デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

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武蔵の肖像画を思い浮かべて下さい。
史実のでもお気に入りの漫画でもいい、貴方の思う強い武蔵の眼を思い浮かべて下さい。

……それです。




武蔵と戦う、ということ

 

その時、瞬時にあまりに多くのことが起こりすぎて、リズベットは後から思い返しても全ては分からないほどだった。

 

「リズ! 袖を確認して!」

「……!?」

 

吹き飛んだムサシが叫んだ。

リズベットから見てモルテの向こう更に五メートル程の距離に横倒しに倒れているのだ。

彼女のHPゲージはみるみるすり減っており、黄色くなって尚もその速度に陰りはない。

 

モルテはムサシの指示出しに明らかに動揺した。

渾身の不意討ち、倒れたムサシに今も赤々と輝くダメージ痕。それでこの判断の早さと来たら!

 

「……あはぁ、マジっすか」

 

ちらり、とリズベットの方を見てから、モルテは素早く身を翻してムサシに向かって走った。

 

リズベットが咄嗟に事態を把握できずに呆然としていたのが一つ、そして倒れたムサシがその姿勢のまま凄まじい手捌きでウィンドウを操作しているのに気づいたからだ。

 

いつからか、叫んだ時には既に?

リズベットにナイフが投げられた時か。……まさか、斬られたその直後ということは無いだろう……。

 

ここでようやく(といっても、リズベットが思い返すにこれ以上は望めない早さなのだが)我にかえって、まるで動こうとしない体を強引に動かして、甚平の各々の袖に左右の手を擦り付けた。

 

ピコン、と軽い音をたてて甚平からウィンドウが浮き上がったと思ったら、向こうで信じられない事態が進行していた。

 

モルテがいよいよムサシに到達し、その手に持った片手剣を振り上げた時である。

 

「……It's a show time♪」

「……は?」

「やっぱりか……エドワードめ」

 

何かを呟いたムサシに、モルテが何故か動きを一瞬止めた。

同時にムサシのHPゲージがほとんどドットを残して真っ赤に、しかし確実に残して止まった。

 

そして、二人の周囲に、様々な、そして雑多なアイテムが山のように降ってきた。

 

「はあっひゃああ!?」

「あっはははは☆」

 

『所有アイテム完全オブジェクト化コマンド』リズベットが(もしかしてモルテも)知らなかった操作が完遂され、ムサシがストレージに蓄えていたあらゆるアイテムが二人の周囲に瞬時に実体化し、散乱したのだ。

 

「くうぅう!? マジすか、やばやば!?」

「あっは♪ 吹っ飛べ!!」

 

ドレスやマントに視界を塞がれたモルテに向けて掴みかかり、ポーン、と。冗談のように、重さを感じさせることなく背後へ向けて投げたのだ。

 

ライトエフェクトがなかったから、彼女は純粋に技術と高めたステータス補正で投げたのだ……と思う。

学校の柔道の記憶も朧気なリズベットでは「一本背負い……みたいな技」としかいえない。

 

リズベットからムサシ、ムサシからモルテはほとんど同じ距離で一直線に並び、そこでようやく、束の間の静寂が訪れた。

 

甚平の「隠しポケット」からアイテムが取り出される。……HPポットだった。

 

「……動けないじゃない」

 

 

 

……………

 

 

 

死ぬかと思った!

 

雷で照らされたモルテの影に反応出来なきゃ死んでた!

 

死ぬかと思った!

 

1個でも判断と動作ミスったら死んでた!

 

死ぬかと思ったーーー!

 

モルテ! モルテ! この野郎バカ野郎。マジでやりやがったイヤ怪しいとは思ってたよでもさ良い感じだったじゃん苦楽ともにしたじゃん背中から斬るとか普通しないだろああ普通じゃねえからPKなのかそして何より最悪なことは……!

 

「ヒャハーー! ハハハー!!」

「命のやり取りとか……」

 

少しも状況は改善してないってことだ!

 

「面倒なことになってんなー!」

 

虚勢ではあるが、笑顔は崩さずに。

受け身から素早く転身して突っ込んでくるモルテに対峙する。

こんなこともあろうかと回復アイテムより先にカーパライン(予備の無強化)を先に拾っておいたのだ!

 

「逃げなくていいんですかぁ、HP真っ赤のムサシさん?」

「逃げるのも、真っ赤なのも、あんたの方だって事を教えてあげる☆」

 

いざ、良く、眼を凝らして……水に成りきる!

 

 

 

……………

 

 

 

この状況は、モルテ自身にとっても意図したものではなかった。

そもそも短絡的で刹那的を自認するモルテにとって計画通りの思い通りに物事が進んだことの方がレアなのだが……。

 

『ムサシって女にゃ、手を出すな』

 

そんなモルテが尊敬する数少ない相手であるところの『ボス』が何故にあんな事を言っていたのか、今をもって分からない。

だが、そもそも目障りになってきた【MTD】を潰すためのスパイ及び工作が任務のモルテが独断専行でこんなことしてるのがバレたらそれこそボスに殺されかねない。

 

……でもでもぉ、しょうがないじゃないっすかぁ。

 

今日一日一緒にいただけで、ムサシ、彼女の危険さは分かる。そもそも件の【MTD】だって彼女が切っ掛けで出来たって話もある。生かしておくだけ俺達にとって危険……いや、そうじゃない。

 

どうせ殺すなら、俺が殺したい。

 

そう思わせるだけの魅力が彼女にはある。

余裕綽々のその顔。死にかけの状態でなお笑顔が消せない強い女。でも内心はどうだ? 震えているんじゃあないか?

 

……案外、ボスも、自分で殺したいから待ったをかけているのか。

 

 

「逃げなくていいんですかぁ、HP真っ赤のムサシさん?」

 

モルテが思うにデュエル、つまり人対人の一騎討ちは、互いのステータスが近いほどに心理戦の様相を帯びるものだ。……興奮に冷や水を浴びせ、恐怖を思い出させるのは常套手段だろう。

 

「逃げるのも、真っ赤なのも、あんたの方だって事を教えてあげる☆」

 

曲刀を手に不敵に笑ってみせるムサシに、モルテの方が苦笑してしまうほど、全く超人的な精神力だ。

……今まで見てきた、無慈悲に狩られる一般プレイヤー達も訓練で体力を赤くしてやった同輩連中も、仮想の顔色を真っ青に染めて震えることしか出来ない有り様だったものだが……。

 

「ヒャア!」

「……っ!」

 

向こうは一撃掠っただけで命取り、ムサシの攻撃は消極的にならざるを得ない。

 

大振りに、威嚇を込めての上段切り、返しての下段……素早く横薙ぎ……負ける要素がない、はずなのに!

 

「なんで……」

「なんで攻撃を読めるのか? 私を読めないのか? ……不思議?」

「……うっ」

 

当たらない。完全にモルテの片手剣の間合いを見切っているとしか思えないギリギリの回避を繰り返し、的確に、ボクシングでいうジャブのような小刻みな攻撃で少しずつこちらのHPを削ってきている!

 

「なんでっ」

「……さぁて」

 

慌てて、鎖頭巾の感触を確かめる。

今はまだあまり知られていないが、この世界で一定以上の感情や意識の集中はシステムに察知されて『顔に出る』

 

その中でも眼の動きは顕著で、そこに注目すれば大抵のmobのプレイヤーも案山子も同然というのがボスの、そしてモルテの見解だ。……そこを隠す装備をわざわざ着けているのだ。

 

……しかし。

 

ムサシの瞳は、動かない。

じっとこちらを窺う青い瞳は静謐な湖面のような冷たさで、手を見る、足を見る、そういった動きがない。微動だにしない。

 

「隙あり!」

「……ひゃ!?」

 

微かな動揺を見てとったか、ムサシがソードスキルを起動した。……だが、それはモルテにとってもチャンスだ。

 

曲刀はポピュラーな武器であり、現行のスキルはモルテ達にとっては研究しつくしたものであり、先読みすれば……いや、違う!?

 

カタナ専用ソードスキル【浮舟】

 

下からの円弧型の斬撃に咄嗟に盾を合わせるが、ガードの上から凄まじい衝撃をくらい、体が浮く。……不味い!

 

上下二連撃、一拍をおいて、これまでで最強の突き!

 

カタナ専用ソードスキル【緋扇】

 

辛うじて直撃を避けることが、モルテに出来る唯一のことで、彼は再び宙を舞った。

 

 

 




種明かしは次回
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