デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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待ってくれていた方はお待たせしましたー。書くのむずかしい!楽しい!


雨の中で炎は燃える

ねじり鉢巻の親父が声を弾ませて言った。

 

「おう、来たか。鉄も炭も炉に入れて準備万端よ。何時でも点火できるぜ!」

 

夕刻、再び訪れた庵から歩いて数分の位置に、粘土造りの炉はあった。

超大型のバスタブのような形状で、両脇にこれまた大きな……ふいごって言うのかしら、あれが付いてる。

 

「おやっさん、コイツも入れてやってくれないかしら」

「あん? ……構わねえが、出来にはそれほど違いはねえぞ」

 

ムサシが親父さんに渡したのはこれまで腰に差していた曲刀だった。

鞘から抜かれた鋼の刃は薄闇の中でも鈍く光り、最大まで強化された逸品であることが分かる。

 

「それこそ、構わないわよ。……こういうのには心持ちが大事でしょ」

「……ま、あんたがそういうんなら」

 

親父さんは深く頷くと、炉の脇に設えた急拵えの櫓に登り、曲刀を丁寧に落とし込んだ。

 

「……どうも、玉鋼は必ず出来るって訳じゃなさそうね。ふいごで火を煽る役が二人に、モンスターの相手する役が最低一人は必要と見た」

 

あごに手を当てて唸ってみせるムサシの瞳はシトシトと降る雨の下でなお澄みわたり、そこからは静かな高揚感が窺える……気がする。

 

確かに、愛剣を更新する時の、よくある拘りではあるけれど、これからボスの相手をするのに愛剣を放棄して大丈夫なのだろうか。……どうにも分かんない奴よね。

 

「ですねー。……よかったんですかームサシさん、大一番を前に愛剣を手放すとかー本当ヤバくないですかー」

 

まあ、分かんない奴と言えば、モルテも大概なのだけど。

コイツは気がついたらうちのギルドに所属していて、一週間ばかり前にはもう、探索組のエースになっていた。

初対面から微妙にむかつく言動とペースを身に纏った男で、遠慮が要らない、気安い仲だ。腰に吊ってる片手剣も、今は仕舞っているらしい片手斧も、私の作なのだから。

 

「それとも、自分の出番ですかねーいやー、それはそれはーテンション上がっちゃいますよーアゲアゲですよー」

「うーん、そーねー張り切ってるモルテ君には悪いけど、……リズ、貴女やってみない?」

「え?」

「えー、ぶーぶー」

 

何を言い出すのか。

 

「親父さんの話を聴く限り、かなり見た目でっかくておっかないヤツが出てきそうな感じじゃない。そういうのに殴りかかる経験が必要だと思うのよ」

「いやいや! 待ってよ! ムリムリ! 無理!」

「大丈夫、だーいじょうぶ! とにかく大丈夫ー」

「うわー、こんな慌てるリズベットさん、初めてみたなー、あははー」

 

にこにこ笑うムサシとへらへら笑うモルテ。

両者あんまりにも余裕しゃくしゃくな態度に私まで安心してしまいそうになるけど、ここは退いてはいけないところだろう。

 

「いや、真面目な話、ホントに大丈夫よ? レベルは足りてるはずだし、危ないなって思ったら私たちが直ぐに助けに入るから。貴女を死なせることは無い。そこんところの見極めは私やモルテ君を信頼して欲しいわね」

「いや、それじゃ鉄が駄目になっちゃうでしょ! クエスト失敗じゃない! ムサシ、アンタの剣も、台無しになっちゃうのよ!?」

「あ、そっち? ……んー、そっかそっかー」

 

私の言葉の何が面白かったのか、ムサシはますます笑みを深めている。……ゆるい。

 

「うん、ぜったい大丈夫。リズには大抵の敵に対抗できる手段を授けたわ。……それに、私の勘は当たるのよ」

 

 

 

*****

 

 

 

「それじゃ、火を点けるぞ。お前ら赤い色が見え始めたらふいごを交互に、途切れず踏み込むんだ、いいか?」

「了解、んじゃモルテ君、息を合わせていきましょう」

「あいあいさー、お任せをー。合わせるのではなく合ってしまうのがイケてる男子ですよー」

 

ぎっこぎっこ。

 

「……ごめんなさいねモルテ君、いろいろ勝手に決めちゃって。埋め合わせは奮発しますとも」

「あははーいえいえー。自分は楽しければ何でもいいやつなんでー。ムサシさんとリズベットさんにこき使われるのも癖になってきたところですよー」

「ふふ、うーん、そんならアタシぃ、びしばし働かせちゃうぞー☆」

「あはぁ、すみませーん調子にのりましたーやめてくださいー」

 

ぎっこぎっこ。

 

「そうだ、聞いていいかしら」

「んー、なんでしょー? スリーサイズとパンツの柄以外ならなんでもお答えしますよー、なーんて、あはははー」

「よーし、それじゃあ初恋エピソードでも……あと、なんでMTDに入ったのか聞いていい?」

 

ぎっこぎっこ。

 

「あははー自分ってば見ての通りの硬派なもんでー恋などしたことないのでーす。あんなに苦しいなら愛など要りません。まー幼稚園の先生とか小学校の保健医さんにときめいてたのはあれ、ノーカンですよねーあれは誰でもときめくはずなのでー。あ、ギルドに入ったのは安定しそう、してそうだからですなー」

「……恋をしないのが硬派とは限らないし、聞いてる感じ淡い初恋ばりばりだし、公務員志望の今どきの学生みたいなこと言ってるわね」

「あはぁ、なんですかなんなんですかー、リサーチですかリアル割り出しちゃうあれですかそうですかー。逆に聞きますけどムサシさんはなんでソロやってるんですかー? それこそ安定なんかとは程遠い、いつ死んじゃってもおかしくないプレイスタイルですよねー……死にたかったり?」

 

ぎっこぎっこ。

 

「そんなわけないでしょう。全世界に蔓延る三十億人のファンが泣くわ。私くらい生き汚いやつは他にいないのよ?」

「むむっ正体見たり! さてはムサシさんー、リアルアイドルですねー向こうに戻ったらサインくださいよー」

「………………はぁ」

 

ぎっこぎっこ。

 

「……いやー、なんでそんなに悲しそうな顔で大きく溜息をー? なんかゴメンナサイ」

「謝らないで……単に私の修行が足りてないだけだから。……かつて輝かしいステージを目指して努力していた日々を思い出してしまうのよ……」

「……あれれー? これ、もしかして思ったより大分年上レディ? 地下アイドル活動長かったりしますー? 」

「ええ、実はそうなの♪ 永遠の十七才です、キャピ☆」

「うわーどこまで本気なのか分かんなくて反応に困るなーあははー」

 

 

 

*****

 

 

 

「くっそーなんかやけに楽しそうねあいつら」

 

雨音のせいで喋っている内容までは聞き取れないが、ふいごを踏みながらもやいのやいの騒いでいるのが分かる。

それでも作業の音はテンポよく、確実で乱れがないのは流石と言うべきだろう。

 

どこまでも自然体でいる彼らに比べて、油断したら弱気が顔を出す自分が情けない。

……正直、代わってほしい、逃げたい、なんて思う私がいる。

 

「ああ、だめね、緊張してきちゃった……」

 

ギュッと手の中のメイスを握り直す。

私が今まで作ってきた中でも傑作の一つだ。直線的フォルムが鈍色に輝き、頼もしい重厚感が心を落ち着けてくれる。

 

ブーツと鎧は革製で腕のいい職人仲間に頼んだ揃いのもの。

色は茶色ながらも花をあしらったかわいいデザイン。……私に似合っている気は全然しないけど、性能はいい。軽くて動きやすくてある程度は身を守ってくれる。

私用の金属鎧が作れるようになっても、変えるべきか悩ましい。

 

その上に羽織っているのがムサシの甚平。

どうやら防具というよりはアクセサリー扱いらしい。防御力はほとんど期待できないけれどとても暖かい上に濡れないのでお世話になっている。

 

……ぐだぐだ悩んでいても仕方ないわよね。もし失敗してもムサシなら許してくれるだろうし、三人で素材集めたら、今日中に再挑戦できちゃうかも。

 

「……ええい、女は度胸よ! 来るなら早く来い!」

 

私の覚悟が決まるのを待っていたかのように、竹林の中からそいつは現れた。

 

燃え盛る焔が大男の形をとったかのようなモンスターが、十分な太さで連なる竹を気にする様子もなく焼きながら進んでくる。

 

「ゴアァアアーーー!!」

 

火花を散らしながら咆哮をあげて、私を、いえ、その後ろの炉の方を燃える炎の目で睨んでいる。

英語の成績に自信がない私なりに、その名前を読みとってみるなら……。

 

『エレメント・オブ・ファイヤ』

 

炎の精、かしら、とても強そう。

 

「……はやまったかも」

 




意味深な感じが出てればいい。(願望)
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