東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

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あらすじ

和の一日の流れを紹介する筈が朝早くから一刀の悲鳴が炸裂し作者の思惑は早々に打ち砕かれた。昨晩居酒屋ではしゃぎ過ぎたせいで一刀は痔(仮)になってしまいさぁ大変!!永遠亭に担ぎ込まれた一刀の運命やいかに!?




















 ◇

三年T組~、一八(わんぱち)先生!!

一刀「はーい、では授業を始める前に今日から君達とクラスメイトになる転校生を紹介しまーす。

では猫君、入って来なさい」

ガラガラー

猫「なぁー」

一刀「という事で今日の授業はこの猫の名前を皆さんで考えて下さい」

和「先生、名前はどうやって決めたら良いですか?」

一刀「その場のノリと勢いで決めて下さーい」

和「雑!!」

紫「先生ー、ロールケーキという名前はどうですか?」

一刀「アンパンマンに出てきそうなのでNGでーす」

猫「なぁー(太るぞ)」

紫「ひゃん!!」グサッ

一刀「霖之助君、君の案を聞かせてくれたまえ」

霖之助「猫だから猫太で良いと思いまーす」

和「……少々安易過ぎませんか?」

一刀「良し、それに決めた!!」

和「えぇーーーーーーッ!?」

猫→猫太「なぁー」

一刀「そうかそうか。嬉しいか」

和「……それで良いんですか?」

一刀「では本日の授業は以上で終了でーす。

では最後に猫太君、締めの一言をヨロシク」

猫太「なぁー(では本編見てくれよ)」



3.辛い物の摂り過ぎは痔の原因になるから気を付けろ!!

 ◇

 

北郷一刀の従者、和の朝は主の一刀程ではないものの人里に住む一般の住人よりかは遥かに早い。

 

という事で今回は和の一日の生活の流れを書き記す事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ア"ァ"ーーーーーーーーーーッ!!」

 

と思ったのだが、いつも以上にやかましい一刀の黄色い悲鳴が家中に響き渡り、作者の思惑は早くも頓挫する事に……

 

和「っ!?」ガバッ

 

予想もしていなかった事態に和は飛び起きた。いつもこの男は朝っぱらからやかましいのだが流石の一刀も従者が起きていない時間帯に一人でバカ騒ぎする事はしない。

 

つまりこれは、北郷一刀の身に何かしら良くない出来事が起きたという事になる。

 

和は寝間着のまま部屋を飛び出し、悲鳴が聞こえた場所(恐らくトイレ)に急ぐ。最悪命に関わる非常事態が起きたのだとしたらと不安な思いが募る。

 

和「一刀様!大丈夫ですか!?」バンッ!!

 

勢いそのままにトイレの扉を開けた和の目に飛び込んできた光景は…

 

一刀「ぐおぉ……」デーン

 

便座の前で尻を丸出しにして蹲る一刀の姿であった。

 

和「キャーーーーーーーーーーッ!!」

 

本日二度目の黄色い悲鳴が部屋中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【辛い物の摂り過ぎは痔の原因になるから気を付けろ!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

和「朝早くに悲鳴が上がったから何事かと来てみたら……なんて格好してるんですか!!」

 

一刀「あぁ和…おはよう……」

 

和「あっはい、おはようございます。

 

……じゃなくてですねぇ!!一体何があったんですか!?」

 

一刀「あの……アレのアレがアレになってそれでーー」

 

和「あのすみません、言ってる事が一つも伝わって来ないんですけど……」

 

一刀は尻を押さえながらうおぉ…と呻くばかり。これでは和はどうする事も出来ない。

 

和「出来ればもう少し詳しく話してくれませんか?」

 

一刀「だからあの……俺、痔になったかも」

 

和「……はい?痔ですか?」

 

一刀「おぉ……」

 

一刀は尻を押さえていた手を退ける。すると一刀の尻の穴(周辺も含む)は見るも無残に真っ赤っかに染まっていた。普通では起こり得ない現象に和は目を丸くする。

 

和「ちょっ……コレ、どうしたんですか?」

 

一刀「メッチャヒリヒリするぅ~。コレぜってー腫れてるわぁ……」

 

和「私には痔というよりかぶれに見えるんですけど」

 

どちらにせよ緊急事態である事は確か。最悪今日一日はたこ焼き屋も万事屋も休まなければならない。後々家計のやりくりで苦労する事は火を見るよりも明らかだがそれはそれだ。

 

今は一刀がこうなった原因を突き止めるのが先決と和は思考を切り替える。

 

和「昨日までは何とも無かったんですか?」

 

一刀「あぁ。昨日ケツ毛処理してたけど俺のア○ルは正常だった」

 

和「誰もそんな事聞いてねぇよ!!」

 

全くもって和の言う通りである。何が起こっても平常運転なこの男に溜め息の一つも付きたくなる。

 

もっともそれを指摘したところで一刀は何も変わらないし変わろうとも思っていない。何故ならそれが一刀のデフォだから。←メタ発言

 

そして和もそれにツッコむ事を忘れない。何故ならそれが和のアイデンティティーでありデフォだから。←またもメタ発言

 

和「でしたら昨日何か辛い物を大量に摂取しましたか?」

 

一刀「イヤ、昨日はそんな物食ってないなぁ。あっでも……」

 

和「何かあったんですか?」

 

一刀「あぁ、昨日飲み屋でーー」

 

そうして一刀は昨日の出来事を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀・霖之助「「ダーハッハッハッハー!!」」

 

話は昨日の夜まで遡る。一刀と霖之助は人里の居酒屋で飲み会をしていた。バカ笑いしてる様子から察するにもうすでに出来上がってるようだ。

 

一刀「オーイ。焼酎二本追加してくれぇ」

 

霖之助「後焼き鳥盛り合わせ追加でぇ」

 

??「ハイハーイ。ちょっと待ってて下さーい」

 

二人の注文を受け、女将らしき女性がいそいそと準備に取り掛かる。

 

一刀達の行き着けの居酒屋の女将は赤と白を基調とした和服を着ており、凛とした佇まいと良く合っている。

 

女将の名前は博麗蕾夢(はくれいらいむ)。

 

博麗の名を名乗った時点でもう気付いたと思うが何を隠そう彼女は当代の博麗の巫女である博麗霊夢(はくれいれいむ)の母親でかつて歴代最強の巫女と謳われた博麗先代の巫女なのだ。

 

当然一刀と霖之助も蕾夢とはその当時から知り合いであり共に戦地を駆け抜けた仲でもある。

 

博麗の巫女引退後、蕾夢は貯めた金で念願だった居酒屋蕾(つぼみ)をオープン。元々抜群に上手かった料理の腕と酒場の知識だけは無駄に豊富な一刀の助言も手伝って(一刀「だけってどういう事だコラァ!!」)あっという間に繁盛していった。

 

今では蕾は人里で知らぬ者は居ないと言われる程の超人気居酒屋である。

 

蕾夢「はい、焼き鳥盛り合わせと焼酎二本ですね。

 

一刀さんも霖之助さんも程々にしておいた方が良いんじゃないですか?大分顔が赤いですよ」

 

一刀「まだまだこれからじゃあーーーッ!!」

 

霖之助「右に同じ!!」

 

蕾夢「ハイハイ、わかりました」

 

酔っ払いは人の話を聞かないという所はどこに行っても同じで、人間と妖怪という種族の違いも関係無い。

 

特にこの幻想郷には酒好きな呑兵衛共が多いので居酒屋の女将が酔っ払いに合わせて対応しなければならないがこれが中々難しい。その点蕾夢は酔っ払いの扱い方を良く知っている。

 

一刀「……おっしゃ!!じゃあそろそろ俺の十八番でも披露するかぁ!!」

 

霖之助「イヨッ!待ってました!!」

 

程良く(あくまで本人の感覚)酔いが回ってきたところで一刀は勢い良く席を立ち、霖之助のいかにも酔っ払いらしい合いの手を聞きながら準備運動を始めた。

 

一刀「クレヨンしんちゃんのモノマネ行きまーす!!」

 

一刀は声高らかに宣言すると何を血迷ったのかズボンを脱いで丸出しにした尻を振りながらウホホッと左右に動き始めた。

 

霖之助「ブッハッハッハッハー!!」ドンドン

 

テーブルを叩きながらバカ笑いする霖之助とまた始まったと苦笑いする蕾夢。居酒屋には二人以外にも勿論客は居て、突然の一刀の奇行に霖之助と同じくバカ笑いする者と口に含んだ酒を吹き出す者と反応は人によって様々。一刀は外野の反応もお構い無しにネタを続ける。

 

ちなみに蕾夢は初めてコレを見た時顔を真っ赤にして一刀を止めようとしたが、懲りない一刀が何度も続ける内にもう慣れてしまった。いやはや慣れとは大変恐ろしい……

 

霖之助「良いぞ!もっとやれ!!」

 

一刀「はーい、もっとやりまーす(-o-)/」

 

そう言って一刀が懐から取り出したのはお医者さんごっこで使うおもちゃの注射器。中には赤くドロドロとした液体が入っている。

 

蕾夢「……それ、中身は何ですか?」

 

一刀「良くぞ聞いてくれた!コレは俺の七つ道具の一つ、唐辛子ペーストだぁーーーッ!!」

 

蕾夢「えっ、ちょっ……まさか!?」

 

蕾夢は一刀が何かとんでもない事を仕出かしそうな事に気付いた。マズイと思い慌てて一刀を止めに入るが……

 

蕾夢「一刀さん!それは流石に止めた方が……」

 

一刀「霖之助、コイツを俺のア○ルにブチ込んでくれ」

 

霖之助「了解した!!」

 

蕾夢「ちょっと!?霖之助さんまで何手伝ってるんですか!?」

 

やはり酔っ払いは人の話を以下略。ただでさえ一刀は素面の状態でも人の話を聞かないのに酒が入るとその自己中っぷりは益々酷くなる。

 

蕾夢の忠告も何処吹く風。一刀と霖之助は二人共謀してリアクション芸人も真っ青な事を仕出かそうとしている。

 

霖之助「では、注入ぅーーーッ!!」

 

一刀「おぉ!?入っていくぅーーーーーーッ!!」

 

一刀の尻の穴の中に赤い液体が入っていく。その瞬間、蕾夢は天を仰いだ。

 

一刀「オメェら!離れとけよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘技!レッドホットスパァーーーーーーク!!」

 

ブブゥー!!

 

強烈なオナラと共に唐辛子ペーストが勢い良く噴出される。食事中だった人は申し訳ない。後良い子は絶対に真似しないように(笑)。

 

※それと食べ物を粗末にしてはいけません

 

蕾夢「(あー、本当にやってしまったよこの人……)」

 

一刀・霖之助「「ガーハッハッハッハー!!」」

 

下品極まりない事をやらかしたアホな男(一刀)とその共犯であるバカな男(霖之助)は周りの迷惑も省みずゲラゲラと笑う。

 

こうして二人のどんちゃんバカ騒ぎは夜が更けるまで続いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

そして現在の惨状に至る。

 

一刀「あの後調子こいて3回もやったのがマズかったかなぁ……」

 

和「完全に自業自得じゃねぇか!!(怒)

 

何やってるんですか!お酒に酔っていたとは言えどこの世界に唐辛子をお尻の穴の中にブチ込むバカが貴方以外に居るんですか!!(怒)」

 

一刀「少なくとも世界中のどっかに一人は居るんじゃね?読者の皆も賛同してくれる人はきっと居る筈」

 

和「イヤ居る訳ねぇだろ!!」

 

面構え改まる気配まるで無し。後々痛い目を見るのは自分なのに何故何も考えていなかったのか、後先考えない主の蛮行に和は胃の痛みを覚える。

 

和「とにかく急いで治療して貰う為にも永遠亭に行きましょう!」

 

一刀「えっ、病院!?イヤだ!怖い!!行きたくない!!」

 

和「アンタは子供か!!」

 

和は一刀の言葉を無視して半ば強引に一刀の首根っこを掴み永遠亭なる場所へと連れて行く。

 

和「ほら、急ぎますよ」

 

一刀「分かったから!自分で歩けるから!だから引き摺らないでぇ!!オケツが摺れるぅーーーーーーッ!!」

 

和「静かにして下さい!!」ドガッ

 

一刀「ぶへらぁ!!」ピチューン

 

和「では猫太さんは留守番を御願いしますね」

 

猫太「なぁー」

 

こうして猫改め猫太に留守番を託し朝イチから騒がしい一刀を一撃で沈めた和はそのまま一刀を引き摺る形で人里を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

??「人里から遠く離れたここ『永遠亭』は迷いの竹林に囲まれた病院……というより診療所の様な施設よ。

 

ちなみに何故ここが迷いの竹林って呼ばれているかというと、ここら一帯で自生している竹の成長速度が早くここの風景を変えてしまうから人妖達がよく迷うのよ。その事から迷いの竹林って呼ばれる様になったのよ」

 

??「……師匠、誰に向かって言ってるんですか?」

 

本来作者がすべき説明をわざわざ代わりに行ったのは赤と青で色分けされた衣装を身に纏い、ストッキングを履いた中々グラマラスな女性。

 

その傍らに居るのは学校の制服の様な衣装を着用し、兎の耳を生やした少女。少女の師匠という発言からして二人は恐らく師弟関係にあると思われる。

 

永琳「言い忘れてたけど私の名前は八意永琳(やごころ えいりん)。こう見えても昔は月の頭脳って言われていたのよ。

 

で、こっちが私の助手で名をうどんげって言うわ」

 

鈴仙「名前ぐらいちゃんと紹介して下さいよ!私の正式な名前は鈴仙・優曇華院・イナバ(れいせん・うどんげいん・いなば)です!!」

 

永琳「長ったらしいから私はうどんげって呼んでるんだけどね」

 

鈴仙「まぁ、そうなんですけどね……」

 

純度百パーセントなメタ発言は置いといて実はこの鈴仙という少女、元から幻想郷の住人だった訳ではない。

 

鈴仙が幻想郷にやって来たのはおよそ半年前。月の調練の厳しさに堪えかねた鈴仙は月を脱走して永琳の居る永遠亭へと駆け込んで助けを求めた。

 

助けを受けた永琳は紫の助力を得て月をすり替えて月の都からの追っ手を撒いた。その間、幻想郷では夜が明かないという異変が起きた。この異変は後に『永夜異変』と語られ幻想郷の外までも巻き込んだ異変として記憶に新しい異変である。

 

そして永琳は鈴仙に薬師である自分の助手を務める事を条件に鈴仙を永遠亭に住まわせたのだ。

 

半年経った現在、当初は自分の事を棚に上げて妖怪の存在に驚いていた鈴仙も今ではすっかり慣れ、一人前の薬師になるべく奮闘している最中である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン、コンコン……

 

永琳「あら、客が来たみたいね。

 

うどんげ、対応してきて頂戴」

 

鈴仙「分かりました。師匠」

 

永琳からの指示を受けた鈴仙はスタスタと玄関に向かう。

 

鈴仙「はーい。どちら様で……って和さんじゃないですか」

 

和「どうも。突然すみません」

 

鈴仙「大丈夫ですよ」

 

玄関を開けるとそこには背中に一刀を背負った和が居た。鈴仙は何故和が一刀を背負っているのか分からず頭に?を浮かべる。

 

鈴仙「……あの、背中に背負っているのは北郷さんですか?」

 

和「はい。ですがご心配は要りません。一刀様はただ気を失っているだけですので」

 

鈴仙「は、はぁ……」

 

取り敢えず和と背中の荷物(一刀)を中に通す。鈴仙は一刀の容態を心配したが、和が大丈夫だと言ったので気にしない事にした。

 

和「こんにちは永琳さん」

 

永琳「あら、誰かと思ったら和じゃないの。それと……背中に背負っているのは一刀?」

 

永琳は和の背中に情けなく背負われている一刀の姿を見て目を丸くした。

 

……がそれも束の間、永琳は表情を医者のソレに一変させると和に椅子に座るよう促した。

 

ちなみに余談だが、一刀と和は迷路とも言える迷いの竹林を迷わず進む事が出来る数少ない人物で特に和はとある兎が仕掛けた罠に引っ掛からず永遠亭に辿り着く事が出来る唯一の存在である(一刀はしょっちゅう引っ掛かる)。

 

永琳「……で、要件は何?」

 

和「はい、実はーー」

 

和は事の顛末をゆっくりと語り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

和「という事がありまして……」

 

永琳「何ていうか……一刀らしいわね」

 

鈴仙「アハハ……」

 

主の失態を赤裸々に語る和に永琳は同情の眼差しを向け、鈴仙はただ苦笑いを浮かべるだけだった。ちなみに一刀は未だ意識を失ったままだ。

 

永琳「ちょうどこの間強力な軟膏を開発したから治療も兼ねて試しに使ってみようかしら」

 

和「大丈夫でしょうか?もし一刀様に何かあったら……」

 

永琳「まぁ一刀だし大丈夫でしょう」

 

和「それもそうですね」アッサリ

 

鈴仙「酷くないですか!?」

 

下手をすれば一刀がモルモットになりかねない事を平然とやろうとする永琳とそれを止めようともしない和に思わずツッコミを入れる鈴仙。二人は鈴仙のツッコミを気にも留めず一刀モルモット化計画を着々と進めていく。

 

永琳「大丈夫ようどんげ。一刀はその程度でやられるタマじゃないから」

 

和「これを機に一刀様の酒癖の悪さが治ってくれると良いですね」

 

鈴仙「そんな効果軟膏に無いですよ!!」

 

和は軟膏に一体何を求めているのかと鈴仙は疑問に思う。無論和も冗談で言っているのだが、それで一刀の酒癖の悪さが治るなら和もここまで苦労していないだろう。

 

和「でも永琳さんなら作れない事も無いと思いますよ」

 

永琳「……そうね。今度試しに作ってみようかしら。勿論うどんげには実け…じゃなくて試験官になって貰うから」

 

和「……今実験台って言い掛けましたよね?」

 

鈴仙「……」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

 

永琳と和の一言に鈴仙は体を震わせる。どうやら鈴仙はいつも永琳にモルモットにされているようだ。余程トラウマなのか先程から顔が青くなっている。

 

永琳と鈴仙の師弟関係は一刀と和の主従関係のソレに似通っている部分がある。主に従者(弟子)が苦労させられているという意味で……

 

まぁ鈴仙が実験台になるかどうかは一先ず置いといて(鈴仙「ちょっと作者さん!?」)、薬師である永琳は薬の調合においては彼女の右に出る者は居ない。

 

永琳は棚から軟膏を取り出すと一刀の尻に塗り始めた。幸い一刀は目覚めておらず治療は滞りなく終了した(仮に一刀が起きていたら騒ぎ出すのでクソ面倒)。

 

永琳「……これだけ塗ったら一日経てば良くなるわよ。入院する必要は無いわ」

 

和「有難うございました」

 

一時はどうなる事かと思ったが大事には至らずほっと胸を撫で下ろす和。これに懲りて一刀が改心してくれれば良いのだがまぁ無理だろうと和は思う。

 

永琳「だけど本当一刀ってお酒が入るといつも騒ぎを起こすよね。少しは自重しようとは思わないのかしら?」

 

和「多分無理だと思います。一刀様はアホな御方ですので……」

 

鈴仙「北郷さん、酷い言われようですね……」

 

勉強出来る者が頭良いとは限らない所が世の中の難しい所である。鈴仙は一刀に同情しているようだが事実なのだから仕方がない。

 

そんな鈴仙に和はクスリと笑みを溢す。

 

和「ですが今の私があるのは一刀様のお陰でもあります。一刀様からは学や武術だけではなく人との繋がりやコミュニケーションという物を学びました。

 

これって寺子屋では教えてくれませんよね?

 

そういう意味で言うと一刀様は私が仕えるにとても相応しい主だと思うんです」

 

今でこそ完全無欠を絵に描いた様な存在である和だが最初からそうであった訳ではない。

 

特に和は妖鳥である為、他の人妖達から鳥頭と揶揄されてきた。

 

確かに鳥は皆して脳の容量が小さい為、一度に多量の情報を記憶出来ない。故に妖鳥=鳥頭だという認識は拭えず、昔から和を含めた妖鳥は格下の妖怪だと馬鹿にされてきた。

 

しかし和はこの定説に異を唱えた。確かに野鳥は少なからず鳥頭かも知れないが人型に変身出来る妖鳥は決して鳥頭ではない筈だと。

 

人型に変身出来る、つまりそれは体の構造も完全とはいかないまでも人間に近付くという意味になる。それは即ち、脳の容量も人間とほぼ同じという事なのだ。和はそこに着目した。

 

和が知恵を求めた本当の理由は己の存在を保つ為ではなく世間一般に鳥頭だと馬鹿にされる妖鳥の定説を覆し、妖鳥の地位を向上させたかったからだ。

 

その為に和は勉学に励み、また旅をして見聞を広めた。幸運だったのは後に出会った一刀が人間で知識が豊富だったという事。

 

和は一刀から一般常識だけではなく人との接し方やコミュニケーション方法を学び、それら全てを己の頭に叩き込んだ。

 

そして得た知識を人間の子供に教える事で和は己の存在意義を示した。

 

当時の寺子屋や私塾はその受講料の高さから富裕層の人間の子供しか通う事が出来ず、農民ともなると読み書きが出来ない子供が当たり前の様に居た。和はそうした子供達に向けて無料で自らが得た知識を教えて回った。

 

始めは人間達に警戒はされたが、辛抱強く教えを説いて回っている内に人間達も和を受け入れる様になり、和は妖鳥の定説を覆した存在として人妖達から一目置かれる様になった。

 

和本人はあくまで主の一刀が協力してくれたお陰だと謙遜しているが、和が立てた功績はその後の妖鳥達の立場を大きく変えた存在である事に変わりはない。

 

和は現在、主の一刀と紫に次いで幻想一優秀な従者として幻想郷で高い地位に位置する妖鳥である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、その和は依然として目覚めない一刀を背負うと玄関へと歩を進めた。

 

和「今日は色々と有難うございました」

 

永琳「また一刀が何か仕出かしたらいつでも来て頂戴」

 

和「出来ればそうならない事を願っているのですが……」

 

とは言ったものの一刀様だから無理だろうと早々に諦める和。一刀のトラブルメーカーという名の病は恐らく永琳を持ってしても治らないだろう。

 

永琳「まぁ、色々と頑張ってね」

 

鈴仙「いつでも気軽に来て下さい」

 

和「はい。今日は本当に有難うございました。m(_ _)m」ペコリ

 

気軽に来るには少し遠いかなと思いつつ和は永琳と鈴仙に頭を下げて永遠亭を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

帰り、迷いの竹林の道中……

 

和「……」

 

朝方来た道を無言で引き返す。

 

いつの日も喧騒に囲まれた暮らしを送っていたからか、久しく訪れた静寂の時に和の心は何故だか落ち着かない。

 

原因は言わずもがな今自分の背中に背負われている我が主、北郷一刀である。

 

一刀の周りには必ずと言って良い程誰かが居る。常に騒がしく、それでいて毎回誰かをトラブルに巻き込みそして巻き込まれ……

 

少しぐらい我が主には大人しくしていて欲しいと思うが、その一方で楽しく笑っている主を見てると別にこのままで良いかと思ってしまう自分も居る。

 

昔は静寂が好きだったのに今ではなんだか物足りない。自分も随分一刀様に毒されてきたなぁ……と和は心の中で苦笑する。

 

和「……一刀様、例え時代が変わろうとどんな場所に居ようと、私は北郷一刀様の従者……和です」

 

一刀に返事は無い。どうやら意識はまだ夢の中にあるようだ。

 

和「私はこの命尽きるまで一刀様の従者であり続けます。

 

だから……一刀様も私を見捨てないで下さいね」

 

忘れかけていた静寂に和の思考はマイナス側に傾いてしまう。もし一刀が起きている時にこんな発言をしたら一刀に鼻で笑われるかも知れない。

 

湿っぽい雰囲気を嫌う一刀様の事だから「何、しょんべんでもしたくなったか?」と意味不明な事を言って笑いに変えそうだなと和は思う。

 

一刀「……まーた出やがったなぁ。和ちゃんの悪い癖が」

 

和「……!!」

 

突然背後から聞こえた声に和は思わず足を止めた。

 

振り返るといつの間にか起きていた一刀が和をじっと見ていた。

 

口調こそいつもと変わりないが、いつも生気を感じられず死んだ魚の様にしている目が、この時に限っては生気を宿した目をしている様に和は思えた。

 

一刀は和の背中からヒョイと飛び降りると和の頭にポンと手を置いた。和は恥ずかしいのか、やや頬を紅く染める。

 

一刀「あのなぁ……何ナーバスになってんのか知らんが、俺が一度でもお前を見捨てた事あるか?」

 

和「一刀様……」

 

一刀「それとも何か、お前は俺に捨てられたいって思っとるんか?」

 

和「そんな事ありません!ですが……」

 

一刀「じゃかましい。じゃあそれで良いだろ」

 

やや横暴な口調ではあるが、一刀の言ってる事は正論だ。

 

和の従者としての日々は迷いと葛藤の連続であった。主からの幻滅と失望を恐れ、時には他人の評価を気にして、それでも一刀の為に従者という仕事に務めてきた。

 

そんな和の心境を主の一刀が知らない筈が無い。一刀の事を和が熟知している様に、一刀もまた和の事を手に取る様に知っている。

 

一刀はいまだ元気の無い和の頭をポンポンと撫でると、弱気な和を励ますべく更に言葉を紡ぐ。

 

一刀「和、お前の事をよく知ってるのは俺だ。

 

それにお前が俺の為に尽くしているのを一番よく知ってるのも俺だ。

 

故にお前に正当な評価を下せるのは他の誰でもない、この俺だ。

 

他人の評価なんかどうでもいいと思って捨て置け。そんなもんは所詮上辺だけに過ぎないんだからよ」

 

和「……」

 

一刀「大体お前は些細な事でクヨクヨ悩み過ぎだ。

 

良いか和、『悩む』と『考える』は違うぞ。

 

『悩む』とは後ろ向いて立ち止まっている状態なんだ。だから答えなんか出ない。

 

でも『考える』とは前を見据えて進んでいる状態なんだよ。だから多少時間は掛かるがいずれ答えは出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから()()()()()()!」

 

和「……!!」

 

一刀の叱咤がマイナス側に傾いていた和の思考を引き戻す。いつの間にか口調が変わり和を励ます今の一刀に普段のちゃらんぽらんな姿はどこにも無い。

 

読者の皆は一刀の変化に戸惑い(?)を隠せない(??)かも知れないがこれこそが一刀の本性、言い換えるならこれが一刀本来の姿なのだ。

 

幻想郷の住人からはトラブルメーカーというイメージが強い一刀だがそれはあくまで()()()の姿。

 

本当は……本来の彼はソレとは真逆。誰も見てない所で懸命に努力する努力家であり、また有事の際には冷静沈着な態度で勝負所を見極め自分達や幻想郷にとって最も有効な策は何かを考える思慮深さも持っている。

 

しかし、一刀の本性を見る機会は滅多に無い。従者の和ですらも一刀のコレを見るのは片手で数えても余る程度。

 

博麗の巫女だけでは解決出来ない未曾有の大異変が幻想郷を襲った時ぐらいにしか彼の本性は顔を出さないのだ。

 

一刀「少なくとも俺はお前を手放したり、どこの馬の骨かも分からん奴にむざむざと明け渡すつもりは微塵も無い。

 

逆に長い事俺なんかの従者で居てくれてありがとな」

 

和「いえ、そんな……」

 

こんな自分に一生懸命尽くしてくれる和に一刀は感謝すらしている。

 

だからこそ言わずにはいられなかった。主としてだけではなく、人生の先輩としても一刀は和に激励を入れた。

 

一刀「だから俺から言わせてくれ。

 

……これからも俺の為に頼むな、()()()

 

和「……はい!!」

 

一刀の言いたい事は和にしっかりと伝わっていた。先程和は一刀の事を「自分が仕えるに相応しい主」と言ったが、やはりあの言葉に間違いは無かったと改めて思った。

 

紫「……」

 

そんな二人の様子を紫はスキマ越しに見ていた。

 

いくら和が幻想一優秀な従者と言われていても、主がその能力を引き出す事が出来なければ宝の持ち腐れである。

 

やはり和の主に相応しい人物は北郷一刀を置いて他には居ないと再認識させられた。

 

??「……しかし北郷様も勿体無いですね。常日頃からあの姿を見せていたら格好いいと思うのですが」

 

紫の後ろには狐の様な金色の尻尾を九尾生やした女性が立っていた。その佇まいは和の従者のソレと良く似ている。

 

紫「まぁ本人が決めた事だから私達がとやかく言う筋は無いわ。

 

逆に稀にしか見せないから格好いいと思うんじゃないかしら?」

 

??「そうかも知れませんね」

 

紫自身、一刀の本性を見るのは随分と久し振りである。

 

一刀と和の協力無くして今の幻想郷は無かったとハッキリ断言出来る。それだけ紫にとってあの二人の存在は特別なのだ。

 

紫が一刀達と出会った頃にはあの二人はすでに主従の契りを交わしていた。当時は妖怪が人間の従者を務めている事に驚きもしたが、その想いは次第に『人間と妖怪が共存出来る世界を創造する』という理想に変化していった。

 

一刀と和の存在は紫の人生に大きな影響を与え、紫は二人に一筋の希望を見出だした。

 

紫が自分の理想を実現させるにあたって常に自分に言い聞かせている言葉がある。

 

『幻想郷は全てを受け入れる』

 

そう、まずは分け隔てなく受け入れる事から全ては始まるのだ。受け入れる前に選り好みなんかしていたら理想はただの理想に終わってしまう。

 

だから紫は異変の首謀者であろうと幻想郷に住まわせた。仮にその後に問題が起ころうともそれはその時に処理していけば良いだけの話。

 

今の幻想郷が平和な時を刻んでいるのも紫の尽力と一刀達の協力があってこその事。それを幻想郷に住む住人達は忘れてはならない。

 

紫「藍、帰りましょう。いつか私達もあの二人に自慢出来る様な主従関係になりましょう」

 

藍「はい、紫様」

 

紫とその式神、八雲藍(やくも らん)は一刀と和の姿を見届けた後スキマを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和「覗き見とは紫様も趣味が悪いですね」

 

一刀「アイツはいつもそうだろ。

 

だが……まぁ、今回は大目に見ようじゃねぇか」

 

和「そうですね」

 

一刀と和は紫達の存在にとうの昔に気付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 

人里に戻ってきた二人はこれからどうするか話し合っていた。一刀の尻の状態によってはたこ焼き屋と万事屋の両方とも休業しなければならない可能性がある。

 

和「一刀様、お尻の状態はいかがですか?」

 

一刀「う~ん……まだ少しヒリヒリするなぁ。

 

多分万事屋の仕事は無理だな」

 

和「……その言い方だとかっちゃん堂の方は大丈夫という事ですか?」

 

一刀「……まぁ何とかなるんじゃねぇの?」

 

和「他人事ですね……」

 

一刀の尻の状態を心配しているのだが、当の本人はまるで他人事の様にあっけらかんとした態度で答える。この様子に万事屋もいけるのではないかと和は思う。

 

和「お酒を飲むなとは言いませんが、ちゃんと限度は弁えて下さいね」

 

一刀「ヘイヘイ、分かりましたよーだ」

棒読み

 

和「はぁ……」

 

あまりにテキトーな態度で返す一刀に小さく溜め息を付く。どうもこの様子からして限度を弁えるつもりは無いようだ。

 

やがて自宅が見えてきた。二人は帰ったら開店に向けて仕込みをしなければと思っていたが……

 

猫太「にゃっ!」

 

一刀「おぉ猫太。なんだ、俺達の帰りを待っていたのか?」

 

猫太「なぁー……」

 

一刀「…ん、どした?」

 

猫太「にゃっ!!

 

なぁー……」

 

一刀「ふむふむ…

 

ほーほー……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……うん、全然分からん!!」

 

ガクッ

 

猫太「なぁー……」

 

ガックリとした様子で猫太は家の中を指差す。

 

和「……つまり家の中に誰か居るって事ですか?」

 

猫太「なぁー」

 

どうやら当たりのようだ。

 

一刀「和、お前鍵掛けた?」

 

和「出掛ける時ちゃんと施錠した筈なんですけど……」

 

一刀・和「「……(汗)」」

 

もし泥棒だったらどうしようと思いつつ二人は恐る恐る玄関の戸に手を掛ける。

 

一刀「えぇい!ままよ!!」

 

ダァン!!

 

意を決して一刀は戸を勢い良く開けた。その時一刀達の目に飛び込んできた光景は……

 

??「お帰りなさいませ!一刀君、和さん!」

 

一刀・和「「……」」

 

不法侵入の犯人の顔を見た二人は同時に頭痛に似た感覚を覚えた。

 

 




一刀「見ろ、お気に入り登録者の所。名前が一つ付いたぞ」

和「こんな小説でも読んでくれる人が居るんですね……」

一刀「中々上々な滑り出しじゃないか。この調子でお気に入り登録者数がどんどん増えてくれると良いな」

和「前途は多難だと思いますが……」

一刀「なんだぁ和ちゃん。随分と弱気だなぁ」

和「弱気も何も……あんな内容の物を投稿し続けていたらいつ消されてもおかしくないですよ。私はこの小説の将来を心配してるんです」

一刀「……さて次回は遂にメインヒロイン(仮(?))が登場するぞ。是非楽しみに待っててくれ。

それでは次回もサービスサービス♡」

和「♡付けてんじゃねぇよ気持ち悪い!!しかもエヴァンゲリオン丸パクリじゃねぇか!!」
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