東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

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あらすじ

北郷一刀が営むたこ焼きかっちゃん堂は今日もなんやかんやで営業中。そんな中妖怪の賢者八雲紫が訪れ博麗神社で宴会が行われる事を告げる。それを二つ返事で了承した一刀はついでに自分の知り合いも誘おうと魔法の森に足を運ぶのであった…




















 ◇

和「ようやく二話目ですね…」

一刀「……」ボー

和「……どうされたんですか?」

一刀「……とりあえず吐いとこ。ぶべらぁーーーーーーッ!!」ゴボー

和「イヤ意味わかんねーよ!!」

一刀「……だってサブタイからして宴会ネタだろ?だったら今の内に吐いてた方が後が楽だろ」ゲソー

和「それって完全に羽目外す気満々じゃないですか!?」

一刀「…という事で本編どうぞ」

和「強引過ぎ!!」



2.酒は飲んだらどのみち呑まれるもの

 ◇

 

ピピッ…

 

ピピピッ……

 

ピピピピッ………

 

ダァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モゾモゾ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガバッ!!

 

一刀「人里でたこ焼き屋を営む俺こと北郷一刀の朝は早い。

 

まずは朝、布団から飛び起きてその足でトイレに直行しウ○コを搾り出す。

 

それから洗面所へと行き、歯を磨いて寝癖を直す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてついでにゲロをは……べぶるしゃーーーーーーーーッ!!」ゴボー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「……それが終わると一階へと降りて仕込みの準備に入る。

 

まずは下茹でした蛸の足を一口大の大きさに切ってボウルに入れて置いておく。これだけで大体午前の分は持つ筈だ。

 

次にメリケン粉をお湯で溶かしてダマが残らない様によくかき混ぜる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの間にゲロを……ぶべらぁーーーーーーーーッ!!」ゴボボー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「……最後にガスの出具合とコンロの状態、そして鉄板の劣化が無いかチェックする。それが大丈夫なら暖簾と立て看板を外に出していよいよ開店だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その前に……オロロロロッ!!」ゴボボボー

 

和「汚いですね!冒頭で何回ゲロ吐くんですか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

【酒は飲んだらどのみち呑まれるもの】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「……とまぁ、これが起きてから開店までの一連の流れだ」ゲソー

 

和「明らかに何個か要らない物がありましたよね!?」

 

一刀「営業中いつでもどこでも気兼ねなくゲロを吐ける様に用意したゲルググ袋は俺の必須アイテムだ。

 

これで仕事中にゲロ吐きたくなっても大丈夫だな」

 

和「まず吐かない努力をして下さい!!」

 

一刀「そして俺は二日酔いを理由に店番を和に託す。

 

さらばだ!!」

 

和「ちょっと一刀様ぁ!?」

 

店の営業を和に押し付けて一刀は二階に上がろうとする。ところが……

 

ガツーン!!

 

一刀「だぁーーーーーーッ!!」チーン

 

どこからともなく落ちてきた金属製のたらいが一刀の脳天に直撃し一刀は倒れた。頭にはたん瘤が出来てダメージの大きさが容易に想像出来る。

 

たらいが落ちてきた場所を見ると、その空間にはある筈のない裂け目が出来ており裂け目の中はいくつもの目がギョロギョロと一刀を見下ろしていた。

 

やがて裂け目はお役御免と言わんばかりに閉じ始め、この空間から消えて無くなる筈だった。

 

だが、それを見た一刀がそれに待ったを掛けるかの様に飛び上がりーー

 

一刀「やっぱテメェの仕業か!この野郎!!」

 

閉じかけていた裂け目を強引に抉じ開けたかと思うと、その中に上半身を突っ込んだ。どうやらこの裂け目に心当たりがあったようだ。

 

一刀「お前いつもスキマで俺を攻撃しやがってぇ!今日こそは逃がさねぇからなぁ!!」

 

??「イヤァーーーーーーッ!!お願い!服破れるから引っ張らないでぇーーーーーーッ!!」

 

和「(…また面倒な事になりそう。)はぁ……」

 

やがて裂け目、もといスキマから一刀にズルズルと引っ張られて出てきたのは金髪ロングヘアーに帽子を被り、ゴスロリ風のドレスを着た女性だった。

 

ズドンと二人仲良くスキマから落下した後、疲れた表情をした一刀がボソッと一言。

 

一刀「……重い」

 

そう言った直後、女性は一刀に向けて扇子をぶん投げた。その扇子は一刀の眉間にものの見事にクリーンヒットした。

 

スカーン!!

 

一刀「へびっ!!」

 

??「失礼ね!私だってそ・れ・な・り・に努力はしてるわよ!!苺のショートケーキを三個から二個に、モンブランを五個から四個に、ロールケーキを一本から二本に減らして頑張ってるわよ!!」

 

和「イヤ普通に食べ過ぎですよ!!」

 

一刀「……しかもロールケーキだけ増えてるじゃねぇか」

 

??「しょ、しょうがないじゃない!!だってロールケーキ美味しいんだもん!アレは人間が作り出した傑作よ!!」

 

和「……その様子だと当分痩せる見込みは無いですね」

 

??「ぎゃん!!」グサリ

 

和の容赦無い一言が女性のSAN値をガリガリと削り取り、女性は力無く崩れ落ちた。

 

ちなみに開店時間はとっくに過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

勘の良い読者もそうでない読者もこの女性の正体に気付いている頃であろう。

 

そう、この女性こそ幻想郷の創造主で妖怪の賢者という異名を持つ偉大な妖怪。

 

その名も八雲紫(やくも ゆかり)。

 

しがない幻想郷の住人からしてみればまさに雲の上の存在と呼ぶに相応しく、妖艶で理知的、それでいて冷徹だというイメージを抱くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫「という事で……」

 

一刀「本日も……」

 

一刀・紫「「いただきま~す」」

 

パクッ、モグモグ…

 

和「いただきますじゃねぇだろ!!」ガンッ!!

 

一刀・紫「「だぁーーーーーーッ!!」」

 

もっとも一刀とつるんで客に出す筈のたこ焼きをつまみ食いして、二人仲良く和に成敗されている所を見ると上記に記したイメージは一つも当てはまらないのだが……

 

和「何してるんですか二人共!一刀様もそうですけど紫様もつまみ食いはやめて下さい!!」

 

一刀「だがことわアァー!!デジャブーーーーーーーーッ!!」

 

前回と同様に和に顔面を鉄板に押し付けられてアホな悲鳴を上げる。一刀の言う通りまさしくデジャブである。

 

紫「だって美味しいからしょうがないじゃない」

 

和「……太りますよ」

 

紫「ひゃん!!」グサグサ

 

曲がりなりにも幻想郷の長である紫に対して全く情け容赦の無い和の一言が紫のハートを抉る。見ず知らずの人間や妖怪が紫相手にこの様な態度を取れば、まず間違いなく無礼者と見なされスキマの餌食になる事に違いない。

 

一刀と和がこの様な態度を取れるのは単純に紫との付き合いが長いから。

 

二人は紫が妖怪の賢者という二つ名が付く遥か以前に出会っており、その付き合いは数多く居る人妖達の中でも最も長い。故にこうして紫が幻想郷の長となった今でもお構い無しに接する事が出来るのだ。

 

一刀「……で、お前がここに来たという事は何か大事な用件があるんだろ?」←ズタボロ

 

紫「言う程大事な事でも無いんだけど…っていうかその前に火傷の痕治しましょう」

 

一刀「じゃあ治るまでの間コレでも着けとくか」スチャ

 

そう言って一刀が着けた物は……中世の騎手(ナイト)の兜だった。こんな物一体どこで手に入れたのか?

 

しかも何故か鎧まで装備する一刀。

 

一刀「どうだ?こうして見ると結構なナイトの店主に見えるだろ?」

 

和「…イヤ、そんな店主居ませんから」

 

紫「どう?こうすれば結構なナイトの賢者に見えるでしょ?」スチャ

 

和「紫様は悪乗りしなくて良いです!!」

 

一刀「何!?ここにもナイトが!!

 

ではどちらがナイトの使い手に相応しいかーー」

 

紫「今こそ雌雄を決しましょう!!」

 

ガキィン☆!!

 

和「アンタ等二人して何やってんだぁーーーーーーーーッ!!」ズドーン!!

 

一刀・紫「「んぎゃーーーーーーーーッ!!」」ピチューン☆

 

こちらが付いて来れない意味不明なコントを始めたかと思うと急に店内でチャンバラごっこを始めた二人に和の雷が落ちた。

 

こうして雷神と化した和の前に二人の即興コントは強制終了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

紫「今日博麗神社で宴会があるのよ。貴方達二人もどう?」ズタボロ

 

一刀「マジ!?行く行くー!!」ズタボロ

 

和にボロ雑巾にされた紫の口から出た宴会という単語に、これまた和にボロ雑巾にされた一刀の目が輝く。対して二人をボロ雑巾にした和は渋い表情で紫の話を聞いていた。

 

和「という事は嫌が応にもお酒を飲まないといけないのですね……」

 

和はお酒は飲めない訳ではないのだが大して強い方でも無い。

 

イヤ寧ろ滅法弱いと言っても良い。

 

しかも酔った状態でもその時の記憶を覚えている体質である為、酒場で失態をやらかした翌日には布団に潜り込んで強い罪悪感に苛まれる羽目になるのだ。

 

ざっくりと言ってしまえば和は下戸なのだ。

 

紫「まぁ宴会だから最低でも一口は飲まないといけないわね」

 

和「私だけ欠席というのはいけませんか?」

 

紫「それは困るわね。貴女が欠席したら誰が一刀のストッパー役になるのよ?」

 

和「確かに酒癖の悪い一刀様に宴会で粗相を起こされても困りますね。じゃあ私はあくまで一刀様のブレーキ役という事で」

 

一刀「おいコラちょっと待て」

 

自分だけあんまりな言われ様に堪らず抗議の声を上げる。一刀の名誉の為に言っておくが彼は宴会をの盛り上げ役である為それに応えているだけに過ぎないのだ。

 

ただ調子に乗り過ぎて収集が着かなくなる感は否めないが……

 

一刀「俺はただ宴会を盛り上げてるだけじゃねぇか!粗相なんて働いた覚えは無いぞ!!」

 

和「どこがですか!いつも宴会を滅茶苦茶にして勝手に酔い潰れて所構わずゲロ吐いて!後始末誰がやってると思っているんですか!!」

 

一刀「それ位派手にやらねぇと宴会なんてつまんねぇだろ。後始末は誰がやろうが知ったこっちゃねぇ」

 

和「無責任過ぎますよ!!」

 

やいやいと言い争いをする二人を見て、紫は仲が良いなぁーと呑気に考える。

 

紫にも式神の従者が居るのだが、彼等二人みたく対等な関係を築けているだろうか?紫から言わせてみれば答えは否だ。

 

白玉楼の亡霊姫と庭師、紅魔館の吸血鬼と人間のメイド、そして永遠亭の医師と助手の月兎等この幻想郷には主従関係と言える者達が多い。そうした者達と比べるのであれば紫も劣る所は無いと断言出来る。

 

ところが比較対象が一刀と和ならばどうか?

 

紫は彼等に肩を並べるどころかまだ足下にも及んでいないとさえ思っている。

 

二人は紫の知る限り、主従関係になってから千年以上はゆうに超えていると思う。紫が二人と出会った時には彼等は既に主従関係にあったからその推測は百パーセント間違いない筈だ。

 

無論、この幻想郷において彼等以上に長く主従関係にある者達は居ない。ましてや妖怪が人間の従者を務めるなど事情を知らない他の妖怪からしてみれば異例であり邪道なのだ。

 

紫も出会った当初は同じ事を思ったが当の二人が何の疑問も持っていなかったので紫はあっさりと思考を放棄した。

 

現在一つだけ確かな事は、この二人が自分の理想とする主従だという事。

 

今はこうして無意味な言い争いをしているが、それも信頼の裏返しだと思える。それにいざという時の二人の結束力は他の誰よりも強い。

 

万事屋の仕事をしている時にそれが良く分かる。二人は依頼を遂行している時は言葉という便利な道具をほとんど使わない。使うにしてもお互いの名を呼び合う程度。

 

言い替えるなら使う必要性が無いのだ。お互いがお互いの思惑を読み取り行動してきっちり依頼をこなすのは並大抵の事では出来ない。それを二人は何喰わぬ顔で平然とやってのけるのだから充分凄いと紫は思う。

 

そしてそういう時、和は決まって主である一刀を立てる。

 

普段は容赦無いツッコミを一刀に浴びせるが、有事の際の和は一刀の為に何が出来るか、そして主の一刀が自分に何を求めているのか瞬時に考え行動に移す。

 

ある意味一刀がちゃらんぽらんだからこそ和の従者としての力が活かされるのだと思う。

 

一刀はそんな和に全幅の信頼を置いている。いつもはテキトーな発言や行動で和を困らせているが、本気を出した時の一刀はまた別の顔を見せる。

 

次に起こる事を予測して、同時に和ならこう動くに違いないと判断した上で和に的確な指示を飛ばす。そういう意味で一刀は聡明な和の主に相応しいと言える。

 

和(白鳩)「くるっくぅ!!くるっくぅ!!(怒)」

 

ゴスッ!!ゴスッ!!ゴスッ!!ゴスッ!!…←無限ループ

 

一刀「アァー!!悪かった!俺が悪かったってぇーーーーーーーーッ!!」ピチューン☆

 

紫が物思いに耽っている内に終わりの見えなかった無意味な論争は堪忍袋の緒が切れた和が白鳩の姿に変身して一刀の脳天を渾身の力でつつき、一刀がノックアウトした事により決着となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

夕方、二人は自宅を出て宴会が行われる博麗神社ではなく魔法の森に住むある人物の元を目指し歩いていた。

 

というのも紫が「他にも参加出来る者を連れて来て頂戴♪」との依頼があったので二人共渋々といった感じでその依頼を受けた。

 

和「紫様も人使いが荒いですね。こういうのは私達に頼まず自身のスキマを使えば済むじゃないですか。」

 

一刀「激しく同意。これじゃあ一話のサブタイ通りじゃねぇか。」

 

和「メタな事言わないで下さいよ……」

 

とりあえず慧音は誘った。彼女はテストの答え合わせや教材の作成等で忙しく少し遅れると言っていた。

 

慧音の参加が決定した事により一刀の次の目的地が決まった。一刀はその者を宴会に強制参加させる為に今こうして魔法の森を歩いている。

 

ちなみに何故ここが魔法の森と言われるのかというと、ここには魔法の研究材料となる茸が自生している事に由来する。

 

しかしこの茸の放つ胞子は人間にとっては有害であり、体調不良や五感の狂い、更には幻覚症状等を引き起こす。

 

一刀も以前この茸を遊び半分で食した結果上記の様な症状に襲われ、和曰くシャレにならない程ヤバかったんだとか(色んな意味で)。

 

さて、しばらく魔法の森内を歩いていた一刀達だったがある建物の前で足を止めた。

 

一刀「しかしまぁ……相変わらずゴミ屋敷だなここは。」

 

和「本当ですね……」

 

二人がドン引きしているのも無理はない。【香霖堂】と書かれた看板をぶら下げたその建物の外観は外の世界から流れ着いたと思われる物で埋め尽くされていた。それに置かれてる物もくの字に曲がった標識だったり信楽焼っぽい狸の置物だったりと規則性が無い。

 

店というより二人には本当にゴミ屋敷に見えた。

 

玄関の周辺に散乱してあった置物(ゴミ)を適当に蹴り飛ばして扉の前に立つ。扉には『要ノック!!』と書かれた紙が貼られてあった。

 

……が、その扉の前にもゴミが鎮座している。

 

一刀「『要ノック!!』って書かれてるが、扉の前にこんなゴミ置かれてたらノックの1つも出来やしねぇだろ。

 

邪魔だ邪魔」キック

 

一刀により派手に蹴り飛ばされたゴミは一刀の視界から去っていった。その際狸の置物に激突し、二つのゴミは塵になったが一刀にとっては知ったこっちゃない。

 

一刀「ほんじゃ邪魔するぜぇ」ズカズカ

 

和「ちょっと一刀様、ノック忘れてますよ!!」

 

まるで我が家同然の如く建物の中へと入っていく一刀に即座にツッコむ和。こんな時でも和はツッコミを忘れない。やはり彼女はとても優秀な従者である。

和「嬉しくないですよ!!」おっとすまない。

 

店内に入ると外程ではないものの、こちらも物で溢れ返っていた。ここまで散らかっているとどこまでが商品でどこからがゴミなのか分かったものではない。

 

入口から見て右手奥、四人分の椅子が用意されたカウンター席の一番奥に眼鏡を掛けた白髪の男性が座って本を読んでいた。一刀達の存在を気にも留めずに読書に没頭する男に一刀は声を掛ける。

 

一刀「儲かってないようだな、モリリン」

 

一刀にモリリンと呼ばれた男性は読んでいた本を閉じると至極機嫌が悪そうにーー

 

霖之助「誰がモリリンだ!!俺は森近霖之助(もりちか りんのすけ)だ!!」

 

自らを森近霖之助と名乗った男性は開口一番怒鳴り声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

森近霖之助は妖怪蔓延るこの幻想郷でも特に珍しい人間と妖怪のハーフ、いわゆる半人半妖の種族である。

 

彼は魔法の森で香霖堂を構える以前は人里に住んでいた事がある。その為一刀達とは面識があるのだ。

 

切れ長の目に眼鏡を掛けて読書に勤しむ姿はいかにもインテリ男子の様に見える。

 

一刀「という事でお前も宴会に参加しろ」

 

霖之助「何がという事でだ!まだ何も説明してねぇだろ!!」

 

和「説明ならしましたよ。霖之助さんは香霖堂を経営する半人半妖の男性で一刀様のお友達だとナレーションが」

 

霖之助「それただのプロフィールじゃねぇか!!俺が言ってんのは宴会に俺を参加させる目的だよ!どうでもいい理由だと俺は行かねぇぞ」

 

一刀「まぁ友人のよしみって事で。後慧音も来るぞ」

 

霖之助「何慧音が!?

 

何をしている早く行くぞ」セカセカ

 

和「変わり身早っ!!」

 

慧音の名前が出た途端、霖之助は目の色を変えて席を立ったかと思うとあっという間に外出の準備を済ませて一刀達を急かす。

 

先にも触れたが霖之助は以前、人里で暮らしていた為一刀達と顔見知りで飲み仲間でもあった。

 

だがそれ以上に親しい関係にあるのが慧音だ。

 

二人にしてみればまさに運命の出逢いと言うべきだろうか。同じ半妖同士という共通点もあってか二人の距離は瞬く間に縮まっていった。

 

現在では週に一度慧音が香霖堂を訪れ霖之助の身の回りの世話をする通い妻と化している。その際、代わりに寺子屋の教壇に立つのは一刀達万事屋である。

 

もっとも一刀が生徒にまともな授業を教えるかは微妙だが。

一刀「失礼だなオイ!!」

 

足取り軽く玄関を出た霖之助に続く形で一刀達も外に出ようとしたが、その時一刀が気になる物を見つけた。

 

一刀「…なぁ霖之助」

 

霖之助「どうした?」

 

一刀「あのゴミいつから置いてるんだ?」

 

一刀が見つけた物は店内の隅っこでちょこんと座っていた白い招き猫。しかもやたらデカイ。

 

しかし招き猫とは言ったもののどちらかの手を挙げている訳でもなく、小判を持っている訳でもない。一刀が招き猫と言ったのは単に例え易かったからである。

 

霖之助「あぁそれか。それはゴミじゃなくて本物の生きた猫だ。一週間前に何故か店の前に居たから中に入れたんだ」

 

一刀「……イヤデカくね?」

 

一刀は呆気に取られているが冗談抜きでデカイ。その大きさは和の身長より僅かに低いぐらい。猫は鳴き声を上げる事もなくジッと一刀達を見つめていた。一体どんな物を食ったらこんなにデカくなるのかと一刀は思う。

 

霖之助「もっと間近で見てみるか?別に引っ掻いたりしないから平気だぞ」

 

霖之助に促され一刀はおずおずと猫に近付く。流石の一刀も若干恐る恐るといった感じだ。

 

一刀「…おーい」

 

猫「なぁー」

 

一刀「おぉスゲェ!見ろ、コイツ鳴いたぞ!!」

 

和「本当凄いですね」

 

霖之助「イヤ当たり前だから」

 

猫が鳴くと一刀と和はおぉーと驚き、それに霖之助がツッコミを入れた。生きた本物の猫と言えど鳴くまで霖之助の言葉を一刀達は信用してはいなかったようだ。

 

一刀「じゃあお手」

 

猫「…」

 

一刀「お・手」

 

猫「……」

 

一刀「お手ぇーーーーーッ!!」

 

猫「にゃっ!!」ボガッ!!

 

一刀「にゃーーーーーーーーッ!!」

 

あまりにしつこかったのか猫の繰り出したネコパンチが一刀の顔面を直撃し吹き飛ばされた。その様子を見ていた和ははぁ…と溜め息を一つ吐く。

 

和「一刀様……いきなりお手やっても通じないですよ」

 

一刀「オイ霖之助!どういう事だ!!コイツ何もしねぇんじゃなかったのか!!」

鼻血だらだら

 

霖之助「ソイツは確かに引っ掻いたりしないさ。ただ……

 

たまにネコパンチを繰り出すけど」

 

一刀「それを早よ言わんかい!!」

 

猫「なぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

香霖堂を出た三人は宴会がある博麗神社を目指し歩いていた。

 

ただ一刀と和には気になる事が一つ。

 

和「…あの、霖之助さん」

 

霖之助「今度は何だ?」

 

和「どうして猫が付いて来てるのでしょうか?」

 

一刀「それ同感」

 

猫「なぁー」

 

何故か三人の後ろから先程香霖堂に居た猫が付いて来ていた。まさかこの猫も宴会に参加するのだろうか?

 

霖之助「多分お前達の事を気に入ったじゃないか?」

 

猫「なぁー」

 

霖之助「ほら、猫もそう言ってる事だし」

 

和「動物の言葉が解るんですか?」

 

霖之助「イヤ全然」キッパリ

 

一刀・和「「知らねぇのかよ!!」」ガクッ

 

まるで知った風な口を叩く霖之助に和が意志疎通出来るのかと聞いてみたら霖之助はあっさりと否定した為二人して息の合ったツッコミを見せた。この男、一刀と同じくテキトーに生きてる奴と見た。

 

霖之助「どうせならお前達が引き取ってくれるか?お代はいらないから」

 

一刀「冗談じゃねぇ!誰が引き取るかこのデカブーー

 

猫「にゃっ!!」ボガッ

 

ツゥーーーーーーーーッ!!」

 

和「どうやら人間の言葉を理解出来るみたいですね」

 

霖之助「あぁ。だからコイツの悪口は言わない方が良い。強烈なネコパンチをお見舞いされるから」

 

一刀「だからそれも先に言えよ!!」

 

いちいち情報が遅い霖之助に流石の一刀もツッコミ役に回される羽目になる。もし狙ってやっているのだとしたらコイツは相当ドSな奴だと一刀は霖之助の本性を疑う。

 

もっとも霖之助のコレは筋金入りの天然ボケである事は長い付き合いで知っている事だが、ここまで酷いともはや確信犯としか思えない。一刀とは違ったやり方で振り回される慧音の姿が容易に想像出来るのはきっと気のせいではない筈。

 

言い方はともかく一刀は霖之助の提案に難色を示した。もしこのデカイ猫を引き取ったら餌代が馬鹿にならないと思ったからだ。和も同じ様に困った表情で霖之助に異論を唱える。

 

和「この猫には申し訳ないんですけど、私達も経済的にそれ程余裕がある訳ではないんですよ。何せ一刀様がパッパラパーなんで……」

 

一刀「はぁ!?俺のせいかよ!!」

 

和「当たり前ですよ。霊夢さんへのお小遣いは良いとして、一刀様は毎日飲みに行ってはとんでもない額のお金を使ってくるじゃないですか。九分九厘一刀様が悪いです」

 

一刀「毎日じゃねぇ。週に六日だ」

 

和「ほぼ毎日じゃねぇか!!」

 

一刀「一日休肝日入れてるから良いだろ」

 

和「良くねぇよ!それでも肝臓の勤続疲労感半端無いですから!!」

 

あれこれ言い訳をする一刀に和も思わずタメ口になる。折角たこ焼きの販売と万事屋の仕事で稼いだ金を酒でパーにしてしまうのは誠に遺憾である。その上酒癖も悪いから尚質が悪い。

 

一刀「大体こんな時代に長生きなんかするもんじゃねぇよ。人生やっぱ太く短くが一番だな」

 

和「十分長生きした奴が言うセリフじゃねぇよ」

 

霖之助「全くもってその通りだ。

 

和、人生というのは如何に楽しめたかでその者の価値が決まるもんだ。羽目は外せる時に外しとかないとな。」

 

和「アンタ等の場合は羽目外し過ぎなんだよ。少しは周りの迷惑も考えろ!」

 

一刀・霖之助「「はぁ?俺等誰にも迷惑なんか掛けてねぇよ」」

 

和「現在進行形で私が被ってるんですけど!!」

 

猫「なぁー」

 

和の言葉に賛同する形で猫も鳴き声を上げる。それにしても旧知の仲だけあって一刀も霖之助も考えてる事は同じだ。

 

こうして三人プラス一匹は博麗神社に着くまでの間、コントとも言える掛け合いを続けていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

「「かんぱーい!!」」

 

夜、博麗神社で乾杯の音頭と共に宴会が始まった。

 

皆が酒やらつまみやらに手を伸ばす中、宴会の準備を手伝った和は神社の母屋の軒下に腰を降ろしていた。

 

普段、人っ子一人も居ない神社にはこの日の為に多くの人妖達が集まっており、中には慧音と二人仲良く酒を飲む霖之助や酒に手を着けずのど自慢を披露する一刀だったりと楽しみ方は人それぞれ、

 

??「和さん、楽しんでますか?」

 

??「珍しいですね。和さんが北郷さんと一緒に居ないなんて」

 

ぼんやりと宴会の景色を眺めていると二人の少女が和に話し掛けてきた。

 

一人はペンと手帳を持ち、いかにも私は記者です!と言ってそうな少女。そしてもう一人はケータイを片手に持った、なんとなく内気な印象を受けるツインテールの少女。どちらも背中に鳥と思われる羽が生えていた。

 

和「文さん、はたてさん。今日は二人共取材で来たんですか?」

 

二人の名は記者風情漂う少女が【射命丸文(しゃめいまる あや)】。そしてケータイを持ったツインテールの少女が【姫海棠はたて(ひめかいどう はたて)】。種族は両者共鴉天狗と言われる妖鳥の仲間なのだ。

 

和の取材という言葉からしてどうやら二人は本当に記者のようだ。

 

文「勿論そうですけど、ちゃんと宴会にも参加してますよ」

 

はたて「…私は文に付き合わされているだけですが」

 

文「コラコラそこは参加してます!って言わないと非国民扱いされますよ」

 

はたて「んな大袈裟な……」

 

確かにそれは言い過ぎだと和は思う。和自身も一応宴会には参加しているもののこれはあくまで一刀が羽目を外し過ぎた時の歯止め役。主である一刀が節度を弁えながら宴会を楽しむ保証があるなら和は参加していない。

 

和「でしたら私には構わず各々で楽しんできて下さい。私なんかを相手にしてもつまらないですよ」

 

文「何をおっしゃいますか!和さんは私達鴉天狗を含めた妖鳥の大先輩に当たる人物ですからお話を聞かせて貰えるだけでも十分楽しいですよ」

 

はたて「文の言う通りです。ですから和さんも私達に敬語を使うのはやめて下さい」

 

天狗という種族は上下関係には大変厳しい。相手が目上の立場なら人妖関係なく丁寧に接するのは当たり前、口答えや命令違反などもはや論外なのだ。

 

和は天狗ではないのだが妖鳥という括りで言えば彼女は文とはたての上司に当たる天魔よりも長く生きている上に自分達が恐れる鬼と対等に接している事などから文達は和を妖鳥の大先輩として尊敬しているのだ。

 

それも一部の妖鳥達は和が妖鳥の祖先ではないのかと思う者も居る程に。

 

だから自分達には敬語を使わなくて良いと文とはたては和と会う度に言っているのだがそういう時、和は決まってこう返すのだ。

 

和「いえ、私は従者としての自分の立場を最優先に考えてますのでそういう訳にはいきません」

 

こう言われては文もはたても何も言えなくなる。

 

いつからかは忘れてしまったが、和は主の一刀と一緒に暮らしている内に日常生活の中においても敬語を使う事が当たり前になっていた(ツッコむ時を除く)。言ってみれば一つの癖の様なものだ。

 

癖というのは治せと言われてそう簡単に治る物ではない。そもそも和はこの癖を治すつもりは微塵も無い。

 

和は一刀の従者を務める上で一番心掛けなければならない事は何かと考えた時に常に従者としての立場を忘れない事だという結論に至った。それが和が自身に課した使命なのだ。

 

一刀「あー……喉ガラガラ」

 

三人で話しているとのど自慢を披露し終えた一刀が近付いてきた。余程熱唱していたのかガラガラ声だ。

 

一刀「和、うがいするから水をくれ」

 

和「はい」

 

一刀の指示を受けた和は立ち上がり台所へ移動する。その間一刀は文とはたてに話を振る。

 

一刀「おぉ、射命丸と()()()も来ていたのか」

 

はたて「ほたてじゃなくては・た・て!!いい加減私の名前覚えてよね!!」

 

文「そうやって過剰な反応をすると北郷さんの思う壺ですから気にしない方が良いですよ、ほたてさん」

 

はたて「アンタまで乗っかってんじゃないわよ!!」

 

どうやら姫海棠ほた…じゃなくてはたてという少女はツッコミ属性に秀でた人物のようだ。明らかにわざと名前を間違えた一刀とそれに乗っかった文にツッコむ姿は中々堂に入っている。

 

余談だが、一刀は文の新聞文々゚新聞の購読者である。何でもゴシップだらけで有る事無い事を面白おかしく書いた記事が気に入っているんだとか。

 

ちなみに和ははたての新聞、花果子念報の購読者である。和曰く販売日が他の新聞より数日遅い為情報の新鮮味は薄いが、その分時間を掛けているのでその日あった出来事の詳細が事細かに記されておりより多くの知識を吸収出来ると太鼓判を押している。

 

和「一刀様、お待たせしました」

 

文達と話し込んでいると台所からお盆を持った和が戻ってきた。一刀は水を頼んだ筈だがお盆には何故か紙コップが二つ乗っている。

 

一刀「おっ、サンキュ」

 

一刀は特に気にした素振りを見せずその内の一つを手に取った。和があっ…という表情をしているのにも気付いていない。

 

一刀「いくらのど自慢とは言え流石に五曲も連続で歌うもんじゃねぇなぁ。

 

お陰で喉ガラガラ。んがぁーーーーーー……」

 

一刀は紙コップに入った水を一気に流し込みうがいをする。それを見て和はしまったという表情で恐る恐る口を開いた。

 

和「……一刀様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ、お酒です」

 

一刀「ブーーーーーーーーッ!!」ブシャァー

 

一刀が口に入れた液体は水ではなく酒だった。盛大に吹き出した一刀は咳き込みながら倒れ込む。

 

和はどうせうがいした後にお酒を要求してくるだろうと踏んで予め用意していた。そして和が一刀に紙コップを二つ用意した意味を説明し水を渡す筈だったのだが、その前に何も考えてない一刀が手に取り口に含んでしまった為上の様な惨事が起きてしまった。

 

どうやら今回は和の用意周到さが裏目に出てしまったようだ。

 

和「も、申し訳ありません!私がもう少し早く説明していたらこんな事には……」

 

喉元を押さえてのたうち回る一刀に和は懸命に謝罪する。そんな和に別の意味で醜態を晒す事になった一刀は親指をグッと立ててーー

 

一刀「イインダヨ…グリーンダヨー……」バタン

 

いつぞやのCMで聞いた事のあるフレーズを口にした直後、一刀はまるでゼンマイの切れた玩具の様にピクリとも動かなくなった。

 

和「一刀様ぁーーーーーーーーッ!!」ワタワタ

 

文「あややー……愉快な人達ですね」

 

はたて「……そうだね」

 

慌てふためく大先輩と意識を失う寸前までギャグを忘れないその主に苦笑しつつ二人(特に文)は明日の新聞の一面に載せようと決めた。

 

その日一刀は宴会が終わるまで一度も目を覚ます事は無かった。

 

だが酔った霖之助が羽目を大きく外し恥部を晒すなどの奇行に走った挙げ句宴会を滅茶苦茶にした。

 

そして和は結局後始末を手伝わされる羽目になったのは言うまでも無い。

 

 




教えて!一八(わんぱち)先生!!

和「はい、記念すべき第一回目の一八先生のお時間なんですけど…一刀様が本編中にフェードアウトしてしまったので私が代役を務めさせて頂きます」

和「…っていうか一回目からこれで大丈夫なんでしょうか?まぁ私にも責任はあるのでそこまでは言えませんが……」

和「コホン……では気を取り直して参ります。

ペンネーム『あやや』さんから頂きました。

『この小説、東北伝の現在の時間軸を教えて下さい』

はい、ではお答えいたします。

ズバリ、この東北伝は原作で言う風神録の終了後の時間軸になります。なのでそれ以前の異変の首謀者達とは少なからず面識があるという事になります。

…えっ?じゃあそれ以前の異変については何も触れないのか…ですか?

安心して下さい。それについては過去にこんな異変がありましたという形で紹介していく予定です。いつになるかは分かりませんが……」

和「さて、そろそろお時間のようなので今回はここまでにしたいと思います。

最後までお付き合い頂いた方、有り難うございました。第二回目からはちゃんと一刀様を出します。

では、また次回をお楽しみにして下さい。和でした。m(_ _)m」ペコリ

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