Sword Art Online For Dark Souls 作:心折れた男
どちらにせよ私は彼女が堪らなく好きだよ。
いやぁ、ご愛好本当にありがとうございます皆様、今回は、『この物語』のキリト君が、はじまりで既に病みを見せていたのか、その『真実』を。
そして、『灰として、不死人であったころの』シンダーの一片の『真実』が、この話に出てくることでしょう。
【卑怯者の予感...
立ち止まるな!】
深夜の時間帯、19層には一寸先すらも透視し難い、濃い霧が立ち込める。
一帯は墓場、墓場、墓場...深みの聖堂外の墓場地帯を彷彿とさせるその場に巣食う敵達も、骸骨戦士といったものが多々。
聖堂やカーサスの地下墓に住み着く二刀や大剣の墓守達とは、その骸骨戦士の技量が圧倒的に違い、比べ物にならないほど戦いやすくもあるが、何分数の多さが厄介だ。
しかし、その場に立ち込める暗い悪『霧』が晴れた時。
そこに待つものは、きっと美しい平等な太陽の輝きなのだろう...
シンダーが19層に辿り着いたのは、キリト、アスナが『真実』の一片に直面する少し前、そこへと向かって歩みを進めている時だ。
普通ならば杞憂と切り捨ててもいい今回の件。
それ程の技術と強さを二人は兼ね備えているのだから。
だが、生憎と今日は『普通』ではない。
悍ましい何か、それも、この霧中の平穏で一際異彩に感じる、狂った殺気。
面としてなくても感じられる五感と六感の鋭さは、本当の戦いをもがく程に経た彼だからこそなのだが。
慣れている彼の中ですら、ここまでに狂気を孕んだ存在は有数であり。
更にシンダーの足運びは俊足に、しかし足取りは重く。
彼も知っていた、否、知識としては知らなくとも、『不死人』の枠を外れた温情を持つ彼の本能が知っていた。
もし、その時が来れば『殺さねば』、他の者達が死ぬ。
それは、記憶も残らないかつての最果て、あったのかどうかも定かではない夢の奥地に見た、どこかの神殿で、数々の人を切り殺したショーテル使いの暗殺者のように。
少しずつ、少しずつ。
恐れるのは自身の身ではなく、キリトやアスナ、シリカ、ディアベルといった友人達が、そんな者達の手によって無念の死を遂げること。
それだけが、『光』を得た、得てしまった為に臆病となった彼にとって最も恐ろしかったのだ。
亡者を、獣を、神を、そして悪魔を屠りて末路を憂う。
それこそ、彼の方が狂気の怪物であろう、と。
しかし、彼は怪物にはなりきれない、望まずして生まれた忌みの英雄なのだから。
その頃、事の本末、真実の一片を知った黒の剣士は対峙する。
目的の人では断じてない。
『あるもの』を巡っておきてしまった、人のサガともいえる、醜く、そして悲しい事件に関わる人物達でもなく。
重々しい一撃を手慣れた剣捌きでいなし、弾き飛ばすと、そのまま無防備な状態で惚けた、『要人の二人』を背へとし、暗闇の夢中であるにもかかわらず、先を見据えて剣を構える。
そして、その隣には『閃光』の名を持つ茶髪の少女、アスナ。
彼等は強い。
そして、史実とは違えどキリトの『黒の剣士』としての名は、基本ソロ、時々パーティもできる屈指の強者としての名となり、敵対するならば名に違わず恐れるはずだ。
勝ち目の薄い殺害を、『奴等』は好まない筈。
「ラフィン・コフィン...!」
戦気を強烈に強めるキリト。
殺気をぶつけられて平然とするような気狂いでは断じてない、純粋な好青年である故に、絶対に守ろうとする姿勢。
どこまでも清々しく、澄んでいる剣捌き。
このまま、きっと黒の剣士と、閃光の少女に引くだろうと思われるこの展開で。
「来ると思ってたぜ...久し振りだな、オイ...」
キリトに先制の一撃を弾かれた男が、サッと霧の内側へと紛れ込んだのと共に。
奴は、現れた。
後のラフィン・コフィンの大騒動の、そしてこの組織の全ての元凶。
表情がほとんど読めない紺色のフードを見に纏い、膝上までの丈のポンチョを着た、頰に傷のある背高の男。
黒手袋に覆われる手には、まるで鉈のような『剣』。
その武器の本質を。
そして、それを振るう男の正体を、キリトは知っている。
目を見開き、剣の切っ先を震わせ、理解してなお寒気のする存在。
「PoH...!?」
「初めて会ったのはいつだったかなぁ...随分と名を上げたもんじゃねぇかよ?ええ?黒の剣士さんよぉ」
「キリト君、この人の事を知ってるの!?」
その男から放たれる異様なオーラに守勢の構えを取りつつ、キリトへと問い掛けをする。
苦渋に塗れた面持ちで答えるキリトの胸の内は、さまざまなドス黒いものが渦を巻いていた。
「...こいつは...レッドギルド『ラフィン・コフィン』のリーダーその人だ...!」
「!?な、なんでそんな人間がこんなところに...」
本当に、本当に嬉しそうに彼の驚愕に歪む顔を見て喜びの表情を見せる、PoHと呼ばれたフードの男。
彼の頭部に位置するアイコンの色は、『オレンジ』。
「いやぁ、探したぜ...お前が出張って来たって聞いて、きっと此処に来るって予想した俺は間違っちゃいなかったよ...」
「まぁ、来なきゃこんなチンケな殺人依頼なんて俺が来る価値も無かったんだがな」
そこにあるのは狂気というのにも生温い、壊れた人格者のあるがままの姿。
そう、シンダーの勘が騒々しく警笛を鳴らしていた存在は、『この男』だったのだ。
だが、今回の『感動の再会』の意味は、ただの面合わせに留まらない。
彼に震えを生じた意味は、また別の場所にある。
それは、『史実』にない、『暗い魂』の物語が邂逅するパラレルワールドとして書き換えられる際に、歪みとして生じてしまった、はじまりの街での痛々しい記憶。
死、死、死、その最中に見た、そして、そうなりたくないと少年として、人としてあるべき恐れにより起こしてしまった、悪魔の世界の破片の現れ。
「いやぁ、お前ならそうするって分かっててもなぁ、やっぱりいざ目にしてみるとお前もイカれてるよなぁ」
「性懲りも無く素直に人助けってかぁ?お笑いだぜ、一層で既に人を殺してるってのに今度は人を守る為だって?」
「お前も俺達と同じで、所詮PKをする『殺人者』に過ぎないってのになぁ!」
その欠片はいつか、普通の果物の内側に、腐敗した果物を潜ませておけば全てが腐ってしまうかのように。
純粋で真っ直ぐな好青年を、心というものの内部から汚染する。
これが、キリトが一層の焚き火で当たっていた時に疲れ切った顔をしていた真の理由。
『史実』で殺人ギルド『ラフィン・コフィン』の殲滅作戦が起こり、はじめての殺人を起こすよりも何ヶ月も前から、彼はその狂気に苛まれ続けてきたのだ。
『史実』よりも強く、そして更に注意深い。
そして、誰かを守る為の強さを求める。
自らのスタイルを歪めてまで強さを求めた彼は、ただ強くあるためにそうしたのか?
否、しかしその理由は...あまりに酷い、真実の過去であった。
「キリト君が...人を殺した?」
あまりに予想外のことを言われ、困惑するアスナの気持ちも当たり前。
傍目、そして関わった者は更に、彼の本質が善に連なるということを理解できる筈。
そんな彼が殺人などと、あまりに奇想天外な妄言のレベル。
優しく、そして強く、彼女自身に気軽な雰囲気で接してくれたキリトを信頼していた彼女の頭の中は、今世紀最大といっても過言ではない混乱に達していた。
「あ、あんたも人殺しなのか...」
怯え竦んでいた守られる側の存在も、その相手が敵ならば恐れるのもまた当然。
一度死ねばそれっきり、騙して悪いがで許されるようなものではない。
遊戯であるが、一歩外れれば死の遊戯なのだ。
終わりを前にして、もう何も信じられない男の目は、すっかり曇ってしまっていた。
「違う!俺はアイツとは...!人殺しなんかじゃない!」
悩み、なんとか押し留めた蓋を、PoHが最悪の形で引き剥がす。
痛みよりも、苦しみの方がきっと大きいに違いない。
自身を悔い、嘆きもがく今のキリトの姿は、大きな隙。
今の状況で動かないほど、彼と出会えて最高の喜びを見せた、狂気の殺意を持ったPoHの望みが、生易しいはずもなく。
ただ、向かうべくして起こる喜びの光景を目前に、絶対に一撃が入るそのタイミング、暗霧に隠れて切りかかる。
「...な、しまっ」
ああ、彼は人として、『獣』として不純物が多過ぎたのだ。
歪みに震え、自身の罪悪感に囚われる...そんな良心の持ち主だからこそ、にっくき奴に気に入られてしまったのだろう。
そんな少年の言葉など続かない、さぁ惨殺の時だ。
あまりにも一瞬、閃光の少女の反応速度をもってしても助けるには至らない。
そして、既に刃の切っ先はキリトの首元へと吸い寄せられて——
「があああああああッ!!!」
なかった。
確実に人ならば殺せる一撃の横から割ってきた、咆哮と共に放たれた唐突な重打。
「うぉっ...!?」
メキリ、という鈍い音と共に、悪魔のギロチンはあらぬ方向へと弾き飛ばされ、付近の木へと向かい、『もしキリトに刃が入っていれば』のIfを物語るかのように、その幹を、皮肉にも美しく両断した。
しかしPoHもまた、恐るべき技量の持ち主。
止まることない愛剣の遠心力に振り回されかけるも、そのまま地面へと、慣性を利用した一撃で食い込ませることで自身の不意の隙を極力潰す。
しかし、『横槍』は止まらない。
鉄の擦れる金属音を残して、霧の中の2m近い人影が、両手で『大剣』を持ち、なんと。
「ぐるぁぁぁぁッ!!」
獣、それも狼が獲物に食らいつくかのような凶暴な吠え声を敵対者にぶつけながら、前方へと鋭く跳躍、なんという技術か、そのまま剣を縦に、そして兜割のように振り下ろしながら回転。
何百と回転するわけでないとはいえ、まさにその光景は、PoHがギロチンを扱うならば、これはさながら円状に回転する鋸の如く。
とっさに愛剣で防御を試みるPoH、しかしその一つ一つの刃が恐ろしく重く、その上息どころか瞬く間ですら、次の刃が、獣のように食らいついてくるのだ。
「ちぃ!」
舌打ちしながら、この現状があまりにも不味いことを予想する。
そのうちこのままで自身が起こることは、彼にとっては芳しく無いのだ。
その判断を下したPoHの一手は、彼しか出来ないような『押し通し』。
無理矢理に筋力でごり押し、愛剣を傾け、自身の斜め後ろへといなした!
しかし『人影』もまたさることながら、避けられたと見るに直ぐにその回転を中断、地面を縦に引き裂きながらも強引に中断すると、一瞬霧の中にその姿を隠す。
それもほんの一瞬、消えたかと思えば、その中からはねとぶようにPoHの元へ、左手にある一本の短剣を突き刺さんとくらいかかる!
矢継ぎ早の乱撃にスタミナを奪われたPoH、しかしかの有名な殺人ギルドの主がこの程度で折れるならば務まりはしない。
確実に避け、その上で回避の勢いと共に愛剣の叩きつけを放てるように、むしろ前方へと駆け出したのだ!
彼の目論見は見事成功、短剣は深々と、相手の喉笛ではなく地面へと食らいついた。
「余計な横槍いれてんじゃねぇよ!雑魚がぁッ!!」
苛立ちと共に怒声を吐き出し、狙いの剛腕からなる振り下ろしが決まるか、そう付近の誰もが思ったその時!
霧に隠された、人影の右手の『特大』の剣が強烈な火花を立てる!
なんと避けられた勢いのままに、彼は全身を駒のように回転させ、その遠心力と共に特大剣で薙ぎ払いを行なったのだ!
(...!こ、コイツ...!?)
殺害、一撃の全てが致命的な強力さを持ち、かつ急所を常に狙い続け、その上に、今の短剣の一打の正体を知る。
(わざと!わざとコイツは俺に避けさせやがった!これを狙うためだけに!)
まんまと罠にはまったと知ったPoHのバックステップの速さは、しがみつくかのような俊敏さで薙ぎ払いの範囲から逃げ去るが、それでも人影が振るう狼の爪牙の猛撃は止むことなどない。
何度も、何度も。
回避された先を見越しているかのような連続の大回転。
それは、まさしく『殺す為』、それ以外の何も求めぬ程の獰猛さ。
その上で、どんな場面に至ろうと、機転を繰り出し、『敵対者の死』への一手へ向かう余裕すら可能にする『冷静さ』に、とてつもなく早い武器の入れ替え、そして使い熟し。
ようやくその嵐が一時的に止み、安全策なのだろう、離れた高い木の枝に着地するPoH。
だが、彼の口元は憎らしげな笑みではなく。
キリトに出逢った時と同じ程に、幸せと喜悦に満ちた満面の笑みを浮かべていた!
そんな彼が、目線を霧の中、揺らぐ影の中より出でる『男』へと言葉を投げかける。
「く...くくく...クハハハハ!本当に今日はツイてるぜ!こんな奴に出逢えるなんてリアルでも滅多にありゃあしねぇだろうよ!」
「まさか、まさかテメェがこんなところにお出ましになるとはなぁ!」
「ボロ雑巾な見た目だと思いきゃ、テメェの振るう剣は!」
「キリトよりも!いや、もしかすると俺よりも!」
「人として腐った、よっぽどの人殺しだ!【青の騎士】ィ!」
地を踏む。
ゆっくりと。
しかし、しっかりと。
「貴公のような狂人は珍しいよ、私ですらも滅多にお目にかかれないほどに」
いつのまにか彼の両手には、肩に担ぐようにして、燃える炎のような装飾が刃のない方の剣身に施された、大きく湾曲した、大曲剣『流刑人の大刀』。
元の持ち主、ファランの番人の一人が持っていた武器の一つ、そして、元の持ち主の罪過の証。
それを引き継ぎ、目の前にいる『怪物』を裁かんと、刃先に纏わり付いた赤黒い血が、霧の少し晴れた隙間から煌めく月夜の光を反射する。
その美しくも狂った青白い閃きは、『裁き』を冠する剣のように。
「なぁ、狂人を殺すのはキリトらのような子供の役目ではない」
「そういう、あまりにも穢れた『罪過』を背負うのは——」
「お前たちのように穢れた狂人である、私のような人物が担うべきだろう?」
ならば、振るおう。
かつての人が行なった通りに。
残虐で、理不尽な。
さぁ、『処刑』の時だ。
今明かされる衝撃の真じ、2ゥ!
キリト君が一話で既に病み落ちしかけてた理由の一つが大量の死、ということでしたが、六割ほどは『人を殺した』でした!
...ああ、勿論彼が普通の人を殺すわけないじゃないですか。
それはもう、『ラフィン・コフィン殲滅戦』の時でもない限りは。
キリトくんが嫌いかと問われるかもしれませんが、むしろ私はかっこよくて好きです。
あとPoHさんもクレイジーサイコホモですけど好きです。
キリトくんは純粋なさわやかなイケメンさで好き、PoHさんは本当にイカれてるんだな、って思えて好きと、これまた私の守備範囲(not意味深)が知れてしまいますね。
さてはて、ようやくこの物語という風にきめられたシンダーお父さん。
今回振るったのは『ファラン』に由縁のある武器三種。
前方へと垂直に回転切りを、狼のような勢いで行う、深淵歩きアルトリウスゆかりの銀剣、狼騎士の大剣。
二刀流として使う奇妙な形をした短剣と特大剣で構成された、短剣を軸に、駒のようにして踊るように左右に薙ぎ払い、最後に縦へ斬り下ろすファランの大剣、これは一話に出てましたね。
そして、ファランの城壁を守りやがる人型の敵であるファランの番人が振り回す武器の一つ、特大最重量の流刑人の大刀。
放浪者で、傭兵みたいなもんで、かつ『処刑』、『SAOの深淵』を狩る、となればこれらの武器しかあり得ないでしょう。
鎌?なに?聞こえない
さて...かなり顕著にオリジナルとは異なってきた物語。
六話時点で最高にサイコホモ状態のPoHさんを前に、シンダーは打倒できるのか!
【覚悟はできたか?
この先、勝利の時間だ】
さて。
デモンズの破片を感じた方は何人いるだろうか。
実はちょっとだけ散りばめていたりします。
理由?はて....