Fate/Corruption Justic 作:らららい
無限の剣に赤い地面、大きい歯車が地面と同じ色をした空に浮かんでいるだけの殺風景な世界に、剣と剣がぶつかり合い金属音が響き渡る。
一撃
二撃
三撃
近くで見てきた2人が、殺しあっている。
私はそれを、見ていることしかできなかった。
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頭が痛い。理由は解っていた。アーチャーの攻撃を受け止める際に頭の中に誰かの記憶が流れ込んでくるのだ。内側から膨れ上がってくるようなその痛みを無視して、俺はアーチャーと剣を交じらわせていた。といっても、アーチャーの攻撃を防ぐことくらいしかできていないのだが。
「この世界はッ!貴様が抱いた理想ッ!その果ての世界だッ!」
こいつが何を言っているのかわからない。否、分かりたくない。けれど拒もうとも記憶は流れ込んできて、フラッシュバックのように目の前にその光景が浮かび上がってくる。
正義の為に悪を裁き続けた男。
テロリストに怯える市民の為に、テロリストの拠点を襲撃した。
戦争で苦しむ多くの国民の為に、兵士を皆殺しにした。
飢餓を訴える住人の為に、食物を独占している富豪を殺した。
殺して、殺して、殺して、そして…………………………………………………………殺された。
頭からその記憶を叩きだそうとする。多の為に少を殺すなど、あってはならない。顔をしかめて、アーチャーに斬りかかるのだが、アーチャーは俺のそんな顔を見て
「どうやら貴様も見たようだな。そのドブを飲んだような表情からよくわかる」
そして、そのまま俺を弾き飛ばし
「それが貴様の末路だ。正義の味方を夢見て、理想を追い続けた。だが、その先に行き着く所は地獄なんだよ!」
剣がぶつかり、記憶が流れ込んでくる。
知りもしないはずの記憶。
知っている記憶。
体験したことのない感覚。
何度も味わった体感。
所々で、既視感に似たような感覚に襲われた。
俺は、アーチャーの真名を何となくだが予測していた。だが、それは…認めたくないものだった。
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衛宮君と、アーチャーが戦っている。止めなくては、絶対にどちらかが死んでしまうだろう。
だが、私にはその勇気が湧いてこなかった。身動き一つ取れないどころか、声すら出せない。
親しい者達が戦っているから?違う。あまりにも想いが篭っているアーチャーの剣幕に、怯んでしまったのだ。
それでも、その戦いを何とかしたくて、動こうとしない体を動かそうとし、震えようとしない声帯を震わせようと
「やあ、赤いマスター。アーチャーとシロウは戦ってる?」
唐突に現れたくすんだ金髪の男は、私の肩に手を置くと顎に手を当てながら2人の戦いを見始めた。
「せ、セイバー…………」
規格外の英雄は、衛宮君とアーチャーの戦いを一瞥すると、
「ねえ、赤いマスター。なんでアーチャーがシロウを殺すのに執着しているのか、気にならない?」
ニヤニヤしながら、私にそう言ってきた。
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もう、限界に近かった。
葛木との戦いでほぼほぼ魔力が尽きていたのを、なんとか誤魔化しながら戦ってきたが、今持っている剣を壊されてしまったら、次の剣を作り出せるか分からない。だが、アーチャーにとってそんな事は自らにとってプラスに働く事でしかなく、攻撃の手を早めていき
「貴様がそれを認めないと言うのなら!現実を突きつけてやろう」
怒鳴るように言った。
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「その理由はねぇ、アーチャーの真名が分かれば自ずと解ってくるものだよ」
セイバーは悪魔の囁きのようにそう言う。
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「俺の名前は!」
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「アーチャーの真名は…」
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「「衛宮 士郎だ」」
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「ッ!!」
それは、もっとも認めたくない真実だった。
つまり、この男は、俺が正義の味方を追い続けた先の存在だと言うのだ。
相手のことを悪人だと断定して、なんの会話もすることなく殺す。たしかに、アーチャーは殺した数の数十倍の人々を救ったのだろう。そして、束の間の安寧をその地にもたらしたのだ。顔も知らない悪人の犠牲の上にある安寧を。
一番嫌なのは、その理論に少し納得してしまっている事だ。
ならば、正義の味方には敵を救うことはできないのか。かつて、切嗣が言っていた言葉を思い出した。
『正義の味方っていうのは、とんでもないエゴイストなんだ』
正義の味方は、自らが正義と決めた者以外は守らない。そう、言っていた。それを聞いた時には、それが当たり前のことだと思っていた。
それが普通なのだと。だが、いざ目の当たりにすると、その認識が甘かったのを実感する。ただ憧れるだけでは決して分からない事だ。
それならば、切嗣はいったいどれほど……
自分の中の『正義の味方』の像が、揺らいでくる。
そして、迷いの篭る剣が強い訳がなく。俺の剣はアーチャーが振るう一撃の前に粉砕し、アーチャーの一撃は俺の剣とともに俺の体も切り裂いた。
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「なっ……」
予想だにしない答えだった。
アーチャーが……衛宮君?言われてみれば、たしかにそれらしき面影はあった。ふとした仕草だったり、その瞳だったり……本当に、言われてみれば、だが。
「ほんとにほんと、彼はシロウの行き着く可能性の一つだよ」
セイバーは、HAHAHAと笑いながらそう言った。けれど、なぜ自分を殺そうとするのだろうか。悶々と考えていると、戦いに動きがあった。アーチャーの剣が、シロウを切り裂いたのだ。
「ッ!!」
私にかかっていた拘束は取れた。手も動く、声も出せる。私は、すぐさま手を構えてガントを
「ダメだよぉ〜彼らの戦いに手を出しちゃ」
セイバーは、私の魔術を遮った。
「なんで!?あのままじゃ衛宮君……」
私の問いかけに対して、セイバーはニヤニヤ笑いを消さずに肩を組んで来た。そして真っ直ぐにシロウを見つめると、見続けてこう言った。
「これで死んだら、その時はその時だよ。ま、十中八九死んでしまうだろうけどね」
こいつは、今なんと言った?自らのマスターが死ぬ事に対し、なんでここまで冷徹になれるのか。それも、ほぼほぼ死ぬとわかっていながら。
私は目を剥いてセイバーを睨みつける。
「あんたは……なんで、そんなに…………」
目の前の男は、ニヤニヤ笑いを消して、何かを期待しているように笑いながらこう答えた。
「僕はね、nonsenseが好きなんだよ」
その双眸は仮面のせいで見えないが、なんとなく目を輝かせているように感じる。それ程までに、言葉に熱がこもっていた。
「ピンチになったら先祖の力が使えるようになる、死んだと思ったら時を止められるようになる、怒りで潜在パワーが爆発する、仲間が助けにやってくる、弱さを受け入れてそれを強さにする、そんな、
何を、言っているのだろう。そんな超個人的な要望の為に、衛宮君を命の危機にさらしているのか。それも、ありえない要望の為に。
ゾッとした。この男は、どこまでいっても私が知っているサーヴァントとは違うのだ。令呪は効かず、ステータスは化け物で、挙げ句の果てには己がマスターの事を暇潰しのTVドラマと同じ扱いをしている。
セイバーは、私が感じた恐怖に気づかずに
「さぁ、見せておくれよ。シロウ」
衛宮君に向かってそう呟いた。
寝ぼけて削除していたので、投稿し直しました。
この話は、書いてて色々と考えさせられる内容でしたね。
今後も応援、よろしくお願いします