私はそれを受け入れます。
時代が私を蔑むのはいい。貶めるのはいい。
私はそれを受け入れます。
恋は破れるもの。現実の前に崩れ去るもの。
私はそれを受け入れます。
フランスという国に恋した私の、当然の末路。
私はそれを受け入れます。
ですが──
◼️◼️◼️◼️◼️への仕打ち。誰もが行った◼️◼️への仕打ち。誰もが正義と革命の下に行った仕打ち。
私は、それを──
許さない。
【嬉しいわ、外からの方とのお茶なんて久しぶりだもの。腕によりをかけて御用意しなくてはね。とびきりのおもてなしは王妃の嗜み、期待してもらってよろしくてよ?さぁ、お座りになって。雄々しいあなたがた。そこの愛くるしいリス・・・イヌ?ネコさんもどうぞ?さぁさぁ】
「歓待は尽くすとはな。まぁ当然だが・・・些か意外であったな。問答無用の断頭の刃の一つも想像していたが」
きらびやかにして、黒き装飾の施された王宮の大広間。黒いシャンデリアが照らす空間にて振る舞われる紅茶とケーキの歓待。黒き王妃、マリー・アントワネットの歓待は意外にも華やかかつ誠実であった。毒物や劇物の類いではない、正真正銘のもてなしの品々。フォウの分まで用意されたティーカップとおやつ。それは連絡と共に送られた際の写真と全く同じフランス王家の嗜みの品。ギル達がカルデアで王妃に振る舞われるものとなんら遜色の無いものである。黒きティーカップに紅茶を注ぐ仕草の優雅さと高貴さも、エア達の知るマリーとなんら変わらない・・・
(あ、あれがボクらの王妃の真の姿だとでも言うのか・・・!ロイヤルズの中でもブッチギリの圧倒的バストッ!星の擬人化のアルクやギル譲りの黄金の肉体比のエアすら上回るボディだなんて!しかも史実出身のマリーがだ!こ、こんな事がッ!危ない・・・エアを知らなければ推しになるところだった!)
──オルタ化特有の白い肌も、特有の色気と美貌に様変わりして・・・金色の瞳も、ゾッとするような妖しさに満ちていて・・・これが、フランス全土を魅了したマリーのもう一つの側面・・・
「うむ。我等が口にするに相応しき茶よ。やはりお前は王妃の様だ。何者かが産み出した虚像の線も疑ってはいたが・・・」
衝撃的に揺れる二人と対照的に、ゴージャスは静かにマリー・オルタの一挙一動を見定め、共にティータイムを楽しんでいる。ティーカップの取っ手に指を入れず、皿ごと持つ優雅さも、上品極まる仕草運びも、間違いなくギルが知るマリーそのものだ。彼女に夜枷や三時のティータイムのセッティングを一任し、彼女の茶を嗜むゴージャスが見誤るなど有り得ない。偽物ではない。彼女は確かに、マリー・アントワネットその人だ。
【まぁ、お顔に似合わずお茶目な御方。それでこそですわ。先の挨拶ではごめんなさいね。私、ああいう言い方しかできなくなってしまったの。気分を害してしまって、来てくれないかと思っていたけれど・・・】
「気にするな。王妃や姫の戯れを流せずして王は名乗れぬ。貴様の戯れともなれば、受ける側にも品性を問われると言うものだろうよ」
【うふふっ。懐と器が深くて大きいのね。ギルガメスは嵐のような方だけれど、あなたはまるで違う・・・比類なき王宮、城塞のような磐石さを感じるわ。えぇ、とても素敵。招いて良かったわ。素敵なあなたたち。この一時には、沢山の祝福がありますように。・・・ね?】
その微笑みも、その口調もよく知るマリーのものだ。ギルと二人きりのティータイムを見守るフォウとエア。周りには兵士もいない、護衛もいない。そんな静まり返った、ある種異様な王宮に二人の奏でる音だけが響き渡る。どうやら本当に、このティータイムを望んでいたことはウソではないようだ。その姿の相違さえなければ、楽園カルデアのいつもの風景とすら言えるだろう。
《どの様な姿であろうとも、高貴な振る舞いは喪われぬか。雑念に呑まれようと、秩序の暴君であったセイバーめと理屈は同じか》
(ブリオッシュ美味しいよ!ケーキもだ!エアもお食べよ、すぐ美味しい!凄く美味しいから!)
──う、うん!えっと、じゃあ・・・
【遠慮なさらないで?パンの代わりのケーキならいくらでもありましてよ?うっふふっ】
──!わ、ワタシが見えている・・・のかな・・・?
エアに語りかけたのか、それともフォウへの催促か。その態度は悪戯好きで、それでも煌めきを失わぬもの。ますますもって、先の恐ろしげな王妃の発言が真意とは思えぬ友好的な態度である。暫くの間、互いに笑みを浮かべる穏やかな一時が続く。それは宇宙の動乱すらも忘れるほどの緩やかで、暖かな一時だった。
【そちらのギルガメスは、私を非常に気に入ってくださっているのね?私も誰彼構わず好いてしまうところがあるけれど、あなたも無様なアマデウスのように私に恋をしてしまったの?】
「恋ではない。お前の在り方、振る舞い。女神よりも女神に相応しき輝きが我に相応しき価値を示していただけの事。寝首という無防備な一時を預ける程度にはな」
【ふふっ、そんなに言われると照れてしまうわ。そう・・・私は駄目ね。そんな無防備な首があると、そっと断ち切りたくなってしまうもの。フランス以外に、そんな事をしてはいけないというのに・・・御無礼を赦してね、ゴージャスなあなたたち】
──・・・フランスに、並々ならぬ想いを示しているのですね。言葉から察するに、想いはきちんとフランスに向けられているようですが・・・
【まぁ!そういえばあなたとアマデウスの声、とても似ているわね。性格も振る舞いも似ても似つかないのに声だけは似ているなんて不思議ね!】
「ははははは、お前で無かったら処断ものの暴言だぞ。──話題に出たので問うが、アマデウスめは何処にいる?ヤツならば頼まれずとも、お前の為なら一曲奏でるのがヤツであろうよ」
【あぁ、ごめんなさい。飽きてしまって捨ててしまったの。1ヶ月毎日、私の為に奏でさせていたら壊れてしまっていたわ。残念ね・・・こんな事なら、もう少し生かしておいたのに】
──えっ・・・?
だが、決定的に違う。目の前の王妃は楽園カルデアのマリーとは徹底的に違うのだ。その言動は、あまりにも違う。アマデウスを始めとしたフランスの者達への扱いは、あまりにも違う。
【私の為に演奏して貰ったわ。三日三晩、一週間、1ヶ月。途絶えてしまった時には哀しかったけれど、よく考えてみたら音楽なんてあってもなくても同じよね。慣れてしまったもの。アマデウスも可哀想な人ね。そんな儚いものに一生を捧げるなんて】
──そんな・・・
「──サーヴァントとして、消える瞬間まで貴様に捧げ続けたのだな。己の全てを懸けてまでも」
【あら、何か珍しい事があるかしら?フランスが私に全てを捧げるのは当たり前の事でしょう?喉が乾いたなら、紅茶を飲むくらいには当たり前の事だわ。デオンも、サンソンも、アマデウスも。皆私に捧げ尽くすのは当然の事。民も、国も、フランスの全ては私のものだもの。デオンは可愛いだけのスパイで、サンソンはギロチン作り以外、取り立て語ることの無いつまらない男で、アマデウスは誉められる場所は音楽くらいしか無かったけれど。私はそんな皆を──民達と同じ様に想っていたわ。強く、強く。そう、とても強く──】
紅茶を飲み干し、マリーは向き直る。その表情は、その目に宿る感情はあまりにも──
【ねぇ、ご存知?本当の憎しみが、本当の恨みがどういったものか。私は今一ピンとこなかったけれど・・・急に理解できたわ。解ってしまったのよ】
「───」
【堪えられないわ。消したくなるの。同じ空気を吸っていることが堪えられない、同じ世界に存在するのが堪えられない。憎んでいるものが存在しているというだけで喉をかきむしりたくなるのよ。──えぇ。告白します。あなたたちには知って貰いたかったのだもの。私は今、全身全霊で。フランスという存在を。其処にいる存在を・・・】
歩き出し、そっとギルの耳許で囁く。
【──全身全霊で、憎んでおります。殺しても飽きたらない程に。滅ぼしても満足できない程に。えぇ、狂おしい程に──】
憎悪の王妃は、胸中の憎悪を吐き出す。フランスに捧げる、あまりにも暗い想いを──
ギル「・・・・・・」
──マリー・・・。
フォウ(・・・そ、そりゃあ・・・人には澱みがあるものだけどさ・・・)
マリー【ふふっ。お茶の後には運動なんていかが?フランスの都市、少しは暇潰しになるかもしれないわ。一緒にお散歩なさらない?】
そうして扉を開ける。──黒き空に淀んだ空気。鼻をつくような異臭と悪臭。
【ほら、見えるかしら?素敵な催しが始まっているわ】
「──・・・」
其処に拡がっていたのは、宮殿に罵声を浴びせる落ちた首を抱えた民衆達の怒号と嘆き。絞首刑にて吊るされた死体。そして・・・
サンソン「──せめて、苦しまぬように・・・」
聖職者、権力者、革命家の首を落とし続ける処刑人、シャルル・アンリ・サンソンの姿──
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