ガルパン最終章が迫る中、思い立って、思い切って、書き殴ってみました。………リハビリに。

連載となるかどうかは未定。

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ガルパン 導入部(仮)

 

 

 戦場となった砂塵舞う大地は風が運んで来た誰かが流した血潮の錆びた鉄を思わせる臭いやツンと鼻を突く硝煙のそれで満ち溢れている。

 

 臭いだけではない。

 

 砂塵と共に運ばれて来るのは音もだ。

 

 呻き声や今際の悲鳴、砲塔を宙高く吹き飛ばされた戦車が奏でる轟音、ひっきりなしに鼓膜を揺さぶるのは数多の銃声や砲弾が弾着した際の爆発音。

 

 おおよそ常人ならば“通常の精神”を保っていられるのは至難の技だ。

 

 だがこの戦場に根を下ろす者達ーー戦争生活者(グリーンカラー)からすれば大した事ではない。

 

 人間は慣れるのだ。

 

 果てなき殺し合いにも。

 

 放った銃弾が敵の身体と臓腑を切り裂き血煙を巻き上げて倒れる様も。

 

 50口径の銃弾や戦車砲弾の直撃を喰らって“人間の形”を止めない程の死体が作られる瞬間を目撃したとしても。

 

 果てには女子供が犯され片端から殺されて行く様すらも。

 

 ーー彼等からすれば“極々ありふれた景色”と化している。

 

「ーー舞台の幕引きは悔いを残さず迅速に、が求められる。それは演者や観客にも共通するだろう」

 

 10名程の武装した男達に囲まれている黄色い肌色をした長身の男が低く穏やかな声で周囲を固める彼等へ同意を促すかのような事を口にした。

 

 彼等は各々、無言で首肯する。

 

 それを横目に長身の男は戦闘服のポケットからソフトパックのタバコを取り出し、慣れた様子で軽く振るうと飛び出た一本のそれのフィルターを銜えて抜き取った。

 

 すかさず傍らに侍っていた者が火が点いた年季の入ったジッポを差し出す。

 

 軽く礼を述べつつタバコへ火を点けて紫煙を燻らせると上がって来た戦況の情報を整理する。

 

 ーー我の損害軽微。

 

 ーー彼の損害甚大。

 

 ーー彼の残存戦力は包囲網からは抜け出せず狭い市街地へ押し込められたまま。

 

 ーー彼に砲迫による火力支援能力はほぼなし。加えて航空支援能力は皆無。

 

 ーー我の砲迫による火力支援は継続中。加えて近接航空支援まで残り20分。

 

 ーー彼への降伏勧告の必要性……無し。

 

 タバコを半分近くまで吸い切った彼は傍らに侍る者へ指示を下す。

 

「ーー戦車や装甲車、歩兵戦闘車を先頭に歩兵は続け。ジリジリと躙り寄れ。航空支援が終わり次第ーー鏖殺だ。蹂躙しろ」

 

 終幕を命じられた彼等は迅速に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーで、何故に俺が?」

 

 携帯を片手にベースキャンプの居室ーー天幕の中で彼はタバコを燻らせつつ組み立てられた簡易のベッドへ足を組みながら腰掛けていた。

 

 数日前に請け負った仕事は完璧に遂行し、後は帰社の為の準備に追われる筈だった。

 

 そう。“だった”のだ。

 

「ーーどうせ暇なら働け?お前…俺は一応……なに?暇してる奴は上司でも働け?…役員会の満場一致?……ハァァ…」

 

 天幕の外には警護の為に数名の武装した男達が立っているが内部から漏れ聞こえた盛大な溜め息が耳を打ち、首を傾げてしまう。

 

「ーーで、報酬は?……助成金やらから割り振られる…おいおい…雀の涙にもならんのでは?……教官まがいの仕事なら妥当?…むぅ……」

 

 タバコを灰皿の端へ軽く叩き付けて灰を落とすと再び銜える。

 

「ーーだが問題は山のようにあるぞ。まず戦車道に関して俺はほぼ無知に等しいという点なんだが……問題ない?ルールブック読め?……いや…まあそうなのだろうが……」

 

 再びの溜め息を彼は向こうの電話口に立つ相手へ向けて吐き出した。

 

「ーーだが一番の問題があるぞ。……あぁそうだ。俺があの国では凶状持ちという……身分の偽装?いつもの通り?…既に身分証明書一式準備済み?……お前…俺の退路を…」

 

 何度目になるか分からない溜め息を吐き出し、ゆるゆると頭を振りつつ彼は紫煙を細く吐き出した。

 

 やがて観念したのか心底疲れた顔でーー実際、戦闘が終わって数日しか経っていないのだがーー彼は溜め息混じりに愛煙のタバコを唇の端へ引っ掛けつつ向こうの電話口へ立つ相手に答えを告げた。

 

 通話を切り、携帯を灰皿の横へ置いた彼はゴロンと簡易のベッドへ半長靴の靴紐を解かずに仰向けとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ーー間もなく目標上空です>

 

 四発の発動機が奏でる爆音が機内にも漏れ聞こえて来る。

 

 ロードマスター兼ジャンプマスターの報告に頷いた彼は酸素マスクを装面。酸素供給を開始しながらゴーグルを下げる。

 

<ーー機内減圧開始。ーーStand up>

 

 指示で立ち上がった彼は装備している落下傘ーー主にそれを繋ぐ縛帯等ーーの点検を受けた。

 

 機へ搭乗する前に点検は受けているが念には念を入れて最後の点検となる。

 

<ーー高度センサーを設定。300mに>

 

<ーー了解>

 

<ーー数値を目安に開傘を>

 

 頷きつつ彼は親指を立てて了解を告げた。

 

 やがて機内の減圧が終わり、搭乗している機ーーC-130 ハーキュリーズの後部ハッチが開き始めた。

 

 防寒対策で保温性の高い素材を使った服を纏っているが外気に晒されると寒い。寒いがーー身体の芯まで凍えるような寒冷地で戦うよりは遥かにマシと思いつつ彼は移動を始める。

 

<ーーそれにしても既に出港してしまい目標は洋上とは…ツイていませんね>

 

<ーーこんな仕事をしているんだ。ツキなんぞには見放されて当然だろう>

 

 マスク越しのくぐもった声で軽口を言い放てば、それなりにウケたのかロードマスターが微かな笑い声を漏らした。

 

<ーーですが幸いな事に目標はデカい。猫の額ほどの広さの降下地点へ降りるのはしんどいでしょう?>

 

<ーーまぁ同意はしておこう。……そろそろか?>

 

<ーーえぇ。あと30秒>

 

 その報告に彼は首を軽く回しつつ両足を屈伸させて合図を待つ。

 

<ーー15秒>

 

 無性にタバコが吸いたくなるーーがそれは降下が済んでからだ。

 

<ーー10、9、8、7、6、5、4、3、2…>

 

 僅かに前傾姿勢で合図を待ちーー

 

<ーーGo!Go!Go!>

 

 彼は放たれた矢の如く機外へ飛び出し、空中へ身を踊らせ一直線に降下する。

 

 眼下に見えるのは広大な大海原。

 

 その洋上に浮かぶのは高度約8000mから降下しても大きく見える巨大な空母ーーの飛行甲板上にひとつの街がある学園艦。

 

 これだけ巨大ならば戦略爆撃機すらも発着艦可能だーーと彼は降下中に容赦なく顔面を叩き付ける風速の中で考えた。

 

 体感でだいぶ降下したーーヘッドダウンの姿勢を維持した状態では300km/hほどの速度で降下し続けている。

 

 そろそろだーーと降下速度を減速させる為、両手両足を広げて空気抵抗を生み出す。

 

 これで降下速度を200km/hまで減速させる。

 

 地表ーーという言葉は正しくないだろう。正しくは“甲板上”の降下地点となる学校敷地内のグラウンドがはっきりと見えて来た。

 

 飛び出したタイミングが良かったのだろう。それはほぼ真下にある。

 

 これなら姿勢を制御して滑空する必要はない。

 

 手首に巻いた高度センサーへ目を遣りーー設定した高度300mまで数秒で到達するのに気付く。

 

 タイミングを見計らい開傘索(リップコード)を引き、傘を作動させる。

 

 3秒ほど経った頃ーーおよそ8.7×4mのパラグライダータイプの落下傘が開いた。

 

 操縦索を両手に握り、滑空しつつ緩やかな降下を続けていると彼の鍛えられた両目が戦車を捉える。

 

(……あれは…自衛隊の10式戦車か?実物は初めて見たなーーところで、あのスクラップ手前のクルマはなんだ?)

 

 視線を動かせば格納庫と思しき建物の前に10名近い人間が整列しているのが見える。

 

 あそこにしようーーと降下地点を見極めた彼は操縦索を操作して近付く。

 

 ランディングまで100mほどになった頃、誰かが降下して来る彼に気付いたのか整列している者達が空を見上げ始める。

 

 静かにランディングを済ませた彼は用済みとなった落下傘を手早く手元へ引き寄せ、のし掛かりつつ空気を抜きながら折り畳むと纏っていたハーネス等の装具を脱いで落下傘の上に放り投げた。

 

 酸素マスクも外し、ヘルメットからそれをぶら下げた格好のまま纏めた落下傘を片手で掴んで引き摺りつつ整列している集団ーー呆気に取られている者達へ向かって歩き出した。

 

 

 


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