これをゲームと言わず何と言うか

1 / 1
人生ゲームはサイコロの出目と選択肢が命

 

人生はゲームである。

 

過去の偉人が言ったとか、恩師が言ったとか、ゲームで言ってたとか、そういうわけではないけれど。今までの短い人生でなんとなく気付かされた気がする。

 

産まれがスタート地点で、サイコロの出目によってその人の人生の進み具合は違うし、イベントも違う。小さな盤のように簡略化されたものではなく、詳細に、それも死にたくなるほどのイベントが盛り沢山ある途方もない大きな盤。

 

イベントの選択肢によっても人生は軽々変動するし、ゲームとしてはスリルがある。スリルがある分、クソみたいな人生も味わうことがあるのが欠点か。

 

人生をゲームとして過ごすなら色々なことに挑戦はしてみたいが、そう簡単にできる事でもないし、何よりやり直しがきかない。失敗したら失敗したなりの人生はあるだろうが、多くの人は失敗を恐れ、失敗の先の出来事を恐れる。だから人は失敗をしないよう考え、熟考し、時には助け合い、知恵を集め、より良い人生(ゲーム)のために最善を尽くそうとする。

 

恐れるからこそ最善を尽くせる、尽くそうとする。

 

ならば失敗を恐れることがなかったら?

 

また最初からやり直せる(コンテニューできる)と分かっていたら?

 

振り出しができる人生は、まさにゲームと言えるのではないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

嬉しいことがあった。怒りで周りに迷惑をかけたこともあった。哀しいこともあった。楽しいことも勿論あった。

裕福とは言えないけど時々贅沢できて、家族も仲が良かったり悪かったり、人付き合いはそこそこで友達もそこそこ。どこにでもいる人で、なんでもない人。

 

そのはずだった。

 

「――――――――ぅおあっ!?」

 

布団から飛び起き、辺りを見渡し、自分の身体があることを確かめる。

全身じんわりと汗をかき、次第にだらだらと汗ばむ。

机、椅子、パソコン、放り出されたバックに乱雑に置かれた私服。昨日の寝る前と変わらない状態で、()()()()()()()()()()()()()状態―――。

 

「………」

 

気持ち悪い。胸がムカムカする。冷や汗が止まらない。

スマートフォンで時間を確認すると朝の七時半、この時間だと既に家族は出勤しており今頃働く準備の途中だろう。

胸騒ぎではなく、予感がする。とてつもなく嫌な予感が。

いてもたってもいられなくなり家族に連絡するも勿論繋がらない。

 

「シャワー浴びるか…」

 

未だに止まらない冷や汗が不快なため、普段はしない朝シャワーを決行。

何故か、怪我をしていないことに違和感を覚えること以外には普通のシャワーであった。

 

用意された朝食を食べつつテレビを見ると、臨時ニュースがやっていた。それも一つや二つではなく、ほぼ全ての地上波で。

 

集団暴行事件―――聞き覚えがある、それ最近…いや、夢か? 夢でも似たような…何正夢? ウケるんだけど。

 

「やだやだ、今日は家で大人しくしてよ」

 

怖気づいたわけではない、この選択こそが正しいのだ。無駄に金を使わなくて済む。

嫌な予感がするとかそういうのではない、断じてない。

 

そう決心し家で何をして過ごすのか考えようとすると、一通の通知が。

 

『暇人遊ぶぞー』

 

友人からの通知だった。こいつも休みだったか。

 

『しょうがないにゃ~』

『おっけ、じゃあ九時にいつもの駅で。予算は多めで』

『ノリ打ちする気満々じゃないですかやだー』

『今日は勝てる気がする』

『それ負けるやつが言う台詞』

 

結局外出が決定。嫌な予感がするが仕方がない、今は勝つことにだけ集中しよう…さらば諭吉ィ!

 

身支度を終え、自転車に乗る。

駅まで約二十分、通勤・通学途中の人達を尻目にペダルを漕ぐ。

 

いつもよりも騒がしいことに気付いたのは家を出てから数分後。やけにパトカーの通りが多い。事件か事故か、いつもなら野次馬精神からSNSで調べるところだが…なんだろう、調べる気が起きない。

 

特に何があったわけではなく、集合場所に到着。友人は既に着いておりそのままギャンブルと洒落込む。

勝ったり負けたり、負けたり勝ったりを繰り返すこと六時間、互いにプラス収支で本日のギャンブルは幕を閉じた。

 

その後、友人は新作のCDが欲しいということでショッピングモールに行くこととなった。

 

それが"今回"の失敗―――選択ミスだった。

 

「トイレ行ってくるわ。出口で待ってて」

「うっす」

 

買い物も終わり、ショッピングモールから出ようとしたが友人がトイレへと旅立った。

待ち時間にアプリゲームでもしようかとスマートフォンを開こうとした瞬間、右肩に激痛が走った。

 

「は? い、あ、いってぇ!!?」

「ア"ア"ア"アアアァ"ァ"……」

 

痛い痛い痛いなんだこいつなんだこれ臭い臭いキモイヤバイ痛い熱い熱い痛―――。

 

"ソイツ"は力の限り右肩の肉を噛み千切り、喰うでもなく肉を放り捨て、今度は首筋に噛み付いてくる。

 

「がぶぇっ、ぐ、ひゅっ、お"ぁ"…」

 

激痛と呼吸困難による苦しさで徐々に意識が遠のく。

 

苦しい、痛い以外の言葉が浮かんでこない。

死ぬかもしれないなんてもんじゃない、これは間違いなく死ぬ。

 

死ぬ、死ぬ…死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死――――――。

 

 

 

 

「あ"あ"ッ!!? はっ、はっ」

 

布団から飛び起き、辺りを見渡し、自分の身体があることを確かめる。

全身じんわりと汗をかき、次第にだらだらと汗ばむ。

机、椅子、パソコン、放り出されたバックに乱雑に置かれた私服。昨日の寝る前と変わらない状態で、()()()()()()()()()()

 

「………ゆ、め? いやいや夢って…は? マジもんの悪夢じゃねえか…なんなんだよ…」

 

ありえない、ありえるはずがない。あんなリアルな…あんな残酷な…。

 

自分がデジャヴなんてものを体験するとは思わなかったが、"二回"も経験すると嫌でもその可能性に気付いてしまう。

 

「疲れてんのか…バカかよ、シャワー浴びて寝よ」

 

今は疲れてるだけ、そう考えて俺は友人の誘いも断り、家に籠った。

 

 

 

結果から言うと、また戻ってきた。

三度目の目覚めでは髪を掻きむしり、現実ではないと否定し、部屋の物に当たり散らした。

既に精神的には限界だった。ついこの前…それこそ"昨日"までこんな状態ではなかったのだ。何の因果か俺はこんな状態になってしまった。どう抗っても変わらない、どういう結末になっても変わらない、俺が何をしようと、()()()()に戻るのは変わらない。

 

人一人の人生が壊れるのに、そう時間(回数)は掛からなかった―――。

 

 

 

人生はゲームである。

 

過去の偉人が言ったとか、恩師が言ったとか、ゲームで言ってたとか、そういうわけではないけれど。今までの短い人生でなんとなく気付かされた気がする。

 

気付かされたというか、そうなってしまったというか、そう考えざる負えなかったというか…。

 

振り出しに戻る選択肢なんて、ゲームにしかない。

 

そう考えると、俺の人生は本当に…ゲームなんだろう。

 

 




続けない…


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。