SCHOOL IDOL IS DEAD   作:joyful42

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まだ2話目なんですが、今の所モブのアイドルとおじさんしか出て来てませんね。
ラブライブ!は画面に見切れている本物のモブ以外男性キャラが出てこない事で知られていますが、私はおじさんが活躍する作品が大好きなので、どうやってもおじさんを出さざるを得ませんでした。
ラブライブ!でおじさんなんか見たくないっていう人は、申し訳ございません。もう少し我慢してください。序章が終わったら可愛い女の子達が活躍します。おじさんも引き続き出ます。








第2話 決勝大会

 席に着くと、すぐに神原が隣の席へやってきた。

 

「先生、何をしていたんですか!もうとっくに始まってますよ!」

 

 悪い悪いと手でジェスチャーをし、神原にも席につくように促した。正面を見据える。巨大なドーム球場はスタンドも、ステージ以外のグラウンドも、観客達で埋め尽くされていた。その中で私達の席はステージの正面。野球の試合を行う時は、記者席として利用されている部分で、中々の特等席だった。

 

 やがて照明が落とされると、その観客達の熱気は大きなうねりとなって会場を包んだ。ぱっと舞台上が明るくなり、数名の女の子達が飛び出してくる。会場中から歓声が上がった。

 

「今、何組目かね?」

 

 そう尋ねると神原はペラペラと手元のパンフレットをめくる。

 

「7組目ですね。彼女たちを入れて残り4組です。」

 

「そうか。」

 

 しばらく舞台上の彼女たちを眺めてみた。客席は時折大きな声を出して盛り上がっている。1曲目が終わると、リーダーらしき娘が話し始め、そのままメンバーの自己紹介が始まった。

 

「しかし、今年も客席は大入り満員だね。」

 

 もう一度スタンドを見渡しながらそう言う。

 

「さっき公園を歩いてきたがドームの周りはほとんど人が居なかったし、スクールアイドルブームもそろそろ陰りが見えてきたんじゃないかと思っていたんだがね。」

 

「何を言ってるんですか、スクールアイドル人気は未だ衰える兆しを見せませんよ!この文化は決してブームや一過性の物では無い、もう完全にこの国に根付いているんです。」

 

 そう熱弁を奮う神原の胸には出版社の社員証。彼は私が記事を書いているアイドル雑誌の編集員だった。歳は30歳程で若さと仕事熱心さに関しては私も一目置いているのではあるが……

 

「それにしても球場の外も、中のコンコースも、人が居なさ過ぎてびっくりだったよ。」

 

「当り前じゃないですか、もう3時間の前にライブは始まってるんですよ。こんな時間に来るのは先生くらいなもんですよ。」

 

「そういう事じゃなくてだなあ……」

 

 また面倒くさい議論になりそうだと頭を掻きむしる。

 

「出演するのは10組。それ以外にオープニングアクトや表彰式に出るグループもいるはずだろ?それだけ色んなファンが集まってるんだから、お目当てのグループ以外の出番の時に、コンコースでアイドル談義に花を咲かすファンが沢山居たっていいだろ。それが君の言う、文化っていう奴じゃないのかね?」

 

 ステージ上のグループから目を離さずにそう言うと、神原がきょとんとした顔でこっちを見るのが目の端に映った。

 

「最後まで見なきゃ、出ているアイドル達に失礼じゃないですか。」

 

 ステージ上のアイドルのダンスに合わせて、会場の端から端までがペンライトを熱心に振っていた。

 

 

 

 7組目のグループの出番が終わった頃、神原が再び話しかけてきた。

 

「先生、その……ご覧になられていない6組の情報、後で僕の方でまとめてお渡ししましょうか?」

 

「なんで?」

 

「なんでって、当然今大会も総括レポート記事を先生に書いて頂きたいので、半分以上も見ていないのは困るんじゃないですか?」

 

「まあ君がわざわざまとめてくれるって言うんだったら読んで参考にしない事も無いがね、特に必要は無いよ。」

 

 神原が困惑している。

 

「しかし、それならばどうやって記事を?」

 

「今回の記事は別に決勝大会に絞った物では無かっただろ?今年のラブライブ!大会全体の総括記事だ。」

 

「その通りです。……あえて全国大会を取り上げないという事でしょうか?」

 

「まあ、そうなるだろうね。」

 

「いや、わかります。先生ほど全国津々浦々のスクールアイドルに精通していて、その上丁寧に取材を重ねるお方なら、あえて敗者である地区予選レベルのグループにクローズアップした記事でも十分に読み応えのある物に仕上がると思っております。しかし……」

 

「しかし?」

 

「総括記事である以上、決勝大会を丸まる取り上げないというのは……読者からしても腑に落ちないのではないでしょうか?」

 

「じゃあ……」

 

 またふっと会場の照明が落とされる。そろそろ8組目の出番のようだった。

 

「君は最初から見ていてどうだった?私の見ていない6組の中で、記事になりそうな面白い事は起こったかね?」

 

「そりゃあもう!」

 

 神原が顔を輝かせる。

 

「1組目のpeace!は関西地区代表のグループですね。明るい曲が多くて、出番順は抽選ですが、トップバッターにぴったりでした。3組目のグリーンアップルは東北地区代表のグループで、とにかくダンスがキレッキレで圧巻でした。他にも……」

 

「そうじゃない。」

 

 神原の言葉を遮る。

 

「peace!は関西のグループだけあってメンバーが元気で面白い。だから楽曲にもそれが投影されてアップテンポでノリのいい曲が多い。グリーンアップルは芸能科のある仙台の私学のグループで、徹底的に鍛えられたパフォーマンス力が売りだ。そんな事わざわざ今日この場に来なくても、動画サイトに上がっている各グループのMVや地区予選の動画を見れば誰でもわかる。」

 

 また会場が完成に包まれた。8組目のグループが登場し、さっそく1曲目を歌い始める。

 

「そうではなくて、今日ここで起こった、ここに来なければ知り得ない事はあったかと聞いているんだ。例えば、前評判の高くないグループがどんどんと周りの観客を巻き込んで大きな盛り上がりを作って行ったり、何らかのメッセージを孕んだセットリストで勝負をかけに来ていたり、音響トラブルがあってそれを必死にリカバリーしようとしているのが見えたり。それから……」

 

 8組目のグループを見る。とてもアイドルらしい衣装を身に纏った少女たちが、とてもアイドルらしい曲を歌い踊っていた。

 

「……予定調和をぶち壊すグループが現れたり。」

 

 曲がサビに入り、会場全体の盛り上がりが増した。観客達の声援は良く揃っており、ドームの天井や壁に反響して伝わってくる。私の話を聞きながら、神原もグループのパフォーマンスに見入っている事が分かった。

 

「確かに……そこまで注意深く見れていたわけではないので、先生のおっしゃるような面白い事があったのかどうかはわかりません。でも……」

 

「でも?」

 

「どのグループも個性豊かで、アイドル雑誌の編集マンの前に一スクールアイドルファンとして、この決勝大会を見れて良かったと感じています。」

 

「個性豊か……か」

 

 曲が終わり、少女たちが舞台の中央に並んだ。観客の拍手にメンバーの一人がありがとうございまーす!と返している。

 

「私には全て、同じように見えるがね。」

 

 隣で神原がえっ?と小さく声を上げたのが分かった。私はそれ以上何も言わず、また舞台上に集中する事にした。

 

「私たち、東海地区代表、静岡県から来ました、浦の星女学院高校スクールアイドル、Aqoursです!」

 

 そうグループ名を名乗った少女たちは、他のグループと同じようにメンバーの自己紹介を始めた。

 

 

 

 


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