とある方の誕生日祝いの為に書きました。
「司令官、今日は司令官の誕生日らしいじゃないか」
「確かに、そうだが………急にどうした?」
とある昼下がりの執務室。
本日の秘書艦である響は俺の頬をつつきながら、不意にそんなことを呟いた。
「どうして早く言ってくれなかったんだい? そうと知っていれば、私が御馳走を作ったのに」
「いや、単純に忘れてたのもあるが……そういうのは自分から言うものじゃないだろ」
俺はそんな響の行動を放置しつつ、書類を書き進める。
反応を示しさない俺に飽きたのか、響は頬から手を離した。
「じゃあ、私は御馳走作ってくるよ」
彼女は手に持っていた書類を全て俺の机に投げ捨てると、そそくさとドアへ向かっていった。
完璧な職務放棄だ。止めなければならない。
「……待て、秘書艦の仕事をしろ」
「……司令官は、私のような小さくて可愛い女の子の手料理、食べたくないのかい?」
「まずは仕事が先だ」
「じゃあ、三十代目前で年齢イコール彼女いない歴の独身で、さらには彼女を作れない程のワーカーホリックな司令官は、可愛い女の子が自分の為に一生懸命に努力して作り上げた美味しいご飯を食べたくない、ということでいいのかい?」
「…………」
──結局、彼女は職務を放棄した。
◇◆◇◆◇◆◇
高かった日も既に沈み、辺りが静寂に包まれ始めた頃。
俺は響の作った
彼女は椅子に座ってじっとこちらを見つめている。
「…………」
「…………」
何か言いたげな目をこちらへ向けている。何か変なところがあるだろうか。
そう不安になって、服装の状況を確認する。
ボタンはしっかりと全て閉じられているし、社会の窓も閉じている。
なんら問題はないだろう。
「司令官」
「なんだ?」
「一つ聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」
「別に構わんぞ。なんだ?」
「その……」
響は手で手を弄りながら、一瞬目を逸らした。
だが、すぐにこちらへ向き直ると、ゆっくりと息を吸ってから口を開いた。
「……私の料理、美味しかった?」
──この時、俺はとっさに言葉が出せなかった。
作ってしまった間に耐え切れず、彼女は言葉を続けた。
「……美味しくなかったかな」
その時の彼女の表情は、とても不安気で。普段の彼女からは想像も出来ないようなモヤに包まれているようだった。
俺は彼女の元へ歩み寄り、彼女と同じ目線になるまでしゃがんだ。
「いや、凄い美味かったぞ。ありがとう」
「……本当かい?」
「ああ! また今度作ってほしいくらいだな」
俺が感想を伝えると、彼女の周りのモヤが徐々に晴れていく。
やがて、彼女から笑みが零れた。
「それは……良かった」
◇◆◇◆◇◆◇
「ところで司令官」
「なんだ?」
「ケーキもあるんだけど……食べるかい?」
「ケーキか。折角だし、食べたい気分だ」
「じゃあ、今から作ってくるね。待ってて」
「え? あ、おい、待て! 仕事しろ!」