東北伝   作:独田圭(ドクタケ)

7 / 16
あらすじ

人里の内外で人気のたこ焼きかっちゃん堂は今日も絶賛営業中。そのかっちゃん堂に一人の来客が現れ、注文を受けながら談笑する一刀達。その最中、一刀はふとした拍子で幻想郷全土が紅く染まったある異変の事を思い出した。





一刀「あのー…前の話を投稿した時に言い忘れてた事があるんだけどさぁ…

…マジで投稿遅れてスマンかった。」

和「…それ一番忘れてはいけない事ですよね?」

一刀「…また謝罪会見でも開くか?」

和「アレはもう良いです。」

一刀「流石にマズイと思ったから今回は早めに投稿した。

じゃあ早速見てくれ。」

和「では本編をどうぞ。」



紅魔郷編
7, 水無き所に霧は立たぬ


 ◇

 

外の世界の飲食店の数は星の数程あるが競争社会の激しさ故に、その中で長続きする店の数は極僅かに限られてくる。

 

そしてそういった長く続く店には必ず常連客という存在がおり、店の売上に大きく貢献してると言っても過言ではない。

 

外の世界から切り離された幻想郷の人里に店を構えているたこ焼きかっちゃん堂も長く続く飲食店の一つで今年で創業ウン百年にもなる。

 

かっちゃん堂も例外無く常に通いつめている客が居る。妖怪の賢者であったり、片腕有角の仙人であったり、または人里の守護者であったりと里の内外問わず人気の店である事は間違いない。

 

紅魔館でメイド長を務める人間の少女、十六夜咲夜(いざよい さくや)もその内の一人。彼女は月に一度のペースで通う言わば常連客である。

 

しかしながら、彼女自身がかっちゃん堂を贔屓にしているという訳ではなく…

 

咲夜「こんにちは、たこ焼きを二つお願いします。」

 

一刀「…へーい、毎度あり。」

 

和「ありがとうございます。少々お待ち下さい。」

 

やる気の欠片も無い一刀に対して和は丁寧な言葉使いで物腰も柔らかい態度で接客をする。咲夜は和が妖怪である事がいまだに信じられないでいる。

 

咲夜も幻想郷にやって来て随分月日は経つので様々な妖怪と関わってきた。その中には和の様な礼儀正しい妖怪も居たが、彼女の場合はそれがあまりに堂に入り過ぎているので人間かもしくは半人半妖の類だとつい疑ってしまう。

 

成る程、あのブン屋が和を大先輩と慕う理由がなんとなく解ると咲夜は思う。

 

話はやや逸れるが、たこ焼きかっちゃん堂は持ち帰り専門店と思われがちだが、実はちゃんとしたイートインスペースがあり、買ったたこ焼きをその場で食べられる。

 

しかし咲夜はそこを利用した事が無い。それには勿論理由がある。

 

それは咲夜が仕える主とその妹がかっちゃん堂のたこ焼きを気に入っているものの、とある事情があって家を出られないが為に代わりに彼女が買って帰る役目を担っているという事。

 

つまり咲夜は店主と常連客である主を繋げるパイプ役になっているのだ。

 

和「いつもお使いご苦労様です。」

 

咲夜「いいえ。お嬢様も妹様もこの店を大変気に入ってますよ。」

 

一刀「……」モグモグ

 

和「それは商売人冥利に尽きますね。」グサリ!

 

一刀「うべばっ!?」

 

どさくさに紛れてたこ焼きを摘まみ食いをした一刀に和からの制裁が下る。初めは驚いていた咲夜だが、今ではこの光景にもう慣れた。いやはや慣れとは大変恐ろしい…

 

一刀「…で、もうここの暮らしには慣れたか?」プシュー

 

咲夜「あの…その前に、こめかみに刺さった竹串を抜きませんか?血が噴き出てますよ。」

 

真面目な事を聞かれている筈なのに竹串がこめかみに刺さったままで血飛沫が噴き出たままの一刀が気になって質問の内容が頭に入って来ない。

 

一刀「Oh、クラウディア。それは済まなかった。」スポン

 

見ているこっちが痛くなってくる程の光景なのに、一刀本人は痛がる様子どころか何食わぬ顔で冗談を言いながら竹串を抜いてみせた。

 

痛くはないの?とかアンタ本当に人間か?など、色々とツッコミどころ満載ではあるが、もっとも一刀のボケや一刀と和のコント染みた掛け合いには慣れた為もう驚く事は無い。いやはや慣れとは以下略。

 

咲夜「…でもそうですね、随分慣れてきました。北郷さんと和さんには感謝しています。」

 

幻想郷に移り住んでから咲夜達の生活は良い意味でガラリと変わった。その原因の一端である一刀達には感謝してもしきれない程の恩があるのだ。

 

和「お礼は一刀様にして下さい。私は特に何もしておりませんので。」

 

一刀「…俺何か感謝される様な事したか?」

 

咲夜「お忘れですか?妹様を救ってくれたじゃないですか。」

 

一刀「あぁー…あったなぁ、そういう事。

 

俺はアイツの遊びに付き合っただけだ。」

 

咲夜の言葉を受けて一刀は思い出す。

 

スペルカードルールが制定されたばかりの幻想郷で初めて起きた異変の事を…

 

 

 

 

 

 ◇

 

【水無き所に霧は立たぬ】

 

 

 

 

 

その日もかっちゃん堂はいつも通り営業していた。

 

しかし、いつもに比べて客の出入りが少ない。というより全く無いと言ってもよかった。

 

その理由は外を見れば一目瞭然であった。

 

一刀「夕焼~けこやけ~の~赤トーンーボー♪」

 

和「一刀様、今お昼ですよ。」

 

一刀「和ぃー、今何時だ?もう店じまいだろ?」

 

和「何言ってるんですか。まだ1時半まわったばかりですよ。」

 

和の立場からすれば一刀がまたサボりたがっているとしか思わず軽くあしらう。このやり取りは日常茶飯事、和にとって今更疑問に思う事は無かった。

 

一刀「そうは言ってもさぁ…空紅いぞ。」

 

いつもなら頑固な和にぶさくさ言いながらも諦めるが、この日の一刀はやけにしつこく和に食い下がる。

 

嗚呼…遂にこの男は空の色さえ判別出来なくなるまで呆けてきたかと和は心の中で呆れ返る。

 

もう放置しようかと思ったが、いよいよ一刀が本気で店じまいの準備を始めようとしていたので和は慌てて止めに入る。

 

和「何勝手に店閉めようとしてるんですか!?いい加減にしてーー」

 

そう言いかけた所で和は空を見て愕然とした。なんと本当に空が紅くなっていたのだ。もっと具体的に言うと、人里全域が紅い霧に覆われていたのだ。

 

和「えっ……これは一体どういう事ですか?」

 

一刀「和、分からねぇか?この霧…只の霧じゃねぇぞ。」

 

和「…本当ですね。霧の中に強い魔力が含まれてますね。」

 

人里がこんな状態である事を知りながら現実逃避が出来る程一刀も和も薄情ではない。道理で客足が伸びない訳だと一刀は一人納得する。

 

この紅い霧にはとても強い魔力が含まれていると和は先程言った。つまり、この魔力を生身の人間…特に免疫力の低い老人や子供が浴びれば少なくとも数日間はまともに動く事が出来ないだろう。

 

一刀「そりゃこんな霧に覆われた里を好き好んで歩き回る馬鹿が居る訳ねぇか。」

 

和「一刀様、これはつまり…」

 

紫「そう、これは異変よ。」ヒョコ

 

一刀「ハイ帰りなさい。」シッシッゞ(`´ )

 

紫「酷い!?」ガビーン

 

和の言葉に応えたのは一刀ではなく、いつもの様にスキマからひょっこりと現れた紫であった。

 

神出鬼没のスキマ妖怪と良く言われている紫だが、出現パターンを知り尽くしている一刀達にとってはこうして突然現れた所で驚くに値しない。

 

一刀「…ったく。お前が来たという事はつまりそういう事かぁ?」

 

和「…何か依頼があるという事ですね?」

 

紫「そうね…

 

 

 

 

取り敢えずたこ焼き一つ頂戴♪」

 

和「違うの!?」

 

流石にこの状況では真面目に振る舞うだろうと考えていた和の予測は見事に外れ、ウインクしながらたこ焼きを注文する紫。やはり和はツッコミの宿命からは逃れられない運命にあるようだ。和「そんなショボい宿命なんて要りません!!」

 

その横でせっせとたこ焼きを作り始める一刀も大概だが…

 

藍「紫様…今は冗談を言ってる場合ではないですよ。」

 

紫「分かってるわよぉ!私だってふざけてるつもりは無いのにぃ…」

 

開けっ放しのスキマから今度は式神の藍が出てきて紫を咎める。もっとも当の紫には全然反省の色が見当たらない上にふざけてるという自覚も無いが…

 

和「…それで、今回の依頼はなんですか?」

ジト目

 

紫「ちょっと和っ!その憐れみの籠った目は何!?」

 

そんな事にいちいちツッコまないでさっさと本題に入って欲しいと和と藍は揃って思う。普段は大雑把なくせして何故こういう所だけは細かいのか。

 

紫「…まぁ良いわ。気付いたとは思うけど、今幻想郷全体がこの紅い霧に包まれてるわ。これは紛れもなく異変よ。」

 

和「えっ、幻想郷全土にですか?

 

…まさか私達に異変を解決しろだなんて言いませんよね?」

 

藍「それは無い。異変の解決自体は霊夢に任せるさ。」

 

和「…要するに私達はそのサポートをしろという事ですね?」

 

紫「そういう事。理解が早くて助かるわ♪」

 

今の発言の僅かなヒントだけで和は依頼の内容を全て理解した。その頭の切れっぷりは、もはや彼女が妖鳥である事を忘れてしまう程。

 

更に和はその理由までも独自の解釈で説明を始める。

 

和「霊夢さんが博麗の巫女としての最初の大仕事ですしね。この異変を滞りなく解決して人妖達に新しい博麗の巫女の実力を見せ付けると同時にスペルカードルールを幻想郷に浸透させるという狙いもあるんですよね?」

 

紫「ピンポーン!大正解♪」

 

藍「末恐ろしい頭脳の持ち主だな…」

 

和「大袈裟過ぎますよ…」

 

満足そうに頷く紫と和の頭の回転の早さに感嘆する藍。謙遜こそしているが勿論和にとってはこれは朝飯前である。

 

藍とて幻想郷でも屈指の頭脳の持ち主だが、和はその更に上を行くのだ。三途の川の距離を計算出来るという藍だが、和の場合は距離だけでなく総面積や水深も計算でき、極めつけはその証明も出来るという。流石の藍もそこまでは出来ない。

 

さて話を戻そう。和の指摘にもあった通り、今回の依頼の目的は二つ。先代の蕾夢から博麗の巫女を引き継いだ霊夢のデビューウィンをアシストし、幻想郷中にその名を知らしめる事。

 

霊夢が異変を解決出来れば新しい博麗の巫女の力に人間達は安心感を抱き、妖怪達は恐れ慄く。二重の相乗効果が生み出せる訳だ。

 

そしてもう一つが、今回から新しく導入されたスペルカードルールという決闘法の全面的な普及。スペルカードルールはただ弾幕を打てば良いという訳ではない。

 

如何に相手より美しく見せるかという娯楽の要素や、わざと回避出来るスペースを作って相手を誘導するなどといった心理戦の要素も取り入れられている。

 

指定したスペルカードの枚数を相手より先に使いきる、もしくはどちらかが戦闘不能に陥るかで勝敗が決まる為、負傷者が出たとしても数日の療養が必要になる程度で致命傷にはならない。最も安全かつ素早い異変の収束を目的に紫が考え出した決闘法なのだ。

 

幻想郷の英雄的存在として見られている博麗の巫女がこれを使えば美しさに魅せられた人間達が真似をし、力に頼っていては勝てないと悟った妖怪がまた真似をする。

 

こうする事で無駄な争いをする者を減らして幻想郷を安全で住みやすい世界にするという紫の狙いがあるのだ。

 

しかしそれを何故スペルカードを持たない一刀達に依頼するのか?

 

理由は簡単。スペルカードルールが施行される以前の幻想郷というのを紫達以外に知り尽くしている者は一刀達しか居ない(厳密に言うと霖之助も居るのだが)。

 

故に一刀達には異変以外での不測の事態に備えてのバックアップ要員、スポーツで言う所の控え選手という立ち位置になる。

 

勿論そういう事態が起きないに越した事ではない。一刀と和はあくまでも最後の砦なのだ。

 

和「霊夢さんは今どうしてますか?」

 

紫「霊夢ならもう博麗神社を出たわよ。」

 

和「分かりました。直ちに準備します。」

 

藍「うむ、任せたぞ。」

 

和「はい。

 

…一刀様も出立の準備をお願いしますね。」

 

少し急ぐよう主に促すが、当の一刀本人ははぁ?という顔をして不思議そうに首を傾げながら和を見返す。

 

和「…どうかいたしましたか?」

 

一刀「イヤ、あの…

 

 

 

 

 

…依頼って結局何?」

 

和「……(怒)」

 

 

 

 

 

 ◇

 

一刀「イヤだからって何も木刀でフルボッコにするこたぁ無ぇだろ…」

ボロ雑巾

 

和「一刀様が人の話を聞いていないのがいけないんですよ。私に怒るのは筋が違います。」

 

和にこっぴどく叱られた挙句、木刀でハメ技を喰らって大変哀れな(自業自得ではあるが)姿の一刀の頭には出来たてほやほやのたん瘤が三つ重なって出来ている。

 

結局和はあの後一から掻い摘んで説明する羽目になり出発予定時刻を大きく過ぎてしまった。言うまでもなくこれは一刀のせいである。

 

一体何回和にボロ雑巾にされたらこの男は反省するのだろうか?

 

一刀「…本当そうだよ。カズ君は一体和に何回ボコられなきゃいけないんだ。」

 

和「口動かす暇があったら先ず足を動かして下さい!」ボカッ

 

一刀「アイタっ!?」

 

そしてまた一刀はボコられる(笑)。

 

 

 

 

 

…といったやり取りを繰り返しながら二人は湖の方向に向かって歩を進めてゆく。

 

ただなんとなく此方の方角が怪しいから…などといった信憑性の無い勘に頼って進んでる訳ではない。当然正確な根拠がある。

 

湖の方角に進んでゆくにつれて霧が濃くなっている。このまま行けば間違い無く異変の黒幕の元に辿り着く事が出来る。二人共同じ見解であった。

 

やがて森を抜けて開けた場所に出た。濃い霧のせいで良くは見えないが、恐らくは湖に出たと思われる。

 

和「一刀様、湖に着きましたね。という事は…」

 

一刀「…間違いなく居るだろ。アイツらが。

 

 

 

 

 

オォーイ!!」

 

一刀は何故か湖周辺にまで響き渡る程の大きな声をあげた。当然ながら何の反応も無く、湖に再び静寂が戻るかと思われたが…

 

??「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!サイキョーのアタイ参上ね!」

 

??「チルノちゃん、危ないよぉ…」

 

一刀「よぉ。」ウィッス

 

和「元気そうですね。二人共。」

 

今や懐かしい決め台詞で颯爽と登場したのは水色の髪をした小学生ぐらいの背丈の少女。そして、その後ろから水色の少女と同じ程の背丈をした緑髪の少女がやや遠慮気味に現れた。

 

二人共背中に羽根を生やしており、一目見ただけで人間ではないと分かる。

 

チルノ「アァー!!誰かと思ったらせんせーじゃないか!」

 

一刀「元気にしてたか、チルノもDAI-YOUSEIも。」

 

大妖精「何か間違った呼び方をされている様な気がするんですけど…」

 

二人は湖を住処にしている妖精で先に現れた水色の少女をチルノ、そしてその後に現れた緑髪の少女をDAI-YOUSEI…もとい大妖精と言う。

 

先程のチルノの先生という発言から、どうやら彼女らは寺子屋の生徒で慧音の教え子と思われる。となると、たまに慧音に代わって教壇を執る一刀達とも面識があるという事にもなる。

 

チルノは幻想郷最強を自称しているが、妖精という種族は本来数ある妖怪の中でも特に力が弱く、知能の発達も遅い。故にチルノの発言を生暖かい目で見たり、鼻で笑う者も居るが一刀と和は決してそういう目で見てはいない。

 

確かにまだまだヒヨッコで未熟な面があるのも否めないが、妖精という括りで言えば彼女らは間違いなく最強なのだ。その理由を一つ挙げるとしたら、チルノと大妖精の二人とは日常的な会話が出来るから。

 

何故これが理由になるのか?

 

先にも述べたが、妖精は本来知能の発達が他の妖怪に比べても特に遅い。

 

という事は…知能の低い妖精は普段我々が何気なく使っている言葉という物を理解する事は出来ない。理解出来ないという事は勿論使う事も出来ない。

 

中には言葉を使える者も居るが、そのほとんどが単語だけや同じ言葉を繰り返し使う程度の事しか出来ずまともな会話にはならない。

 

その点チルノと大妖精はまともな会話が出来るだけの知能が他の妖精に比べて頭一つ、二つは抜けていると言える。特に大妖精の頭の回転の早さは和が認める程。

 

チルノはまだ難しい言葉は分からないが、一刀達が良く噛み砕いて説明すればちゃんと理解出来るだけの知能は持っている。少々聞き分けの悪い所が唯一の欠点ではあるが、そこはこれから様々な人妖達と触れ合って改善していけば良いだけの話。

 

和「お二人に聞きたい事があるんですが、ここで博麗の巫女を見掛けましたか?」

 

チルノ「博麗の巫女?そんな奴知らなーい。」

 

チルノは即答で知らないと答えた。それにしても自分達よりも遥かに格上の存在である筈の博麗の巫女をそんな奴呼ばわりとはこれ如何に…

 

対する大妖精はどうやら心当りがあるのか、少し考えてから口を開いた。

 

大妖精「…博麗の巫女かどうかは分かりませんが、さっきチルノちゃんが箒に乗った女性と弾幕ごっこをしてました。」

 

一刀「箒?…あぁ、成る程ね。」

 

箒というワードを耳にして一刀の記憶の引き出しの中から一人の人物が浮かび出される。この幻想郷で箒を移動手段に使う者は一刀の知る限り霧雨魔理沙をおいて他には居ない。

 

…という事は、霊夢はもう先へ行ったのだろうか?

 

一刀「(…まさかアイツまで異変解決に参加していたとは)…んで、ソイツがどっちの方角に行ったか分かるか?」

 

チルノ「んーと…あっち!」ドヤァ

 

一刀「イヤどっちやねん。」

 

和「……(汗)」

 

チルノのテキトー過ぎる回答に思わず和より先にツッコんでしまった一刀。せめて指差しぐらいはしてくれないとあっちとドヤ顔で言われても霧が濃過ぎて一体どこを指しているのか分からない。

 

大妖精「この湖を抜けると新しく出来た大きな洋館があるんですよ。恐らくそっちに向かったんだと思います。」

 

一刀「洋館ねぇ…」

 

たぶん…というか間違いなく異変の主犯はそこに居るだろうと一刀は考える。あまり勘に頼るのは好きではない一刀だが他に手掛かりも無いので、その洋館を調査する事に決めた。

 

一刀「和、どうやら次の目的地が決まったみたいだな。」

 

和「そのようですね。では早速その洋館に向かいましょう。」

 

一刀「…つー訳で俺達はもう行くぜ。じゃあな~。」

 

チルノ「じゃあねーせんせー。」

 

大妖精「また寺子屋に来て下さい。」

 

和「はい、貴重な情報をありがとうございました。」

 

二人に別れを告げて一刀達は湖を後にする。

 

この先、何が待ち受けているのか。そして異変を起こした原因とは何か。現時点では何も分からない。

 

ただ一つだけ確かなのは、異変の黒幕はもうすぐそこに迫っているという事だけだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

改めて言う事でも無いとは思うが、北郷一刀という男は自分の欲望に非常に忠実な人間だと和は思う。

 

自分が興味を抱いた物事に関しては時間を忘れて没頭する癖に、面倒事に関わる事は断固として拒否し、自分さえ良ければ誰かに押し付ける事も厭わない。もっとも、その尻拭いをさせられているのは従者の和である事は言うまでも無いが…

 

だから今こうして一刀が洋館の門の前で意識を失って倒れてる中華風の衣装を着た女性にちょっかいを出そうとしていても和は何ら不思議とは思わない。

 

一刀「…オーイ、大丈夫かぁ?」ツンツン( ´∀`)σ

 

和「……」

 

倒れてる女性の頬を指でつつきながら弄ぶ主の姿に、もはや呆れ以外の感情が出てこない。

 

世の中には二種類の人間が居る。…と言えば大袈裟に聞こえるかも知れないが、例えば人から頼み事をされた時に人間は大きく分けて二種類のタイプに分類される。

 

いち早く目的を達成する為に奔走する者。そしてその一方で道草を食い過ぎた挙句、本来の目的を忘れてしまう者。前者が和だとするならば、後者は明らかに一刀だろう。

 

大妖精の言葉通り、湖を抜けてしばらく歩くと霧の中から堂々と鎮座する見慣れない大きな洋館が現れ、異変の主犯が居るであろう場所に労せず辿り着いた。

 

ここまでは良かったのだが、門前で女性が倒れてるのを見た一刀の目が興味一色に染まった。そして一刀はゴール目前でまさかのコースアウトを喫して今の状況に至る。

 

こうなってしまったら一刀は自身の気が済むまでは梃子でも動かない。故に和は無視する事にした。

 

和「こんな所で会うなんて奇遇ですね、文さん。」

 

文「和さん、私は取材で来たんですよ。」

 

和「それ位見れば分かりますよ。」

 

洋館の目前で偶然にもばったりと出会った文に話を聞けば、どうやら彼女は先程まで霊夢達と行動を共にしていたらしい。

 

更に文の話によれば、やはりこの…文の情報曰く紅魔館という名の洋館の主が今回の異変の主犯だという事、そして傍らで倒れていた女性はこの門番である事が分かった。

 

門番の名前は紅美鈴(ほん めいりん)。果敢に霊夢に挑んだが返り討ちに遭い、現在は一刀の興味の対象になっている。

 

和「…それにしても赤いですね。」

 

文「そうですね。見てるだけでも目が疲れますよね…」

 

和「なんと言うか…独創的ですね。」

 

文「イヤー…趣味が悪いとしか言いようが無いですねぇ…」

 

てっきり霧の話をしているのかと思ったが二人が話していたのは紅魔館の外観の事で、建物から塀に至るまで全て赤一色で埋め尽くされていた。和は独創的だとオブラートに表現したが、文に至ってはハッキリと悪趣味だと言い放った。

 

一目見た瞬間、某宇宙飛行士の名言を捩って紅魔館は赤かったと言いそうになった和であったが、一刀みたく積極的にボケにいく性分ではないので心の中に留めておいた。

 

一刀「和ぃ~、あのさぁ…」

 

和「…何ですか?」

 

一刀「この娘、襲っていいかなぁ?」

 

和「イヤ駄目に決まってるだろ!!」

 

一刀「イヤイヤ、だってスタイル良いし、顔も良いし、おまけにスリットから生足見えてるし…

 

如何にも襲って下さいって言ってる様なもんだろ!」

 

和「アンタの思考回路はどうなってんだ!本当にこの小説をR-18指定枠に左遷させる気か!!」

 

文「あややー…私達の前で良くそんな事が言えますね…」

 

一刀の危うい発言に和は目くじらを立てて止める。放っておけば本気でやりかねない様な気がして怖い…

 

とは言え、ここで無駄な時間を喰う訳にはいかない。大いに不安だが、和の取った行動は一刀を放って先に進む事であった。いまだ霊夢のサポートすら出来ていない事を忘れてはならない。

 

和「…文さん、行きましょうか。」

 

文「了解しました。」ビシッ

 

門番に許可を取ってないが、事は急を要するので仕方が無い。そう和は割り切って異変の黒幕が住む紅魔館の中に足を踏み入れた。

 

博麗霊夢の初陣を勝利で飾る為にも。幻想郷に新たな秩序をもたらす為にも。

 

…そして北郷一刀の従者としてのプライドに賭けても。

 

この依頼…必ず遂行してみせる。

 

和の心は静かなる闘志に燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「おほぉ~、胸でけぇー。

 

和も小さくは無ぇがこれ位胸があればパーフェクトなんだがなぁー…

 

 

 

 

 

…ってあれ、和は?」

 

一刀が行動を起こすのはもう少し先になりそうだ…

 

 

 

 

 

【おまけ:姫海棠はたての幻想郷TOPIX】

 

花果子念報の記者、姫海棠はたてが幻想郷のありとあらゆる場所に足を運び、今ブームになってる物や注目の人物や妖怪をピックアップしてゆく新コーナー!

 

まだ本編一話しか登場の無いはたてが同僚の射命丸文に負けじと新企画を立ち上げた!はたて君、今の意気込みをどうぞ!

 

はたて「えっ?イヤ、そんな話聞いてないけど。」

 

コラコラはたて君、そこは場の空気を読んでしっかりと意気込みを語りなさい。

 

はたて「は、はい。えっと…その…

 

ま…まぁ、あ文にばかり出番取られる訳にはいいかないし、せせ折角私の為に用意してくれたんならわ私も記者の端くれとしてがが頑張らなきゃなぁと思ってますです…」

ド緊張

 

さてはたて君、この幻想郷TOPIXをこれからどういうコーナーにしていきたいですか?教えて下さい!

 

はたて「ま、まだあるの!?

 

あー…えーと…とととにかく、ま先ずはどど読者の皆さんにげげ幻想郷TOPIXの存在をみみ認めてもらえる様にしていきたいとおお思いますです…」

更にド緊張

 

緊張した面持ちの中にも気合いが感じられますね。

 

以上、幻想郷TOPIX予告編のコーナーでした!

 

はたて「って予告編だけなの!?」

 

えぇ、そうですよ。

キッパリ

 

はたて「見切り発車にも程があるでしょ!!もしお気に入り登録者数が伸びなかったらどうなるの!?」

 

その時はこの話は無かった事に…

 

はたて「うわぁぁぁぁぁん!!(泣)」

 

 

 

 

 

和「うわぁ…はたてさん、可哀想ですね…」

 

一刀「…相変わらず計画性が無ぇな、無能もやしの奴。」

 

和「私達ははたてさんを応援しますよ。」

 

はたて「和さん…」

涙目

 

一刀「まぁ頑張ってね、ほたてちゃん。」

 

はたて「ほたてじゃなくては・た・てだって言ってるでしょ!!」

 

【終了】チャンチャン♪

 

 




一刀「…なんか最後余計なやつがあったなぁ。」

和「作者さん曰く、予定してたよりも短めに終わったみたいなので急遽小ネタを入れてみたとの事だそうですよ。」

一刀「何にも考えてないところがアイツ(作者)らしいなぁ…」

和「はたてさん、出番あると良いですね…」

一刀「まぁあの無能もやしが個人的に好きなキャラだからな。嫌でも出番増やすと思うぞ。」

和「小ネタを考える事に時間を取られて肝心の本編が全く進まないという事にはならないですよね?」

一刀「……」

和「ノーコメントですか!?そこは否定して下さいよ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。