灰色騎士と黒兎   作:こげ茶

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……もう、ストーリーに沿って書くのは止めよう(戒め)





5話:命令違反

 

 

 

 

 

 

―――――指示を、命令を破ろうとしている。

 

 

 それは、これまでの私にあるはずもなかったものだ。

 <感情>がない――――ただひたすらに命令をこなすだけの傀儡。<戦術殻>のパーツの一つのようなものでしかないのに。

 

 けれども焦りはなく、後悔もない。

 あるとすれば、それは焦燥で――――。

 

 

 

 

(―――――リィン教官)

 

 

 灰の騎神、ヴァリマールをも動かす可能性のある案件。

 危険度S+―――<結社>が糸を引いていた<北方戦役>どころではなく、<結社>そのものとの戦いに挑もうとしている。当然、追い込まれれば<鬼の力>を使うことになるだろう。

 

 

 

 Ⅷ組と合同での機甲兵での哨戒訓練。

 アッシュさんが乗り込んだドラッケンが哨戒任務から抜け出し、その騒ぎと同時にわたしたちはパルム間道の高台に隠れ――――そして、リィン教官たちが厳重に封鎖された門扉を開けて先に進むのを見て、わたしたちも後を追う。

 

 

 

 

 

 

 リィン教官に気づかれず、かつ森の中を見失わずに進むのは不可能だ。

 しかし、どうしてかアッシュさんは自信満々で。

 

 

 

『―――――こっちだ。とっとと行くぞ』

 

「……な、なんでこんな獣道を迷わず歩けるのよ」

「正直、僕にもさっぱりわからないんだが……」

 

 

「――――上空から偵察したところ、この先に廃村のようなものがあるようです」

 

 

 

 ステルスモードにも関わらず、上空を警戒する素振りを見せたリィン教官には少々焦りましたが。……以前から監視しているので、気づかれない距離は既に熟知しているつもりです。

 ともかく廃村があるという情報にクルトさんとユウナさんは明るくなった顔を上げ。

 

 

 

「アル、ナイスっ! このまま進めばいいの?」

「はい、恐らくは」

「……裏手に回り込んだりはできそうか?」

 

 

「高台のようなものはありましたが」

「よし、ではそちらに回り込もう――――いいか、アッシュ!」

『はっ、いいぜ。絶好のタイミングで出ていってやろうじゃねぇか』

 

 

 

 

 

 実は道を知っているのでは、というほどに的確なアッシュさんの先導が誤っていないことを確認しつつ、かつリィン教官に気づかれないように気をつけつつ進んでいくと、わたしたちが見たのは今まさに廃村の手前の空き地で<神速>および<紅の戦鬼>と戦おうとしているリィン教官たちの姿で――――。

 

 

 

「(――――リィン教官…!)」

「(ちょっ、アル落ち着いて!)」

 

 

 

 と、クラウ=ソラスを呼び出すと何故かユウナさんに止められた。

 

 

 

「(何でしょうか。どちらかといえば落ち着いているつもりですが)」

「(い、いや……うーん)」

 

「(アルティナ、とりあえず様子を見て相手の不意を突こう。とりあえずはアッシュに機甲兵で仕掛けてもらって、その後僕たちが畳み掛けるというカタチで)」

 

 

 

 確かにクルトさんの言うとおり、このまま仕掛けると人数が多すぎてリィン教官たちと上手く連携をとれない危険もあった。……不意打ち用の伏兵に徹するのが得策でしょうか。

 

 

 

「(了解です。……ステルスモードで待機しています)」

「(うん。お願いね、アル!)」

「(僕たちは機甲兵が見つからないよう、もう少し離れた場所で状況を見る)」

 

 

 

 

 

 間もなくリィン教官たちと<紅の戦鬼>、<神速>の戦いの火蓋は切って落とされ――――軍用魔獣と人形兵器も合わせて数の上では互角。

 

 

 

(……っ、これは)

 

 

 

 そして、その戦いに紛れるようにして高台に陣取ったのは<赤い星座>の狙撃兵と<鉄機隊>の隊士二人。

 

 

 

 

(――――どうやら、伏兵のようですね)

 

 

 

 ならば、とその高台を奇襲できるように移動を始めると、クルトさんたちもそれに気づいたようで高台の裏手に慎重に近づいていた。

 

 

 しかし、まだ介入するつもりはないのか傍観の構えで――――エリオットさんの支援を受けて、<重剣>の一撃が軍用魔獣を吹き飛ばし、もう一体を<妖精>が的確に息の根を止める。アルゼイドの剣が人形兵器を真っ二つにし、リィン教官は―――。

 

 

 

(……やはり、まだ……)

 

 

 

 かつての、<北方戦役>の頃の太刀筋はどこへやら。

 キレの無い太刀はあっさりと<紅の戦鬼>に弾かれ、<紅の戦鬼>はある程度距離を取ると、不満げな顔を隠そうともせずに言った。

 

 

 

 

「うーん、<重剣>も相当だし、楽士のお兄さんの支援もいいけど―――ねえ、灰色のお兄さん。どうして本気を出さないのさァ…!」

 

「させない!」

 

 

 

 見るからに凶悪な武器を振るい、リィン教官に向かって突っ込もうとする<紅の戦鬼>を阻止しようと<西風の妖精>が割って入り――――瞬間、放たれた狙撃を凄まじい直感と反射神経で避けてみせた。

 

 

 

「星座の狙撃兵か…! ―――クソが!」

「も、もしかして鉄機隊の……!?」

 

 

 <重剣>を狙うように鉄機隊の隊士から弓が放たれ、それは難なく防ぐもののこれで高台からの遠距離攻撃を受ける形となってしまう。転移と跳躍により残り二人も高台へと移り――――。

 

 

 

「――――改めて5対5……“対戦相手”も様子見みたいだし、とことん殺り合おうか?」

「まあいいでしょう。上手くいけば“起動条件”もクリアできそうですし」

 

「対戦相手…?」

「起動条件だと……?」

 

 

 

 

―――――その、一瞬の間隙。

 

 

 まさに戦いが始まる前の一瞬に、機甲兵が飛び出した。

 

 

 

『――――ハッ、もらったぜ!』

 

 

 機甲兵の振り下ろしはしかし、<紅の戦鬼>と狙撃兵にはあっけなく躱され――――しかし、高台という有利は捨てさせる。

 

 

 

「その声――――Ⅷ組のアッシュか!?」

 

「あたしたちもいます!」

「参る―――!」

 

 

 

 驚くリィン教官に応えるかのように、ユウナさんとクルトさんも鉄機隊に向かって攻撃を仕掛け。――――残った<神速>に、容赦なく、そしてアッシュさんたちのように無駄に声をかけることもせずクラウ=ソラスの腕を振り下ろす。……それでも防御されてしまうあたり、流石という他ありませんが。

 

 

 

「くっ、雛鳥ごときが―――――ぐっ……黒兎…! あなたがいましたか――――!」

「久しぶりですね、<神速>の」

 

 

 

 

「アルティナ――――クルトにユウナまで…! 駄目だ、下がっていろ…!」

「聞けません――――! 貴方は言った…! “その先”は自分で見つけろと! 父と兄の剣に憧れ、失望し、行き場を見失っていた自分に……」

 

 

 

「間違っているかもしれない――――だが、これが僕の“一步先”です!」

「クルト君……」

 

 

 

 それはきっと、合理的ではないのだろう。

 けれど、この瞬間。それは間違いでもないのだと思えたから。

 

 

 

「―――――命令違反は承知です。ですが有益な情報を入手したのでサポートに来ました。状況に応じて主体的に判断するのが特務活動という話でしたので」

「それは……」

 

 

「すみません教官、言いつけを破ってしまって。―――でも言いましたよね、君たちは、君たちの<Ⅶ組>がどういうものか見出すといいって。自信も確信も無いけど、3人で決めて、ここに来ました!」

 

 

 

「なるほど、確かに<Ⅶ組>だな」

「しかもリィンの言葉が全部ブーメランになってる」

 

 

 

 どちらかというと、リィン教官の言葉を使ってなんとか取り繕っただけではありますが。それでも、リィン教官が戦えない時こそサポートするのが、きっとパートナーで。

 ………そうありたいと、思うから。

 

 

 

 

「くっ、何を青臭く盛り上がってるんですの!?」

「あはは愉しそうでいいじゃん。――――けど、これだけ場が暖まってたらいけそうかな?」

 

 

 

 

 <紅の戦鬼>がリモコンのようなものを押して。

 

 

―――――不意に、“山”が動いたように見えた。

 

 

 

 機甲兵を、巨人機ゴライアスをも超える巨体――――その一撃に、ドラッケンが為す術無くボールのように吹き飛ばされる。

 

 

 

「……結社の<神機>。クロスベル独立国に貸与され、第五機甲師団を壊滅させた……」

 

「あはは、見事成功だね!」

「後はどこまで機能が使えるかのテストですが――――」

 

 

 

 

「リィン、行くんだね」

「ああ―――こんなものを人里に出すわけにはいかない」

 

 

 

 

 

 

「来い―――――<灰の騎神>ヴァリマール!」

 

 

 

 

「灰の騎神……久しぶりですね」

 

 

 

 あれから、北方戦役から半年以上――――。

 騎神に乗り込むリィン教官を見送り、<神速>たちの動きを警戒しつつもそれを見送る。

 

 まるで大人と子どものような体格差――――あまりにも巨大な神機に対して、それでもリィン教官の優位を疑っていなかった私にとって、その膠着は少々想定外だった。

 

 

 

「――――結社が開発した合金<クルダレゴンⅡ>。ですが、ゼムリアストーンの太刀が通らないのは妙です」

 

 

 

 文字通りに歯が立たないせいで、ヒットアンドアウェイに徹するしかなくなったリィン教官とヴァリマールに、徐々に攻撃が当たり、ダメージが蓄積されていく。

 それに対してあまりにも巨大な神機はまだまだ余裕があるようで。

 

 

「ああもう……! 流石に相手が悪いでしょ! あんなデカブツに一機じゃ無理があるわよ!」

「そうか…!」

 

 

 

 

「クルト君!?」

 

 

 

 ドラッケンに駆け寄るクルトさんを追うと、そこにはコクピットハッチを開けて這うように外に出てくるアッシュさんがいて。

 

 

 

「クラクラしやがるが――――インパクトは外した。機体のダメージは軽いはずだ。不本意だが任せた……ブチかましてこいや……!」

「ああ――――任せてくれ!」

 

 

 

 

 何かを言う暇もなく、飛び出したクルトさんは機甲兵を立ち上がらせるとそのままヴァリマールの隣に向かってあるき出した。

 

 

 

『――――助太刀します!』

『その声―――クルトか!? 下がれ、機甲兵の敵う相手じゃない!』

 

 

『百も承知です! ですが見過ごすことはできない!』

 

 

 

 

―――――不意に、<戦術リンク>が繋がった感覚があった。

 

 

 

 

 

(――――リィン教官…?)

 

 

 

 

 支援のための特殊なアーツが発動できること、<神気>の発動や霊力の充填を手助けできることが伝わってくる。わたしは、これでリィン教官をサポートできる…?

 

 

 

 

『――――小言は後だ。あのデカブツを無力化する。奇妙な力の流れを見極め、断ち切って刃を突き立てるぞ!』

『了解です――――!』

 

 

 

 

 

 

 

 そこから、あまりにも強靭な<神機>との戦いが再開された。

 積極的に前に出て攻撃を受け止めるリィン教官を支援するため、時属性アーツ<シャドウライズ>で動きを鈍らせ。その隙にクルトさんが斬りつけていく。

 

 振り回される腕の威力はあまりにも強力で、リィン教官だけでは追いつかない<神気>による回復を出来る限りサポートしていき――――。

 

 

 

『――――リィンよ、何か来る。気をつけるがいい』

『―――――リィン教官! バリア、展開します…!』

『クルト、俺の後ろに―――!』

 

 

 

 神機は腕を腰だめに構え――――パーツが展開。

 冗談のように太いビームが容赦なくリィン教官たちを埋め尽くし――――視界が閃光に染まった。

 

 

 

 

「――――――リィン教官…っ!」

 

 

 

「おぉぉぉぉおおおッ―――――<連の太刀・箒星>!」

 

 

 

 そして。閃光を切り裂き、神機の胸元に飛び込んだリィン教官の一撃がその胴体を深々と切り裂いた。間違いなく致命傷。

 

 

 

「やったぁああっ!」

「機能停止――――奇妙な力の流れも完全に無くなったみたいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――と、まぁ無事に神機を撃破したのですが。

 

 

 

 姿を見せた<猟兵王>と、その<騎神>らしき乗り物。

 目的を達成したとして彼らはあっさりと撤退し集まった第Ⅱ分校の生徒たちと廃道の人形兵器を掃討することになり――――。

 

 

 

 

 

 

 そして今、わたしたちは神機以上の強敵と相対していました。

 

 

 

 

 

 

「―――――さっきは流したが、これは明白な命令違反だぞ!?」

 

 

 

 リィンさんでもこんなに怒ることがあるんですね、と思わず現実逃避してしまうくらいの怒声。……皇女殿下たちを攫った時よりも怒っていないでしょうか…?

 

 

 

「確かに君たちには自分たちで考えろと言った――――だが、言ったはずだ! 特務活動は昨日で終了したと!」

 

 

 

 ちらり、と視線を上げるとリィンさんと眼が合い、そっと視線を下に戻す。

 色々と考えていたはずの理由付け(いいわけ)は全部吹き飛んでしまって。

 

 

 

「おまけに訓練からのエスケープと機甲兵の私的な利用…! 正規の軍人なら軍法会議ものだぞ!」

 

 

 

「………反論できません」

 

 

 

 どうしよう。

 と考えてみるものの、何も思いつかない。あれほど素晴らしい思いつきに思えていた策は終わってみればどうしようもない穴だらけで。後先なんて何も考えていないそれをどうこうすることはできず――――不意にクルトさんが口を開いた。

 

 

「――――責は自分にあります。処分は一人にしていただけると」

「って、そうじゃないでしょ!」

「責任は全員にあるかと」

 

 

 

 と、そこに居合わせた<旧Ⅶ組>の方たちが口を挟んだ。

 

 

「まあ、そのくらいにしておいてあげたら?」

「我らもかつて、命令違反は幾度もしてしまったからな」

「そだね、トールズ本校が機甲兵に襲われた時とか」

 

「うっ……」

 

「……教官?」

「自分たちの正当性を主張するつもりはありませんが……」

「ブーメラン、でしょうか」

 

 

 

 確かにリィン教官ならものすごくやりそうだった。

 命令だから、と従うくらいなら<北方戦役>でもあれだけ苦しむこともなかったでしょうし。

 

 

 

「――――それはそれ、これはこれだ。教官である以上、生徒の独断専行を評価するわけにはいかない。今回は運が良かっただけで次が無事である保証がどこにある?」

 

 

「それは……」

「……仰る通りです」

「………………」

 

 

 

 独断専行………改めて、してしまったことの重みが胸に突き刺さる。

 どうすれば良かったのだろう――――と考えれば、付いていきたいのなら最初からリィン教官が折れるまで動かないくらいの覚悟が必要だったのだろう。

 

 

 

「――――ただまあ、突入のタイミングは良かった。機甲兵登場の隙を突いて女騎士たちを下がらせたこと。倒れたアッシュの安全確認と、臨機応変な機甲兵の運用。授業と訓練の成果がちゃんと出ていたじゃないか?」

 

「あ……」

 

 

 

 気がつくと、リィン教官は苦笑としか言えない顔だったけれど、確かに微笑んでいて。

 

 

 

「そしてクルト―――助太刀、本当に助かった。君ならではのヴァンダールの剣、しかと見届けさせてもらったよ」

「………ぁ……――――はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その夜――――。

 翌朝までに反省文を出すことを命じられたわたしたちは、寝ることもできずに「これに書け」と言われた束に見える用紙に向き合っていた。

 

 

 

「……うぅ、教官の鬼……」

「まあ、今回は反省するところが多かったからね」

 

「確かに反省点は多いように思いますが……」

 

 

 

 用紙5枚とは、果たして何を書けばいいのだろうか。

 元気なクルトさんと、何やら反省文を書き慣れているような素振りのユウナさんはなんだかんだと言いながらも手早く書き上げていき。

 

 

「アル、もう終わったし手伝おうか?」

「……いえ、問題ありません。これで終わりですのでお先にどうぞ」

 

 

「ああ、お疲れ……」

「アルもあんまり悩みすぎないでねー…」

 

 

 

 

 ふらふらと二人が出ていった後。

 気づかれなかったことに安堵しつつも、わたしは机に突っ伏した。

 

 そう、これで1枚目は終わり…。

 

 

 

「――――あと4枚、ですか」

 

 

 

 とっくに冷めてしまった、砂糖とミルクがたっぷり入ったのコーヒーを口に流し込み。つらつらと今回の失態について書き連ねていく。

 

 

 

(……とはいえ、やはり事実だけ書き連ねても無理がありますね)

 

 

 考えたこととかも書いていけばいいのでしょうか。

 とにかくなんでもいいから書いてしまえ、と半ば自棄で書いていき2枚目。

 

 3枚目を半分まで書いたところでお腹が鳴り、急激に眠気が襲ってきた。

 

 

 

 

「―――――で、どこまで書けたんだ?」

「………リィン教官」

 

 

 いつの間にか美味しそうな香りが漂っていて、目の前にパンケーキが置かれている。

 自分の分も用意したらしいリィン教官は、合わせてコーヒーも置きつつ言った。

 

 

 

「……あの」

「とりあえず、冷める前に食べてくれ。反省文はその後だ」

 

 

 

 言われ、パンケーキを口に運ぶとお店の味ほどではないものの、どこか落ち着く味わいが口に広がる。僅かに口元が緩み、それを目ざとく見つけたリィン教官が笑った。

 

 

 

「……不埒ですね」

「いや、何でだ」

 

 

「…………いえ、ありがとうございます」

「ああ、どういたしまして」

 

 

 

 黙々とパンケーキを食べると、人気のないデアフリンガー号の3号車はとても静かで。ちょうど食べ終えたところで、コーヒーを飲んでいるリィン教官に言った。

 

 

 

「……その、リィン教官」

「ん、どうした?」

 

 

 

「…………………命令違反をしてしまい、申し訳ありませんでした」

 

 

 

 

 “あの時”は色々と理由をつけてしまったものの、どうにもそれは無理があって。“有益な情報を手に入れたので”というのは方便なのだからそれも当然だった。

 

 

 

 

「アルティナ、あのな――――」

 

「………ですが、リィン教官。わたしは……リィン教官のサポートを“したい”と、そう思いました。お願いします、どうすれば教官のサポートをさせてくださいますか」

 

 

 

 

 どうすれば、置いていかないでもらえますか――――。

 リィン教官はわずかに驚いたような素振りを見せたものの、わずかに瞑目してから呟いた。

 

 

 

「(そう、か……)」

「……リィン、教官?」

 

 

「ふぅ。分かった、考えておく。アルティナももう今日は寝ていいぞ」

「……あの、まだ反省文が終わっていないのですが」

 

 

 

「――――5枚渡して「これに書け」と言ったが、「全部やれ」とは言ってないからな」

「……………やはり、リィン教官は不埒ですね。ご馳走様です」

 

 

 

 

 なんだか、せっかく色々と感謝していたのに台無しにされた気分です。

 リィン教官に白い目を向けるものの、教官は平然とした顔で頷いた。

 

 

 

 

「ああ、夜更かししすぎないようにな」

「――――いえ、リィン教官の罰で眠らせてもらえなかった、と説明しますので心配は無用かと」

 

 

 

「いや、心配しかないんだが。……おやすみ、アルティナ」

「………はい、おやすみなさい。リィン教官」

 

 

 

 

 

 

 ”次”はきっと、貴方にサポートを認めてもらえますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









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