Sword Art Online For Dark Souls   作:心折れた男

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本日二つ目となります。
時間軸は、第一層ボスにカチコミする前、二千人が犠牲になるゲーム開始から一ヶ月の最中です。

それでは【この先、新話があるぞ】





再び燃ゆる

そこに広がるのは見渡す限りの草原。

 

吐息のように優しく薫る風に踊る野の花。

 

暖かい日差しが天から射しこみ、一帯に過ごす温厚そうな生物達に、等しく温もりを分けていく。

 

 

その光景こそ、まさに平和の象徴のようなもの。

 

この姿は、きっと邪な手が入らねば、永劫続く空間だったに違いない。

 

 

だが、今日だけは、その光景を侵す異質なものが、草原に堂々と鎮座していた。

 

 

他世界から守る為、もしくは他世界の存在から奪う為。

古来より起こる、別世界の境から零れ落ちた炎。

 

いつしか消え去るであろう朧げな灯火自身が、肉体が持っていた意思すら無視して、すぐ様自らの存在を保つ為本能的に自らの外殻を構築し、かつて身体を喪う前、その時の姿を生み出したのだ。

 

 

 

 

 

それは人型をしていて、だが服装は、古ぼけた茶の布といっても過言ではないコートで隠れ布のように覆った、月日が経ち風化すら見える、粗末な鎧を纏っている。

 

まるで、その姿は戦いに敗れ、落ちぶれた騎士のよう。

 

差し詰め、逃亡騎士とでも言えばいいだろうか。

 

 

仰向けの体勢で、肉体を手にした『何者か』。

 

 

だが、なぜか起き上がる様子もなく、かの者は、静かに草むらに身を委ね、果てなき天津を仰いでいた。

 

視線の先には、眩しく照る母の光、その光源。

 

 

——かの豪放磊落な騎士が、心より求めたモノ。

 

 

「...ああ...眩しい、眩しい...な」

 

 

小さく湧き出る水のように、優しく、そして大人びた男の声が、錆びた兜の奥から溢れていく。

 

かつての友を彷彿とさせる光が、本来の意味で、男の意識を目覚めさせたのだ。

 

 

——また、眠る事が出来なかったのだな、私は。

 

あまりにも、あまりにも早い目覚めだ。

 

 

力無く身体を惚けさせ、過去に感じた事もない優しい温もりに身を委ねながらも、意識自体を途切れさせることは、まず無い。

 

終わらぬ日々など、疾うに何度も味わっている。

 

終わりそうで終わらない、そんな絶望すら感じる感覚も、最早彼からすれば慣れきっているようだ。

 

 

何度も時代を越え、死と別れを繰り返した末の『燃え殻』、それが彼の真実なのだから。

 

 

故に、今現在の状況を、重い身体を持ち上げ、立とうとする途中にもずっと考えていた。

 

微妙な使い方ではあるが、まぁ、常に考えることの出来る能力は、汎用性のある技能だということだけは記載しておこう。

 

 

——ここは、この時代は一体何なのだろうか。

 

ここまでに晴れ渡った陽射しは、かのアノール・ロンドでも目にしたことはない。

 

そしてあの腐った世界では、こんなにも平和な景色が果たして存在していたかすら定かではないだろう。

 

 

益々理解できない、とばかりに思考につられ、首をかしげるのと共に、古い鎧が鉄の擦れる音を、のどかな空間に響かせる。

 

 

——そして、先程から左上辺りの視界に入っている、謎の形をした、透明な棒はなんだろうか。

 

どこぞのべたつく何かとは思えない、整った見た目。

 

本当に彫っているのかわからないほど、丁寧に刻まれたよくわからないいくつかの文字に、これまた謎の緑の棒。

 

正直、何一つこの時間軸の事を理解していないのではないか。

 

 

 

余談だが、彼が疑問に思う要因の一つ、謎の透明棒であるが、これは、この世界特有の『HPバー』と言われるものである。

 

そこにはレベル、HP残量、そして『その人の名前』が記載されているのだが、彼はそれらの文字を読む事が出来ない。

 

残念ながら、FP(フォーカスポイント)やスタミナのゲージ、そして誓約などと言ったものは表示されていないが。

 

 

 

いくらでも湧き出てくる癖に、全く解明することのできない疑問に脳を支配されながら、持ち物の確認をする男。

 

かの審判者の場を前に、明らかに危険が薫るというのにエスト瓶を空っけつにして突っ込むような不死人も珍しいはずである。

 

勿論彼は、その珍種には含まれておらず、手際よく懐から、何処に入るのかというほどの大量の持ち物を、獲物達には不相応な野原に散りばめた。

 

 

彼の生命線とも言えるエスト瓶、灰瓶。

 

いつかの日に不死街の頼れる盗人から少々引かれるほどに大人買いした投げナイフや火炎瓶等のトレジャー御用達の品々を無数に。

 

いくつか余らせた禊石の欠片から原盤。

 

何故かこれ以上くべられなくなったり、強化できなくなった時にしかたなく持っていたエストのかけら、不死の遺骨。

 

大切に持っていた割には最後まで使わなかった女神の祝福、秘めた祝福。

 

それに、これまた使い損ねた数々の丸薬。

 

...ある騎士から譲り受けた、至高の酒。

 

そして、静かに燃える炎のようなもの、『ソウル』。

 

いくらでも並べられる光景から、アイテムならば他にも沢山買い込んでいたり、拾っていたりしたらしい。

 

因みに、名のあるソウルを並べる時は、丁重に扱いながらも優しく置いていたのは別の話。

 

法王の魂だけは、割と杜撰であったが。

 

 

 

 

次に出てくるのは、渡ってきた時代の鍛冶屋それぞれに鍛えてもらった、秘蔵の武器の数々。

 

ただのダガーから、相手の攻撃を弾き飛ばすのに特化した短剣、一般的な鍔付き両刃、大斧。

 

本当に何処から湧いて出て来るのだろうか。

 

 

一通り出し終えた後、また謎の異空間とも言える懐に出したものをしまい、目標もなく歩き出しながらも、やはり彼の思考回路はフル回転だった。

 

 

 

——ある、全て火継ぎを終えたあの時のままだった。

 

大切にしていた彼等のソウルまで。

 

やはり解せない。

 

そもそも、ここの付近が平和ということしかわからない。

 

 

 

「訳がわからん」

 

 

 

吐き捨てるような溜息を一つしながら、彼は何処へ行くともなく、果ての見えない平原を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて時は経ち、彼にはあまりにも見慣れたあの時間に。

 

そう、夜である。

 

 

光は彼の左手にある松明のみ、他は一寸先も見えやしない真っ暗闇。

 

昼間のなごやかさはどこへやら、今は殺意が彼方此方から向けられている戦場へと早変わり。

 

 

彼からすればいつも味わっていた日常のようなものだが、やはり好ましいものではないらしい。

 

松明を持っていない右手には、静かな対抗の反射行動を示すかのように、小振りな短剣が握られていた。

 

 

名を、鎧貫き。

 

扱い易く、かつ弱々しかったロスリック時代で早期に拾い愛着のあったものである、彼の使い慣れた獲物の一つである。

 

 

「...!」

 

 

そして、その愛武器を、何も見えない暗闇に、力一杯差し込んだ。

 

 

先から獣らしい理性なき悲鳴。

 

何かに突き刺さる、小気味良い感触。

 

松明に照らされて現れたのは、果たして小振りな大きさの猪であった。

 

 

見た目なら、何処にでもいそうな獣だと独り言ちそうになるが、いつもは飛び散るモノがないことに、ほんの一瞬たってから気付く。

 

そうだ、『血』が出ない。

 

 

生命の証である、赤いソレが。

 

なおも短剣特有の連撃の手を休めず切り裂く最中。

 

見てしまった。

 

 

「!?なんだこれは...!?」

 

 

相手の傷口が、肉が裂け、割れた赤に塗れたものではない、と。

 

今までに見たことのない、白と薄赤が混じった謎でしかない敵の肉。

 

 

それはどのような時代にも見たことはなく、奇妙という他ないものだった。

 

 

だが幸いなことに、この獣自体の強さは、前に目覚めた墓所の亡者よりも弱々しいことを理解し、違和感はあるものの手早く葬る為に、敵を裂いて間もない短剣を握り込み、構え。

 

そのまま、獣の頭部に、鋭利な一突きを繰り出した。

 

 

デカデカと居座る聖堂騎士の大楯すら貫く、『貫通突き』である。

 

瀕死ともいえるふらついた獣が避けられるはずもなく、直撃、貫通。

 

感触で彼が『この敵の命は尽きた』、そう理解したその時。

 

 

敵の身体が、白竜の尻尾から出てくる剣の光もびっくりな程度に発光し——爆ぜた。

 

それも、肉片などが飛び散るグロテスクなものではなく、身体がガラスの破片のように砕け散り、やがてその欠片が空気に還ったのだ。

 

 

少々呆気に取られつつ、返り血のない短剣を懐に収めながらも、今にも彼の頭は発狂で千近いダメージを受けそうなほどに困惑。

 

 

「...なんなのだ、これは?」

 

 

明らかに現実離れし過ぎである。

 

そして、今恐らく死んだであろう生物のソウルは、びた一文すら手に入らず。

 

もはや夢でも見ているのではないか、仕方がないとはいえ、そう思いすらしていた。

 

今まで巡ってきた時代とはまた違う、現実離れ。

 

 

 

いっそ疑問に嬲られるより、頭を大槌で砕かれた方が、不死人たる彼にとっては理解し易く、幸せだっただろう。

 

 

だが、彼の受難はまだ終わらない。

 

謎の心地よい音が響いたと思うと、彼の眼の前に、解せない文字がまた刻まれた透明の板が現れたのだ!

 

...言葉すら発する気にならず、とてつもなく重い息を吐きながら、左上の透明棒と同じく無視を決め込もうとする男だった。

 

 

そんなこんな、恐らく小一時間は歩いただろうか。

 

先程と同種であろう猪達に出会えば、いつもやっていた通りに効率良く、鎧貫きを巧みに捌き身体を砕いてやり、暗闇を歩き続ける。

 

使命を背負わされていた時よりも無味乾燥な時間に、次第に彼はこう思い始めていた。

 

 

——もしや、これがどこぞの教徒達が謳っていた地獄ではないのか?

 

 

 

しかし、まさしく光のない暗闇を彷徨う最中、彼は目にした!

 

「...おお...」

 

薄くだが、燃ゆる赤い光。

 

神の時代を切り拓き、今なお多くの不死人達に愛されている、あの光が。

 

 

炎だ。

 

 

今まで人っ子一人すら見なかった真っ暗な世界で、ようやく見つけた希望の光。

 

そこにもしかすると、人らしい人がいるかもしれない。

 

いや、話せるならば獣や悪魔、鴉人の類であっても構わない。

 

 

 

次の瞬間から、彼の足取りはうってかわって軽やかであった。

 

 

 

 




ゲーム仕様を唐突に突きつけられた不死人困惑の巻。

こんな風にネタ込みですが、真面目な話にはしたいです。

HPバーなどなどが読めないというのは兎も角、装備やアイテム具現のアイテムストレージの経由無し。
勿論理由はあります。

全身の装備は、ダクソ3でファランエリアに迷わされた人ならわかる逃亡騎士。

そして、名前を出さない表記にも、理由アリ。...バレるかもしれない。

文章は恐らくモチベとかのため、3000文ちょいが多いかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。

マイペースです、すみません。




【良い奴の予感...】
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