人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カルデア 大パーティー会場

マシュ「オフェリアさん!」

コンラ「わはーい!オフェリアマネージャー!お待ちしておりました~!」

オフェリア「ありがとう。これからはあなたたちを輝かせる為に生きていくわ。よろしく・・・」

コンラ「?どうなさいました?」

「・・・オッドアイなのね、改めて見たら・・・なんて綺麗」

コンラ「オフェリアさんは、魔眼を隠していらっしゃるのですか?コンラとお揃いなのですか!オッドアイ!」

オフェリア「・・・お揃い。そうね。コンラちゃんと一緒なら・・・隠す必要なんて無いわね。マシュ」

「はい!」

「これを、お願い。きっと、もう必要は無いだろうから」

『眼帯』

「!──」 

「私、日曜日が嫌いだったの。でも、二人で一緒に自分を変えたい。日曜日を楽しみなものにしたいの。だからそれは、約束の様なもの。マシュ、コンラちゃん。力を貸してくれる?」

「はい!」

「もちろんです!ゲッシュにしても大丈夫ですよ!」

オフェリア「ふふ、ありがとう。二人となら、皆とならきっとできるわ──」


所長室

フォウ「フォウ!フォウフォウ!」

オルガマリー「あら、フォウ?まだ私の前に出てきてくれるの?なんて心が広いのかしら」

「コレヲミルフォウ!」

「?・・・救援要請に、写真?」

『ノウム・カルデア終了のお知らせ♪』

『サポートサーヴァント霊基反応 マシュ以外ロスト』

「・・・これは・・・!?ギル、ロマニ、ニャル・・・!大変です!」


グドーシ自室

グドーシ「本当に良いのでござるか?救済なら拙者だけでも・・・」

カーマ「だーめーでーす。グドーシさんは確かに仏陀の生き写しになりましたが、世に絶対はありません。私が愛の女神として、グドーシさんを御守りします。そして・・・」

グドーシ「そして?」

「リッカさんの生涯のパートナーたるグドーシさんを誘惑したという大罪、無様な醜態を以てあのマーラには償ってもらう予定なので。何を言われようとグドーシさんに付いていきますからね!」

グドーシ「嗚呼、なんと甲斐甲斐しい。ならば断るが無粋というもの。ですが・・・」

カーマ「はい。楽園や、リッカさんに。不義理はできませんものね──」



一日だけの失楽園

「消失・・・!?それってカーマが前言ってた、ビーストⅢの片割れの仕業って事!?」

 

カーマ、そしてグドーシの言葉にてリッカはかつて言われたビーストⅢの成り立ちを思い返す。ビーストⅢ・ラプチャー。殺生院キアラが右だとするなら、左・・・ラプスと呼称されるビーストⅢが復活、活動を開始したと。そしてその結果・・・フレンド契約を交わしていたマシュ大好き藤丸君の拠点を陥落、機能不全へと陥らせたとの報告を聞き、リッカは衝撃を隠す事が出来ずにいた。いらっしゃいませAチームの歓待準備を行っていたメガホンとクラッカーを取り落とすくらいに。

 

「自信満々に拙者に誘惑を行って来たでござる。カーマ殿にそっくりな美女でありましたが、楽園のカーマ殿やリッカ殿を思えば退ける事が叶いました。そして・・・」

 

「やり口と、迂闊かつ杜撰な誘惑&アフターケア不足から確信しましたよ。ビーストⅢとなったのは別世界の私。カーマの裏の顔・・・第六天魔王、マーラです」

 

マーラ。仏陀の敵対者にして誘惑せしもの。第六天の化身たる魔王、カーマのもう一つの表情。それらが自らの時空で孵化を行い、楽園への侵攻を企んでいるのだとカーマとグドーシはリッカに伝えた。この二人はいち速く獣の気配を探知し、更に獣の誘惑をはね除けたのだ。楽園に訪れた獣の侵攻、グドーシは自然体にて跳ね返したという事実にリッカは心からの頼もしさを覚え、カーマの知識と報告に感謝する。この二人がいなければ今頃は・・・

 

『リッカ。極秘通信であなたに繋げているわ。通話記録は全てギル、ロマニ、ニャルに提出するものとする。・・・藤丸君のカルデアから提出されているサーヴァントの反応が、マシュ以外消失したの』

 

オルガマリーの報告のように、内側から叩き潰されていたか侵食され尽くしていたかも知れない。楽園は数多の獣を倒して来たが、それは決して容易な相手だった事と共通する事柄ではない。

 

人類を総エネルギー化したビーストⅠ、生態系を作り替え、生命有る限り滅びぬビーストⅡ。全人類を自らの快楽の道具としたビーストⅢラプチャー。人類の絶対殺戮権を持つビーストⅣ。そして、知性的交流手段を持つ文明総てを餌とするアジ・ダハーカ、母の為に総てを捧げたビーストifの幼体。・・・それらは全て、生半可な存在ではなかった。そして今、ビーストⅢラプスなるマーラの手により、藤丸のカルデアは壊滅させられたとの報告が叩き付けられた。

 

『このタイミングで、と思うのも無理はないわ。でも、事実を伝えなくてはいけない。・・・カルデアは、フレンド契約を結んだ此方のカルデアに救援要請を送っているわ。まだ、中枢は麻痺していないみたいね』

 

「それなら──!」

 

それなら、まだ間に合う。カルデアはまだ終わっていない。まだ戦える戦力は残っており、まだ救援を頼る頭脳は健在だ。ビーストⅢラプスさえ倒せれば、孵化に使われたであろうカルデアの皆は取り返せるかもしれない。リッカは素早く立ち上がり──

 

「ッ──!?」

 

震えるような左腕の感覚に、リッカは咄嗟に視線を送る。左腕──正確には左腕に封印格納されている龍哮村正が共鳴していたのだ。何かを告げるかのように、リッカの左腕の肌が黒色に染め上げられていく。刃に照り返す光が如く輝く左腕に、リッカは龍哮に写されしものを見た。

 

「これ・・・!」

 

着物を着用し、カーマと同じ顔の女に酌をされ贅沢を極めるゴルドルフ。大奥のような場所に取り込まれていくサーヴァント達。それらを見ながら、満足げに微笑むカーマと全く同じ・・・否、頭部に巨大極まる角を生やした女魔王がごとき存在。──何故龍哮がそれらを詳しく映し出したかは不明だが、リッカは確かに見た。異世界のカルデア、ノウム・カルデアの末路を。元凶の姿を。倒すべき、獣の在り方を正しく認識させた。龍哮は持ち主に伝えたのかも知れない。喰らい甲斐がある獲物を、決して逃すなと。痛みではなく鼓動で伝えた辺り、持ち主として敬意は払ってくれているのやもしれない。それが、リッカには嬉しく感じられた。

 

『──あなたの事だから答えは解りきってはいるけれど、自由意思を蔑ろにしてはいけないわ。この救援、あなたは受理するかしら?今、Aチームの歓迎パーティーをするこの状況で』

 

「──そうだよね。皆、来たんだよね」

 

Aチーム、キリシュタリアを始めとしたかつての先輩達が再びこのカルデアに集った。職員達が主導で行う、交流を深める楽しみにしていた行事、今しか無いであろう行事。

 

「リッカさん。もしよろしければ、ここは私とグドーシさんにお任せください。ビーストであろうが所詮はマーラ。仏陀に認められたグドーシさんと、真の愛を教えてもらった女神の私がちょちょいとやっつけてきちゃいますから」

 

「あくまで、リッカ殿に隠し事はしたくないと二人で話し、出向く前に伝えた迄の事。リッカ殿は、嫌といっていいし怠けてもいいのでござるよ」

 

きっと、オルガマリーもそれを見越して秘匿通信を送ったのだろう。楽園の3トップもリッカの判断を語りはしないと確信できる面子だ。きっと救援要請もオルガマリーしか見ていない。

 

ここでリッカは、何も知らなかったと新たな楽園の仲間と美酒を酌み交わす自由を与えられている。行くしかない、戦うしかないといった脅迫をもたらさない事こそ、楽園の所持する特権。まだ楽園に来たばかりのAチームや、戦友たるマスター達も知らせなければ、オルガマリーが秘匿すればこの一件はグドーシとカーマにて処理される事になるだろう。楽園カルデアはリッカに『見てみぬふり』という選択を与えるまでに選択肢を増やしていた。フレンドサーヴァントとして、二人を送り込み解決を待てばいい。それで、楽園の新たなる仲間との一時は約束される。そう、信頼できる仲間に任せ自身はただ一言断れば──

 

「──マリー」

 

──ただ、共に過ごしてきた者達は。リッカを見てきた者達には。

 

「──皆には、シミュレーション疲れで寝ちゃってたって・・・言っといてくれる?」

 

リッカがそんな安寧や勇無き選択をするなどといった侮辱をするものは、ただの一人もいないと思わせる決断を示した。

 

「藤丸君のカルデアを、ビーストから取り戻す。救援を受けた楽園のマスターとして、私はグドーシとカーマと一緒に赴く!」

 

Aチームの、楽園の皆との一時。それは何よりも得難く大切で、決して蔑ろにしてはいけないもの。リッカはそれを何より理解しているし、この葛藤は流石に即断即決とはいかなかった。

 

でも──自身の生き方として、生き様と魂の問題としての話。助けを求め、自分を頼ってくれた人を見捨てるなんて事は自分は決して出来ないし、カーマやグドーシを敵地に放り込んで自分はぬくぬくと安全圏にいるなんてしたくない。オルガマリーが自分の決断を尊重し、あえて逃げの選択肢を与えてくれた事も自分を信じて救援の内容を教えてくれた事も全部ひっくるめて、リッカは顔を上げ判断したのだ。

 

「此処で知らんぷりなんかしたら、私は楽園にいる資格は無い。皆の先頭に立つ資格なんて無い。皆との時間を過ごせなくても、皆に誇れる、自分に誇れる自分である為に・・・私は私の意志に従うよ!」

 

頼ってくれた藤丸君を。心配してくれたカーマやグドーシを、楽園のマスターとして何より最初に尊重してくれたオルガマリーを。何より、自身の歩んできた旅路を裏切らないために。リッカは至福の時間に背を向け獣の巣窟へと飛び込む決心を示した。楽園と縁を結んでくれた者を裏切らないために、リッカは極めて少数の仲間達と藤丸を手助けする為に動く決意を固めたのだった。

 

「皆には・・・内緒だよ?」

 

このめでたい日を、死闘ではなく楽しい1日としてほしい。リッカが協力の対価として求めたのは、楽園への伝達の極秘化だった。オルガマリーは、万感の想いでそれを受け取る。

 

『解ったわ。皆にはそのままパーティーを開催してもらうわね。・・・リッカ、あなたは楽園最強にして、最高のマスターよ。私はこの評価を、決して改めはしないわ』

 

「ん!ありがと!」

 

親友のこれ以上無い称賛を胸に、リッカは人知れず別世界の獣に挑む。楽園の日常を護る為に、別世界の自身を助ける為に。

 

「グドーシ、カーマ!行こう!せめてパーティーに途中参加できるくらいには、頑張ってスピード退治しようね!」

 

絆と誇りを友として。彼女は今一度、獣を討ち果たす孤高の戦いへと身を投じるのだった──




カーマ「リッカさん・・・(感涙)」

グドーシ「流石は、我が永遠の親友にして楽園カルデアのマスター。心から、そなたを誇りに想うでござるよ」

リッカ「大袈裟だよ~。やることは変わらない。私にできる事をするだけ!」

カーマ「あなたの様な人たちが、本当の愛を私に教えてくれたんです。・・・私、グドーシさんとリッカさんをこの身に代えても護ります。護って絶対、楽園に帰ってこさせますから」

リッカ「その時は、カーマも一緒!ね?グドーシ!」

グドーシ「当然にござる。カーマ殿が拙者やリッカ殿を愛してくださるように、拙者やリッカ殿もカーマ殿を愛しているのでござるから」

カーマ「・・・・・・///わ、私はいいんですよ・・・二人を見ているだけで幸せなんですから・・・」

リッカ「えへへ・・・。さ、話は決まったよマリー!レイシフトはどうしよう?ロマンに頼む?」

オルガマリー『えぇ、それなら・・・』

はくのん『アバズレアフターストーリーか。いつ救援する?私も協力する』

リッカ「はくのん!?」

『ビーストⅢラプチャーを倒した時の大恩に報いたいと、今回も全面協力を約束してくれたわ。レガリアで、あちらに送ってもらうの』

『クリプターとなったAチームに対して藤丸君は戦っている。今のタイミングで彼等はきっと逆効果。しかし楽園の全体攻略なら必ず皆は協力を申し出る。・・・極秘で処理するなら私が適任』

リッカ「はくのん・・・」

『私も、リッカの仲間。リッカが楽園の使者として、前々から協力してくれていた皆の力を重ねてサポートする。・・・グランドマスター、私も仲間に入れて?』

「そんなの、最初から一緒だよ!ありがとう、はくのん・・・!本当に、ありがとうね!」

カーマ「心が・・・心が尊さで息苦しいです・・・」

グドーシ「よしよし、これが因果応報なるもの。善き因果には、善き因果でござる」

はくのん『なんとしてもパーティーに間に合わせる。最強タッグ組んで、スピーディーに終わらせよう。リッカ』

リッカ「うん!じゃあオルガマリー、観測よろしくね!」

オルガマリー『任せて。それでは──行くわよ!』

はくのんに助けられ、三人は救援としてノウム・カルデアへと向かう。離れていても、Aチームと仲間たちの来訪と健勝を心から祈りながら。

(待ってて藤丸君!今行くからね!親友と、愛の女神と一緒に!)

──少女は、楽園から伏魔殿へと向かう──

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