Sword Art Online For Dark Souls   作:心折れた男

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ねんがん の せんとうびょうしゃ を なしとげるぞ !!

決戦前の夜、灰がディアベルさんに伝えた意思。

それは、一体このストーリーにどんな影響を齎すのでしょうか。

【この先、冷静さが必要だ。
そして、致命の一撃万歳!】



開鑿

一つの小軍隊となった、人々を統率する青髪の男。

 

彼の背後には今正に、この悪夢を切り拓こうとする強き者達がいる。

 

剣、槍、槌、細剣、盾、大盾。

 

それら、人々が生み出した殺戮の叡智をもって、人の仇となる敵を討ち果たす為に。

 

 

その中には、勿論のことキリト、マントの少女も存在する。

 

そして、『彼等』がいつ危機に陥っても最大限のサポートができるよう、懐に『ある武器』を潜めていた。

 

今回の彼、そしてそのパーティである二人に言い渡された役目は、目の前に立ち塞がる強大な獣を打倒する事ではない。

 

いわば、主陣に騎馬が駆け、確実に大将を討ち取る為の道作りに励むための歩兵。

 

露払いである。

 

 

だが果たして、『シンダー』の役目はそれだけで済むだろうか。

 

前日の夜、本人しか知らない筈であった『真実』を聞き出し、『ベータテスター』というものの理解を最低限している彼だけは、また別の価値観で見る必要を強いられるだろう。

 

それは、何故か。

 

今はまだ、暗殺者のように影を潜めたシンダー自身にしかわからない。

 

 

 

 

 

 

剣と盾を構え、倒すべき敵へと刃を向ける。

 

それは宣戦布告。

 

 

自身たちと、相手どちらかの命が潰えるまで、惨たらしい死を起こすための火蓋。

 

だが、この一手だけでは、切られることはない。

 

本当にこの地獄が始まるのは...

 

 

 

「突撃ィィィィィィッッッッ!!!!」

 

 

 

——統率者の言葉による幕上げの咆哮が鳴り響いた、今だ。

 

 

 

全ての人が、獣が、目の前の敵を討ち、殺さんと突き進み、やがて第一刀の斬撃を、殿として襲いかかる兵士の一匹に叩き込むのは、あの『ベータテスター』を批判していた男だった。

 

あの時の邪な発言とは打って変わり、勇ましく猛る一撃は、後陣の者達の士気を更に鼓舞する。

 

ここでは、口など不要。

 

誠に要されるのは、勝つ為の努力だ。

 

その為に、獣よりもより『獣』らしく。

 

 

自分に生えた牙を使い、爪で手繰り寄せ、目で見切り、その四肢を使って齧り付く。

 

恥など捨てろ、勝つ事が全てにおいて意味を持つ。

 

負ければ全てが水の泡よりも無価値な『灰』へと還るのだから。

 

 

火花が散り、怒声は上がる。

 

ところどころで鉄と硬いものが打ち合う子気味良い音楽を背景として、彼等は正に『血に酔う』。

 

人は元より獣でしかない。

 

目の前に立ち塞がる化け物と、それを打倒さんとする勇者達は、いわば同種なのだ。

 

 

ならば更に、化け物達に勇者が敵わない道理など無い!

 

 

そんな戦乱の中、その熱を本能が忘却してしまった灰の影は、死角への一撃を得意とする侍女の短剣を片手に、二つの指輪を用いて、味方にも気付かれない程に隠密とし、無音で走り、駆け、通り過ぎ様に邪魔な兵士達の肉体を少しずつ、しかし深々と裂いて回っていた。

 

その指輪とは、足音を無くしてしまう『静かな竜印の指輪』。

 

そして、回避行動時、着用者の存在を最大限まで薄くする『カーサスの乳環』だ。

 

 

しかし、武器自体を強めるものではない。

 

なのに、一瞬の出来事のみで、油断した隙をつくとはいえ相手のHPゲージを大きく削ぎ取っていく技力は、正に熟練者のソレ。

 

強力な一撃と疾風のような切り込みを持って伏せていくキリトの剣術、マントの少女の凄まじい細剣の高速攻撃のような、『姿として完成した』技のように見映えするものでは無いとは言え、確実に勝利への貢献とする裏方の役目を、彼は買って出たのだ。

 

その指輪などの、この世界では浮くような存在も、乱闘の中では表にはとても出にくい事も利用した策。

 

更に、そこの敵を足止めする役割を持つ者達の一撃を避けられそうになれば、足止めの斬撃を入れたりと。

 

勿論のこと一瞬でもパーティの二人に危機が及べば、それを影ながら敵のチャンスを悉く潰していく。

 

勝てる勝負をより損なう事ないように。

 

もしこれがいっぱしの騎士の装備ならば名折れとでも言えるが、彼は『逃亡騎士』の灰。

 

そんなプライドも、正々堂々としてやる義理も無い。

 

 

 

何十回、いや何百と切り結んだであろう彼が、また一頭と敵の死を目の当たりにしていたその時、本陣からは獣の叫びが上がる。

 

大勢の阻害防衛、攻撃が来ない安置からは絶え間無く攻撃を叩き込まれ続けたかの獣の統率者は、HPバーも残り一本、その上で既に瀕死となっていた。

 

 

——ここだ、ここが一番...危険なのだ。

 

 

シンダーは、身を以て知っている。

 

 

手負いの獣の恐ろしさを。

 

否、死に瀕した者達の執念深さを。

 

 

怪物もまた、死を恐れるがゆえに、その終わりに近づくとなれば、絶対に落ちてなるものかと必死で足掻く。

 

それが、どこまでも恐ろしい。

 

 

彼の思考の通り、倒すべき奴は吠え、彼等を絶対に殺さんと殺害の意思を剥き出しにして、高々と威圧する!

 

情報通りとでも言うべきか、かの怪物が斧とバックラーを放り捨て、全員が身を震わせ、さらに敵対の意思を強めた...その時だった。

 

 

「下がれ!俺が...」

 

 

統率者——ディアベルが、剣を構え、まさかの指揮者の突撃を図ったのだ!

 

しかし、シンダーから見えるその目には、『迷い』がある。

 

 

「...っ!俺が前に出る!」

 

 

突如宣言した言葉とは裏腹に、『本当にこれが自分にとって良い選択なのか?』。

 

そんな疑問を、『ソードスキル』の残滓を残して敵へと駆けながら抱いているような。

 

 

それで済めば、彼の一撃が想定通りに入れば、たしかに終わっていた。

 

シンダーが感じるこの違和感も、所詮杞憂で済んだだろう。

 

 

しかし、この世は、あの地獄の世界とはいかぬとは言えど、人に対して十二分に無慈悲。

 

 

怪物が背に持ち、入れ替えた武器は...振り回して切りつける事に長ける曲刀ではなかった。

 

その手にあるのは、斬りつけるのではなく、無残に叩き潰し、肉片のみへと変えることに特化した形状をした、野太刀だった。

 

 

「なっ...」

 

 

『自分が倒す目的』に盲目となっていなかった為か、ディアベルの目は、たしかに情報外の事柄を焼き付ける。

 

それに彼よりもいち早く気付いたキリトもまた、必死となり、誰かの死を避けるために強く、そして切実に叫んだ。

 

 

「ダメだ!!全力に後ろで跳べぇぇぇっっ!!」

 

 

それと同時に、確実に殺さんとばかりに跳躍した獣も、撹乱の為に何度も素早く柱と柱を蹴り、渡り、縦横無尽に跳ね回る。

 

その素早さは、まるで電光石火。

 

 

 

ディアベルの耳、目、その他を操る為の五感。

 

そして、迫り来る筈の『死』を感知した第六感の警笛。

 

それがあったからこそ、遠くの彼の言葉が、この絶望的な危機で、真に聴こえたのだろうか。

 

 

「...くっ!」

 

 

反射的にスピードを奪う要となる武器と盾を即座に投げ出し、スタミナの限り、固い地を蹴り飛ばし、その場から言葉通り全力で逃走した!

 

そしてそれと紙一重の差を空けて、死のギロチンが、いま彼がいたところへと振り下ろされ、強烈な爆風を撒き散らす!

 

 

「...!」

 

 

そこにあった武具は微塵の如く砕かれ、瞬く間に粒子へと還るほどの一撃。

 

軽く付近のものを弾き飛ばすその風圧を、空中で回避姿勢をとるディアベルが防ぐことはまず出来ず呑まれて無防備になってしまう。

 

肺の空気が全て今の攻防で奪い取られ、もはや言葉すら発することもできない大きな隙。

 

 

それを手負いの獣が逃すはずも無い!

 

 

——地面にディアベルが叩きつけられ、その瞬間に少し遅れた確実な死を彼が迎えんとする。

 

 

(ああ、ここまでか)

 

 

来たるべき終わりを前に、彼はあまりに穏やかだった。

 

 

(...きっと、LAを自分勝手に狙った末の、当たり前のことなんだろう)

 

(その油断が、この結果を生んだ)

 

 

そんな彼の前に浮かぶ走馬灯は、昨日の夜にいた、ある男が残した言葉。

 

 

 

 

 

——貴公。

 

私には貴公が狙うものも分からぬし、『ベータテスター』が具体的になんなのかなどは知らん。

 

知らん、が。

 

貴公は、今私達を束ねる『統率者』。

 

自らの保身や欲は構わん、だが——

 

 

 

 

 

(『死を恐れよ』、か)

 

 

あの時、キリトが叫んでいなければ。

 

あの時、男に彼自身が求めている真の目的に揺らぎを生まれなければ。

 

 

自身ははじめの一撃で死んでいただろう。

 

 

むしろ、この数秒生きれたのは、自分にとって最高の結果なのではないのか...

 

だが。

 

 

最期を見定めた老人のように、目を閉じるディアベル。

 

 

(今俺が死んで...βテスターへの評判は、彼等の立場はどうなるだろうか)

 

(ラストアタックボーナス。その存在が明らかになればきっと...俺が悪評を買うだけでなく...)

 

(...不甲斐ない、リーダーだったというのに、この体たらくなんて)

 

 

後悔、そして愚かな行為に走った自分を呪う。

 

 

 

(...死にたくない)

 

(俺が死んで、βテスターのみんなに迷惑をかけるなんて、絶対に嫌だ)

 

 

 

吹き飛ばされながらも身体を動かそうとするが、慣性の拘束を受けている今、助かるはずもなく。

 

 

(くそ)

 

 

ふと周囲を見てみれば、此方に駆け出す黒髪の少年...キリトが見えた。

 

ああ、遺言を残すことさえ許されず、慈悲なく、『硬いものと硬いものが擦れ合う強烈な音』と火花、そして巻き起こる土煙が巻き起こる。

 

 

 

「ディアベルはんッッ!!」

 

「ディアベルーーッ!」

 

 

 

橙髪の男...キバオウと、キリトの悲鳴が静寂を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、ほんの一瞬、弾け飛んだ土の煙幕が霧散したそこにあったのは。

 

 

 

——態勢を大きく後ろに仰け反るように崩した怪物。

 

 

 

 

 

「あ、貴方...は...」

 

 

 

 

唖然とした目で、視界にある光景を見つめるディアベル。

 

 

 

 

 

 

 

そして、短剣を払った構えで、膝をつくシンダーの姿であった。

 

 

 

 

その手に握られる武器、それは『パリングダガー』と呼ばれた、あまりに使いにくい限定された使用法に特化した短剣。

 

それの真価は切り、突く為のものではない。

 

相手の攻撃を、その特徴的な刃でもって受け流すことである。

 

その構造、驚異的な技量と筋力、それに加えてゲーム内で培ったSTRとDEXを最大限活用して、極限まで相手の究極の致命をいなし、無効化したのだ!

 

 

 

 

「...がっ、あ」

 

 

 

 

だが、あれ程の一撃を防いで、ただで済むはずがない。

 

普通ならばあれは、あまりにも強力な為に、防ぐには重すぎる一撃(ガード・パリィ不可攻撃)の筈だったものを、無理矢理に押し倒したのだ。

 

この世界でいうならば、『心意技』にすら及ぶ程の力技。

 

捨て身とも言えるその行動の負荷は、彼のHPバーを悠々と赤の範囲まで押し削り、その要となった短剣自身の刃に罅を入れるまでに傷付くのも至極当然。

 

 

 

そのせいで、最大のチャンスの今でも追撃を入れることがままならなく、膝をつくしかない。

 

このままではきっと奴に態勢を立て直され、二人とも無残に殺されるしかないだろう。

 

 

 

しかし、この場にいるのは、今剣の一撃を叩き込めるのは、戦闘不可の彼とディアベルを除いても一人いる!

 

 

そう、ディアベルを助ける為に今なお走って行く片手の剣士、キリトだ!

 

 

ディアベルが生き残る為に稼いだ数秒、そしてシンダーが全てをかけた渾身の『戦技』、パリィ。

 

それらのまぐれが合わさり、この最高の機会が訪れたのだ!

 

 

 

「今だ!キリトッ!」

 

「ああッ!」

 

 

 

たかが数日、されど数日。

 

命を預けた『友』の絆。

 

その連携。

 

視線を合わせれば、共にするべきことの一切を言葉のように語りかける。

 

声で激励すれば、その意思を相棒へと受け渡す。

 

 

互いに信じている二人の観察眼、戦術、そしてセンスが算出した戦法...此方に向かって跳躍したキリトを前に、シンダーは残った力を全て使い切り、彼を天高く舞い上げた!

 

 

 

「これで...」

 

 

 

そのまま万有引力と共に、空から兜割りの要領で——

 

 

「終わりだあああああああッ!!!」

 

 

仰け反った怪物の頭部から下半身、そして地にかけて一刀両断。

 

男二人の『致命の一撃』を前に、HPを遂に切らした怪物の肉体は、彼等が望んだ通り、美しく、かつ壮大に砕け、破裂する!

 

 

その幻想的な光景を、ゆっくり、そして、歓喜に溢れながら周囲の人々は噛み締めて行く。

 

 

 

 

 

 

「や...」

 

 

 

 

 

 

 

誰が言い始めたか、満ち足りた感動の呟きが響くのと共に、それは共鳴。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

 

 

 

 

ボスの空間を完全に支配する最高の想いが、今、ここの全員に希望として燃え盛っていた。

 

それは、薪の王が遺した、熱く、そして力強い残り火の灼熱のように。

 

 

 

 

 

 

——第一層ボス、イルファング・ザ・コボルド・ロード。

 

ラストアタック、キリト。

 

 

...死者、ゼロ。

 

 

 

 




ようやく一層ボスかぁ...長く苦しい戦いだった、NKT。

この物語中では、ディアベルさんが姑息な武器変えによる強襲を冷静に見極められたこと、そして最後まで諦めなかったこと、不死人の左腕の犠牲によって死を免れた為、原作よりも間違いなくキリトへのヘイトは少ないでしょう。

アスナさんの見せ場が少し減ってしまったのが少し心残り。

彼女の出番を食った訳ではないとはいえ、これは少々主人公の使い方を誤ったが、なんて...私的には満足なのですが。

あとは...今回イルシールにいる透明になる敵のように暗躍したり、強引に致死ダメージを受けながらパリィをこなした主人公ですが、見ての通り無双などとはかけ離れているので、そこはご注意を...他の方のように無双!ハーレム!合わせてチーレム!なんてイケてるものを書くための理力が無いので...

あとあと、お気に入り30にUA1000も本当にありがとうございます。

その上に感想やしおりなど、私の励みになっております...

では。

【ピンチの予感...
しかし、この先勇気が有効だ】
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