デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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ようやく一区切り、やったぜ。


再スタート、再スマイル

三人の去ったあとのボス部屋には、暫しの静寂が木霊するようだった。

 

「……そろそろ、ええか」

「ああ」

 

沈黙を破りキバオウが声をあげ、ディアベルはそれに応えた。

 

目ではキバオウを見据えながら、しかし、ディアベルの心は先ほど慌ただしく去っていった三人組の事でいっぱいだった。

 

(俺は……一秒でも早く、このゲームをクリアしてやるって、そればかり考えてここまで来た。そのためには俺自身の楽しみとか好みだとかを考えるのは……不純だと、余分だと、罪ですらあると。……でも、良いのかもしれない、それも)

 

「ディアベルはん。いや、ディアベル。……ジブンはわいらを……ちゃうな、わいを騙したんやな。」

「ああ、そうだ」

 

(あんな連中が、いるんだな。この世界をゲームとして楽しみながら、それでも、だからこそ攻略に真摯で、それ故に強い。……だったら、俺だって)

 

「……あのガキどもは、なんや有耶無耶で行ってもうたけど。こっちの落とし前はどないつけてくれんねん」

「そうだな、お前には確かに悪いことをした。それは、すまない。……だが」

 

キバオウに有るのは、怒り。

そして、ディアベルの仲間、元C隊メンバー達の顔に浮かぶのは……。

 

(騙された哀しみ、まさかの事態への混乱と動揺、単純な怒りってとこか)

 

ディアベルはそれだけ把握すると目を瞑り、一瞬だけ考えをまとめあげた。

 

(攻略組からの引退、金や装備の全面提供、それに軽いリンチくらいなら受けるつもりだったさ……だけど悪いな、気が変わった)

 

ディアベルはおもむろに剣を抜き、盾を構える。

 

「うるせえよ。文句があんならかかってこい。相手になってやるからよ」

「な!?」

 

狼狽する面々に対し、青髪の騎士は憑き物が落ちたような晴れやかな笑顔で言い放つ。

 

「大人しくしてるつもりだったが気が変わったよ。……今まで、ノウハウと能力があるからにはこのゲームを攻略する責任があると思って、俺なりの最適解を選んできた。そして、それをこれからも貫き通す。……俺よりも上手くできる自信のあるやつはそれを【デュエル】で証明してみろ! もしも負けたらソイツの下についてやる! 絶対服従を誓ってやるよ!」

 

紳士的な態度を旨としていたディアベルとは思えない発言に、キバオウは、しかし、さらに気色ばんで。

 

「な、なんや、開き直るつもりかいな!? ……それで勝ったら下につけ言うんか、納得できるかい!」

「いや、俺に負けたらそれだけだし、今日この場に限って挑戦は何度でも受け付ける!……その後で仲間になりたいならついてこい! 納得いかねえなら黙って勝手にやれ!」

「……ホントに条件を守るとも思えん! ジブンにはもう、信用が……」

「負けんのが怖いなら、そう言えよキバオウ」

「ああ!?」

 

ディアベルは敢えて、挑発的な発言と表情で煽りに煽る。……実は、リアルでやっていたゲームで、何よりも得意なロールだった。

 

「何度でも挑戦を受けるってのに、いっぺんも勝つ自信がねえ玉無しは、さっさと消えろってんだ……おわかり?」

「……っ上等や! 吐いた唾飲むんやないでクソダボがぁ!」

「おう、来いよ。……俺の名前の意味を教えてやる」

 

……ディアベルは、元騎士は、この上なく愉しそうに笑った。……それは全く、悪魔のように。

 

 

 

*****

 

 

 

螺旋階段を上った先、重厚な扉を三人で押し開く。

 

「わあっ」

「……うん」

「はは」

 

アスナは目を輝かせ、キリトは頷き、ムサシは笑った。

 

そこに絶景が広がっていた。

急な岩肌にポッカリと空いた扉からは、第二階層の全景が見渡せる。

 

隅々まで連なるテーブル状の岩山。

その上に柔らかそうな草原が広がり、大小強弱様々な【牛】がのんびり過ごしている。

 

「ハハハハハ! ハハハハハ!」

「いやムサシ笑いすぎだろ」

「えっと……大丈夫?」

 

ムサシの胸に有るのは、特大の達成感。

 

ボスは倒した。ディアベルは助けて他に死人も出ていない。

……それに、どういうわけか、この世界に【ビーター】は、いない。

 

「楽しかったわね、ボス攻略」

「……これだもんな」

「ええでも、ムサシはこうじゃないとって、気がしない?」

「ちょいと、お兄ちゃんお姉ちゃん、なにやら味わい深い目で見るのをやめていただけませんこと?」

「そうは言うけど、ムサシは無茶苦茶しすぎよ。……イルファングのところに飛び出してった時、こっちは心臓止まるかと思ったんだからね」

「ゴメン☆」

「……絶対反省してないだろ」

「キリトからもっとこの子に何か言ってあげてよ、リーダーでしょ」

「うぇっ!? そこで俺にきますか」

「お、キリトったら私に言いたいことあるの? 何かしら……愛の告白? きゃー!」

「それはない」

「反省しなさい」

「……はい」

 

下らない会話。その何気ない時間に、幸せのようなものを感じながら、だからこそ他の二人が別れを惜しんでいるのだと、三人がそれぞれに察していた。

 

街までは一緒に行きましょう。

 

せっかくだ、祝勝会やろうぜ。

 

このままパーティ継続しちゃいましょうよ。

 

そんな言葉を心のどこかで期待しながら、それでも、自分から切り出す気は無いのだ。

 

「それじゃ、私はそろそろ行くわね」

「……ウルバスに寄るのか?」

「いいえ、このムサシさんを常識で考えてもらっちゃ困るのよね。ギター抱えて気の向くままよ。転移門のアクティベートはよろしくね」

「……流石と言うか、なんと言うか」

 

カン、カンカン。

 

音をたてて階段を下りながら、ムサシは振り向いて、今日一番の笑顔を見せた。

 

「勝ったわね」

「おう」

「ええ」

 

少女は去った。少し間を置いて少年も街に向かった。

 

一人残った少女は、もう一度だけ、景色を見渡した。

背の高い岩山達のむこう側、アインクラッド外縁部から青空が見える。

 

少女は歩き出した。……空を見ながら。




勝った! SAO完!
……すまんの、もうちっとだけ続くんじゃ。
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