人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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少し前

キアラ「はい、大丈夫ですかマスター?私はセラピスト、悩みや苦しみは、このようにいつでも私に」

藤丸「ありがとうございます。・・・気持ちがぐっと楽だ・・・」

「誰にも見せられぬ悩み、辛いでしょう。私は受け止めましょう、あなたの苦難と苦痛を。それこそ、私の救いの形・・・」

藤丸「・・・頑張らないと。リッカちゃん達の旅路とは何もかもが違うけど。・・・それでも、オレの旅なんだ・・・!」


柳生「済まぬ、無様を晒した。・・・これより先、皆を守護する剣たらん」

春日局「まーったくですよ!子供みたいに『柳生新陰流は最強なのだ!』とはしゃいでいた家光様に申し訳ないとは思わないのですか!」

「・・・まさか、お福殿が。面妖な事もあるものよ」

「全く惜しい!部員の方より貰った薙刀がもう少し早く届いていたならば、私も大立回りができたと言うのに!」

グドーシ「あちらも盛んですなぁ・・・どうですか、リッカ殿。印籠の効き目は」



・・・正気とは思えぬ・・・犬公法様と・・・気が触れ・・・滅多な事を言うものでは・・・はっ、どうせ犬の首の方が重いのじゃ・・・

『自分が間違っているのか?ただ、誰もが慈悲と憐れみの心を持つべきと思って・・・苦しい、誰か、助けて、誰か・・・』



・・・まだ幼すぎる・・・あれでは治世など・・・言いなりのお飾りに過ぎん・・・これでは・・・

『ああーん、ああーん・・・うあぁーん・・・』



悪い方ではないのだが・・・所詮世襲を継ぐだけの・・・あぁ、あの方が永遠ならば・・・

『何故だ、私だって頑張っているのに。比べるな、黙れ、黙れ、黙れ・・・!』

【骨があったのはあの一代のみ。後は堕落に堕ちた無様な徳川の群れ。──楽になりたければ望み通りにしてやろう。・・・我の命はその為にある──】



「・・・うん。痛いの、無くなった感じ。カーマも、握ってくれてありがと」

カーマ「リッカさんは無茶を無茶と思いませんからね。きちんと見張っておかなくちゃ、ですから。痛いときは、痛いー!って叫んでくださいね?私がなんとかしちゃいますから、ね?」

リッカ「うん、ありがと!」

グドーシ「リッカ殿。此処は御約束として、龍哮殿に語りかけてみては。対話でござるよ、刀との」

「ブリーチ!・・・そだね!ダメ元で!」

(・・・龍哮、今まで私を助けてくれてありがとね。村正おじいちゃんは失敗作とは言ったけど、私はそうは思わない。黒くて紅で、凄くカッコいいし!)

左腕【・・・・・・・・・】

(ごめんね。散々頼ってきたのに、我慢なんかさせちゃって。きっと、龍哮は龍哮なりに私達を助けてくれてるんだって私は信じてる。だから私は、あなたを【おさえつけない】。出来るだけ、ね)

【・・・・・・】

(食べたいもの、いっぱい食べていいよ。でも、私の仲間や皆が困るものは食べないでくれたら嬉しいな。・・・物足りなかったら、私の魂をかじっていいから、ね?だから、この調子で皆を助けてあげてね。私の、最高の護り刀の一振りさんっ)

【・・・・・・】

カーマ「・・・伝わったでしょうか?」

グドーシ「伝わりますとも。今、或いは未来にて・・・リッカ殿の言葉は、必ず」

現在

リッカ「うわわわわわわわわ!!?」

第三階層、酒の臭いがむせかえる・・・【不飲酒戒】の階層。此処彼処から漂う酒の階層にて、リッカの左腕が尋常ならざる動きを見せた。

シオン『酒気、全部吸いとってません!?そんなことして大丈夫なんですか!?』

リッカ「わ、私にもなんともー!?どうしちゃったの龍哮~!?」

全てを吸い上げ、吸い尽くし、そして吸い終わる頃には──黒き左腕は、桃色の湯気を立ち上らせだらりと垂れる。

「あ、あれ!左腕が、左腕に力入んない!んぎー!!」

キアラ「・・・龍哮なる刀が、徳川となる酔いを吸い尽くした・・・?」

ザビエル『ベロンベロンっぽいけど、三階のアルコール反応完全消滅。リッカの左腕以外なんにも酔ってない』

リッカ「龍哮・・・喉乾いてたのかな?」

・・・誰も酔わせないと言う結果を導きだし、指の一本も動かせない程に龍哮は腰砕けとなり・・・

マシュ「!・・・皆さん、誰かいます!」

新たなる、敵と邂逅する──






不飲酒戒(いっぱいのんでいいんです)

「ようこそ、大奥の第三階層へ~。私達が誠心誠意もてなして差し上げますわ~?」

 

「えぇ。どうか何もかもを忘れ、酒を飲み、宴を楽しんでください・・・。それが、この大奥の取り決め。護らなければ・・・そう、死んでしまいますので・・・」

 

「マタ・ハリ!シェヘラザード!君たちは大奥になっていないのか・・・!?」

 

第三階層、酒の匂いと効能を村正が吸い尽くした事により取り払われた飲酒の禁。その対価として全く力が入らない程にふにゃふにゃになってしまったリッカの腕の不調を攻め立てるように、二人の美女が現れる。稀代のスパイ、マタ・ハリと、至高の語り手・・・シェヘラザード。

 

「御次、でござるか」

 

「よく御存知で、グドーシ殿!そう、大奥では仏間や広間などといった場所を掃除する女性の事を差します。そしてその役割にて必要なのが・・・そう!一発芸!何か場を盛り上げる芸の一つを持たなくては、この役職を行う事は出来ません!」

 

『となると・・・目の前の二人は確実にこちらを歓待、即ち・・・『攻撃』しに来ていると言うことですね』

 

そう、彼女達は間違いなく世界に名を残す一芸を持つ女傑達。あらゆる男を手玉に取り、思うままに軍部を渡り歩いたスパイ。片や狂乱の王相手に千夜を乗り越えた聡明なる語り手。誘いや飲酒、歓待を非とする場所であるならば。彼女らの動作の総てが恐ろしき攻撃となる。

 

「酔わないのはダメよぉ?この大奥は、そんな風には出来ていないの。楽しんで、酒を飲んで、私達にもてなされてもらわなくちゃ」

 

「えぇ、それはいけません。えぇ、具体的に言うと・・・最も恐ろしい結末に・・・そう、死んでしまいます・・・ですから、何もかも忘れて、楽しんでください。私達はそれを、ただ助けるものです・・・」

 

『アバズレ、ゴジョウシンカンは試した?』

 

「・・・えぇ。精神的干渉を感じ、試してはみたのですが。根本的に相性が悪かったのか、全て無体に弾かれてしまいました」

 

「使えませんねー。心を暴けないなんてセラピスト失格じゃないですか。詐欺罪で訴えますよ?」

 

「申し訳ありません・・・純愛堕ちを披露した女神に詰られては恥じ入る他なく・・・」

 

喧嘩売ってます?トムジェリ口論になった二人を差し置いて、あの二人はノウム・カルデアのサーヴァントである事を藤丸達は見抜いた。どうやら、禁を破らせる為のスペシャリストを用意したと言うことに他ならない。

 

「左腕の指一本も動かせない・・・!フニャッフニャだよ、フニャッフニャ・・・!」

 

頼みの綱たる村正も、酒気の酔いにて潰れてしまう有り様である。村正であるため徳川には変じぬであろうが、少なくとも今の局面では頼れぬであろう事は明白だ。グドーシ、カーマはそんなリッカをサポートせんと、そっと傍らに待機している。防衛の構えだ。この状況を打破できるのは──

 

「それでは、このマシュ・キリエライトにお任せください。柳生さんとキアラさんの力を借り、速やかに無力化します。・・・立香さん」

 

「あぁ、やろう!マシュ!」

 

マシュがそっと前に躍り出、ゆっくりと歩み出す。──楽園視点から見れば、有り合わせの急場凌ぎ、しかし有り合わせとは思えぬ傑作の──オルテナウスを纏い、サーヴァントとして戦闘体勢を取った。

 

(・・・マシュのあの無駄の無さすぎる構え、何・・・?カブトの天道さんや、アマゾンズシーズン2の悠くんみたい・・・)

 

リッカの目から見ても、マシュの動きは洗練されきった熟練の戦士そのものだった。覚悟の上に積み上げられた、流麗な身体捌き。──はっきり言って、技量や威圧といった観点では楽園のマシュすら凌ぐかもしれない程の経験値をリッカに感じさせる。そしてそれは──藤丸も同じ。

 

「っ!」「ぁ──」

 

瞬間、二人の刺客の動きが完全に停止した。戦闘行為を認めた藤丸が素早く、カルデア製ガンドを二人に撃ち放ったが為だ。

 

「──今だ、マシュ!」

 

「はい、立香さん。──ふっ!」

 

瞬間、瞬間強化を受けたマシュが二人の真ん中の空間に身体を滑り込ませ、円卓の盾をフルに使い二人をそれぞれに分断し弾き飛ばす。

 

「柳生さん、キアラさん。お願いします!」

 

「承知。峰打ちにて」

「ふふ、死など恐れる必要はありません。私がもたらすは、死などではなく至高の法悦──」

 

スタンした最中の二人に、柳生とキアラの無力化の手段が叩き込まれ瞬く間に制圧を完了する。──誘惑が主ならば、何もさせなければいい。手の内を知り尽くしているからこその、電光石火の戦運び。

 

『いいマスターになった』

 

その手練手管に、はくのんも偽りない称賛を送る。リッカもまた同じだった。齢はそう自分達と変わっていないというのに、もう幾つもの修羅場を、幾つもの死地を潜り抜けてきたかのような阿吽のコンビネーション。

 

「私もそう思うよ。──私達と会わない間に、どれだけの戦いをしてきたんだろう・・・」

 

リッカもまた同調を示す。その旅路の壮絶さを表すマシュの無双ぶり、何よりも盾を振るう際の据わりきった眼。マスターの為にあらゆる障害を叩き伏せる覚悟を決めた修羅の眼に、想いを馳せらせずにはいられなかった。──そしてその目の揺らぎから、一つの所感を感じ取る。

 

・・・きっと、強くなどなりたくは無かったし。出来ることなら・・・変わりたくは無かったのだろう。それでも、今も二人は戦っているのだ。

 

「戦闘終了。・・・無事に正気には戻せます、でしょうか」

 

「任されよ。カーマ殿はそちらを。はくのん殿、そしてシオン殿。『白き花札』を使いまするぞ」

 

「はい、解りました。グドーシさん、気をつけてくださいね?」

 

『花札。──あぁ、魂の熱量で作られたさっきのリソース』

『正直なんで花札?とも思いましたが!成る程大奥の術式に使えるリソースでしたか!待っててください、仕組みさえ解ればあっという間に!』

 

はくのんとシオンが協力し、カーマとグドーシを通じて術式を発動させ汚染を除去する。そう、花札とは決して遊びや戯れに渡されたものに非ず。確かに活路を拓くために何者かが用意した天恵なのだ。

 

「・・・う、うぅん・・・あれ?私は何をしていたのかしら・・・?」

 

「何かをしていたかは覚えてはおりませんが、皆様に迷惑をお掛けしてしまった事は明白です殺さないでください(土下座)」

 

「主、委細を説明されよ」

 

「あ、あぁ!実は二人とも、此処には──」

 

藤丸が説明を行い、二人を説く。皆を助けるために、力を貸してほしいのだと。全てを、取り返すのだと。

 

「つまり、マーラを倒さないと皆は帰ってこないと言うことね?解ったわ。戦闘は不向きだけど、精一杯やらせてもらうわね」

 

「死ぬのはとても怖いです。・・・ですが、友人、隣人、仲間、知り合い・・・。『私を包む全てを』を喪うのは、死ぬと同じくらいに辛いこと。どうか、お力添えをさせてください」

 

快諾する二人。藤丸側が頼れるサーヴァントが更に増え、戦力の増強を成功させる結果となった。後は、マッピングされたように進むのみである。

 

「善哉、善哉。仲間が増え、活路が伸びるは喜ばしき事・・・。・・・春日局様?どうなさいました?」

 

「い、いえ。そのですね。大奥はその、扇情的な格好が必須と言うわけではなく。徳川の世継ぎを恙無く育てる場所で、怪しい女性は追い返すべしとの決まりもあって・・・」

 

「?」

 

「おっ!!!」

 

「・・・?」

 

「おっ!!!」

 

「せ、せめて!せめて二人とも、上に何かを羽織ってはいただけませんか──!?」

 

どうやら大奥の乳母としてマタ・ハリとシェヘラザードのあまりにもあまりな格好はまずいようで。春日局さんの困惑と嘆きの叫びが響き渡った後。一行は進行を再開する。

 

「ううぅうぅ~!左腕がフニャッフニャすぎて全然うまく歩けないぃ~!」

 

「おやおや、まるで千鳥足。未成年なのに酔い潰れるとはいけない娘でござるなリッカ殿。カーマ殿、お手を引いてさしあげてもらってよろしいでござりましょうか」

 

「勿論です!(シュバァ)──はい、大人のお姉さんの私がエスコート致します。こちらへ、どうぞこちらへリッカさん。私の方へ、グドーシさんと御一緒に・・・」

 

「あぁ~導かれるぅ~」

 

「では、拙者もリッカ殿の背中を押しましょう。・・・この迷宮の酒気を吸い尽くすとは・・・」

 

(どうやら、龍哮殿なりに・・・皆様の役に立ちたいと願っている。・・・というのは、都合が良すぎるでござろうか?ふふっ、どうでしょうかな・・・?)

 

酒気の禁を破る村正。しかし徳川を殺す村正なので徳川になどならないという無法ぶりを発揮し、でもしっかり酔って皆を護りリッカを振り回し・・・迷宮を踏破させるのだった──

 

 

 

 

 

 




第三階層最奥

タケちゃん「来たか。・・・どうやら酔ってはいるようだな。酒は飲まず、宴はせずとも酔う。随分と的確な通り方をする」

藤丸「ほ、本当に・・・戦ったりはしないんですか?」

タケちゃん「その意味が無い。この迷宮の目的はそなたらを堕落させ、快楽に呑む事。命を奪う事ではないのだ、吾が武を示す意味は無い。──どのみち、そなたらはマーラを倒すため進む他あるまい」

マタ・ハリ「それはそうなんだけどぉ・・・私達の事を助けてくれても良かったんじゃないかしらぁ・・・?」

「すまんな、あくまで吾は外様の存在。節目の地にてそなたらを見張る程度が関の山よ。・・・そら、持っていけ」

『花札・白』【花札・黒】『徳川の印籠』

カーマ「・・・ひょっとして。その階層のアイテム、全部集めてくれてるんですか?」

「掃除も担当しているんでな。落とし物は預からねばならん。渡すなとは言われていないのだ、託しても問題あるまい」

カーマ「うふふふふふ・・・。逆らえない存在がいるって、大変ですね?タケちゃんさん?」

春日局「あの!信綱殿は!信綱殿は何処!?」

「何、親孝行と裁量の一環よ。・・・信綱は体調が芳しくない。奥の階層にて休んでいる。代わりに吾が地上への帰還、体力の回復を受け持とう」

柳生「・・・何を企む、信綱。そして、何故たける殿を従えたのか」

「さて、な。まぁ紛れもなく徳川の逆賊よ。斬るに理由はそういるまい。・・・斬るには、な」

リッカ「セ・・・セーブポイント・・・!!」

「・・・何度塩を送れば気が済むと呆れる他ないが、マーラは堕落に関する事を容認しろとの事だ。その酔い潰れた腕を御祓いでやろう」

リッカ「至れり尽くせり・・・!!」

シオン『はいはいはいはい!質問よろしいですか!ビーストⅢの特徴、獣性とか存じないですか!』

「・・・・・・」

はくのん『やっぱり内緒?』

「・・・孔があろう」

キアラ「はい、誰にでも」
カーマ「黙っててくれません?」

「此度の敵は『孔以外の全て』だ。氾濫を止めたくば、防波堤を築け」

リッカ「孔以外の全て・・・」

「次に進め。──助力は出来んが、応援はしているぞ。どちらのカルデアもな。ちなみに今、楽園は母の創世記からの日本史朗読にて場を繋いでいる」

リッカ「おばあちゃん!?」

徳川汚染度  0/100

龍哮満腹度 150/∞

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