デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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とにかく投稿する勇気。


第二の炎

ゴウッ、と、一条の炎が空間を走る。

何度目かのステップ回避に辛うじて成功したけど、冷や汗ものの迫力だ。

 

「う、くぁっ……」

 

あれは火炎放射器でもなければ火魔法なんてものでもない。ただの拳だ。だから恐くない。

 

「恐くない……恐くないったら……きゃぁ!? あっついあっつい?」

 

エレメント・オブ・ファイヤの出現に戸惑いながらも駆け寄って接近戦を挑んだのは、正しい判断だったと思う。

 

竹林と炉までは数十メートルはあるけれど、真っ直ぐに突き進む炎男を放置すれば到着まで一分かからない。

……なんでこのゲームにはマトモな遠距離武器がないのかしら。そしてなんで投剣とまで贅沢言わないからせめて長柄の武器とか選ばなかったのワタシ!?

 

メイス一本でどうにか立ち向かえているのは後ろから響くムサシのギターと歌の力が大きい。

 

「~~♪」

「……これも、銀魂よね。修羅だっけ?」

 

とっても格好いい曲だ。

 

【吟唱】スキル。

 

巨大ふいごを踏みながらギターを鳴らすムサシの歌声は、このゲームの世界では心理的なやつだけじゃなく数字として確かな力になる。

 

今や音楽の本場と化した【はじまりの街】でも使い手のごく少ないエクストラスキル。

歌声の届く範囲のプレイヤーに様々なバフを振りまくことが出来る強力な代物だ。

 

ライブを聴いてる私には火耐性と素早さ微上昇が付与されているというわけ。

 

(戦えてる、戦えてはいる……けど)

 

「……てぇい!」

「ゴァアア! ゴァアア!」

 

攻撃が、効かない。

 

唸りを上げて燃える拳を潜り抜けてメイスを直撃させると、その部分の炎が散りはする。

でもいっそう勢いを増した火勢がすぐに穴を塞いで元通り。

 

倒す目が見えない上に、こっちを倒すことじゃなくてふいごまで進むことを優先してるから、足止めするためには突っ込んで、体を張るしかないんだけど……っ。

 

「ふぅ……」

 

落ち着け、落ち着け。

川原で受けたムサシのレッスンを思い出すのよ。クールになる、よく観察する。

 

『観察すると言うのは見るのではなく観ることよ、聞くのではなく聴くことよ……』

 

……?

 

「ゴァアア! ゴァアア!」

「うわ!? あぶな!」

 

掠めた! 大きく広げた両腕からの抱きつくようなダイブ攻撃!

初めて見るモーションに反応が遅れるが、右に転げるような感じで緊急回避。

 

「あはははー大丈夫ですかーリズベットさん、苦戦してますねーやばいですねー。ちょっとこっちにダッシュして代わってくれませんかねー!」

「……いえ! やらせて!」

 

声を張れば十分聴こえるくらいの位置まで後退しちゃってたか。

背後からのチェンジ要求をつっかえして、私はもう一度エレメント・オブ・ファイヤの前に立ち塞がった。

 

私の気のせいだろうけど、無機質なAIに支配されている筈の炎の瞳の中に「またお前か、しつこいな」みたいな光が見えるような。

 

低く唸り、此方に向かって無造作に振り下ろされる拳を、今度はバックステップで回避。

大振り攻撃で隙だらけの胴体に肉薄し、メイスを振り上げた。

 

さっき、転げる前に感じた違和感は、初見の攻撃モーション……だけじゃあない。

冷静に、よく観察してみれば、こいつエレメント・オブ・ファイヤは、その燃え方が不自然なのが私にはなんとなく分かる。

 

炎は、基本的には木材、炭、油類なんかの燃えるものが『燃えて』生じるもので、下から上に昇るもの。この世界でも基本的には現実と同じで、そのリアルで美しいグラフィックは好ましいと感じることもあるくらいだ。それが炉の中なら、なおのこといいんだけど。

 

翻って、そもそもこのエレメント・オブ・ファイヤ、一体何が燃えているのかしらね?

 

もしも等身大を構成するだけの木材なんかが燃えているなら、何度も叩いてほとんど手応えがないのはおかしい。

私の攻撃が捉えていたのは、光と熱の現象としての炎でしかなかったのだ。

 

……そして、ただ燃え続ける炎の化身にしては、燃え方が絶対おかしい! その身体の一点から全身に波及してるようなイメージ。……その発火点を探ってみせる!

 

(伊達に毎日毎日、バカみたいに炎を睨んでる訳じゃないっての!)

 

橙色の光を宿したメイスを、目の前の炎の「火元」と見定めた左脇腹に振り下ろす。

 

片手打撃武器共通の基本ソードスキル【ブロウ】が何時ものように起動し、思った通りのモーションが始まるのに乗っかるイメージ。

 

加速した鉄槌が狙い過たず命中。

ガツンっという硬質な手応えに笑みを浮かべながら、思いきり振り抜く!

 

「オオォ……」

 

エレメント・オブ・ファイヤは低くうめき声を漏らして蝋燭の火のようにかき消えていく。

その向こうに地面に転がる球体を見つけた。

 

それは深い赤色をした、ボーリング球よりは小さいくらいの球だった。ガラスのような質感で、勢いが殺しきれないのかコロコロ転がって徐々に遠ざかっている。

 

「お、おおおー!? すっげえ、なにやったんですかーリズベットさん、……ってやばくないですアレ?」

「……え?」

 

燃え上がる、青白い炎が見えた。

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