Fate/Corruption Justic 作:らららい
後数話で終わるかと思うと、嬉しいと同時に寂しいと思います。
アーチャーの放った一撃は俺の防御をすり抜け、俺の体を切り裂いた。俺はその衝撃で転倒し、戦っていたのが丘の上だったので後ろに大きく転がり落ちてしまった。
立ち上がることができない。かろうじて意識を保っていることがやっとだったが、それすらも限界に近づき……………
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夢を見た。
だが、それを夢と言っていいのかどうかは分からなかった。目に入ってくるのは、焼けた街と崩れた家。所々では火の手が上がっているという、地獄をそのまま体現したような風景だったのだから。
ここはどこで、一体なんなのか。記憶が朦朧としている。この景色を見たことがあるという事だけは確かなのだが、一体いつのことだったか思い出せない。もしかしたら、見てすらいないのかもしれない。
そんな夢の中で歩いていると、二つの人影を見つけた。一つは子供で、フラフラと地獄を歩いている。もう一つは、うなだれながら座る白髪の男。俺は、なんとなく白髪の男に話しかけた。
「おい、どうしたんだ?」
男は、俺を一瞥すると再びうなだれた。
「ただ、疲れただけだよ」
男の声は、擦り切れてポッキリと折れそうなほどに脆い声だった。
「いやなに。悟ってしまっただけだよ。所詮俺は憧れから生まれた存在。自分から零れ落ちた感情などなく、それ故にどれだけ救っても、それは所詮偽善に過ぎない。その救おうという感情ですら、自分のものではないのだから」
納得はしてしまった。だが、それと同時に疑問も感じた。この矛盾した物が両立しながら、俺は彼の話を聞く。
「救う術も知らず、救う者すらおらず、ただ救ったという結果を欲した。自分よりも他人の幸せを願うなど、ただのおとぎ話だ。破綻している。なのに、そんな夢でしか生きることができなかったから、俺は地獄に落ちたんだよ」
思わず、1歩、2歩と近づいた。そして、3歩目を踏み出した時、一気に意識が鮮明になった。記憶が、はっきりと思い出せる。
自分の物も、自分で無い物も。
そして、
彼の考えは、確かに正しい。俺は爺さんに憧れた。あの生き方に、あの表情に、あの夢に憧れた。多分、俺も彼と同じ道を辿ってしまうのだろう。たとえ疑問を感じていても、先に待つのが地獄だとわかっていたとしても、衛宮士郎は止まれない。なぜなら、この夢が衛宮士郎そのものだから。
その時、何かが俺の中を通り過ぎていった。その何かは、俺を通り過ぎるたびに記憶をもたらしていき、彼を慰めるように彼の周りに漂っている。
その記憶は、
テロリストに怯えていた市民は、彼の活躍に涙を流し歓喜していた。
戦争に苦しんでいた国民は、戦争の終結による平和を謳歌していた。
飢餓を訴える住民は、自分たちの命の恩人である彼に感謝していた。
自分が殺した人達を見ている今の彼には、気づくことができない事実だ。
ああ、そうか。俺が
それを自覚すると共に、自分が自分で思っているよりも汚い存在だと気づき、苦笑する。
俺は、彼の周りに集まっている何か達に彼を任せ、もう一人の人影に向かっていった。
覚悟はできた。俺は人を救うという道を、夢を、諦めることはできない。ならば、覚悟を決めなければいけない。
人を殺す覚悟ではなく、必ず全てを救うという覚悟を。
彼ではなし得なかった偉業を果たすという決意を。
「クソッ!頼む。お願いだから……」
もう一人の人影は既になく、あるのは男が涙を流しながら瓦礫をどかしているところだった。俺はその男に近づき
「………手伝うよ」
瓦礫を一緒にどかした。男は全く反応せずに瓦礫をどかし続ける。
祈り、願い、救い、赦し、男が求めているのはそれだった。それを求めて、瓦礫の下に生まれているであろう誰かを救い出そうとしているのだ。
瓦礫はみるみると減っていき、幼い男の子が顔を出す。
「ああ、よかった。本当に………ありがとう」
根底にあるのは憧れであり、願いだ。
最初に俺から溺れ落ちたのは自分を救った男への憧れ、切嗣から零れ落ちたのはこの地獄を覆して欲しいという願いだった。その2つが、俺の根底にある。
「…………」
彼の嬉しそうな顔を見て、間違ってなどいないと思った。
たとえどんな動機だろうと、人を救いたいという気持ちが間違いのはずがないのだから。
俺は、ここを離れて歩き出し、丘を登っていく。だんだんと霧が出てきて濃くなってきたが、歩を止めることはない。そして、その霧を抜けるとそこには、黄金に輝く剣があった。
夢に出てきた剣。恐らく俺は、本来ならこの剣に関係した英雄を呼び出していたのだろう。そうなっていたら、こうはならなかっただろうなと笑い、剣の柄に手を触れ、一気に引き抜く。
その瞬間、霧が晴れ渡り、
衛宮君が斬られた数秒後、隣の男が急にピクリと体を震わせた。
そしてその男は、ここらの底から嬉しそうな表情———クリスマスにプレゼントを渡された子供のような表情で
「HAHAHA!来たね、