デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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もう少し暖めたかったけど我慢できねえ! 投稿だ!


進め冒険者、歌と共に

すごく、不思議なコだ。

どこでどんな物を食べて育てば、こんな風になるんだろう。

 

私がムサシに会って抱いたのは、そんなとりとめのない思考だった。

 

 

 

 

「じゃあ、あらためて、パーティリーダーを勤めることになったキリトだ。……こっちが、えっと」

「アスナ。……よろしく」

 

そういえば、彼の名前も聞かずに、こちらも名乗らずここまで一緒に行動していたのだ。

 

まがりなりにも命を救われ、パンにお風呂に、鼠さん……あんな……思い出したくも思い出させたくもないトラブルもあり……これから命を預けあって戦おうというのに、なにやら奇妙に感じる。

 

「私は飛び入りのムサシ。……決してセイレーンなんかじゃない生粋のサムライだから、そこんとこよろしく。……二人ともかわいー☆」

 

第一層フロアボス討伐戦当日。

 

不本意ながらあぶれ者パーティーを組もうとしていた私と彼……キリトの前に、一人のプレイヤーが「私も余ったからいーれーて」と、やって来た。

 

……スタイルがいい。

すらりと伸びた長い手足、メリハリの利いた体型、ゲームであるから当たり前だけど、つるりと白い肌に驚く。

きっとこれから他の女性プレイヤーと知り合っても色褪せないだろう美しさ。

 

一見歳上にも見えるが、コロコロ変わる表情がその印象を覆す。

 

謎その一、年齢不詳だ。

 

「……なんで俺がリーダーなんだよ、ムサシのが仕切るの慣れてそーだろ」

「あはは、そうは言っても、私ってばゲームビギナーだし、やっぱりキリトが適任よー」

「え、マジで!? ビギナー!?」

 

謎その二、なんか……彼とやたら親しげじゃない?

 

「そうそう、【生まれて】このかた、このソードアート・オンラインがマトモにプレイした始めてのゲームよ」

「いや、それは絶対ウソだ!」

 

私との方が過ごした時間は多いに決まってるのに、あんな気安い態度、はじめて見たし。

……まるで同性の友達同士みたい。

 

なんか、おもしろくない。

 

「あ、アスナ、さん? なんで機嫌を損ねてらっしゃるのでしょう……か?」

「知らないわよ。……機嫌悪くなんかないわよ」

「あっはっは!」

 

狼狽える彼に、そして多分私に、ムサシは豪快に笑った。

 

「……」

「んん? あ、笑ってごめんなさい、気を悪くした?」

「……いえ」

 

謎その三、彼女の所作から漂う、演技の香り。

嘘をついてる……というのとは、また違うのだ。

 

「おーい、セイレーンちゃーん、景気づけになんか歌ってくれよ!」

「そうだー! うたえー!」

「セイレーンは止めい! ……でも、よーし、リクエストには答えなきゃねー」

 

ウキウキとギターを取り出しノリよくポップな歌を(あにそん? ってやつ?)歌い出す彼女に、嘘があるとは私も思わない。

 

……声も綺麗。

リアルでは歌の練習とか、していたのかしら。

曲に馴染みのない私でも、心動かされるものがある。

 

「……いいぞー! 感動した!」

「アンコール! アンコール!」

「いや、みんな、これから出発だって! ……俺も聴きたいけどさ!」

 

場をまとめるべきナイトのディアベルさんまで巻き込んで盛り上がる臨時ライブ会場になった街外れ。

 

ふふふん、と、得意気な顔を作ったムサシは、次の曲を爪弾きながら、迷宮区の方へ歩きだした。

 

「歌いながら行きましょうか。音楽スキルが索敵スキルを阻害することが無いのは検証済みなのよねー。それに、冒険者っぽいでしょ?」

 

そう、嘘をついているのでなく、芝居がかっているんだ。

 

アップテンポの曲を奏でるムサシと、私達を囲んで進み始めるレイドの中でおもう。

 

悪いことではない。

この世界で言うのも空しい限りだけれど私も向こうでは押しも押されぬの女子校育ち。

 

女はみんな女優だってことくらいは知ってる、けど。

 

ここは、至上稀にみる異常なゲームで、牢獄で、戦場なんだ。

クラスの盛り上げ役の子みたいに、どういう神経で振る舞えるというのだろう?

 

「キリト……くん。これって普通の感じなの?」

「え? ……ごめんアスナ、なんだって?」

 

ちぐはぐチームのリーダーはなにやら考え込むのをやめて、こちらを向いてくれた。……聞き惚れていた、とは違う感じだったからいいけどね。

 

「だから、普通のゲームなら、こんな風に歌とか歌いながらボス討伐とかするのかなって」

「……どうだろう。俺はボイスチャットでプレイはしない派だったし、文字チャットでガッツリRPする方でもなかったからなぁ……」

 

それでも、と、キリトくんはレイドを見渡し、感慨深げに続ける。

 

「悪くはないよ。……うん、悪くない」

「どうして? あんまりに緊張感が足りないんじゃないかしら? 遠足じゃあるまいし」

「ガチガチに緊張して、上手くいくなら緊張するべきなんだろうけどさ、俺の経験上、ゲーム攻略なんて、ふざけてる時ほど上手くいくもんなのさ。……みんな、無理のない、いい顔してるぜ」

「……そう」

 

確かに、そうかもしれない。

緊張しすぎては上手くいくものもいかない。当たり前過ぎて、忘れていたんだな、私。

 

心底楽しそうに、歌いながら歩くムサシと、子供のように剣を振って進む【冒険者集団】を見ながら、ムサシがクラスに居てくれたら、学校生活、もっと楽しかったかな、なんて思った。

 

……ボスまで、もう少し。




……まとまった時間がもっと欲しいお……

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