

つまり阿求の依頼は長期的な依頼で、それが全て完了するまで手伝わなければならない。一刀がゴネる理由もなんとなく解る。

 

勿論その間に他の依頼が来る事もあり、所謂『依頼のダブり』が発生する。万事屋の最も大変な点はソコに尽きる(けどまぁ精々頑張れ)。

 

和「……作者さんの心の声が聞こえましたが」

 

一刀「もやし作者は迅速に投稿出来るように精々頑張れ(笑)」

 

……(汗)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そんな訳で嫌々仕事する一刀は(一刀「オイ、逃げやがったぞコイツ!!」)改編作業の依頼が来る度にある事で阿求とよく揉め事を起こす。

 

それとは……

 

一刀「おいあっきゅん(阿求の渾名)、いい加減俺の種族を人間にしろよ」

 

阿求「駄目です。普通人間はどれだけ長く生きても精々100年と少々しか生きられません。

 

しかし北郷さんはもう5000年は優に超えてますよね?

 

その様な者の種族を人間にする事は出来ません」

 

そう一刀は自身の紹介文に納得がいかず阿求に変更を要求するが、阿求は頑なに拒み続けている。ちなみにネタ回でざっと紹介したが、一刀の種族は『超人』とされている。

 

阿求の言ってる事はごくごく正論で理に適った発言なのだが、捻くれ者の一刀がそれで納得する筈が無い。

 

一刀「何言ってるんだ。俺は能力で老化と寿命の概念を消してるだけで、それ以外は普通の人間と何ら変わらん」

 

阿求「……ですから老化と寿命の概念を消している以上、北郷さんを普通の人間と認める訳にはいかないんです」

 

阿求の正論に対して一刀は屁理屈で返す。和以外にも一刀の発言に振り回される者はこの幻想郷にごまんと存在する。勿論阿求もその一人。

 

傍らで二人のやり取りを聞いていた和は、人間として生きる道を捨てた筈なのに人間である事に拘る主に矛盾しているのではないのかと疑問に思う。

 

……というか、我が主は口より先に手を動かしてはくれないだろうか(汗)。

 

和の訴え掛ける視線に一刀が気付く気配は無く、阿求にひたすら屁理屈をこね続ける。

 

自分自身が嫌だと思う事はいかなる手段を使ってでも逃れようとする男、それが北郷一刀である。

 

恐らく一刀は夏休みの宿題を最後の最後まで後回しにするタイプ。そうして遊び呆けた挙句の果てに宿題全てをすっぽかすのがこの男なのだ。

 

一刀の様な者を一言で纏めるならば『アンがポンでタンな奴』と言えば良いだろうか。

 

和「こうして改めて見ると幻想郷にも多様な種族の人妖達が存在しているんですね」

 

一刀「……多分今後も増えると思うぞ。ほら、原作も結構な数出してるし」

 

和「さらっとメタ発言してんじゃねぇよ」

 

一方の和は口だけでなく同時進行で筆を進める。改編作業も大変ではあるが、主の蛮行と秤に掛ければ楽な物。

 

和が一刀にツッコミを入れて以降は三人共に沈黙し、幻想郷縁起の改編作業に没頭する。

 

しばらくの間、その場は墨の匂いが支配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀「……」イライラ

 

沈黙を続ける事およそ一刻半、じっとしている事が苦手な一刀の我慢は限界に達していた。

 

灰皿にこれでもかと貯まった吸い殻の量がソレを物語る。逆によくここまで持った方だ。

 

稗田家は基本的に禁煙なのだが、お煙草がお友達の一刀にルールを守るという常識は存在しない。

 

見かねた阿求が恐る恐る口を開く。

 

阿求「……あの、そろそろ休憩にしませんか?」

 

その途端、今まで顰めっ面だった一刀の表情がぱぁっと明るくなる。

 

和「……確かに昼食時の時間ではありますね」

 

時計で時間を確認した和も阿求の提案に賛成の意を示す。先程までと180度態度の違う一刀に若干の苦笑いを浮かべながら。

 

一刀「じゃあ飯は何処にする?俺の気分としちゃあ糖分を摂取したいんだが」

 

一刀の発言に女子二人は揃って首を縦に振る。和も阿求もスイーツは大好物、否定する理由が見当たらない。

 

和「でしたら里の中心部まで移動して、そこの甘味堂で食事を摂りましょう。

 

阿求さんもそれで宜しいでしょうか?」

 

阿求「はい」

 

特に和のスイーツ好きは幻想郷ではかなり有名で、はたての花果子念報と協力して幻想郷の甘味処を紹介する程。

 

もっと言えば頬が落ちる程の甘いスイーツを堪能出来るなら、主の蛮行だって無かった事にさえ出来る。

 

とは言え紫みたく体重計と格闘したくはないので、普段の食事では栄養のバランスを考えてはいるが。

 

一刀の案は満場一致で可決され、三人は作業の手を一旦止めて休憩がてら甘味堂へと足を運んだ。

 

和「一刀様、休憩が終わったらちゃんと仕事して下さいね♪」

 

一刀「……めっちゃウキウキしてるじゃねぇか」

 

和「……そ、そんな事無いですよ」

 

一刀「ハイハイ、無理しなくて良いの」ナデナデ

 

和「あぅ……(照)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

和「~♪」モフモフ

 

普段では主の一刀でもほとんど拝む事の無い満面の笑顔でスイーツを頬張る和の姿、とても貴重である。

 

和菓子を中心に取り扱うここ甘味堂は今年で創業五千年近い年数にも及ぶ老舗中の老舗。何と諏訪子が一人で諏訪の国を統治していた当初から存在していると言うのだから驚きだ。

 

何故それだけ続けられたかというと、単純に甘味堂の店主が妖怪だからである。彼もまた、和と同様に力以外で己の妖怪としての在り方を示した者の一人。

 

一刀達主従コンビは妖怪店主とその当時から顔馴染みであり、和菓子を食べるならいつも甘味堂と決めている。

 

店主「はいよ、いつものお待ち!」

 

阿求「……」

 

さてさて、そんな老舗の甘味堂で『いつもの』なる物を注文したのは一刀。店主の威勢の良い声と同時に運ばれてきた物を見た阿求はギョッとした表情をした。

 

一刀の真正面に置かれた物は、ごくごく普通の白米。

 

……その横に小さな黒い粒が混ざった卵色のクリーム状の物が白米と並んでお盆に乗せられていた。

 

阿求がギョッとした訳はそのクリーム状の物の正体を知っていたからだ。これから一刀が仕出かす事を薄々勘付きながらも阿求は問う。

 

阿求「あの北郷さん……それは」

 

一刀「良くぞ聞いてくれた。コイツは行き着けの俺にしか出さねぇ特別メニュー……

 

その名も()()()()()だぁ!!」

 

阿求「……(汗)」

 

和菓子メインの甘味堂で唯一の洋菓子(?)、大量のカスタードクリームをON THE RICEさせればあっという間に完成する超簡単レシピ。

 

北郷一刀命名、その名を『カスター丼』。

 

一刀は丼を片手に持つと豪快に口へとかけ込む。見ている阿求はそれと反比例してみるみるうちに食欲が削がれてゆく。

 

阿求「北郷さん……もう一度伺いますが、それは何ですか?」

 

一刀「おうよ。コイツは丼に入れた餅米にカスタードクリームをこれでもかとーー」

 

阿求「いえ、そういう意味ではなくて……」

 

和「~~♪」モフモフ

 

作り方を聞いているのではない。阿求が聞きたい事は色とりどりの和菓子が揃う甘味堂で何故ソレを選ぶのか。ネーミングセンスもさる事ながら、餅米の上にカスタードクリームをドッキングさせるという奇天烈な発想に行き着く事自体がまずオカシイ。

 

そして隣に居ながらまるで何事も無い様に和菓子を頬張る和にも疑問が沸く。横で主がゲテモノを食しているのに何故平然とした態度でいられるのか。

 

ツッコミたい事が多過ぎて思考がパンクしそうになる阿求。二人程コミュニティーの幅が広くはない阿求では一刀のボケは処理しきれなかったようだ。

 

やはり一刀のボケを無駄なく華麗に処理出来るのは従者の和しか居ない(和「褒められている気がしませんが(汗)」)

 

そんな和も甘いスイーツの誘惑には勝てず、簡単に白旗を揚げ主を蚊帳の外にしてしまうが。

 

阿求「……和さんは見ていて不思議に思わないんですか?」

 

和「~~♪」モフモフ

 

阿求「あの……和さん?」

 

和「~♪……ハッ!?

 

ゲフンゲフン……

 

……何でしょうか?」

 

阿求「(今更取り繕っても遅い気が……)」

 

恐るべしスイーツの魔力と言うべきか。幻想郷では伝説の妖鳥と謳われる和もスイーツの前では普通の妖怪少女。特に甘味堂のスイーツは味にうるさい者達を悉く骨抜きにして、最後には撃沈させる。

 

それはもはや無敵()隊と呼ぶに相応しい。

 

和「申し訳ありません……私甘いスイーツには目が無いんです」

 

阿求「……いえ、大丈夫です」

 

一刀「甘味堂っつー店は幻想郷が出来てすぐに外界から移店してきてもう500年は経つ。

 

その間に外界から色んな甘味処がこの幻想郷にやって来たが、あっきゅん見てみろこの行列、この支持率!

 

まるで90年台の無敵艦隊ヤクルトスワローズみたいだろ?」

 

阿求「あの……分かりません(汗)」

 

現在和が食しているのは甘味堂で絶大な人気を誇る和菓子三品。

 

柏餅、ぜんざい、きんつばの三品。

 

一刀「そんで今和が食ってる和菓子3つは甘味堂の売り上げベスト3の3品なんだよ。

 

野球で言うたら『古田』『広澤』『池山』の和製クリーンアップトリオみたいなもんだぜ」

 

阿求「……(汗)」

 

一刀「そしてここにカスター丼という野球で言えば『オマリー』的存在がこのベスト3に割って入ってくる訳だ。

 

そうだろ和?」

 

和「イヤ入ってきませんって!どんな例えですか!?」

 

阿求「(そもそもカスター丼はお品書きにすら入ってなかった様な(汗))

 

……結局北郷さんは何が言いたいんですか?」

 

一刀「……つまりオマリー放出は阪神最大の汚点だったとーー」

 

和「何で野球の話になってるの!?」

 

一刀は幻想郷と外界を自由に行き来出来るからか、外界の情報は特に詳しい。最近の流行から紐解いて今後幻想入りしそうな物を森近霖之助と予想立ててピックアップしている。

 

ある意味で幻想郷に新しい風をもたらす橋渡し的な役割を持っているのだ。

 

一刀「ここだけの話……ついこの間、とある物が幻想入りほぼ確実っていう情報をキャッチしたんだ」

 

和「……どんな情報ですか?」

 

一刀「今から話す。オメェ等近う寄れ」

 

一刀の合図で三人は顔を寄せる。一刀曰くこの話は天狗ですら掴んでいない秘匿情報らしい。

 

一刀「今外界じゃあ薄型のテレビがここ10年で急速に普及してきてる。外界……特に日本の技術力は俺も舌を巻くぜ」

 

阿求「……テレビって何ですか?」

 

一刀「分かりやすく言えば動く紙芝居みたいなもんだ。それでも分からんならググれ」

 

和「余計分かりにくくしてますよ」

 

一刀「後半は冗談だ。だがテレビってのはそういうもんだ」

 

和「……まぁ概ね合ってはいますが」

 

戦後まもなくして訪れた高度経済成長期に登場したテレビは当時はお金持ちしか買えない高嶺の花であったが、今では一家に一台は必ずある生活必需品となっている。

 

二十年程前まではブラウン管と呼ばれる箱形のテレビが主流であったが、地上デジタル放送への完全移行に伴い薄型のプラズマテレビが台頭してきた事によりブラウン管テレビはその数を急激に減らしていった。

 

一刀「時代から取り残され忘れられた奴等の最後の花道が幻想郷であるならば、その鎮魂歌(レクイエム)を奏でてやるのが俺達の仕事だ。

 

それが出来るのは同じく外界から忘れられた俺達にしか出来ねぇ。そうだろ?」

 

阿求「確かにそうですね」

 

和「一刀様、という事は……」

 

一刀「そうだ、次に幻想入りするのはブラウン管テレビだ。まぁ後は紫の審査次第になるがな。

 

コイツが幻想入りする事によって天狗の社会も大きく変わるぞ。」

 

阿求「……どういう意味ですか?」

 

一刀「まぁ最後まで聞けってーー」

 

ブラウン管テレビの幻想入りは天狗にとっては手放しで喜んではいられない。

 

特に文やはたて等の一部の鴉天狗は新聞で生計を立てていたが、テレビが幻想入りする事によって時代は新聞からテレビへと移行する事は明らかだ。

 

一刀「テレビは瞬く間に人里に普及する筈だ。そん時に新聞から報道へと上手くアジャスト出来ねぇなら天狗の社会は崩壊する。

 

だが俺達万事屋としてそういう事態を黙って見てる訳にもいかん。

 

和、今から文とはたてを連れて来い。俺達は屋敷に戻ってるから」

 

和「はい」

 

和は懐から取り出したお金を幾らか一刀に渡すと、白鳩に姿を変え甘味堂を出て行った。

 

阿求は北郷一刀が和の主として動く姿を初めて見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

和「ただいま戻りました」

 

文「どうも、お邪魔しま~す!」

 

はたて「はぁ……」

 

屋敷に戻りお互い無言で(阿求は一刀に執拗に絡まれながら)改編作業を続けていた二人の元に和が文とはたてを連れて帰ってきた。

 

初めて稗田家の屋敷に入る文はテンション高めに、対するはたてはまた厄介事に巻き込まれたとテンションが落ちた状態であった。

 

一刀「おぉ、良く来たオメェ等。そこに座れ」

 

文「は~い」

 

はたて「はぁ……」ドヨーン

 

ウキウキとした表情の文とは違ってはたての表情は未だ渋いまま。これから一刀がどんな無茶を要求してくるか分かったものではない。故にはたては内心警戒している。

 

和「はたてさん、そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ」

 

一刀「そうだぞ。いつまでも自分(テメェ)の殻に閉じ籠ってんじゃねぇよ、ほたてちゃん」

 

はたて「ほたてじゃなくてはたてだってぇ!!」

 

一刀のはたてイジりの鉄板ネタ、名前呼び間違えボケに毎度の事ながら反応してしまったはたて。はたてはいつになったらスルーする事を覚えるのだろうか?

 

隣に居る文はそんなはたてをニヤニヤしながら見つめる。和から「一刀様が話したい事がある」と言われたが為にこうして馳せ参じたが、はたては早くこの場から立ち去りたいという気持ちで一杯である。

 

和「一刀様、早く本題に入りましょう」

 

このグダグダした空気を変える事の出来る存在はやはり和しか居ない。和にとっては改編作業と並行して進めているので、必要以上に時間を費やしたくはない。

 

一刀「ヘーイヘイ。そんじゃあ本題に入るが、その前にオメェ等に言っておきたい事がある。

 

今から話す事は例えネタに困ったからと言っても絶対に記事にするな」

 

文「あやや!?何故ですか?」

 

はたて「?」

 

一刀「鴉天狗の中にはオメェ等みたいに新聞売って飯食ってる奴も居るだろ?

 

ところが近々幻想入りほぼ確なとある物がオメェ等の商売に多大な影響を及ぼす事になるんだ。

 

俺が記事にするなって言ってる訳は紫の審査がまだ通ってねぇから。早とちりして里の人間を混乱させる訳にはいかねぇだろ?」

 

文「成る程~、それは確かに避けたいですねぇ」

 

はたて「……それで、その幻想入りする物って何なの?」

 

一刀「テレビだ。もっと分かりやすく言えば動く紙芝居みたいなもんだ」

 

文・はたて「「……!!」」

 

一刀「……俺が何を言わんとしてるか分かったようだな」

 

一刀がテレビの説明をした瞬間、文とはたては絶句した。ソレが幻想入りする事によって自分達にどんな影響があるのか瞬間的に理解したのだ。

 

一刀「つまり和を使ってオメェ等をここに呼んだのは、オメェ等が今後どうしていくかをはっきりさせる為だ。

 

……どうする?」

 

文「記者としての仕事を辞めるつもりは無いですよ~。

 

面白そうだからテレビを使うという手もアリっちゃアリですねぇ~」

 

新しい物好き……所謂『ミーハー』な側面がある文はあまり悩む素振りを見せずテレビに移行する可能性を示唆した。

 

実を言うと一刀と和も文に関してはそれほど心配してはいない。新しい物事に率先して挑戦する積極性を文は持っているので、環境の変化に適応してゆくのも早いだろう。

 

はたて「……」

 

問題ははたてである。彼女は新聞製作においても、悩みに悩んだ末に和の助言を借りて今のスタイルを確立した。

 

情報の正確性が最大の武器である花果子念報は主に高齢者層から高い支持を集めてきた。今ここでテレビに移行すれば花果子念報最大のメリットが失われる恐れがある。

 

そんな悩めるはたてに、かつて助言を送った和が再び救いの手を差し伸べる。

 

和「はたてさん、私は残念ながらテレビがどういう物かを具体的に説明する事は出来ません。

 

……ですが、時代や環境が変わっても花果子念報に込めたはたてさんの信念は揺らぐ事は無いと私は確信してます。

 

何故ならはたてさんの成功は偶然の産物でない事を私は知ってますから」

 

はたて「……!!」

 

はたてが新聞記者として成功したのは和の助言があったから。

 

しかし成功を継続出来たのは、他ならぬはたて自身が慢心せず努力を継続してきたからである。

 

和はただ礎を築く手伝いをしただけに過ぎない。城を完成させたのははたて本人なのだ。だからこそ、自身の信念に自信と誇りを持つべきだと和は語る。

 

和「私から言える事はそう多くはありませんが、他にも何か悩み事があったら気兼ね無く私に相談して下さい。少しは力になると思いますから」

 

はたて「そんな……恐れ多いですよ」

 

和「はたてさん、私達は万事屋ですよ。それに文さんも困った事があったら万事屋に相談して下さい」

 

文「分かりました!」ビシッ

 

大先輩であるが故に遠慮したはたてとは対照的に文の返事は溌剌としていた。

 

和は天狗ではないので先輩後輩という立場にそれほど固執してはいないが、常日頃から自分を大先輩と慕う後輩達に何か少しでも力になれればと和は思う。

 

……と、今まで黙って話を聞いていた阿求が不意に口を開く。

 

阿求「和さんって本当に愛のある御方ですよね」

 

和「……急にどうされたんですか?」

 

はてさて、イマイチ話の流れが読めない。

 

やけに意味ありげな笑顔を浮かべる阿求に訝しむも、理由までは解らず和は条件反射で聞き返した。

 

阿求「いえ、なんとなくそう思っただけです。

 

だから北郷さんの従者でいられるのですね」

 

和「あの…すみません、自己完結するの止めてもらって宜しいですか(汗)」

 

阿求は独りでにウンウンと頷く。益々話が読めない。

 

頭に?マークが浮かぶ和に阿求は意味深な笑顔のまま……

 

阿求「すみません、ただ先程のやり取りと今までの北郷さんとのやり取りを見てて良く解ったんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和さんは北郷さんに特に深い愛情を持っているんだなと」

 

和「……なぁ!?」

 

爆弾を投下してみせた。

 

少しばかりの間を置いた後、素頓狂な声を上げた和は頬を紅く染める。

 

直ぐ様和は顔を隠したが時既に遅し、一番見られてはいけない者にバッチリ見られてしまった。

 

一刀「あれ~、どうしたの和ちゃん。顔を真っ赤に染めてぇ」

 

和「な、何でもありません気のせいです」プイッ

 

一刀「だとしたら何で明後日の方を向いてんのかなぁ~」ツンツン( ´∀`)σ)゚Д゚;)

 

和「もうからかわないで下さい!!」

 

イジりモンスター北郷一刀の本領が発揮される。全てお見通しなクセして態々問い質してくる辺り、この男は確信犯である。

 

和の頬を指でつつき弄ぶ一刀。これが二人だけのやり取りであったら和の心労もまだ軽かった筈だ。

 

しかし忘れてはならない。面白そうなネタがあればなりふり構わず首を突っ込んでくる者が一刀以外にもう一人居る事を……

 

文「和さ~ん。今の和さんの赤面、何枚かカメラに収めましたよぉ」

 

和「……え"っ!?」

 

一刀と和がじゃれ合っている間の(和「じゃれ合ってませんって!」)どさくさに紛れて文はカメラのシャッターを何回か切っていた。文はいついかなる時も笑神様が降臨する瞬間を逃さぬ様にカメラを常備している。

 

射命丸文のジャーナリスト魂、ここに極まれり。

 

文「明日の文々゚新聞の見出しはこれで決まりですねぇ。

 

あっ、でも安心して下さい。尊敬する和さんに敬意を表して三面記事にして差し上げますので」

 

和「これっぽっちも安心出来るか!!そんな事は絶対に駄目です!」

 

一刀「良いだろう、俺が許す!」

 

和「オイチョット待てェーーーーーーッ!!(怒)」

 

和にとっては本当に記事にされては堪ったものではないので血相を変えて二人を止める。

 

もし記事にでもされた暁には、またいつぞやの時の様に布団の中に潜り込んで青鬼のたけしよろしくガタガタと震えた挙句に主の一刀に介錯を頼む羽目になる。

 

これ以上トラウマを増やすのは本当に勘弁して欲しい。……イヤ、フリじゃなくて。

 

その傍らですっかり置いてけぼりにされた稗田阿求と姫海棠はたては、一刀と文にイジられてワタワタする和を見て二人顔を合わせる。

 

阿求「……私、何かマズイ事言いましたか?」

 

はたて「……多分言ったと思いますよ(汗)」

 

騒動の引き金を引いた阿求は自分が失態を犯した事も理解しておらず、そんな阿求にはたては頭を抱える。

 

稗田阿求という少女は東風谷早苗程ではないが、若干の天然気質を備え持つ少女である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみにだが、その後和の赤面が文々゚新聞で三面記事にされたかどうかは定かではない。

 




和「外の世界ではもうクリスマスイブですね。

この東北伝でもそれに纏わる話はするんでしょうか?」

一刀「……今のところやる予定は無ぇなぁ。まだ物語が進んでねぇし」

和「確かに随分先になりそうですね……

それより一刀様、去年の暮れに紫様の冬眠の話をすると仰ってましたが、その話はどこに行ったんですか?」

一刀「あぁアレ?




















アレは嘘、ギャグだ」

和「……は?」

一刀「そんじゃあ今年の東北伝の投稿はこれで最後だ。

ほなまたなぁ~」

一刀退散

和「ちょっと待って下さぁーーーい!!」

来年に続く……

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