東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

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あらすじ

交渉をとっとと切り上げ次なる計画を進めるべく一刀は月の先住民『玉兎』で形成された兵達を動かそうとするも玉兎兵達は北郷一刀を名乗る偽物だと疑って動こうとしない。そんな玉兎兵に対してバ一刀が取った行動とは…?


16. 月の都楽園化計画

 ◇

 

一刀「長らくお待たせした、第16話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…って言いてぇが、いくらなんでも遅過ぎじゃね?

 

約3年だぞ。さ・ん・ね・ん」

 

和「執筆の遅延自体はここでは特別珍しい事でもありませんが、確かに今回はあまりにも遅過ぎですね」

 

一刀「もう俺達とっくの昔に忘れられてるんじゃね?

 

この東北伝もろとも幻想入りしちゃうんじゃねーの?」

 

和「恐らく仮に幻想入りしたとしても、こんな駄作は流石に紫様でも受け入れないかと…」

 

一刀「あらやだ和ちゃんったら辛辣」

 

和「私はただ思った事を言葉にしただけです。

 

…えっと、今から執筆がここまで遅延した最大の理由を説明しますが、実はこの第16話は元々別のサブタイトルで執筆を始めて本編の8割近く完成していたのですが、サブタイトルと本編の内容が矛盾していたとの事で作者が削除してしまいました。

 

それでも少しは執筆していたのですが、それからほどなくして作者のやる気が完全に無くなってしまい、しばらくハーメルンからも距離を取っていました。

 

挙げ句、作者は2年以上もの間Twitter沼にはまってハーメルンで活動していた事を完全に忘れていたのです」

 

一刀「オイもやしテメェ(怒)」

 

和「一刀様、落ち着いて下さい。

 

…作者に代わってわたくし北郷和が皆様に謝罪致します。誠に申し訳ありませんでした(m(_ _)mペコリ)

 

…それでは本編始まります」

土下座

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「…なぁ、これってHU○TER×HU○TERの連載とかじゃねーよな?」

 

和「違いますって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【月の都楽園化計画】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀達が綿月姉妹と交渉という名の雑談を行っていた頃、八雲紫は霊夢を引き連れ今回の異変の元凶である人物が住む場所に到着していた。

 

途中霧雨魔理沙とアリス・マーガトロイドの魔法使い組やレミリア・スカーレットと十六夜咲夜の紅魔組と一戦交えたり、霊夢が迷いの竹林に仕掛けられた落とし穴に落っこちたりとちょっとしたゴタゴタがありながらも、どうにか目的の場所に辿り着く事が出来た。

 

??「ここが永遠亭ウサよ」

 

一刀達の店を出た当初は紫と霊夢の二人しか居なかったのだが、永遠亭に到着時には魔法使い組と紅魔組を含めた六人と結構な大所帯となった。その六人の案内役となっているのは兎の耳を生やし背の低い、そして何故かややボロ雑巾にされた一人の少女。

 

因幡(いなば)てゐ』。これが少女の名前だが何故こんな哀れな姿になってるのかというと、何を隠そう霊夢が落っこちた落とし穴を仕掛けた犯人こそこのてゐなのである。

 

しかしこのてゐという少女、実は見てくれ以上に歳を取っており、その幼い外見とは裏腹に齢は優に千を超す。紫とは面識自体はあるのだが、顔を合わせる度に紫の胡散臭げな話し方に毎回難クセを付ける為、最終的に紫と地味な小競り合いに発展する『腐れ縁』的存在である。

 

その後てゐは霊夢に報復を受けた事でボロ雑巾にされる訳だがそこは腐っても妖怪、今では怪我の八割は既に快復している。

 

対して霊夢は『博麗の巫女』という特別な境遇を除けば、人里に住む人間の少女と肉体の仕組み自体何ら変わりは無い。落とし穴にINした際に軽く負傷して随分時間は経っているが、ようやく今になって血が固まってきた。

 

こうした異変の最中に限らず、日常のふとした場面で人間と妖怪の絶対的な差を痛感する瞬間は多々ある。自分の身の周りが人外に囲まれているからか忘れがちだが、スペルカードルールを取っ払ってしまえば博麗霊夢はただの人間でしかないのだ。

 

ここで霊夢は一刀、和の主従コンビを思い出す。普段は一刀が従えており和もそれをさも当然の様に受け入れているが、冷静になって考えてみれば人間(一刀)妖怪()を従えるというのは異様な光景としか言えない。

 

勿論一刀が普通の人間でない事と、和の争いを好まない性格、そして人間を好いているという点を差し引いたとしても中々特殊な主従関係である事に変わりは無い。

 

てゐ「中にもう1人の因幡が居るから詳しい話はソイツに聞いてみると良いウサ」

 

紫「貴女はどうするつもりよ?」

 

てゐ「竹林に戻ってもう1回罠を仕掛けるウサ。さっきは博麗の巫女が引っ掛かったから今度は妖怪用にもっと強力な罠を仕掛けるウサ♪

 

…そこに博麗の巫女がもう1回落っこちたら面白い事になるウサね♪」

 

霊夢「…コロス」サッ

 

霊夢は札を二、三枚取り出して構えるも、てゐにさっさと逃げられ矛先を失った霊夢は、代わりにニシシと笑う魔理沙に蹴りを入れた。八つ当たりを喰らった魔理沙に「理不尽だ」と抗議されるも知ったこっちゃない。人の不幸を喜ぶ魔理沙が全ていけないのだ。

 

その脇で紅魔館の主、レミリア・スカーレットは心底気に入らない様子でフンッと鼻を鳴らす。何事かと咲夜が問えば……

 

レミリア「…『あの男』は一体どこに居るのかしら。この私がわざわざ出向いたというのに」

 

アリス「…あの男って誰の事よ?」ヒソヒソ

 

咲夜「恐らく北郷様の事だと思うわ。ここに来る前に北郷様のお店に寄ったのに、肝心の北郷様が留守で無駄足になったから機嫌が悪いのよ」ヒソヒソ

 

以前レミリア達が引き起こした紅霧異変が収束した時に一刀はレミリアと顔を合わせたのだが、その際一刀は面と向かって「オコチャマは身の丈に合った行動をしろ」と暴言を吐いた。

 

プライドの高いレミリアがこの暴言に対して黙っている筈も無く、怒り狂ったレミリアがグングニルを振り回した結果、館が半壊するというちょっとした(?)事件が起きた。

 

主の一刀が修羅と化したレミリアに追い掛け回されているというのに、まるで何事も無いかの様に咲夜と談笑していた和の涼しげな横顔が今でも目に浮かぶ……閑話休題。

 

この事件以降『(フラン)を救ってくれた恩人』から『グングニルの錆にすべき無礼者』と一刀に対する評価が急降下したのは言うまでもなく、突発的に自らに浴びせられた暴言を思い出しては一人ワナワナと怒りに奮える日々を送ってきた。

 

自身が吸血鬼である以上日中は行動出来ないので、これまでに何度か従者の咲夜を遣いに出して一刀を出し抜こうと目論んだ。

 

ところがレミリアを除いた紅魔館の住人達は一刀に対する評価は軒並み上々で、美鈴に至っては憧れすら抱く始末。咲夜は咲夜で従者の先輩である和に師事を仰ぐなど、レミリアは完全に蚊帳の外状態と言える。

 

かくいうレミリアも一刀を完全に嫌っているという訳ではなく、一刀が居なければフランを救えなかったのも事実。あの日以来フランは一刀の事を『お兄様』と呼び懐いてしまっていて、その事実がレミリアをやきもきさせる。

 

つまりレミリアは自分の力では救う事の出来なかったフランをやけにあっさりと救ってしまった事に対する尊敬と嫉妬が入り交じり、レミリアの心境を複雑なものにさせているのだ。

 

紫「悪いけど今一刀はこの幻想郷のどこにも居ないわよ」

 

魔理沙「はぁ?じゃあどこに居るんだよ」

 

霊夢「カズ兄さんは月に居るわ。ついでに和さんもね」

 

魔理沙「和さんもって事は依頼が入ったという事か。

 

…もしやこの異変に関係してるとか?」

 

霊夢「正解、というより2人に依頼出したのは私と紫だけどね」

 

アリス「……」

 

魔理沙「ん、どうしたんだアリス?」

 

アリス「…ねぇ、さっきから言ってる和さんって誰の事?」

 

霊夢「…そう言えばアリスは和さんと会った事が無かったわね」

 

魔理沙「会えば解るぜ。あぁこの人が和さんなんだなって。

 

今頃は月で北郷さんに振り回されてると思うぜ」

 

あの主従コンビはどんな場所に居ようと、どの環境に置かれようとボケとツッコミの機能が停止する事は無いだろう。恐らく今は月の使者と交渉を行っているだろうが、話を積極的に脱線させる主を従者が力付くで軌道修正している姿が目に浮かぶ。

 

それよりも、人妖問わず自分以外の者は基本的に呼び捨てにする霊夢と魔理沙が敬称を付けているという事が何を意味しているのか。和の人となりをよくは知らないアリスは二人の教育係か何かだろうと結論付ける。

 

アリスの解釈は間違っている訳ではない。この直後にやって来た鴉天狗らによってアリスは和の伝説を知る事になるのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリスの反応が薄かったのと、尺の都合上という理由も相まって割愛する事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

交渉により幻想郷には干渉しないという方向で話は纏まり、最初に居た執務室を出た四人は昇降機(エレベーター)を使い上の階に上がり、長い廊下の先にあった部屋のやたら豪華な扉を開け中に入った。

 

依姫の話ではこの部屋は月の都の全てを取り仕切る王の自室との事で『王座の間』と言うらしい。あまりに神聖な空気に本来は邪悪な存在である妖怪の和は先程から変な汗が止まらない。息苦しくもはや立っているだけでもやっとな状態と言える。

 

和の視線の先には黒を基調とした十二単を身に纏い、艶やかな黒い髪を腰まで伸ばして見るからに只者ではないという雰囲気を醸し出している女性が豪華な椅子に鎮座している。

 

??「ほぅ…貴様、妖怪でありながら穢れが無いとは……珍妙な奴じゃ」

 

…穢れとは何なのか?それを聞きたい気持ちはあるが、月の王の神々しい佇まいに圧倒され声を出す事が出来ない。

 

一刀「穢れっつーのは妖怪が持つ邪気を罵った言葉の事だ。邪気の強さは人を食った数と比例してんだよ」

 

和「…そうなんですか」

 

和の意思を汲み取った一刀が穢れの意味を説明する。横に居た一刀の説明で和は自身に穢れが無いと言われる事に納得がいった。

 

というのも和は生まれてこの方一度も人間を食した事が無い。もっと正確に言えば、人間を襲うだけの力が昔の和には無かったのだ。一口に人間を食すと言えど、元々がただの白鳩でしかなかった和には人間を食すという行為はハードルが高過ぎた。

 

今でこそ一刀の従者であり右腕と言われるまでに力を付けたが、それは単に長い時を生きてきた過程で地道に力を付けてきた結果であって、元から力に恵まれていた訳ではない。

 

他者と互角に戦える様になった今でも余程害を成す存在でない限り人間には危害を加えるつもりはおろか、食してみる気も毛頭無い。元より和という妖鳥が誕生した時から人間を近い場所で見てきたので、カニバリズム精神が芽生えないのも当然と言えば当然だと言える。

 

月の王の王たる所以を見せ付けられ萎縮している和の脇で、あくまで飄々とした態度を貫く一刀。それはまるで()()()()()()()()()()()()()とも言いたげな態度にも見える。

 

依姫「月読(つくよみ)様、この御方は北郷一刀様の従者を務める御方です」

 

月読「…何だと?」

 

和「…はい、わたくし北郷和と申します」

 

一刀「そういう事や。

 

まぁ宜しくしてやってくれ、ヨミィ」ヒョコ

 

月読「!!……お主」

 

依姫の口から一刀の名前が出た途端一瞬目を見開いたかと思うと、恐らくは月読の渾名と思われる単語を口にした一刀が和の背後からヒョッコリと現れた瞬間、ヨミィこと月読から王の威厳が一瞬にして崩れ去った。

 

一刀の最も古い記憶……それは月の民がまだ地上で生活していた時。それと同じ場所で一刀もまた生活していた。いつからそこで生活してたかは流石に記憶に無い。

 

月読が月の王の称号を与えられる以前からの知り合いであり、また同時に一刀が能力持ちである事に気が付いた人物でもある。簡単に言えば北郷一刀、最初のお友達になるのだ。

 

今や月の都の中枢とも言える月の軍隊を伝が無い状態でありながらたった一人で創設し、今日まで都の組織から外れ自由に軍隊を動かす事が出来たのは、一刀の手腕もさる事ながらバックに月読の存在が居た事が大きな理由に挙げられる。

 

というのも月読は一刀と同様にそう遠くない将来に軍隊の存在が必要となる時代が来る事を見越した彼女は、一刀が率いる軍隊に後方支援を行った。

 

一刀が去った後は軍の体制はそのままに月読個人が管理する形を取っている。そして月の先住民である玉兎を中心に編成した部隊を結成するなど月の軍隊は今も尚進化を続けている。ちなみに玉兎隊の結成は月読が勝手に行ったので、この事を一刀に報告するとーー

 

一刀「はぁ?何で俺の許可が要んの。俺はもう部外者だろ」

 

月読「…しかしだな、元々この軍はお主が創設者な訳だから一応話を通した方が良いかとーー」

 

一刀「要らん要らん。悪用するつもりが無ぇなら好き勝手やってくれ」

 

ついでに人妖大戦での一刀の活躍に敬意を評し、月読の独断で一刀を月の軍の『永久名誉顧問』に任命した事を伝えると、一刀は至極面倒臭そうに「拒否権は?」と聞いてきたので月読も笑顔で「無い」と言ってやった。

 

一刀「……マジかよ」orz

 

月読「まぁそう言うな。特権も色々とあるんだぞ」

 

一刀「……!」ニヤリ

 

しかしそこは転んでもただでは起きない男、北郷一刀。しばらく肩を落としていたが、突然不敵な笑みを浮かべ始めた一刀に嫌な予感を覚える月読。こんな時の一刀は大抵碌な事を考えてはいない。

 

一刀「…ほんじゃあ早速その特権とやらを乱よ……使わせて貰うとしますか」ニヤニヤ

 

月読「ほ…程々に頼むぞ(汗)」

 

和「…今、乱用って言い掛けましたよね?」

 

和の経験上、一刀がこのニヤケ面を晒す時は大概その脳内は愚痴と欲で満たされている。基本それらは欲しいオモチャを買ってもらえず親に駄々こねる子供と原理は同じで、一刀の退屈バロメーターが規定値を超えた時に現れる(ハイパー)(ワガママ)(一刀)はこれまで和が相手してきた覚醒一刀の中でも厄介で特に対処に困難を極める。

 

というのもHWKに覚醒した一刀はどういう訳だか和の物理攻撃が一切通じないのだ。どれだけボコボコにしようと木刀で串刺しにしようと、一刀自身が欲望を満たしていなければHWKの進撃を止める事は完全に不可能である。

 

一刀「ここは何も無ぇ、何にも無ぇ!!

 

オラこんな月嫌だ、オラこんな月嫌だ!火星さに行くだぁーーーーーーッ!!」

 

月読「オイ急にどうした!?」

 

和「(あー…始まってしまった)」

 

一刀「…そんな訳でカズ君考えました。このクソ退屈極まりない月の都を変える為にはどうしたら良いのか……」

 

ポク…ポク…ポク……チーン☆

 

一刀「カズ君 .JPーーーーーーッ!!」ピコーン☆

 

和「……(汗)」

 

この場合の一刀への対処法は『ただ黙って待つ』が最も正しい対処法である。下手に口答えしようものなら全ての矛先が自分に向いてしまう。

 

そうなってしまえば主が漏らす愚痴を永遠と聞かされ続け、最後にはそれを解決する為のパシりとして散々こき使われる未来が自身を待っている。…まぁ、その後に主をしこたま説教しているのでおあいこだと和は思っているが。

 

とは言え我が主を擁護するつもりはこれっぽっちも無いが、確かに月の都の中心部はそのきらびやかさとは裏腹に出店の数は人里よりも明らか少ない。

 

飲食店もある事はあるがその数もまばらで、賭博場も無ければ飲み屋も無い。和にとっては二つ共無くても構わないが、主の一刀にとって特に飲み屋が無いというのは、ある意味死活問題なんだろうなぁと主の心中を察する出来る従者北郷和。

 

その主はいつも口煩い従者が横槍を入れて来ない事を良い事に、真の都とは何たるかを終始偉そうに月読に語り尽くし、その上一刀は月読が新たに誕生させた玉兎兵の仕事量の少なさに目を付けた。

 

一刀「…つーかコイツ等(玉兎兵)、人数の割に仕事少なくねーか?こんだけの人数抱えてこの仕事量だったら暇な奴が結構出てくるだろ」

 

月読「うむ、確かにその通りだが……何をするつもりだ?」

 

玉兎兵達の主な仕事は綿月姉妹による調練と哨戒任務、所謂都内外の見回りのみである。わざわざ一刀に言われなくとも玉兎達の仕事が他に比べて圧倒的に少ないのは分かっている。

 

一刀「別にそう身構えなくたって変な事はしねーよ。

 

この俺様が直々に仕事を与えてやろうかと考えてるじゃねーか」

 

月読「…全く変わっとらんのぉ。昔からお主は腹の底が読めん奴よ」

 

和「…同感です」

 

一刀「だ・かーーらぁ!ただ仕事を与えてやるだけだって」

 

……儂はその仕事の内容を心配しとるんじゃ(汗)

 

そんな月読の心の声は一刀に届く訳も無く、思い立ったら即行動を信条とする当の一刀は善は急げと言わんばかりに行動に移す。

 

一刀「早速でワリィが奴等が居る場所まで案内頼むぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀「…つー訳で、これから暇な君達に仕事を与えまーす」

 

「「ちょっと待ってくれませんか!?」」

 

玉兎達の心情これいかに。月読直々に集合の令が掛かったので集まってみたら、指揮官の依姫だけでなくいつも妹に全てを丸投げする姉の豊姫も珍しく姿を見せていたと思うと、綿月姉妹のちょうどド真ん中に肩に白い鳩を乗せた目付きの悪い男が木刀片手に仁王立ちしていた。

 

まるで状況を理解できない玉兎達を他所に男は自らを『北郷一刀』と名乗った。どうやら一刀は名乗った瞬間歓喜の声が上がると思っていたようだがその予想は見事に外れ、玉兎達は皆懐疑的な視線を一刀にぶつけるだけ。

 

とは言え、玉兎達が一刀の事を知らないのは無理も無い。というのも月の先住民である玉兎が地上に残った一刀と面識が無いのは当然の事。勿論一刀に纏わる逸話の数々を聞いてはいるのだが、その多くは歴史というよりお伽噺に近い形で伝わってしまっているので、例え一刀本人が『北郷一刀』と名乗ったとしても信用してもらえない自明の理。一刀は日頃の行いを悔い改める必要があるようだ。(一刀「うっせー」)

 

まっ、そりゃそうだよな~とケタケタと笑う一刀の両横ではポワポワ笑顔の豊姫と、険しい顔した依姫と両極端な姉妹が玉兎達を見守る。隊の間では鬼軍曹と言われる事のある依姫は常に厳しい表情を崩さない。

 

と言っても依姫の心境としては、今自分の隣に立つ人物が紛う事無きあの北郷一刀であるのに、それを信用しない兵達に苛立ちを覚えている気持ちが胸の内の大半を占めているのだが……そんな事など本人以外が知る術は無い。

 

一刀「どーやらチミ達は俺が()()北郷一刀である事を1ミリたりとも信用していないよーだ。

 

…まっ、それはしゃーない」ニヤリ

 

一刀は先程月読に見せた不敵な笑みを溢す。彼の肩からその様子を見ていた和は今度は一刀が何をやらかすのか気が気ではない。月読も同様の感情を抱く。

 

一刀「よし、ほんじゃ今から模擬戦やろか。

 

あー…ただ1人ずつ相手するのは時間食うし面倒やからーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員束になって掛かってこーーーーーーーーーーい!!」

 

この時の一刀の思考を解析するに、一刀は自らが北郷一刀本人である確固たる証拠を示す必要があると考えた。

 

ここでまともな人なら地上時代の話や月読、永琳との仲、綿月姉妹の教育係であった事や人妖大戦の話など決定的な証拠になりうるエピソードが数多くあるにもかかわらず、それらを全て端折りいきなり「まとめて掛かって来い」など某格闘ゲームの三島一族を彷彿とさせる脳筋染みた言葉を一刀は口にした。

 

理由は一刀の説明嫌いと面倒くさがりな性分が顔を覗かせたからである。1からウダウダと説明するより実際に己の力をその目で見、肌で感じてもらった方が手っ取り早いじゃないかという結論に至り先の脳筋発言に繋がる。

 

さて、その脳筋一刀(一刀「誰が脳筋じゃボケ」)から挑戦状を叩き付けられた玉兎兵達は三者三様の反応を見せた。一刀の発言に困惑する者も居れば、先の発言を耳にして「もしかしたら本物かも…」と信じ始める者、そして中には…

 

「「俺達を甘く見るな!!」」

 

ナメられたと思い、一刀の口車に乗る者も居た。

 

一刀「…和ぃ、その状態で座るなら頭に移動しろ。(そこ)じゃ落ちるぜ」

 

和「クルックー(わかりました)

 

嬉々としながらも余裕綽々とも取れる表情で和に着席位置の移動を促す。勿論はなから全力で戦うつもりは微塵も無く一刀にとっては遊び同然。

 

とはいえ、いくら本人にとっては遊びと言えどそれで和を怪我させては後で彼女から何言われるか分からないし、月読達が見てる前でそんな不格好な事は出来へんやろ…と思ったらしく、ついでに玉兎達にハンディキャップを与える意味もあり和を一番安全な頭部へと移動させた。

 

何故頭が安全地帯なのかというと、一刀程の武術の達人ともなればどんな剣術捌きを見せようとも頭部を始めとした軸がブレる事がまず無い為である。

 

軸がブレないという事はすなわち視線がブレない事に繋がる為、相手の弱点とする場所に寸分の狂い無く自身の思い描いた剣閃で仕留める事が出来る。例え体勢を崩されたとしても軸さえブレなければそこからのリカバリーだって可能なのである。…上級者限定の話ではあるが。

 

しかし玉兎達にとってみればこれから模擬戦をやるというのに頭上に鳩を乗せて戦う様はとてもシュールであり、またとても侮辱的である。

 

ただでさえ先程の脳筋発言でイキり立つ者もそれなりに居たというのに、勝負する時の格好がコレだったら見る者によっては完全に舐めプかまされてると捉えられてもおかしくはない。

 

案の定痺れを切らした1人の玉兎兵が一刀目掛けて突撃する。一方の一刀はニヤケ面を崩す事無く相手の懐に入り込むと…

 

一刀「ほい」ドスッ

 

「あんぎゃーーーーーーーーーーっ!!」

 

勿論峰打ちであり本気で倒しにいった訳ではない。頭にちょこんと座る和の事も多少は気遣いある程度手加減したつもりであった。

 

「きゅー……」

 

一刀「…ありゃ?」

 

だがそれでも、勇者になろうとした1人の玉兎はこうも呆気なくのびてしまった。一刀にしてみれば相手を跪かせる程度に抑えたはずだったが……想定外である。

 

その様子を外野から見ていた月の重鎮達はというと、いつものポワポワ笑顔で一刀にパチパチと拍手を送る豊姫、自身が倒した訳ではないのに何故か得意気な表情を見せる依姫、額に手をやり溜め息をつく月読と様々。

 

和「……すぴー」

 

そして和は我関せずと言わんばかりに狸寝入りを決め込んでいた。

 

1人の勇者が突撃した事で集団心理が働いたからか、はたまた仲間がやられた事への怒りかそれは不明だが、玉兎達が堰を切ったかの様に一刀に向けて一斉に突撃する。

 

一刀「オラオラ掛かってきやがれ!このカズ君がカズ君たる所以をその身に叩き込んでやらぁ!!」

 

一刀は喜びを爆発させながら押し寄せる兵達の中に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

永琳「ほらじっとしてなさい。大丈夫、痛みは一瞬よ」

 

鈴仙「師匠ォ、それだけは勘弁してくださアァァァァァァァ!!」

 

「「……(汗)」」

 

さて場所は幻想郷に戻り、てゐの案内で到着した永遠亭なる場所に足を踏み入れた異変解決組御一行がまず最初に目にした光景は、永琳が開発した新薬を何故か両手両足を拘束されたうどんげもとい鈴仙に実験と称して投薬し、鈴仙が断末魔を上げて失神する様子だった。

 

霊夢達は異変の主犯(実際には紫が主犯なのだが)が住む根城に侵入したのだからと緊迫した展開を予想していたが……どうやら違ったようだ。

 

永琳「あら紫、結構な大所帯で来たわね」

 

紫「利害の一致よ、成り行きだけどね

 

…一刀から連絡は?」

 

永琳「まだよ」

 

確かにうどんげもとい鈴仙(鈴仙「…鈴仙だけで良くありませんか?」)を匿ったり月を偽物にすり変えたりと(後者は特に)かなり作業は大掛かりではあったが、月に出向いた一刀達の連絡を受けない限り次の作業に進めないのが実情である。

 

…言葉は悪いが、ぶっちゃけると暇なのだ。

 

霊夢「じゃあ今はカズ兄さんの連絡待ちって事?」

 

永琳「多分交渉が終わり次第こっちに連絡を寄越すはずよ。少なくとも明日の夜までにはね」

 

…違うそうじゃない、その交渉はもうとっくの昔に終わったのだ。一刀は今、月の都をどこぞの繁華街みたく改造しようと躍起になっているのだ。紫に連絡する必要がある事をすっかり忘れて…

 

魔理沙「どーする霊夢、また弾幕ごっこでもするか?」

 

霊夢「…アンタ、カード使いきったんじゃなかったっけ?」

 

魔理沙「そうだった…」ガビーン

 

魔理沙にそう指摘こそしたものの、実を言うと霊夢のスペルカードも手元に残ってはいない。

 

今でこそなし崩し的に魔理沙達と行動を共にしているが、そもそもは今ここに居る面子と出会い頭にバチバチの弾幕ごっこでドンパチ行っていたし、最後の相手となった魔理沙とアリス(魔法使い組)とのバトルでも一進一退の攻防を繰り返していた為、手持ちのスペルカードは全て使い果たしてしまった。

 

紫からあらかじめ事の顛末は聞いていたので永遠亭で弾幕ごっこする事は無いと知っていたが、あまりにやる事が無いから自分はここでお役御免という扱いにして神社に帰って寝てもいいだろうかと霊夢は思う。

 

そんな暇をもて余す霊夢達に永琳から提案が…

 

永琳「そんなに暇だったら貴女達に姫様の相手をしてくれないかしら?」

 

魔理沙「…まさかまた弾幕ごっこか?」

 

永琳「それでもいいけど貴女達スペルカード無いんでしょ?」

 

全員が揃って頷く。

 

永琳「ちょうど姫様も暇をもて余してるところだから遊びに付き合って欲しいのよ」

 

霊夢「どこに居るのよ、その姫様って人」

 

永琳「案内するわ。

 

ほらうどんげ、起きなさい」バシバシ

 

鈴仙「師匠起きてます!だからそんなに強く叩かないで下さぁぁぁぁぁぁい!!」

 

「「……(汗)」」

 

寝ても覚めても師匠こと永琳にとことん痛めつけられる鈴仙を見て皆不憫に思う。もっとも、思うだけで助けようとする者は誰1人として居なかったが

 

鈴仙「…コホン、では皆さんを姫様の元に案内します。

 

どうぞこちらです」

 

紫と霊夢以外の面々は内心どーしてこーなった…と思いつつも、鈴仙に案内されるがまま少し長い廊下を渡りその歩を進める。

 

永琳や鈴仙の言う姫様とは一体どんな人物なのか…(棒読み)

 

次回に続く…

 

 




一刀「さて和ちゃんに問題、このもやし(作者)は本編で2つの過ちを犯したがそれは一体なーーーんだ?」

和「1つは解ります。幽々子さんと妖夢さんを異変解決組に入れ忘れた事ですよね?」

一刀「せーーーかい。んじゃ後1つは?」

和「……それは解らないです」

一刀「ほんじゃ正解は……

前の話で玉兎を『月兎』と言い間違えたにも関わらず今回玉兎にすり替えて月兎の言い間違いを無かった事にした事でーーーす」

和「言われてみれば確かにそうですね…」

一刀「この失態に気付いた時もやし(作者)は「oh クラウディア、ケアレスミス犯しちまったZE☆」とか抜かしたそーな」

和「イヤ結構致命的なミスですよ(汗)」
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