人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ「メソポタミアに特異点反応って本当!?」

ロマン「ギルが真っ先に向かった、間違いない。何者かがウルクに攻めいっている!こちらも観測が終わったよ!」

オルガマリー「マスターは第二種戦闘配備で待機。出撃に備えなさい」

カドック「向かわなくていいのか・・・!?」

オルガマリー「姫と王が出陣したの、解決は確定事項よ。恐らく次の反応が来る筈。私達はそれに備えなさい」

ロマン「映像確認!モニター、に──」

ダ・ヴィンチちゃん「どうした、ロマニ?映像は?」

ロマン「──ダメだ、見ちゃいけない!ボクがフィルターをかける、現代人の子達は見ちゃダメだ!」

ゴルドルフ「ど、どういう事かね!?呪いのビデオかね!?」

シオン「ビデオとかいつの時代ですか!多分呪詛か何かですよ!」

ロマン「何て事だ・・・これは──」

(──呪術だ。ボク達の世界に存在しないほどの伝統と格式を持つ・・・こんなレベルでの呪詛を汎人類史が扱える筈がない──!)

「・・・ウルクで良かったのかもしれない。これ以上の先の未来では、汚染に堪えられなかったかもしれない・・・!」

リッカ「そんなに・・・!?」

「リッカ君からカッコよさと可愛らしさと理性と善性を奪ったようなものだ!これはもしかしたら・・・ほんの始まりなのかもしれない・・・何者かの侵略の・・・!」

シバ「そんなー!そんな何もない不良品、誰も買い取ってくれないですよぉ・・・!」

オルガマリー「ギル・・・」

リッカ「姫様・・・!」

ネモ「報告だ。マルドゥーク神が消えたよ」

シオン「はいぃい!?」


混沌凶罪獄京・禍肚(まがはら)~空想昇華・禍肚清浄~
まつろわぬ鬼


ウルクの、メソポタミアの地を暗雲が覆い尽くしていた──。

 

「なんだこれは!?グガランナもいないというのにこんな天災が起きることがあるなんて!?」

 

「詮索は後だ!避難を徹底させろ!ジグラットと地下空間に女子供を優先して退避させるんだ!」

 

見渡す限り、青い部分が何処にも見受けられない分厚い暗雲。血染めのごとき紅き稲光が絶えず瞬き、陽の光を完全に遮られた地上にはその不穏極まる輝きしかもたらされない。その余りの非常事態に、避難勧告を出される前に男達は老人を背負いジグラットへと規律正しく退避を行っていた。それほど迄に、たった一体のサーヴァントにもたらされた凶兆は重く、そしておぞましかった。世界の破滅とウルクの滅亡が、神によってもたらされた時と酷似した状況ともなれば無理も無い。

 

「戦士は市民の誘導に回るのだ!相手は英霊、我等が出来ることは少ない!」

 

「キングゥ様と王の妨げにならないことだけに注力せよ!我等の使命は、王の財を喪わせぬ事だ!」

 

戦士達の誘導と整備によって、極めて短時間で避難は終了する。戦いは殺め、傷付けるばかりではない。国の礎たる民草を一人も失わせない。鍛え抜かれた戦士一人一人の全力を全うする事は、一人も死人を出させないと言う結果へと繋がったのだ。

 

「避難状況はどうなっています!?」

 

「はっ!特設された避難区画にウルク民は退避を完了致しました!サーヴァント、そしてイシュタル女神のグガランナ襲撃経験が完全に活きております!」

 

「既に楽園に在りし王への報告は完了致しました!これで、巻き込まれ死ぬ者はいない筈です。しかし・・・」

 

「えぇ、解っています。・・・まさか王が、前線にて向かう程など・・・」

 

ジグラットを任された祭祀長シドゥリが、兵士達の報告を受け状況を確認する。ブイン族区画の通信機能を使い、カルデアへと連絡を送ったのだ。そして、シドゥリは鉛を飲む想いでその方向を見やる。

 

「キングゥ、王・・・。どうか、御無事で・・・」

 

遥か大広場にて繰り広げられる無数の鎖、そして魔術。それらを呑み込むおぞましき邪気。シドゥリは毅然と王達の健在・・・そして、頼もしき全盛以上の王、そして姫の到着を願い祈るように目を閉じる──

 

 

「どうなっている、ギルガメッシュ。これは魔術王の遺した災いなのか・・・!?」

 

「今見据えている処だ、戦いに集中せよ!無駄の介在しないエルキドゥと比べ、貴様は大いに人に拠っているな!」

 

縦横無尽に荒れ狂う災厄と破壊の怒涛。それをウルクに広げまいと戦う賢王。余りの異質極まる外敵に、王自ら出陣すると言う窮地を早くも披露せざるを得なかった。それほど迄に、目の前にいる敵は理解と認識を越えていたのだ。

 

【◼️◼️◼️◼️◼️◼️】

 

角が生え、小柄な鬼・・・それはかつて王が召喚した『茨木童子』に酷似した姿と認識できる。だがかつての騒々しき鬼の名残を感じるのは、たったそれだけしか存在していなかったのだ。

 

(何者かに使役されたか。いや、しかしこの澱みと穢れは使役とは言わぬ。魔術王の手管とは異なるが、此は・・・・・・)

 

肌は死人の様な土気色。余すところなく呪詛の印が刻まれており、額に貼られた古代日本言語の呪詛の札が表情すら読み取れぬ程に顔を覆い隠す。霊基が一分の隙も無く澱み・・・否【腐っている】かの様に腐敗しており、一足踏み出す程に辺りを漆色に染め上げるかの様だ。汚濁に染まりきった両腕は暗雲を絶えず産み出し続け、メソポタミアの空を覆い尽くしている。

 

「いいから集中しろ!ウルクの土台をこれ以上汚させてはいけない。エレシュキガルが哀しむ・・・!」

 

民達に茨木童子の様なナニかの魔力に触れさせるわけにはいかず、清浄魔術を使わなくては深刻なレベルで汚染が進むと判断した王は自らが打って出た。土壌汚染と民への侵食を抑える為、その穢れきった鬼を食い止めていたのだ。

 

【◼️◼️◼️◼️】

 

ウルクの総力を指揮する今の賢王の姿では流石に分が悪く、魔杖を幾つも使い潰してしまい窮地に陥った最中、すかさず冥界の底より救援がやって来た。そう、エルキドゥの後継機にしてティアマトの子。キングゥが見かね、エレシュキガルの懇願を受けたとの名目で戦いに参入したのだ。この加勢により、ウルク風土は浄化が終わり、あの暗雲を除いてかの鬼を排するのみとなっていたが、その鬼らしき何者かは、壮絶に過ぎる戦闘力を発揮している。

 

──キングゥにすら、引けを取らぬ戦闘力を持っているのだ。

 

「こいつ・・・!流れ者にしては精強に過ぎる。間違いなく自然発生した存在じゃない・・・!」

 

「恐ろしいまでに呪詛に特化した魔術師辺りに召喚されたか、或いは新たな脅威に寝返ったか・・・」

 

「お前の千里眼でも追えないのか・・・!」

 

「たわけ!追えないのではない、追わないのだ!一目瞭然、アレは最早この世の理のものではない!」

 

そう。アレほどに穢れきっては物理的に浄化する手段など神業でしか有り得ない。そもそも活動すら叶わぬ程に自我が汚染されきっているだろう。解りきった事だ、最早アレは、メソポタミアの総てを以てして元に戻すことは叶わない。いや、人の世には最早──

 

「とにかく堪えよ!愉快な我にはシドゥリらが報を走らせた、我等はただ喪われず、喪わせぬのみが戦いだ!!」

 

「分かっているさ・・・!母さんの愛した人類をやらせるものか・・・!!」

 

浮かぶ鬼の手を縛り、無数の兵器を叩き込むキングゥが穢れし鬼を封殺する。動き回らず、ただ其処に佇んでいる不気味な沈黙を保ち、同時に周囲の巨大な腕が暴れまわっている様相を見せていたが──

 

【──羅、ショウ、もん、だい、えんぎ】

 

「何ッ──うわっ!?」

 

「キングゥ!?──ッ、いかんッ!!」

 

両腕を放つ宝具を穢れし鬼が打ち放った。キングゥの拘束を打ち払い、それらは発射された。──シドゥリらがいる、ジグラットへと向けて。

 

同時に王が声を張り上げたのは別の窮地を迎えたからだ。暗雲から、血染めの魔力が一滴滴り落ちる。──【澱みの雨】が降り注がんとしているのだ。これらは語るまでもなく危険な澱みにして魔力。メソポタミア全土に降り注いだとしたら、最早それは語るも及ばぬ変質を遂げるだろう。

 

「シドゥリ!!」

 

「チィ──!!涙するなよ、エア──!」

 

キングゥの悲痛な叫び、同時に王権を振るわんとするギルガメッシュ。命と引き換えに、神を罰する力にて暗雲を晴らさんとする試みを行う王。

 

【──カ、カカカカカカカカカカカ】

 

狂ったように響く哄笑、迫るジグラットへの魔手。淀みを含んだ祟りの雨が、全土に降り注がんとし、人智の及ばぬ『詰み』へと持ち込まれかけた・・・その時。

 

(あぁ、遥か未来に在りし姫よ・・・!どうか、メソポタミアに光を──!)

 

──シドゥリの、ウルクの民達の願いを受け取りし『光』が。メソポタミアの窮地へと馳せ参じた。

 

「ッ!!・・・──ぁ・・・」

 

目を閉じ、身を庇ったシドゥリに・・・その魔手は届かなかった。絢爛にして煌々と、輝く財が飛来した魔手を粉々に粉砕したのだ。

 

「ふははははははははは!!随分と待たせたな、気を揉んだかシドゥリ!だが、真打ちは遅れてやって来るものだ。粋な演出に免じて赦せ、我ながらベストタイミングであったわ!」

 

「──あぁ・・・っ!その、御姿は・・・!」

 

忘れもしない。友と夢中になって冒険していた、原初のまま、野生のままに駆け抜けた輝かしき王。原初の姿に、誰も見たことが無いような煌めく笑みを浮かべる最古にして最新の王。

 

──御待たせしました、シドゥリさん!緊急時につき、マスター達より先にやって来てしまいました!御無事で良かった!

 

そして、シドゥリの頭に響く声。ジグラットの頂点に座する、尊き美女の像の本尊・・・

 

「いいえ──あの時の様に。御待ちしておりました。英雄王!そして、英雄姫──!」

 

待ちわびた万全磐石の王の降臨、姫の君臨に。シドゥリは万感の想いで涙を流し煌めく威光を焼き付けた──。

 




賢王『来たかエア!!憎い演出を心得ているではないかこやつめ!ふはは、割と焦ったがお前が来たからには勝ちしか有り得まい!』

──暗雲からもたらされる雨の土壌汚染ですね、お任せください!御願いします、マルドゥーク神!

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーッ!!!!!』

姫が奉りし瞬間、天を引き裂き輝けし英雄神が祈りに応え希望の咆哮と共に楽園よりその姿を顕現させた。マルドゥーク神としては、自身は姫が自由自在に操りし財で在りたいなぁと思うが故の即時降臨である。

そしてその絶叫、放たれる熱量はメソポタミア全土にマルドゥーク神本来の権能として現される。即ち、メソポタミア全土即ち世界への干渉。土地限定における全知全能。その効果は、『暗雲の完全消失』という恵みを救済という形でもたらした。ティアマト神を単独で討ち果たした神が信仰溢れる地に降臨したならば、『神こそが法』。即ちマルドゥーク神こそがルールなのだ。

【かる、デア。はんじ、るしの、おう──】

瞬間、不気味に沈黙を保っていた鬼が動き出した。御機嫌王に向けて一直線に命を奪いに突進して来たのだ。その個に向けた襲撃に、王は鼻を鳴らす。

「ハッ、初めから我等が狙いであったか。──たわけめ。その浅はかさを呪うがいい!!」

【カ、ァ──!?】

瞬間。青空に万を越える光の波紋が湧き立った。それだけではない。ウルク全土のディンギルが起動し、装填され、一斉に鬼へと向けられる。

同時に、キングゥの鎖が鬼を空中に、砲撃に遠い空中へと固定する。

キングゥ「逃がすものか──!!」

──財宝、選別完了!ディンギル150機全接続、照準!!


英雄姫の魂が財の選別を終え、同時にディンギルの総てを掌握し起動させたのだ。同時に照準を合わせた姫に応え、賢王がディンギルに自らの財を躊躇い無く装填し、一気に解き放つ──!

御機嫌王「さぁ、消し飛ぶがいい!!放たれよ我が財!!」

賢王「全ディンギル!!放て!!」

《──『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』!!!》

「『王の号砲(メラム・ディンギル)』──!!!」

一気に放たれる宝物、そして全力砲撃。二人の王の一斉発射に、成す術無く鬼は晒され、塵一つ残さず消滅の憂き目に逢う。

【──コ、こ】

──!?

【ここ、マデ、おい、デ】

・・・エアのみ聞き逃さなかった、最期の言葉を遺し。そして同時に・・・僅かな空間の歪みを残して。

《──茨木童子、ではない。別の何かであったな。元の存在すら省みぬ汚染改造とは、下らぬモノを見せおって》

──此処まで、おいで・・・

その言葉の意味を、後に楽園は即座に理解することとなる──

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