デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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ばりっばりの独自解釈に独自設定です。よいこは真似しちゃダメダゼー。


一方その頃、向こうでは

「……んんっ終わったぁ」

 

偶然にも私しかいないタイミング。手を組んで伸びを一つ。

 

看護士の業務は過酷なもの。

人目のないところで、もうすぐ仕事終わりなのだ。少しくらい力を抜いても許してほしい。

 

「とはいっても、だいぶ楽チン……だけどねえ」

 

……ひとり言、増えたなぁ。クセにならないようにしないと。

 

私は元々病棟担当の看護士。患者様の対応、その御家族の対応。様々な業務に目を回すのがこの間までの仕事だった。

 

【SAO事件】

 

これのおかげと言うべきか、少しばかり今は事情が変わってきた。

 

空前絶後にして奇妙奇天烈なこの大事件に、ゲーム業界やら警察やら政治やら、日本全体が揺れているとテレビで見たけれど、病院だって負けてはいない。

 

患者がプレイしているゲームでやられたら、即座に脳を電磁パルスで焼かれて死亡する。

 

この世界初の【症例】を前に、病院としては手の施しようがないと言わざるを得ない。……ドクターの先生のメスは、金属で出来たヘルメットを破壊するようには造られていないのだ。

 

だが、SAOプレイヤーの御家族は病院に【入院】したのだから、事態が好転するものと無意識に期待してしまうのだろう。

 

担当患者がみんな意識不明の新設病棟に移された私は、目を回すことはなくなり、頭を抱えることが仕事になった。

 

「……でも」

 

ふと、患者データに検索をかける。

電子カルテの無機質な光にのった、例外の名前を呟いた。

 

「宮本、フレデリカ、さん」

 

今日、彼女を訪ねてきた二人の女性を思い出す。

 

 

 

*****

 

 

 

「宮本さん、おはようございます」

「……あ、おはようございます。……いつもありがとうございます」

 

翌日、まだ業務が始まって間もない時間帯、今日一番目のお見舞いの方は、じっと見詰めていた娘の顔から目線を外し、私に、笑顔で挨拶を返してくれた。

 

宮本フレデリカさんのお母様は、事件の日から毎日、時には旦那様を伴って欠かさずお見舞いに来る稀有な方の一人だ。

 

……最初の時期の取り乱しようが、特に酷かった方の一人でもある。

 

流石に今は落ち着かれているが、やはり拭いきれない疲労と不安が、年齢不詳の美貌に影を宿して、女の私から見てもとても……セクシーだ。

男の職員が裏で騒いでいるのも無理はない。

 

専業主婦で時間に余裕があるだけだと前に本人が言っていたが、聞けば家も近くはない。……本当に、頭が下がる。

 

「なにも異常はありませんよ。むしろ数字は健康そのものです」

「……はい」

 

一ヶ月経つ。

その間に千人単位で犠牲者が出て、微減の傾向にあり続けても無くなりはしない。

 

……本当は、家で、自分で世話をしたいのだろうと思う。

しかし、このゲームの犠牲者は一括して指定の病院に入れる規定になっているので、それは叶えられない希望だ。

もしも一般家庭で【死亡】した場合を考えれば、やむをえない対処ではあると思う。

宮本さんと違い誰一人、一度も面会に来ない方もいるくらい。切ないが、適切。

 

上の、偉い人達は動かないんじゃない。動けないんだ。そしてそれは私も宮本さんも誰もが同じ。

それだけの異常事態、それだけの異常事件。

 

「……では、失礼します。娘を、お願いいたします」

 

宮本さんは一時間ほど、なにくれとなく世話を焼き、昨日替えた花をまた替えて、静かに病室をあとにした。

 

彼女は、気づいているのだろう。……だから冷静でいられるのかも。

 

……さて、私も仕事だ。

 

 

 

*****

 

 

 

夕方頃のこと、珍しく、宮本フレデリカさんに本日二度目のお見舞いが来た。

 

「えっと、真鍋いのりです。……宮本フレデリカさんは……」

「はい。……宮本さんはこちらになります」

 

彼女の同級生らしい。

真面目な女子中学生、といった印象で、真っ直ぐな黒髪が眩しい、可愛い娘だと思った。

 

「宮本さんも、お友だちが来てくれて喜んでると思うわ。あまり、同じ学校の方のお見舞いはいらっしゃらなくて」

「あはは、先生が、どこの病院かとか、教えてくれないんですよ。フレちゃ、えっと宮本さん、友達すっごく多いから、押しかけたら迷惑だって。……私はお母さんに教えてもらって」

「……なるほど」

 

軽く談笑しながら、いのりちゃんを案内する。薄いカーテンで柔らかく遮られた西日の照らす病室で、彼女、宮本フレデリカは眠っていた。

 

「……手を、握っても、いいでしょうか」

「ええ、どうぞ」

 

こんこんと眠る……いや、今なお戦っている友人を見るいのりちゃんの表情には、哀しみはなかった。少し戸惑っているようではあるが、とても落ち着いている。

 

「……不思議なコよね」

「……え?」

 

そんな彼女に無粋にも声をかけてしまったのは、私も聞いてほしかったからかも知れない。

 

「知ってる? ナーヴギアは装着してる人のあらゆる運動命令をシャットアウトするけど、完全に完璧ってわけじゃないの」

「……そうなんですか」

「表情がね、動くことがあるのよ。顔の神経がどうのって話なんだけれど、個人差はあるし、顔を触っても向こうには感触は届かない……けど、激しい感情を感じてる時、分かっちゃうのよね。……心拍数や呼吸数も参考になるし」

「……」

 

真剣に、黙って聞いてくれる彼女に、さらに言葉を連ねていく。

 

「たまに見かける表情は、たいていは歯を食いしばってたり、悲しそうだったりするの。そりゃ囚われてるんだもの。当たり前よね。……でも」

「フレちゃんは違う、ですよね」

「……ええ、そうよ。……いつも、とても楽しそうに笑ってるのよ……」

 

いのりちゃんは、嬉しそうに微笑んだ。

 

「それがフレちゃんですから」

 

握った手を、胸に抱き寄せて。

 

「フレちゃんは負けずぎらいなんです。笑ってるフレちゃんは無敵だって、私、知ってます。……絶対に帰ってきます」

 

 

*****

 

 

なんか、手がぬくいな。

 

「ガアアァ!!」

「っとう!」

 

イルファングが放った強引な振り下ろしを転げるように回避して、もののついでとばかりに切りつける。大してダメージにはならないけどタゲを取りつづけるのが肝要なのだ。

 

かっこよく「別に倒してしまっても構わんのだろう」とか言えたらいいが、流石にそこまで歌舞いてはいない。

 

体格差、リーチの差、弱ってなお余りあるHPの差、なにより。

 

やっぱり強いなカタナ。……欲しい。

 

変幻自在でえぐい威力で、更に初見だからモーションを読めないと来たもんだ。

 

まともに立ち合ったら死ぬしかないじゃない。

 

だからピッタリと張り付くように立ち回り、強力無比なその技をそもそも使わせない。

隙ができるからこっちもソードスキルはほとんど使えないし、足元チョロチョロしてると踏み潰されそう。

 

私とボスが近すぎて、ぐるぐる位置が入れ替わるものだから、周りのプレイヤー達も手を出せないでいる。

 

……だけどね。

 

「あん、どぅ……くらぁっ☆」

「ガァッガアア!」

 

踊る、踊る。

今日はいやに調子がいい。力が漲り体が軽い。

 

観客達に見せつけるように、イルファングと踊り続けてみせる。

 

キリトとディアベルが打ち合わせを済ませ、パーティーを編成しなおすまで、私はとても楽しい時間を過ごしましたとさ。

 

……第一層、クリア!




あとはささっと締めて、一区切り。
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