デレマスに転生したと思ったらSAOだったから五輪の真髄、お見せしるぶぷれ~   作:ちっく・たっく

4 / 23
だが奴は、弾けた。


天空の城? ラピュタだろ? 知ってる知ってる

暗い部屋に、キーボードを叩く音とマウスのクリック音が絶え間なく響いている。

 

「無い、無い無い無い無い。……やっぱり無い!」

 

ディスプレイには動画サイト、小説投稿、感想ブログやレビュー。

それらが次々と現れては消えていく。

飽きることなく、続けていく。

 

中学生になって、アタシは腐った。腐っていた。

 

躍起になってやっていたバレエも、実は前世から大好きだった歌も、ただ惰性で続けているだけだ。

 

……演技だけは、今もバリバリ現役。

心配してくれるパパとママ、友達をある程度納得させるためのツールとして……我ながらどうかと思う。

 

心に空いた謎の穴を埋めるために、私が求めたのはサブカルだった。

 

ノートパソコンを買ってもらって、居間で使うようになった。

 

距離を置くつもりだったのになあ、一度でも沼に嵌まったら、のめり込むのは保証付きだし。

 

この世界におけるサブカルチャー、アニメやゲーム、漫画は前世とだいたい同じだ。

 

今の西暦が2020年で、オレが生きた時代より若干の未来を生きているから、知らない作品もそこそこ増えているけれど、少なくとも俺の記憶と大きな齟齬はない。

 

アイドルマスターシリーズと、その関連作品が軒並み綺麗に消滅しているところを除けばだが。

 

しかしアイドルマスター以外のアイドルもの作品が全く変わらずにあるのがなんか不気味だ。……影響がないわけないと思うんだけどな。

 

ともあれである。

 

普段は買ってもらったノートパソコンを保護者監督のもとでしか開かない、今時考えられないくらいのいい子フレちゃんが、自室に籠って前世以上のコンピューターロールを見せている理由は他でもない、アイドルマスタークライシス級の大発見をしてしまったので、その検証だ。

 

『茅場晶彦』

 

ゲーム情報サイト君によれば、カリスマ的なゲームクリエイターで、潰れかけの会社たてなおした実績を持ってて、もうすぐ革新的なフルダイブ型ゲーム機、『ナーヴギア』を売り出すらしいよ?

 

「無い、無い無い無い、アクセル・ワールドもやっぱり無い! きゃっほう!」

 

『小説』ソードアート・オンラインが無い。

いくら検索をかけても出てこない。

 

ソードアート・オンラインは、ライトノベルにおけるオンラインゲームものの金字塔だ。いや、だった。

 

huckなどの先駆者はあれ、綺羅星のように輝く数々の作品の代表と言える化け物タイトル。

 

それが、この世界ではまだ生まれていない。

そして、オレの前世とはおそらく違う生まれ方をするのだろう。

 

茅場晶彦の生み出す史上最初のフルダイブオンラインRPGにして、歴史に残るデスゲーム。

 

……オレは、アタシは、頭を抱えた。

 

「ソードアート・オンラインじゃんかよう……こまるなーほんとこまるなー」

 

なんだよ、なんで俺に気分よくアイドルやらせねえんだ。

フレちゃんにしといて、何をやらせたいんだオレを此処に放り込んだ神様千尋様は。

 

「……いやいや」

 

そもそも、神や悪魔なんているのだろうか。

俺は別に「うっかり殺しちゃった、てへ☆シンデレラガールズに転生させてあげる♪」

なんてテンプレくらったわけじゃない。

唐突にベイビーだった。

 

もしかして転生や前世なんてものはなく、赤ん坊の頃から凄かったアタシが退屈の慰めに創った妄想の産物なのかも……。

 

いや、それにしては不自然だ。

日本ならいざ知らず、フランス生まれのアタシがそんな人格を形作るのは可笑しすぎる。

いくら記憶が主観で塗りつぶされるものだとしても、あり得ない。

 

ならば何故生まれた?

生命の意味は?

人の価値は?

おお、我思う、故に我あり。

 

「いや、知らんし☆」

 

ノートパソコンを閉じて立ち上がる。

 

うだうだと答えの出ない哲学するのは嫌いじゃないけど、体が動く内は動くべきだと赤ちゃん経験者は思うわけよ。

もったいない。

 

入院した時と老後の楽しみにとっておこう。

 

思考を回すべきは今後の方針だ。

なにがやりたいか、なにができるか、なにをしなければならないか、だ。

 

階段を駆け下り、リビングに走って入る。

 

台所では母さんが夕飯の支度をしている。いい匂いだ。メニューまで思い浮かぶ。

 

「あらあら、フレちゃん、いつも言ってるけど、階段はゆっくり降りなさい。フレちゃんが怪我しちゃったら、わたし泣いちゃうんだから」

「ごめんなさいママン! ……それでえっとね、お願いがあるの☆」

 

母さんが料理の手を止めて、こちらを見つめてきた。……小首をかしげる動作が、いちいちかわいいんだよなあ。

現世における私の可愛さの半分は母さんに習ったと言っても過言じゃないね。

 

「懐かしいわねママンなんて……最近、なんだか元気なくて心配してたけど……お願いってなに?」

 

アタシは口を開いて言った。

いかにも子供らしくて、なんで今まで言わなかったのか分からないくらいのセリフだ。

 

「欲しいゲームがあるの♪」

 

ここはソードアート・オンラインなんだぜ?

ならソードアート・オンラインやらなきゃ嘘だろう!




次の話でSAO入れそうです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。